遠くから、苦労に末に結ばれた二人を祝う喧騒が聞こえる。
人知れず二人の幸福に貢献した彼は、月夜の庭で静かに時を過ごすのだった。
今宵は祝福の宴。甘く優しい愛の調べを聞きながら、共に夜を明かそう。
夜空を見上げて、輝くあの月に誓おうか。永遠の契りを交わしたあの二人のように。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──ある日の昼休み。
恭遠 | ちょっといいだろうか。 これから名前を呼ぶ者は、俺と一緒に来てくれ。 |
---|---|
ライク・ツー | なんだ? 補習か? |
マークス | 俺じゃないぞ! ……たぶん。 |
恭遠 | ははは……今回は補習ではなく──おっと。 これ以上言うのはやめておこう。 |
十手 | なんと……? もっと気になってしまうなぁ。 |
恭遠 | それじゃあ呼ぶぞ。 マークス、ジョージ。 |
ライク・ツー | ……補習じゃなくて説教とかじゃねーの。 |
ジョージ | Noooo……! |
恭遠 | それから、グラース、シャスポー、 タバティエール、シャルルヴィル。 以上の6人だ。 |
シャスポー | ……? どういう基準で呼ばれたのかわからないな。 |
シャルルヴィル | とにかく、行ってみようか……。 |
マークス | マスター! マスターも呼ばれたのか? |
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主人公 | 【そうだよ】 【何か大事な用があるらしい】 |
ラッセル | さて。全員揃ったところで、これを。 |
ラッセルが差し出したのは、
美しい箔押し加工が施された一通の封筒だった。
シャスポー | これって、もしかして……? |
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主人公 | 【カトリーヌさんとテオドールさんからだ!】 →ジョージ「Wow! ってことは、あの2人、ついに結婚するんだな!」 【結婚式の招待状だ!】 →タバティエール「ははっ、そういうことか! 道理でこの顔ぶれなわけだな。」 |
シャスポーの元マスターであるカトリーヌと、
グラースとタバティエールの元マスターであるテオドールは、
敵対する名家という関係の中でも密かに想いを通わせ──
〇〇たちがフランスでの任務についていた際、
紆余曲折がありながらも、見事に結ばれたのだった。
マークス | ということは、またフランスに行くのか……。 フランスではろくなことがなかった。 |
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ジョージ | HAHAHA! だけど、今回は大丈夫だって☆ HAPPYに盛大にお祝いしようぜ! |
ラッセル | ジョージの言う通りだ。 今回はなんの任務でもない。 特別休暇として、フランスで存分に楽しんできなさい。 |
マークス | マスターと、旅行……! |
シャルルヴィル | じゃあ、時間を気にせずゆっくりお祝いできるんだ! こんなに嬉しいことってないよね……! |
タバティエール | ああ。 2人の幸せな姿を、早く見たいもんだ。 |
シャスポー | 2人が結ばれることができたのも、〇〇のおかげだよ。 結婚式への旅行、楽しもうね、〇〇。 |
グラース | …………。 |
グラース | 僕は行かねぇぞ。 |
シャルルヴィル | えっ!? |
グラース | じゃあな。 |
タバティエール | お、おい! グラース── |
シャスポー | 行かないだと!? あいつ……一体何を考えているんだ? |
マークス | ……そういえば、フランスでは現代銃が嫌われていたな。 |
シャルルヴィル | あ……シャスポーと入れ替わってたことも知られてるし、 ちょっと顔を出しづらいのかもね……。 |
〇〇は、
出て行ったグラースを追いかけることにした。
