解説

カード解説

強面の獣医には、絶対に守っている信念がある。
全ての動物たちに、きちんと怖がらずに治療を受けてもらいたい。
その思いを胸に、今日も奮闘しているのだが……。

心銃解説:ドクトル・ドライゼの奮闘記

引っ掻かれた傷跡が痛む。
アイツらの嘲笑う笑い声が聴こえてくる。
──だが、諦めたりなんてしない。
したり顔もそこまでだ。
これをくらえ!秘密兵器・おやつ!

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

 

Ep1. とある獣医の第一印象

『アイゼンわんにゃんクリニック』。
腕の良い獣医がいると、近所で評判のペットクリニックだ。

ドライゼくっ……。いい加減、大人しくしないか!
怪我をしているのだぞ、治療をしないと苦しむのは貴様だと
何度も説明しただ……あっ、こら、噛みつくな!
エルメ……ふふっ。
エルメ(また動物と戦っている……。
本当、出会った時から変わらないね)

診察台で猫の治療に奮闘しているドライゼを眺めながら、
エルメは彼と初めて出会った時のことを思い出す。

エルメ(あれはたしか、俺がまだ獣医学部の学生で……。
飼い犬のジグを予防接種に連れて来た時だったな)

エルメ……ここが新しくできたペットクリニックか。
ジーグブルートぐるるるるる……っ。
エルメジグ、知らない場所だからって警戒しすぎはダメだよ。
今まで診てくれた先生が高齢で閉院してしまったんだから……。
新しいクリニックにも慣れないとね。
エルメ(本当は、あのクリニックで研修医になりたかったのにな。
動物のことを知り尽くした先生だった……。
でも、ないものは仕方ない)
エルメ(さて、俺の新しい研修先候補1件目……
ここが当たりだといいのだけれど)

エルメすみません、予防接種を予約した者ですが……。
子猫キシャーッ!!
ワンワン!! ワンワンワン!!!
ドライゼうわっ、暴れるな!
俺は治療を……ぐあああああっ!!

診察室に入るなり、動物に逃げられ、引っかかれと
手を焼いているドライゼの姿が目に入り、唖然とする。

ドライゼあっ、初診の方だったな。
──こら! 待たんか!!
ワンワン!! ワンワン!!
エルメ……何、ここ。動物園?
エルメ(この人、先生? 動物に対して弱腰すぎる。
治療待ちの動物たちも騒がしいし、躾がなってないな……)
エルメこーら! 静かにしようね。

見かねたエルメが一喝した瞬間、動物たちはピタッと静まる。

ドライゼむ……!
ドライゼこいつらがこんな静かになるとは……驚いたな。
エルメ驚いたのは俺の方なんだけれど。
あなた、獣医なのに動物に対してあの態度はどうかと思うよ。
毅然とした態度も必要だって習わなかったの?
エルメその厳つい顔をもっと利用して動物たちをきちんと叱れば、
俺の一喝より十分効果があると思うけど。
ドライゼうむ……確かに圧をかければ動物は大人しくなるだろう。
だが、俺は治療が怖いものだと思ってほしくない。
ドライゼだから、まずコミュニケーションとして
彼らに触れて、和ませてから治療を行うようにしている。
ドライゼ俺は味方だ、決して危害を加えない──
そのように彼らに理解してもらうことが、
我が「アイゼンわんにゃんクリニック」の信条なのだ。
エルメ……へぇ、優しいんだ。でも、そんなに暴れられたら
診断できないんじゃない? それに治療に行きつく前に、
あなたが怪我だらけになっているような気がするけど?
ドライゼむ・・・そこは改善点だが、
怪我を負うことが失敗ではない。
ドライゼ獣医など、怪我がつきものの職業だからな。
その経験を次に活かし、動物と新たに向き合う
糧にすればいいだけだ。
ドライゼ……と、待たせてすまないな。
君の愛犬の予防接種だったな。
その前にボディチェックをしてからするとしよう。
エルメジグ、診察台に座って。
ジーグブルートグルルル……ッ!
ジーグブルート(チッ……し、仕方ねぇな。乗ればいいんだろ……!)
ドライゼ身体に悪いところがないか確認するだけだ。
そんなに怖がらなくていい。
ジーグブルート(はぁ? 怖がってる? んなだけねぇだろ。
この医者、気にいらねぇな。簡単に触らせてなんてやるかよ!)
ジーグブルートワオワオ! ウワオウ!!

