【高炉の落日】エルメ

コメント(0)

解説

カード解説

貴銃士エルメは情が嫌いだ。嫌悪しているといってもよい。今日も情を訴える輩を唾棄し、ただ、冷たく見降ろした。
嫌悪という感情自体が鉄らしからぬことに、彼は、まだ気が付いていない。

心銃解説:Dankendes Eisen - Ⅱ

かつて。情に厚く、情に駆られ、情に殺された男がいた。…以前の俺の持ち主だ。馬鹿な話だろう?
君は、彼に少し似てるんだ。
──二の轍は決して踏ませない。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

 

Ep1. Wer wagt, gewinnt.

ある日、〇〇は、エルメ、ドライゼとともに
アウトレイジャー出没情報があった地域の調査に赴いていた。

エルメうーん……。
今のところ、それらしき痕跡はないね。
ドライゼ潜伏しているか、あるいは移動している可能性もある。
警戒を怠るな。
主人公【調査し忘れている箇所はないかな】
→ドライゼ「エジプトの少年王が眠る墓のような例もあることだしな。」

エルメ「どういうこと?」

ドライゼ「ツタンカーメン王の墓は、ほとんど盗掘被害に遭っていない。
その理由の1つとして、彼やその前後の王の時代が
人々から忘れ去られていたことが挙げられる。」

エルメ「なるほどね。
知らないものは暴けない……ってわけだ。」

【盲点があるかも】

→エルメ「アウトレイジャーの行動に何か法則性があるのか……
まだよくわからない部分も多いしね。
痕跡を前にしながらも気づけていないって線もありえるかな。」

ドライゼ「うむ……それは大いにあり得るだろう。
実際に、エジプトの王墓にも似たような例があるのだからな。」

エルメ「……と言うと?」

ドライゼ「古代エジプトの王墓は、ほとんどが盗掘被害に遭っている。
だが、ツタンカーメンの墓は、古代の作業小屋跡地の下という
思いもよらない場所にあったため、盗掘被害が少ないのだ。」

エルメ「ふぅん……確かに、そんなところに王墓があるだなんて、
普通誰も考えないよね。」
エルメふふ。
アウトレイジャーからエジプトの話に繋がるとはね。
ドライゼは予想外で面白いな。
ドライゼ古今東西の様々な事象を知ることは、作戦立案にも役立つ。
可能な限り見識を広め──
ドライゼ……ぬっ!?

突然、ドライゼが何かに躓いた。

エルメドライゼ!
ドライゼ……むんっ!

倒れかけるが、片足で踏ん張ってなんとか耐え、
ゆっくりと体勢を立て直した。

エルメさすがだね、ドライゼ。
でも、足元に気を付けないと。
ドライゼ引っ掛かるような木の根はなかったと思うのだが……。

ドライゼは、躓いたあたりの落ち葉を足先で払う。

ドライゼむ……? これは……木の根ではないな。
何かの取手のように見えるが……
地下施設でもあるのか?
エルメアウトレイジャーの出没情報がある山中で、
地下に続く怪しげな道の入口ね……。
主人公【怪しい】
【調査しないと】
ドライゼああ。俺が開けてみよう。

ドライゼがゆっくりとマンホールの蓋のようなものを開けると、
地下へと降りるはしごが現れた。

ドライゼ防空壕か、何かの地下施設か……。
……とにかく、入って確かめるしかないな。
エルメWer wagt, gewinntだね。
さ、行こうか。

〇〇たちは、ゆっくりとはしごを降りていった。

ドライゼ……微かに明かりが漏れている。
エルメ“誰か”か“何か”がいるのは間違いなさそうだね。
ドライゼ慎重に進むぞ。

ドライゼが先陣を切り、足音を殺して進んでいく。
通路の先にあるドアをゆっくりと開けた瞬間──……

ドライゼ……ぐっ!

突然、銃声が鳴り響き、
ドライゼがよろめいた。

主人公【ドライゼ!!】
【すぐに治療を!!】
???や、やったぞ……!
ドライゼ……っ、ほざけ、これしきのこと……!
ドライゼ──うぉおおおっ!!

ドライゼは、傷ついた足をものともせず、男へと突撃していく。

???う、うわああっ!!