グラース | …………。 |
---|---|
グラース | ……なんだよ、〇〇。 式に出ろって、僕を説得しに来たのか? |
主人公 | 【無理に出ろとは言わない】 →グラース「へぇ? 物分かりがいいじゃねぇか。 でも、「だけど」とか続くんだろ?」 【そうとも言えるかも】 →グラース「ふぅん。正直だな。それで?」 |
フランスでは、現代銃の貴銃士は肩身が狭いかもしれない。
だけど、外野がどう思い何を言うかより、2人のことと、
グラースがどうしたいかが大事だと、〇〇は伝えた。
グラース | はぁ……。 別に、行ってやってもいいぜ。 |
---|---|
グラース | その代わり…… お前が1日、僕のしもべになるならな! ハハッ! |
主人公 | 【交渉成立!】 【それでいい】 |
グラース | は……はぁっ!? しもべ、下僕だぞ。わかってるのか? |
主人公 | 【わかってる】 【1日こき使われるくらいならいい】 |
グラース | チッ……冗談だ。 ……お前にそんな真似、させるかっての。 |
グラース | 結婚式に行ってやる! それでいいだろ! |
──結婚式2日前。
〇〇たちはレザール家の屋敷に到着した。
テオドール | 久しいな。ようこそ、レザール家へ。 |
---|---|
主人公 | 【ご招待ありがとうございます!】 【この度はおめでとうございます!】 |
カトリーヌ | ふふっ、こちらこそ、来てくださってありがとうございます。 皆さんにまたお会いできてとても嬉しいわ。 |
シャスポー | 本当におめでとう、カトリーヌ。 |
カトリーヌ | ありがとう、シャスポー。 この幸福な今があるのは、あなたや皆さんのお陰よ。 |
タバティエール | よかったな、カトリーヌちゃん。 しっかし……。 |
テオドール | …………。 |
タバティエール | 俺たちの元マスターは、相変わらずだな。 程よい緊張感があるのはいいが、緊張し過ぎはよくないぜ? |
グラース | まったくだ。 新郎がそんな顔してると、余計な詮索を招くぞ。 |
テオドール | ……わかっている。 しかし、この顔は生まれつきだ。 |
カトリーヌ | ふふふ……っ! |
カトリーヌ | ──あ、わたくしはそろそろ行かないと。 |
ジョージ | んん? 何か用事があるのか? |
カトリーヌ | ええ、結婚式の準備がまた残っていて……。 本当は皆さんと色々とお話をしたかったのですが、 また後日、ゆっくりとお話させてくださいね。 |
カトリーヌは名残惜しそうに告げると、
ロシニョル家の屋敷へと戻っていった。
タバティエール | ……んで、どうしたんだ? さっきはうまく誤魔化してたけどさ。 |
---|---|
テオドール | ……お前にはすべてお見通しか、タバティエール。 カトリーヌには余計な心配をさせたくなくてな。 |
テオドール | 実は……だな。客人として招待しているのに 申し訳ないが、君たちに折り入って相談がある。 ……これを見てくれ。 |
テオドールがポケットから取り出したのは、
一通の白い封筒だった。
グラース | おいおい、まさか僕にまた郵便配達をさせる気か? 彼女に伝えたいことがあるなら、お前が直接言えばいいだろ。 |
---|---|
テオドール | いや、この手紙は俺が書いたものではない。 これは……俺宛ての脅迫状なんだ。 |
主人公 | 【脅迫状!?】 |
シャスポー | なんだって!? |
シャルルヴィル | ええっ!? |
タバティエール | 結婚式前なのに浮かない顔をしていると思ってたら、 まさか脅迫状とはね……。 |
ジョージ | なんて書かれてるんだ? |
テオドール | これまでに届いたものの文面からして…… 送り主はどうやら、カトリーヌに懸想していたらしい。 |
テオドール | 便せんや筆跡には犯人に繋がるヒントはなさそうだが、 自由に見てくれ。 |
ジョージが、テオドールに手渡された脅迫状を開いてみる。