ジーグブルートは診察台の上でジャンプしたり、
走ったりと動き回る。

ドライゼこ、こら! そんなに動いたら心音が聞こえないだろうが。
ドライゼならば……見ろ! これでどうだ!
ジーグブルート(あっ!! 骨ガム!!)
ジーグブルートワオ! ワオワオ♪
エルメジグ……。
エルメ(いつもは病院なんて怖くないってフリをしながらも、
本当は尻尾を丸めて怯えているのに……。
今日のジグはリラックスしてる)
ドライゼ俺は味方だ、決して危害を加えない──
そのように彼らに理解してもらうことが、
我が「アイゼンわんにゃんクリニック」の信条なのだ。
エルメふぅん……。
エルメ(この人、面白い)

後日、ドライゼの病院に再びエルメが現れた。

ドライゼん? 愛犬の姿が見当たらないが……。
なんの用だろうか。
エルメ今日はジグの診察に来たんじゃないんだ。
先生に個人的にお願いがあってね。
エルメ実は俺、獣医学部の学生なんだけれども……。
研修先を探しているんだよね。
ここで受け入れてくれないかな?
ドライゼほう、獣医学生だったのか。
どうりで動物の扱いに慣れているわけだ。
ドライゼそうだな、お前がいてくれれば動物たちも大人しくなるようだし、
いざという時に心強い。
──喜んで、研修を受け入れよう。
エルメありがとう。
──よろしく、ドライゼ先生。

こうして2人の絶妙な連携によりペットクリニックは評判になり、
今に至るのだった。

Ep2. 素直になれない

とある日のこと。
事故で怪我を追ったアラスカン・マラミュートがドライゼの
ペットクリニックに運ばれて来た。

しかし、彼は隙を突きケージを開けて脱走。
すぐにドライゼが追いかけて、探しに出た数時間後……。

ドライゼ……今帰った。
エルメお帰り。
……彼、いた?
ドライゼああ、士官学校の校門にいた。
説得を試みたが……噛まれた。
ドライゼあいつ……飼い主に会うまで、
テコでもあそこを動かないつもりだ。
エルメ意思が固いんだね。で、どうするの?
あのまま放っておくわけにはいかないよね。ドライゼ先生?
ドライゼ知らん!
ドライゼあいつ、怪我をしているのに……!
治療をしてやると言っても聞く耳を持たないで……!
もう勝手にしろと言ってやったんだ!
エルメおや? ドライゼが動物に怒るなんて珍しい。
ドライゼむ……。
ドライゼ苛立つのはよくないな。
精神統一も兼ねて、動物用の特製ヴルストの仕込みをするか……。
エルメいいね。そうしたら?

エルメに背中を押され、ドライゼは特製ヴルストを作りに
キッチンへと向かう。

ドライゼ(もし、あの時せめてヴルストを持って出ていたら、
食いついた隙に連れて帰れただろうか……?)
ドライゼ(それとも俺ではなく、エルメが追いかけていたら
あの犬を従わせられたのだろうか……)
ドライゼいや……いかん。
仕込みだ、仕込み!

エルメここが例の士官学校か……。
エルメ(おつかいのついでに士官学校まで来てみたけれど……。
あの子はいるかな……?)
マークス……クゥン……。
マークス(うう……腹が減ったし、ここは寒い……。
でも、ここを離れたらマスターに会えない……)
エルメうーん……なるほど。
エルメ(ずいぶん毛づやが悪い……何も食べてないのかな。
それに、あんなに身体を丸めて……寒そうだ。
だけど、あそこから動きたくない、と……)
エルメ…………。

