非道だろうが高貴だろうが、敵を屠れればそれでいい。
ただ、高貴であることにこだわる兄に背中を預けて戦うならば、そちらの流儀に合わせてやってもいい。
そう考えて、彼は絶対高貴を放った。
運命が指し示すは力の手札。
何故わからない。お前の赦しはいらない。求めるものは力だけ。
白き花が降り注ぐ。意味するものは希望か、それとも死か。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──波乱のクリスマスが終わって、しばらく経ったある日。
エンフィールド | スナイダー! また勝手に戦いに行っていたのかい? |
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スナイダー | それがどうした。心配なら無用だぞ。 |
エンフィールド | え? 別に心配はしてないよ。だって、君は強いし。 僕は、〇〇さんに迷惑をかけるのはよくないって── |
スナイダー | ……下らん。 |
エンフィールド | あっ、ちょっと、スナイダー! まだ話は終わってないぞ!! |
ライク・ツー | へぇ。催眠が解けたってのは本当だったんだな。 この間まで、気持ち悪ィくらい甲斐甲斐しく世話焼いてたのに。 |
──クリスマス・イブに、暴れまわるベルガーを止めようと
不思議なペンデュラムで催眠術を試みたエンフィールドは、
アクシデントで自分で自分に催眠をかけてしまった。
『まっさらになり、言われたことを素直に聞くようになる』暗示で
スナイダーを『自慢の弟』だと言い、ジョージにするように
世話を焼いていたエンフィールドだが……。
スナイダーが改造を迫ったことをきっかけに催眠が解け、
今やすっかり元通りになっていた。
スナイダー | (……つまらんな。 またアウトレイジャーでも追って、戦いに行くか……) |
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スナイダー | ……ん? |
ローレンツ | Mr.エンフィールド! |
エンフィールド | ローレンツさん。 どうしたんですか? |
ローレンツ | 1点、尋ねたいことがある。 君がクリスマスに使ったペンデュラムだが、 あれは今どこにあるんだ? |
エンフィールド | うっ……。 あのペンデュラムは、鍵をかけた小箱にしまいました。 |
エンフィールド | あんな大騒動を引き起こしてしまいましたし、 視界に入れるとなんだか悪寒がして……。 しかし、大切な貰い物ですから捨てることもできず……。 |
ローレンツ | なるほど……。あのペンデュラムの効果は非常に興味深い。 俺の研究テーマに取り入れたかったが…… 確かに、扱いには慎重になる必要があるな。 |
エンフィールド | ええ……。 あのような惨事を繰り返してはいけませんからね。 |
スナイダー | …………。 |
──その日の夜。
エンフィールド | はぁ……鳥羽じゃなくてタワーだし、 僕はエンフィールドだって言ってるのに──…… |
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エンフィールド | ……って、なんだよ、これ……! |
談話室から自室へ戻ってきたエンフィールドは、
室内が荒らされていることに気づいた。
エンフィールド | めちゃくちゃだ……! 一体、誰がこんなことを……!? |
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エンフィールド | 強盗、いや、空き巣……? でも、士官学校の寮なのにどうやって……って、 それより、まずは被害を確認しないと……! |
エンフィールド | ええっと……弾薬はあるし、財布も無事だ。 紅茶や買ったばかりの茶器も盗られてない……。 |
片づけをしながら、欠けている私物がないか確認していく
エンフィールドだが、散らかされているだけで、
なくなっているものはない。
エンフィールド | 変だな……。 何も盗られてないみたいだけど……あっ。 |
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エンフィールド | あの小箱は……!? |
ペンデュラムを封印していた小箱が気になり、
隠し場所付近などを探し回るが、
唯一小箱だけが中身ごと消え去っていた。
エンフィールド | お金や貴重品はそのままなのに、 ペンデュラムが入った箱だけ忽然と消えるなんて……。 |
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スナイダー | ……おい、うるさいぞ。 何を騒いでいる? |
エンフィールド | ああ、スナイダー……。 実は、部屋が荒らされていて…… 空き巣かと思ったけれど、妙なんだ。 |
スナイダー | ほう……? 妙とは? |
エンフィールド | ペンデュラムを入れていた箱だけが消えてるんだ。 きっとこれは、ペンデュラムの怒りのせいなんだよ……! |
エンフィールド | おばあさんが譲ってくれた大切なものなのに、 クリスマスの大混乱の責任を押し付けて、 僕が封印するようなことをしたから……! |
エンフィールド | うん、間違いない。 きっと、ペンデュラムはおばあさんのところに戻ったんだ。 |
スナイダー | ……ペンデュラムとは勝手に動くのか? |
エンフィールド | うっ……普通は動かないけど……。 妖精が作ったっていう謂れがあるものだし、 実際、すごい力があったじゃないか! |
エンフィールド | はぁぁ……無事におばあさんのところに戻れて、 怒りを鎮めてくれるといいんだけど……。 |
スナイダー | …………。 |
──その日の深夜。
エンフィールド | う……、んん……。 |
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スナイダー | ……さぁ、じっくりと見ろ。 このペンデュラムを……エンフィールド……。 |
エンフィールド | スナイダー! い、一体、何を……!? |
スナイダー | おまえは俺に改造されたくなる……。 改造を自ら懇願するようになる……。 |
エンフィールド | や、やめろ……! |
スナイダー | さあ……おまえも俺になれ。 |
エンフィールド | い、嫌だ……! |
エンフィールド | うわぁあああっ!! |
エンフィールド | ……はぁっ、はぁ……。 ……あ……? |
エンフィールド | ……こ、こは……? 僕の……部屋……? |
エンフィールド | なんだ、今のは夢か……。 ……よかった。 |
エンフィールド | まったく、夢でまでスナイダーに 改造させろと迫られるなんて……。 |
エンフィールド | ふう……。ベッドに戻って、もう一度寝よ── |
スナイダー | …………。 |
エンフィールド | ……ッ、スナ── |
──ドスッ!!