そこには血のような赤い文字が乱雑に綴られていた。
ジョージ | うわっ……! |
---|---|
シャルルヴィル | 『カトリーヌを解放しろ』『彼女は俺と結ばれる運命にある』 『式を強行する簒奪者には報いを与える』……ひどいね……。 |
グラース | ……なぁ。脅迫状はこの状態で届いたのか? 切手も消印もねぇみたいだけど。 |
テオドール | ああ。レザール家のポストに直接投函されていた。 |
シャスポー | 今のところ、狙いは君みたいだけど……。 こんなおかしな輩なら、彼女を攫おうとするかもしれない。 ちゃんと手は打ってあるのかい? |
テオドール | 無論だ。ロシニョル公爵には事情を伝え、 レザール家からも私兵を派遣している。 表向きは、カトリーヌが結婚式で身に着ける宝石の警備としてな。 |
マークス | 犯人に心当たりはあるのか? |
テオドール | 探偵を雇って調べさせたが、今のところ手がかりはない。 カトリーヌと親しかった人物は限られているしな。 彼ら、彼女らがこんなことをするとは思えない。 |
テオドール | それに、脅迫状を投函する現場を押さえても、 投函しているのは使い走りの無関係な人間ばかりだ。 |
タバティエール | なかなか周到だな。 |
テオドール | ああ。 異常な思考をしながら、冷静さも持ち合わせている……。 何をするか、どう仕掛けてくるのかもわからず厄介なんだ。 |
テオドール | はぁ……式は明後日だというのに。 |
テオドール | これが単なる脅しではなく、犯人が本気ならば、 式までの間に俺を排除しようとするだろう。 |
---|---|
テオドール | 言い換えると、挙式までに犯人本人が現れる可能性が高い。 ある意味チャンスでもある。 |
ジョージ | そうだな! 犯人を捕まえちまえば、安心して結婚式ができるし☆ |
シャスポー | 言うのは簡単だけど、どうやって? 犯人は慎重なやつみたいじゃないか。 簡単に捕まえられるとは思わない方がいい。 |
タバティエール | そうだな。 だが……その性格を利用できるかもしれないぞ。 |
グラース | どういうことだ? |
タバティエール | 犯人は、慎重で用意周到な性格だ。 そして、結婚式は明後日。 |
タバティエール | つまり……犯人からすると、 失敗したらリトライする時間がほとんどないことになる。 |
グラース | ……なるほどな。闇雲に動くんじゃなくて、 最も成功率が高いタイミングの1度に賭けてくるということか。 |
タバティエール | そういうことだ。 |
シャスポー | 犯人が脅迫通りにテオドールを狙うなら、だけど。 一番狙いやすそうなのは、式の直前だと考えるんじゃないかな。 新郎が1人になる時間もありそうだし。 |
テオドール | 俺が1人に……それなら、うってつけのタイミングがある。 レザール家のしきたりで、式の当日の朝、新郎となる者は 礼拝堂に1時間ほど1人でこもり、祈りを捧げるんだ。 |
主人公 | 【犯人もそれを知っているかも……】 【犯人がそこを狙ってくるかも……】 |
テオドール | そうだな。レザール家のしきたりについては、 特に秘匿されているものでもないから、 知っていても不思議はない。 |
テオドール | 絶好のタイミングだと思って、 狙ってくる可能性は十二分にある……! |
シャスポー | だけど、万が一にも、 門出の日の新郎を傷つけられるわけにはいかないよ。 |
シャスポー | だから……、うん。 誰かテオドールと体格が似た人を囮にして、 周囲を僕たちや警備員で密かに監視しておくのはどうだい? |
ジョージ | Nice! それでいこうぜ! 問題は、誰が囮になるかだなー。 |
テオドール | レザール家の警備員に、俺と背格好の似た男がいる。 彼が適任だろうが……もうすぐ子供が生まれると言っていた。 そんな時に、もしものことがあってはならないな。 |