エルメがマークスの様子を見に行った、翌日。

ドライゼが患者としてやってきた別のアラスカン・マラミュートを
診察した後、浮かない顔をしていた。

エルメあの子が気になるんでしょう?
ドライゼうむ……。
い、いや、別に心配しているわけではない。
エルメふぅん……。
エルメああ、そういえば……昨日、おつかいのついでに
様子を見てきたけれど、ちょっと痩せたみたいだね。
寒そうだったし。
ドライゼ…………。
エルメドライゼ、残りの仕事は俺がやっておくから行って来たら?
ドライゼ……っ!
エルメ、感謝する!!
エルメ待って、ドライゼ。
急いで出て行くのはいいけれど、手ぶらでどうするの。
特製ヴルスト、持って行ったら?
ドライゼそうだった。

ドライゼは犬用の特製ヴルストを手に取ると、
ものすごい速さで外へと出て行った。

エルメまったく。寒そうって言ったのに聞いてないね。
食べ物だけじゃなく、毛布とかも持っていけばいいのに……。

ドライゼが途中で気付き、取りに戻ってくる可能性を考え、
エルメは毛布を用意するのだった。

Ep3. ドライゼの講義

とある日の授業開始前。

恭遠皆、すまない。先ほど、急な任務が入ってしまって……
今日は俺の代わりに、ドライゼが特別講義を行う。
恭遠内容はドイツ軍における軍用犬利用についてだ。
後でレポートも提出すること。では、頼んだぞ。
ジーグブルートはぁ? 軍用犬はいいとして……
ドイツ軍の話なんざ教わることはねぇんだよ!
マークス……犬……。
ドライゼ教官に頼まれたからには、しっかりと講義を行う。
ドイツにおける犬の訓練技術はトップクラスと言われているが──
シャスポーハァ……あのさぁ、午後のお茶の時間の前に、
血生臭い話はやめてくれないかい?
グラースシャスポー、たまにはいいこと言うじゃねぇか。
せめて面白い話にしてくれ、ドイツ流の口説き方とか?
ドライゼ黙れ。これは教官から要請された、立派な授業だ。
文句を言うのであれば、規律違反とみなすぞ!
シャスポーハッ!
まず規律違反より、君が講義をすることに問題があるよね。
僕よりも性能の低い君に教えられるなんて笑わせる。
グラースだよなぁ、ドイツ銃が僕らフランス銃に
何を教えられるって言うんだか!
僕がレディの扱いについて講義した方が有意義だぞ。
シャルルヴィルちょっと2人とも、そんなに喧嘩腰にならないの!
講義なんだから、しっかり集中しなくちゃ。
シャルルヴィルはぁ……。
なんでこんな日に限って、タバティさんいないかな……。
ドライゼ講義を続けるぞ。
ドイツにおける犬の訓練技術はトップクラスと言われているが、
近年では軍用犬に関する過度な訓練や躾は問題視されている。
ドライゼそこで、動物行動心理に基づいた友好的なトレーニング方法……。
犬を攻撃して恐怖で支配するのではなく、信頼関係を築き
人間を群れのボスとして認識させ従わせるという──
マークス俺は犬……じゃ……なひ……むにゃ……。
ジョージWow☆ マークス、こんなときに居眠りか!
ふぁ~なんだからオレも眠くなってきたかも……。
シャスポーはぁ、やってられない。
グラースあーあ、やってらんねぇな! サボタージュしようぜ。
十手お、おーい! みんな、授業に集中しようよ……!

混沌と化した教室内だったが、突然「パチン!」と
鞭の音が響いた。

全員!?

全員が驚いて音のした方を振り返ると、
エルメが机に鞭を振りおろしていた。

エルメああ、ごめん。
ふふ、鞭って馬の調教用に使われているし、
昔の過度な躾ってこういうことかなって思って。

エルメはにっこりと笑顔を浮かべながら、鞭をしならせる。

全員(うるさくしたら、問答無用で打たれる……)
エルメ授業が止まっちゃったね。
ドライゼ、講義を続けてくれる?
ドライゼう、うむ……では、次に軍用犬の種類についてだが……。

数十分後。

マークス俺は犬じゃない!!!!
ドライゼおい、マークス! どこへ行く!
まだ講義は終わってないぞ!
ライク・ツー……授業が犬の話だから、犬の夢を見たのか?
あいつらしい。

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