スナイダーは、夏バテしていた。
「あの」スナイダーが、暑いのが嫌すぎて戦闘にもいかないとなれば、もう間違いなく緊急事態である。
だから……さあ、みんなで避暑地に涼みに行こう!
服に興味はない。
さっきも勝手に手が出ただけで、兄が言う「えらい行動」をとろうとしたわけじゃないが……こうして少し涼しくて、お前たちが喜ぶのは悪くない。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──とある夏の出来事。
スナイダー | …………。 |
---|---|
ジョージ | はぁ……アッチ~……。 |
ジョージ | おっ! スナイダーばっかりクーラーの前で、ズルいぞ! オレにも涼しい風をよこせ~~! |
スナイダー | ……寄るな、暑苦しい。 離れろ。 |
ジョージ | えー、スナイダーのいるところが1番涼しいんだ。 もっとそっちに詰めろよ~! |
スナイダー | 聞こえなかったのか、ブラウン・ベス・マスケット銃。 くっつくな、暑苦しい。 |
ジョージ | いーじゃん、少しくらい。 風に当たってたらくっついても涼しいだろ~? |
スナイダー | ……チッ。 |
主人公 | 【スナイダーが大人しい】 【最近、サボってないね】 |
エンフィールド | ええ、そうなんです! スナイダーは最近、誰かと喧嘩をしていません。 さらに、サボらずに教室にいるのも嬉しいことなんですが……。 |
エンフィールド | …………。 |
主人公 | 【何かあった?】 →エンフィールド「こんなことをマスターに相談していいのか、 悩んだんですが……僕だけでは解決しそうにないので、 聞いていただけますか?」 【嬉しくないの?】 →エンフィールド「もちろん、スナイダーが授業に出るのは嬉しいです、ええ! でも……理由が……その……。」 |
エンフィールド | 実は…… スナイダーは暑いのが苦手なんです。 |
主人公 | 【だから教室に……】 【ジョージと冷房の場所取りをしてるんだ……】 |
エンフィールド | はい……。 教室は冷房が効いてて、涼しいため 授業に参加してくれるのは嬉しいんですが……。 |
エンフィールド | その、別の問題が……ありまして。 |
エンフィールド | スナイダーが涼しいところに居続けて、 戦いに行かなくなってしまったんです……! |
エンフィールド | スナイダーがいつもふらっといなくなるのは、 良くないことだと思っていましたが……。 |
エンフィールド | 戦いに行かないと、それはそれで緊張が続いて……。 僕のほうが参ってしまいそうなんです。 |
エンフィールド | 最近、そのことに気が付きまして……! 僕としては非常に複雑で、頭を悩ませているのです……。 |
十手 | ふぅ……今日も暑いなぁ……。 教室は涼しくていいや。 |
ジョージ | おーい、十手~! こっちはもっと涼しいぞ~! |
スナイダー | 貴様……これ以上、俺の場所を侵略する気か? |
十手 | はは……俺はここで大丈夫さ。 それに暑いからと言って、あまりくぅらぁを浴びすぎるのは 身体に悪いらしいよ。 |
エンフィールド | そうなんですか? |
十手 | ああ。なんでも、くぅらぁの風を浴びすぎると、 身体がだるくなったり、疲れやすくなったりするとか。 |
エンフィールド | そう言えば、スナイダーが「だるいから教室にいる」と 言って戦闘を断っていました……! |
エンフィールド | それに普段からあまり食べないのに、 「食欲が失せた」「眩暈がする」「何もする気にならん」 って言ってました。 |
十手 | うーん……それって…… スナイダー君は、夏バテをしてるんじゃないかい? |
エンフィールド | な、夏バテ……? |
十手 | えっと……夏の暑さなどが原因で 体調不良になることを夏バテと言ってね。 |
十手 | 気温の高さもあるけど、汗をかくことでの水分不足、 冷たいものしか食べなかったりすることの栄養の偏りだったり…… 原因はいろいろさ。 |
エンフィールド | ぜ、全部スナイダーのことじゃないですか……! |
エンフィールド | そうか……スナイダーは夏バテなんだ! これでは、マスターに迷惑をかけてしまう!! |
エンフィールド | スナイダーの夏バテを治して、戦いに行かせなければッ!! |
エンフィールド | こんにちは、マスター! 先日話した、スナイダーのことですが。 |
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エンフィールド | 十手さんから夏バテについて聞いたので……。 他の皆さんがどのように夏バテ対策をしているのか 調査をして参りました。ええ! |