シャルルヴィル | 精巧な人形を作るとか……? でも、準備する時間が足りないよね。 |
グラース | 囮なら、僕がやってやる。 |
一同 | えっ!? |
グラース | そ……そんなに驚くことねぇだろ。 面倒な連中に囲まれるより1人の方が気楽でいいし、 まぁ……テオドールには世話になったしな。 |
タバティエール | グラース……。 |
シャスポー | へぇ……君も少しは成長したみたいだね。 |
グラース | なんだよその顔は! |
シャルルヴィル | みんな感激してるんだよ! 危険な役目に自分から手を挙げるなんてすごいことだし。 ねっ、ジョージ、マークス! |
ジョージ | おう! オレ、グラースのこと、これまで勘違いしてたみたいだ。 本当はヒーローなんだな、グラース☆ |
マークス | ふん。 俺はマスターのためなら喜んで囮になる。 |
マークス | ……ハッ! マスターはこの結婚式を楽しみにしていたな。 つまり、式のために俺が囮になれば喜んでくれる……!? |
マークス | マスター、俺を囮に指名してくれ!! |
主人公 | 【先着順ということで……】 【ここはグラースにお願いしよう】 |
マークス | そうか……。 |
テオドール | それでは……頼んだぞ、グラース。 |
テオドール | だが、無理に捕まえようとしなくていい。 お前なら大抵のことは大丈夫だろうが、安全第一としてくれ。 今のお前は、俺の貴銃士ではなく、大事な友で客人なのだから。 |
グラース | クサいこと言うなっての。 第一、僕を誰だと思ってやがる。 フランスが生んだ名銃、グラース様だぞ。 |
グラース | お前は余計な心配してねぇで、 結婚式と、その先の未来のことでも考えてろ。 |
テオドール | ……感謝する。 |
──到着翌日も警戒しつつ過ごし、
何事もないまま迎えた結婚式当日。
グラース | どうだ、〇〇。 髪型もテオに似せてオールバックにしてみた。 なかなか似合うだろ? |
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主人公 | 【素敵だね!】 【よく似合ってる!】 |
グラース | ま、当然だけどな。 |
シャスポー | おい、グラース。 後ろ姿は似ていても、声を聞かれたらすぐ偽物だと気づかれる。 礼拝堂にいる間、余計なことを喋るんじゃないぞ。 |
グラース | うるせぇな、わかってるっての。 お前らはさっさと教会に行けよ。 遅れて不審がられたらどうする。 |
タバティエール | それもそうだな。シャスポー、シャルルくん、 俺たちもそろそろ出発するか。 |
シャルルヴィル | グラース、ジョージ、マークス、〇〇、 みんな気をつけてね。 あとで合流しよう! |
ジョージ | おう! |
テオドールに扮したグラースが礼拝堂にいる間、
ジョージ、マークス、〇〇の3人が
密かに待機して犯人を待つ作戦になった。
テオドール本人は既に、使用人に扮し車で
結婚式の会場となる教会へ出発しており、
そちらにもカトリーヌにも厳重な警備がついている。
タバティエール、シャスポー、シャルルヴィルの3人は、
結婚式の会場にいないと怪しまれるため、
テオたちと同様、一足先に教会へ向かう計画だ。
シャスポー | 〇〇をそばで守る役目は僕がよかったけれど…… 作戦成功のためだものね。 君の安全を願っているよ。 |
---|---|
マークス | あんたが心配する必要はない。 マスターのそばには俺がいるからな。 |
主人公 | 【そちらも気をつけて】 【またあとで!】 |
グラース | ……さてと。僕は礼拝堂に移動するか。 |
──その頃、レザール家の正門にて。
男 | あの……すみません。 キャンドルを届けに来たのですが。 礼拝堂はどこでしょうか? |
---|---|
使用人 | えっ? この時間はテオドール様の礼拝の時間なので、 避けてほしいと言われているのですが……。 時間をお間違えではないですか? |