エンフィールド | う……。 |
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──翌朝。
エンフィールド | う……。 |
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エンフィールド | んん……? 僕はなんで床で寝てるんだろう? うーん……? 思い出せないなぁ……。 |
エンフィールド | あれ、机に何か置いてある……。 これは……ご婦人のもとに戻ったはずのペンデュラム!? |
エンフィールド | うっ……痛たたた……。 |
エンフィールド | な、なんで……? みぞおちが、とても痛い……!! |
よろよろと起き上がったエンフィールドは、
机の上にペンデュラムだけでなく、
メモが置いてあることに気づいた。
メモ | ──使えないから返す。 |
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エンフィールド | なんなんだ……? はぁ……ペンデュラムの怒りは怖いなぁ……。 |
任務の途中、スナイダーの銃を手に
どこかへ向かい始めたエンフィールドを、
〇〇とスナイダーは尾行していた。
スナイダー | ……森から出た。 どこに行くつもりだ? |
---|---|
主人公 | 【士官学校への道じゃない】 【様子がおかしいのも気になる】 |
スナイダー | ……足が速まったな。 追うぞ。 |
エンフィールドは通りを抜け、公園へと入る。
スナイダー | ……公園? ここで誰かと待ち合わせているのか? |
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子供1 | サムー! パス! ぱぁあすっ!! |
子供2 | オッケー! |
主人公 | 【子供しかいない……】 【ここで何かをするとは思えない】 |
スナイダー | 先を急いでいるようだしな。 通り抜けるだけかもしれん。 |
エンフィールド | ……ん? |
その時、エンフィールドがふと後ろを振り返った。
スナイダー | ……! |
---|
スナイダーはフットボールをする子供たちの間に
さっと割り込むと、彼らが蹴っていたボールを奪い取る。
子供2 | わっ!? 何するんだよ! |
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スナイダー | ……ふん。 |
〇〇はスナイダーから蹴られたボールを
足で受け止める。
スナイダー | そのまま続けろ。 |
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言われたとおり、〇〇はゴールに向かって
ボールを蹴った。
子供3 | うわああ、ナイッシュー!! |
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子供4 | ポストプレーだ! すげぇええええ!! |
子供5 | ぼ、ぼくにもやり方……おしえて……? |
〇〇は、プレーを見て目を輝かせる子供たちに
取り囲まれてしまった。
エンフィールド | 視線を感じたように思ったけど……。 気のせいか。 |
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エンフィールドは用心深く辺りを見回し、
また急ぎ足で歩み始める。
スナイダー | おい、ヤツが動いた。 続くぞ。 |
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スナイダーと〇〇は、
再びエンフィールドを追おうとしたが──
エンフィールド | ……んん? やっぱり、視線を感じるような……。 |
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また足を止めたエンフィールドの目を誤魔化すように、
〇〇はボールを蹴った。
主人公 | 【シュート、かっこよく決めて!】 【いけー!】 |
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スナイダー | ……っ! |
今度はスナイダーが〇〇のパスを受け止める。
スナイダー | ちっ……。 |
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腹立ちまぎれといった様子でスナイダーが蹴ったボールは
鋭くゴールに突き刺さる。
子供たち | うおおおぉぉぉ!! |
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エンフィールド | ……やっぱり、気のせいか。 |
スナイダー | 行くぞ、〇〇。 |
子供3 | かっこいー! |
子供4 | にーちゃんもしかしてプロ!? |
スナイダー | おい、騒ぐな。 俺は急いで── |
子供1 | ねーねー! 次はオーバーヘッドキックして!! |
子供2 | ヘディングでゴール決めてー!! |
スナイダー | ……面倒なことになった。 くそっ、エンフィールドのせいだ。 |
──スナイダーとエンフィールドの大喧嘩が、
共闘によって幕を下ろしてからしばらく。