慄いた男を、あっという間にドライゼが取り押さえる。

エルメドライゼ、これを。
ドライゼああ。

エルメが差し出した縄で、ドライゼは男を縛り上げた。

Ep2. 執行猶予

???くそっ、その顔は連合軍ドイツ支部の……!
は、放せ!
連合軍の犬めっ!!
ドライゼ……その言い草、トルレ・シャフか。
エルメ、他に敵は?
エルメこのアジト……っていうか、武器倉庫?
なんにしても、ここにいるのはその1人みたいだね。
ドライゼでは、近くの支部に連絡を取ってくれ。
エルメJawohl.
ドライゼは早く治療を受けてね。
主人公【傷の具合を見せて】
→ドライゼ「動けるほどだ、そう大した怪我ではない。」

ドライゼ「だが……敵の応援が来る可能性も考え、
状態は万全にしておきたい。
……治療を頼めるだろうか。」

【すぐ治療する】

→ドライゼ「すまない、世話になる……。」

〇〇は、患部に薔薇の傷が刻まれた手をかざす。
ドライゼの傷は見る間にふさがっていき、ものの数秒で完治した。

トルレ・シャフ構成員……くそっ……!
ドライゼ無駄な足掻きはやめることだ。
まもなく連合軍の応援が到着するだろう。
貴様の身柄はすぐに支部へと引き渡される。
ドライゼここに蓄えた武器で何をしようとしていたのか……
洗いざらい吐くことになるぞ。
トルレ・シャフ構成員……畜生……。
俺は、こんなところで終わりなのかよ……。
トルレ・シャフ構成員ううっ……。許してくれ、エリーゼ……。
主人公【エリーゼ……?】
トルレ・シャフ構成員エリーゼは……俺の妹だ……。
病気でほとんど動けねぇまま、故郷で俺の帰りを待ってる……。
トルレ・シャフ構成員なぁ、あんたたち、頼む……! 1日だけ俺に猶予をくれ!
俺がこの先死ぬことになったとしても……
せめて妹に、稼いだ金を渡したいんだ……!
ドライゼそれは……。
トルレ・シャフ構成員妹は働けねぇし、治療費だって必要だ。
トルレ・シャフの資金じゃなくて、俺が稼いだ普通の金なら、
妹に渡したって構わねぇはずだろ……!?
トルレ・シャフ構成員俺の願いはそれだけなんだよ……!
最後に妹に会って金を渡せたら、なんでも話す。
だから頼む! お願いだ……!!
エルメ一体、何の騒ぎ?
ドライゼこの男が故郷の妹に金を届けたいと言っている。
妹は病気で働けず、金が必要だから渡したい、と……。
トルレ・シャフここから南に行った街なんだ。
3時間もあれば戻ってこられる。
どうか、どうか……慈悲をくれよぉ……!
主人公【(……どうしよう?)】
【(情報も引き出せるし、数時間なら……?)】
エルメNein.
エルメ駄目だよ。
こんな男が信用できるとでも思ったの?
同情を誘って、隙を見て逃げるつもりに決まってる。
トルレ・シャフ構成員そんなことするか! 誓って本当なんだ。
お願いだ、わかってくれ……っ!!
エルメ何を言っても、変わらないよ。
トルレ・シャフ構成員クソが……! 人みたいな姿をしてても、所詮は銃かよ。
肉親なんていない銃にはわかるはずもねぇだろうな、
俺がこれまでどんな思いをして生きてきたか……っ!
トルレ・シャフ構成員俺の親父は……俺たちを養うために、世界帝軍の兵士になった。
やりたくねぇこともやらされてたんだろうな。
夜中に酒を飲みながら泣いてるのを見たこともあった……。
トルレ・シャフ構成員それが、戦後には「元世界帝軍」ってひとまとめで弾圧だ。
結局親父は酒も祟って早死にしちまったよ……!
俺は俺で、元世界帝軍兵士の息子じゃあまともな働き口はねぇ。
トルレ・シャフ構成員俺にできる仕事は……
トルレ・シャフの使いっ走りくらいしかなかったんだ……!
エルメ…………。
トルレ・シャフ構成員親父は俺たちを必死に育てようとしただけで……
俺はただ、妹を守ってやりたかった……。
なのに、なんで俺たちばっかり……ううっ……。
主人公【(このまま引き渡してもいいのかな……)】
【(彼も犠牲者だったのか……)】
エルメ──ねぇ、〇〇。
エルメ1つ提案があるんだけどいいかな?
……この男の身柄、一時的に俺に預からせてよ。
ドライゼ……何を考えている?
エルメ俺が、彼を妹のところに連れていくよ。
ほら、俺が見張っていれば逃げる心配もないでしょ?
トルレ・シャフ構成員……!
ほ、本当に……? 俺の願いを叶えてくれる……のか……?
エルメ〇〇とドライゼは、
支部の兵士たちに少し言い訳しておいてくれるかな。
主人公【任せて】
【気を付けて】
ドライゼお前なら間違いはないと思うが……
警戒と用心は怠るな。
エルメもちろん。
それじゃあね。

Ep3. エルメの選択

男の妹──エリーゼにお金を渡すため、
エルメは男の案内で、南の町へとやってきた。

エルメここが君の故郷の街か。
……で、妹さんはどこにいるのかな?
トルレ・シャフ構成員もうすぐです。
あそこの角を曲がればすぐ家なので!
エルメそう。
トルレ・シャフ構成員あの……本当にありがとうございます。
俺は、あなたに酷いことを言ったのに……。
トルレ・シャフ構成員エリーゼに会ったら、
ちょっとしたもんしかないと思いますけど……
お礼をさせてください!!
エルメいいよ、別にお礼なんて。
……この角だね?
トルレ・シャフ構成員はい!
その先に妹がいるアパートがあるんです。

男が進んでいった先には、
寂れ、荒んだ雰囲気の地区へ向かう長い階段があった。

エルメ……薄暗いところだね。
トルレ・シャフ構成員はは……。
俺たちみたいな行き場のない人間は、
こういうところに住むことしかできないんで──ねっ!!