主人公 | 【さすがエンフィールド!】 →エンフィールド「ありがとうございます、マスター。 スナイダーの夏バテを直してあげないといけませんから!」 【頑張ってるね】 →エンフィールド「早くスナイダーの夏バテを解消して、戦いに行かせないと マスターや皆さんに迷惑がかかりますから!」 |
エンフィールド | まずは暑さに弱い方に、対策を聞いてみました。 |
エンフィールド | ジーグブルートさん、少しお話いいですか? |
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ジーグブルート | あ? んだよ。 |
エンフィールド | 今、特に暑さに弱い方に対策などを聞いていまして……。 よろしければ、ぜひご意見を聞かせてください! |
ジーグブルート | ……おい、誰がそんなこと言った? |
エンフィールド | ……え? いえ、その……風の噂と言いますか……。 |
ジーグブルート | エルメだな? そうなんだろ……クソッ、あの野郎! |
エンフィールド | あのー……ジーグブルートさん? |
ジーグブルート | うるせーな! てめーもてめーだ! 俺が暑さに弱いって知って、笑いに来たのか!? |
エンフィールド | いえ、そんなつもりじゃ……。 |
ジーグブルート | クソッ、暑くてイライラしてんのに…… 更にイラつかせんのか? あぁ!? |
エンフィールド | し、失礼いたしますっ! |
エンフィールド | ……ということがありまして、 ジーグブルートさんからは詳しいお話を 聞くことができませんでした。 |
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主人公 | 【そっか……】 【今後は聞かない方がいいね】 |
エンフィールド | なので、次の手段を考えました。 要は暑さで上がってしまった体温を下げればいい、 そう思ったので……実際に下げようと思った──んですが……。 |
エンフィールド | スナイダー、暑さ対策にいい物があるんだ。 君にプレゼントしようと思って……。 |
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スナイダー | ほう……おまえが俺に? 気が利くな。 ついに改造される気になったか? |
エンフィールド | なんでそうなるんだ。 |
エンフィールド | ジャ~~~~ンッ!! |
スナイダー | ……なんだこれは。 |
エンフィールド | 霧吹きだよ。 君が教室から出だがらないのは、暑いからだろ? つまり体温を下げればいいんだと思ってね。 |
エンフィールドは、スナイダーに向けて霧吹きをかける。
シュッ、シュッ──
エンフィールド | どうだい? 涼しくなったかい? 日本では『打ち水』というのがあって、こうして水をかけて 蒸発する際の気化熱の働きで周囲の温度を下げるらしいんだ。 |
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スナイダー | …………。 |
エンフィールド | (あれ? 水の量が少なかったかな? もう少しかけてみよう!) |
シュッ、シュッ、シュッ──
シャスポー | 湿気!!! |
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エンフィールド | しゃ、シャスポーさん!? |
シャスポー | おい、君! 水を撒き散らすのはやめてくれないかな!? 僕は湿気があると頭痛がするんだ! |
エンフィールド | そ、そうなんですね。 失礼いたしました……! |
スナイダー | フン、馬鹿なことをしている暇があるなら俺に改造させろ。 |
エンフィールド | 改造!? それだけは嫌だー! |
エンフィールド | ……ということがあって、失敗しました。 |
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主人公 | 【冷やす以外に方法を考えよう】 【夏バテ対策料理とかは?】 |
エンフィールド | なるほど! 確かにそれなら他の皆さんに 迷惑がかかることもありませんね! さすがマスター!! |
エンフィールド | たしかこの本に…… 食欲不振により体力が奪われるのも原因とありました! |
エンフィールド | えっと……夏バテ対策料理にいい食材が── 豚肉、魚、ニンニク、ウナギ……。 |
エンフィールド | ……どれもスナイダーが食べてくれる気がしません。 |