男 | それが、テオドール様ご本人から、 『礼拝に必要なものなので、この時間に届けてほしい』 と言われておりまして……。 |
使用人 | それは失礼いたしました。 どうぞお入りください。 礼拝堂の場所は……──。 |
男は使用人から場所を聞くと、礼拝堂へと向かった。
グラース | …………。 |
---|
テオドールに扮したグラースが
跪いて祈りを捧げるポーズをしていると、
1人の男が礼拝堂へと忍び込む。
男は静かに足を進め、グラースまであと数メートルというところで
隠し持っていたナイフを取り出し、構えた。
男 | カトリーヌを返せぇぇぇぇぇぇ! |
---|---|
グラース | ……会いたかったぜ、陰湿野郎! |
男 | ……っ!? な、なんだお前は! あいつは……テオドールはどこだ!? |
グラース | 残念だったな、テオはここにはいねぇよ。 今頃、教会に着いてるかもな。 |
男 | クソッ……貴様に用はない! だが、顔を見られたからには消えてもらおうか。 |
グラース | はっ、てめぇなんかにやられるかよ! |
主人公 | 【マークス、ジョージ!】 【行こう!】 |
ジョージ | おう! |
マークス | 動くな。 マスターに危害を加えるなら、撃ち抜いてやる。 |
男 | う、うわぁぁぁぁぁっ! |
男 | 殺されるぅ……ッ! |
グラース | ……はぁ? 囲んだだけで気絶とか弱すぎだろ! つまんねぇ~! |
捕まえた男を警察に引き渡し、
〇〇たちは教会へと向かった。
グラース | ……ってことで、脅迫状のことも自分がやったと素直に認めたぜ。 不安要素がなくなってよかったな。 |
---|---|
テオドール | ありがとう。 これで心置きなく、結婚式に臨める。 |
グラース | はぁ、呆気なかったな。 あ……。せっかくタキシード着たんだし、 花嫁を掻っ攫ってやればよかったか? |
シャスポー | おい、グラース! |
グラース | 冗談だっての。 |
グラース | ほら、もう時間だろ。 花嫁を待たせるなんて、紳士のすることじゃねぇ。 早く彼女のところに行ってやれ。 |
親しい友人や親族などに見守られる中、
カトリーヌとテオドールの結婚式が幕を開けた。
司祭 | 幸福な時も困難な時も、富める時も貧しき時も、 病める時も健やかなる時も共に歩み、 死が2人を分かつまで愛を誓いますか? |
---|---|
テオドール&カトリーヌ | 誓います。 |
司祭 | では、誓いのキスを。 |
2人が見つめ合い、誓いのキスを交わす。
パイプオルガンと賛美歌の響きに、祝福の拍手が重なった。
タバティエール | 本当にあの2人が結婚したんだなぁ……。 感慨深いもんだ。 |
---|---|
シャルルヴィル | ふふっ、2人とも本当に幸せそうだね。 ボク、感動してちょっと、うるっと…………ずびっ! |
シャスポー | ここに至るまで、いろいろありましたからね。 シャルルヴィル先輩にも……とてもお世話になりましたし。 |
シャスポー | 僕も……なんだか、すごく。 ……ほっとしました。 |
無事に式が終わり、教会の外で記念写真をすることになる。
〇〇たちも、参加者たちの列に並んだのだが……。
子供 | おかあさん、見て! あの人、手におっきいケガしてる……。 いたいいたい……こわい……! |
---|---|
母親 | しーっ……! |
子供 | だって、怖いんだもんっ~! うえぇぇぇえん! |
父親 | すみません、うちの子が……。 どうかお気になさらないでください。 |
主人公 | 【大丈夫です】 【こちらこそすみません】 |
薔薇の傷を見た子供が泣き出してしまい、
〇〇は即座に手を隠す。
グラース | ……〇〇。 ここだと写真に綺麗に映らねぇだろ。 あっちに行こうぜ。 |
---|---|