突然、男はエルメに体当たりを仕掛ける。

エルメ……おっと。

エルメはまるで、その動きを予知していたように、素早く躱す。
手を拘束されている男は、体勢を崩し、
勢いよく階段を転がり落ちていった。

トルレ・シャフ構成員えっ、う、うわあぁぁーーッ!!!
トルレ・シャフ構成員ぐッ……、う……、ガッ……。
エルメ…………。

エルメが階段を降りて確認しに行くと、
頭から大量の血を流した男は、虚ろな目でエルメを見上げる。

トルレ・シャフ構成員な、なん、で……。
エルメ……まさか君、俺が君に同情してついてきたとでも信じてたの?
なかなかおめでたい思考をしているね。
エルメ……君の妹だっていうエリーゼは本当にいるのかな。
俺が思うに、君はただ、金を持って逃げたかっただけでしょ。
トルレ・シャフ構成員……う、ぅ……。
エルメねぇ、なんとか言ったらどうなんだい?
君はそろそろ死ぬだろうから、手短にね。
トルレ・シャフ構成員お前さえ、いなければ……。
あの、若いやつ、なら……っ!
エルメうん、そうだね。
マスターなら、もしかしたらうまく突き落とせていたかも。
〇〇は情け深いから。
エルメ(そう、『彼』と同じように……ね)

???た、頼む……! 見逃してくれ……っ!
俺には病気の妹がいるんだ……!
お前も昔よく一緒に遊んだだろう……?
???俺が帰らないと……あいつは……っ!
お前は俺だけでなく俺の妹まで殺すことになるんだぞ……!

エルメ俺は、貴銃士も軍人も、冷徹であるべきだと思っていてね。
でも、〇〇は情を持ちたがる。
だから、俺が来たんだ。
エルメ情を優先する人間的な振る舞いは好みではないけれど、
興味深さや面白さはある。
エルメでも、そういう情に付け込んで騙すような……
卑劣な手を使う人間は、唾棄すべき存在だ。
トルレ・シャフ構成員クソ、が……。
エルメそれより君、案外しぶといね。
俺の手で始末してやりたいところだけど……
ま、そうする間でもないか。残念。
トルレ・シャフ構成員おまえが……いなければ……。
銃が、にんげん、の、ふり……しやが、て……。
きじゅ、し、なんか……。
エルメ(ああ……うるさいな。
面倒になりそうだから、撃ちたくはないけど……)
トルレ・シャフ構成員し、……──。

やがて、男はエルメを睨みつけたまま絶命した。

エルメさて……帰ろうかな。
〇〇とドライゼのところに。

街を出たエルメは、
〇〇たちが待つ武器庫へと戻った。

主人公【大丈夫だった!?】
→エルメ「ふふ。俺のこと心配してたの?
当然、大丈夫に決まってるのにね。」

エルメ「ああ……彼のことだけど、街で連合軍の部隊に会ったから、
ついでに引き渡しといたよ。」

【あの男は……?】

→エルメ「街で連合軍の部隊と会ったから、引き渡しておいたよ。」
エルメけど、下っ端みたいだったし、
尋問したところで大した情報は得られないかもね。
エルメさて、武器庫の件は片付いたけど、
まだアウトレイジャー探しをした方がいいのかな。
ドライゼどうだかな。
目撃情報は、武器を持った不審な人影というものだったそうだ。
であれば、アウトレイジャーでなく、あの男という線もある。
エルメああ……それはあり得るね。

ドライゼ……エルメ。
エルメどうしたの、ドライゼ。
内緒話?
ドライゼ……あの男を本当に、連合軍に引き渡してきたのか?
エルメ…………。
はぁ……やっぱり、ドライゼは騙せないか。

エルメは、〇〇に聞こえないよう小声で、
ドライゼにことの顛末を打ち明けた。

ドライゼ……そうだったのか……。
エルメ俺は、マスターに嘘の報告をした。
貴銃士としては、褒められた行動ではないだろうね。
ドライゼ……良し悪しを簡単に決めることはできないのではないか?
お前が選んだのは、マスターの心を守ることだった。
それだけのことだろう。
エルメ……さて、ね。

コメントを書き込む


Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

まだコメントがありません。

×