スナイダー | …………。 ………………。 |
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スナイダー | ……ない。 |
スナイダー | …………。 |
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グラース | ん……? あいつ、あんなに俯いて歩くようなヤツだったか? |
下を見たままゆっくり歩いているスナイダーを不審に思って
立ち止まったグラースのところへ、
スナイダーはどんどん近づいてくる。
グラース | おい、お前。 もしかして、何か探してんのか? |
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スナイダー | …………。 |
グラース | 無視かよ? ムカつく野郎だな、本当に……! |
シャルルヴィル | 頑張って、ジョージ! きっと今度こそうまく当たるよ! |
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ジョージ | Thanks! 次はど真ん中を撃ち抜いてやるぜ☆ |
ジョージ | あれ? スナイダー? |
スナイダー | ………………。 |
ジョージ | さっきもどっかに歩いて行ってたよなぁ。迷子か? |
シャルルヴィル | それはないと思うけど……どうしたんだろう? |
ジーグブルート | はぁ……クソ、エルメの野郎……! ムシャクシャするぜ。 ダンプフヌーデルでも作るか……。 |
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ジーグブルート | ──うおっ!? |
スナイダー | ……っ、前を見て歩け。 |
ジーグブルート | ああ? てめぇこそな!! |
スナイダー | 騒がしい。 |
ジーグブルート | つーかてめぇ、さっきから同じとこウロウロして気味悪ィな。 うざってぇからどっか別のとこに行きやがれ。 |
スナイダー | ……銃に戻れば、おまえも少しは静かになるか。 |
ジーグブルート | やれるもんならやってみろ。 |
スナイダー | 今度気が向いたらな。 |
ジーグブルート | はぁ!? |
スナイダー | …………。 |
ジーグブルート | なんだ? あいつ……。 ったく、調子狂うぜ。 |
タバティエール | さて、と。 補習も終わったし、ちょっと教室片付けてから帰るかねぇ。 |
---|---|
タバティエール | あーあ。花瓶の花がしおれちまってるかねぇか。 昨日の当番はグラースだったか……。 やれやれ、こいつは花ごと交換だな。 |
花瓶を手にしたタバティエールは、
その陰に何か光るものが落ちていることに気づいた。
タバティエール | ん……? こいつは……鍵型のチャーム? |
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主人公 | 【タバティエール】 【どうかした?】 |
タバティエール | ああ、〇〇ちゃん。いいところに来てくれた。 このチャームの持ち主を知っているかい? |
主人公 | 【スナイダーのじゃないかな】 →タバティエール「へえ、スナイダーくんのか。 よかったら、〇〇ちゃんから 返しておいてくれるかい?」 【うん、返しておこうか?】 →タバティエール「助かるぜ。 俺はまだやることがあるもんでね。」 |
タバティエール | それじゃ、頼んだよ。 |
スナイダー | ……やはり、ない。 どこで落とした……? |
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主人公 | 【探し物はこれ?】 |
スナイダー | 〇〇……! どこでそれを。 |
〇〇は、教室でタバティエールが見つけたのだと
スナイダーに伝えた。
スナイダー | そうか、でかした。 |
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主人公 | 【大事にしているんだね】 →スナイダー「……別に。 あいつがうるさいから持っているだけだ。」 【見つかってよかったね】 →スナイダー「ああ。 これ以上、労力を無駄にしなくて済む。」 |
スナイダー | また、探す羽目になるのは面倒だ。 どうにかしろ、〇〇。 |
考えた末、〇〇は
スナイダーの鞄にチャームを縫い付けることにした。
スナイダー | ……まぁ、いいか。 邪魔にはならんしな。 |
---|---|
スナイダー | …………。 |
スナイダーはチャームを縫い付ける
〇〇の手元をじっと見つめる。
主人公 | 【あまり見られると勝手が悪い】 【心配しなくてもちゃんと付けるよ】 |
---|---|
スナイダー | なんだ、緊張しているのか? |
少しぎこちない動きになりつつも、
〇〇はなんとかチャームを縫い付け終える。
鞄を受け取ったスナイダーは、満足気に目を細めた。
スナイダー | ほう……悪くないな。 礼を言ってやろう。 |
---|---|
主人公 | 【どういたしまして】 【もうなくさないといいね】 |
スナイダー | ……ああ。 |
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