主人公 | 【ありがとう】 →グラース「別に礼を言われるようなことしてねぇし。」 【あんまり目立たないところにしよう】 →グラース「はぁ? せっかくなら2人で目立つ位置に行くぞ。」 |
マークス | マスター! こっちだ。 俺の隣に来てくれ。 |
シャスポー | いや、僕の隣においでよ〇〇。 ね、こちらだよ。ほら。 |
グラース | ……お前、分身の術を覚えたほうがいいな。 |
賑やかな空気の中、集合写真を撮り終わり、
新郎新婦や親族、ゲストたちは、
パーティーが行われるロシニョル家へと移動した。
──パーティー会場にて。
ジョージ | ……すっごい賑わいだな~! っていうか、式の時より人増えてないか!? |
---|---|
シャルルヴィル | 式に参列したのは、本当に親しい人とか親族が中心だもん。 パーティーには、国内外の名士もたくさん参加してるから、 人数は3倍くらいになってるかも。 |
タバティエール | フランス三大貴族のうち二家の縁組だからなぁ。 名誉貴族って言っても、大イベントってわけだ。 |
女性1 | まぁ、ご覧になって! あそこにいらっしゃるの……貴銃士のシャルルヴィル様じゃない? |
男性1 | お隣はジョージ様だ! フランスでお目にかかれるなんて……! |
男性2 | あっちにはフランスの貴銃士たちがいますぞ。 タバティエール様にシャスポー様……グラース様。 |
女性2 | ねぇ。シャスポー様とグラース様って、入れ替わっていたのよね。 服装を変えられたらどちらがどちらかわからないけれど…… どうお声をかけるのが正解なのかしら。 |
女性3 | グラース様にお声がけを……? で、でも、現代銃ですのよ……。 |
グラース | …………。 |
マークス | おい、シャスポー。 これはなんの肉だ? 美味いならマスターに持っていく。 |
シャスポー | それは子牛だってお品書きに書いてあるだろう? 冷えてしまうから、持っていくんじゃなくて、 〇〇を呼んだ方がいい。 |
女性1 | あのっ、シャスポー様! お会いできて光栄です。 ぜひ一度お話したいと思っておりましたの。 |
男性1 | 私もご一緒によろしいでしょうか……! |
シャスポー | えっ、ああ、構わないけど……。 |
シャスポーやタバティエールの周りに人だかりができる中、
グラースはひっそりと壁際へ移動した。
グラース | ……こうなるだろうと思ってたさ。 |
---|---|
グラース | (この国では……僕は……) |
主人公 | 【グラース】 【隣いいかな】 |
グラース | ……! …………。 |
グラース | ……おい、〇〇。 僕を連れてきた責任を取って、お前が僕を構え。 |
グラースと〇〇はパーティー会場を抜け出し、
庭園へと移動した。
グラース | 知ってるか? この屋敷の庭園は手入れが行き届いてて、 珍しい薔薇があったりするんだぜ。 |
---|---|
グラース | 本当は、朝露に濡れた薔薇を見せてやりたかったけど…… ああ、明日の朝見にくればいいか。 |
グラース | 夜に綺麗なのは、あっちの水辺の方かもな。 お前も気に入りそうな場所があるぜ。 |
グラースが〇〇を案内していた時、
ぐぅ、とお腹が鳴る音が、小さいながらもしっかりと響く。
グラース | ははっ、どうした? もしかして、パーティー会場で何も食べてねぇのか? |
---|---|
主人公 | 【実は……】 |
グラース | はぁ……仕方ねぇな。ちょっと待ってろ。 |
しばらくして、なぜか再びタキシードに着替えたグラースが、
料理を盛った皿を手に戻ってきた。
グラース | なんだよ、ポカンとして。 この格好の方が、パーティー参加者に紛れられて目立たねぇだろ。 |
---|---|
グラース | さぁ、パーティーの仕切り直しだ。 ほら、テリーヌやるよ。 |
グラースは庭園のテーブルに、
テリーヌが丸ごと載った皿を置く。
主人公 | 【シャスポーの好物なのに……】 →グラース「だから持って来たんだよ。 あいつ、今頃泣いてるだろうな。ハハハ!」 【まるっと!? ありがとう……】 →グラース「ははっ、ちまちまと切り分けるのなんざ面倒だろ。 丸ごと奪っちまった方が手っ取り早い。」 |
---|---|
グラース | ……あと、これもやるよ。 |
グラースが差し出したのは、真新しいシルクの手袋だった。
グラース | これをつけてれば、子供に泣かれることもねぇだろ。 |
---|---|
主人公 | 【これ、どうしたの?】 【用意してくれたの?】 |
グラース | テオとカトリーヌへのウェディングギフトの山から見つけた。 手触りもいいし、〇〇の手にもきっと合うぜ。 |
グラース | ……? どうした? あんまり嬉しくなさそうだな。 好みの手袋じゃないなら、他のがないか探してくるけど? |
主人公 | 【勝手に取ったらだめだ】 →グラース「いいんだよ。 2人ならこんなの腐るほど持ってるだろ。 どうせ使わないなら、使ってやった方が手袋だって本望さ。」 【2人に返して謝らないと】 →グラース「チッ……わかったよ。 〇〇も一緒なら謝ってやってもいい。」 |
グラース | もうこの話はいいだろ。 せっかく美味しそうな料理を持ってきたんだから、食べようぜ! |
グラースと〇〇は、
庭園で静かなディナーを楽しむことにした。
グラース | ……そういえば。 〇〇と2人きりでディナーは初めてじゃねぇか? |
---|---|
グラース | 前に誘った時は、この僕の誘いを断るなんて、 信じられねぇって思ったけどな……。 ようやく実現したってわけだ。 |
グラース | ははっ、いいね。今だけマスターを独り占めだ。 そう思うと、このタキシードに着替えてきてよかったぜ。 ほら、ムード作りにはぴったりな格好だろ? |
主人公 | 【本当にぴったりだ】 【タキシード、よく似合ってる】 |
グラース | ……っ!? |
グラース | ……ふん。この僕だぞ。 どんな服だって似合うに、決まってるだろ! |
グラース | …………。 |
グラース | ……でも、その……。 ……〇〇。 |
グラース | フランスに来るのは気が重かったけど、 ……お前がいてくれて──── |
グラースが何かを言うが、風の音が邪魔をする。
主人公 | 【ごめん、もう1回言って】 【よく聞こえなかった】 |
---|---|
グラース | なっ……! |
グラース | い、言えるか……! 二度と言えるか! |
マークス | おい! マスターを誘拐するな! |
シャスポー | もう冷えるっていうのに……外で何をしてるんだ!? |
タバティエール | おいおい、2人とも。 話してる時に邪魔しちゃ悪いだろ? |
ジョージ | Wow! 庭園パーティーも楽しそうだな☆ オレも混ぜてくれ! |
シャルルヴィル | 夜の庭園を眺めながらスイーツを食べるのって、 雰囲気あっていい感じだね♪ |
グラース | チッ……お前ら……。 |
やがて、賑やかな声に誘われたのか、
テオドールとカトリーヌも庭園へとやって来た。
テオドール | パーティー会場に姿が見えないと思ったら、 外に集まっていたんだな。 |
---|---|
カトリーヌ | ふふっ、ここでの食事も素敵ですね。 わたくしたちも混ぜてもらおうかしら。 |
〇〇は手袋のことを謝ろうとするが、
それより先に音楽隊が現れ、音楽を奏で始めた。
テオドール | カトリーヌ、お手をどうぞ。 |
---|---|
カトリーヌ | ええ、テオ。踊りましょう。 |
シャルルヴィル | ふふ、いい夜だね。 |
ジョージ | よーし! みんなで一緒に踊ろうぜ~! |
グラース | ……やっぱり、楽しみは奪わなきゃな。 〇〇、立て! |
グラース | ……麗しき我がマスター。この僕が一緒に踊るぜ? 当然、誰よりも輝かせてやるよ。 さあ……お手をどうぞ。 |
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