主人公 | 【きっと食べられる食材があるはず】 【自分も探す!】 |
エンフィールド | マスター……ありがとうございます! そうですよね、ここで諦めたらいけません! ええ! |
エンフィールド | スナイダーが食べられそうな食材……。 |
エンフィールド | ──レモン! きっとこれなら食べてくれるはず!! |
エンフィールド | 食堂に行って、レモンがないか聞いてみます! |
エンフィールド | スナイダー! |
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スナイダー | 今度はなんだ。改造される気になったか? |
エンフィールド | そ、そんなことより……! 暑さ対策にいい物を持ってきたんだ! これだよ! |
スナイダー | ……? なんだ、これは? |
エンフィールド | レモンを使ったカキ氷さ。 氷だからシャクシャクと、美味しく食べられるはずだよ! |
スナイダー | ふむ……。 |
エンフィールド | ……! やった! 食べてくれましたよ、マスター! これで内側から熱を冷ますことができて、一安心です!! |
ライク・ツー | ……なぁ、さっきから見てたんだけどよ。 熱を冷ますって、夏バテ対策かなんかか? |
エンフィールド | ええ! レモン味のカキ氷です! 名案でしょう? |
ライク・ツー | ……それなら逆効果じゃね? 内臓が冷えるとダメなんだよ。 |
エンフィールド | なっ……。そ、そんな……! |
ライク・ツー | だから、レモンを使った温かいもんがいいんだよ。 たとえば── |
エンフィールド | スナイダー! カキ氷を食べるのをやめるんだ! 別のものを持ってきたから! |
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スナイダー | ……? なんだ、騒々しい。 |
エンフィールド | ほら、ホットレモンティーだよ! スライスしたレモンを入れてみたんだ! |
スナイダー | なぜ、暑いのに熱い飲み物を口にする必要が? |
ライク・ツー | 内臓温度を上げて、基礎代謝を高めると 血行促進による夏バテも解消すんだよ。 |
ライク・ツー | それによって美容──じゃなくて、健康にもいいんだ。 レモンと紅茶は疲労回復にもいいからな、 筋トレや訓練の後に飲むといいぜ。 |
エンフィールド | なるほど! 夏バテ対策だけでなく、 疲労回復にも効果があるとは……レモンは万能ですね! さっ、マスターもどうぞ。 |
スナイダー | 何をごちゃごちゃと言っている。 ……まあ、飲めなくはない。 |
スナイダー | …………。 |
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ジョージ | アッチィ~~! スナイダー、もうちょいそっち行ってくれよ~。 |
マークス | そうだ。 あんたが風を受けてるせいでマスターが暑いだろ。 |
スナイダー | 断る。 |
マークス | なんだと!? |
ジョージ | そんなつれないこと言うなよ~。 なぁ~、スナイダー。 |
スナイダー | 暑いなら離れろ。鬱陶しい。 |
主人公 | 【相変わらずクーラーの前にいるね】 【レモンティー作戦は続かなかった?】 |
エンフィールド | ええ……飲むと余計に暑い、と言われて……。 次第に飲んでくれなくなりました。 |
エンフィールド | 新しい方法を考えないと。 でも、冷たい物を食べると内臓を冷やしてしまう……。 |
エンフィールド | ……教室は涼しくて、ずっといる……。 ということは、涼しい場所なら食欲がわくの、かも……? 涼しい場所……涼しい場所……。 |
十手 | それなら……川床はどうだい? きっと涼しくていいよ! |
邑田 | ほう、それは名案じゃ。 最近、暑くて敵わんからのう。川床で涼を愉しもうぞ♪ |
エンフィールド | 川床……? |
十手 | えっと……納涼のために川の流れに 張り出して設けた桟敷のことを言うんだ。 |
十手 | 川のせせらぎを聞いてると落ち着くだけでなく、涼しく感じるよ。 場所によっては、川に足や手をつけることもできるしね。 |
在坂 | 川床……在坂は体験したことがない。 とても行ってみたい。 |
エンフィールド | なるほど……! 素晴らしいアイデアです! マスター、川床をやりましょう! それで今度こそスナイダーの夏バテを治します! |
主人公 | 【いいと思う!】 →エンフィールド「マスターならそう言ってくれると思いました! では、川床ができそうな場所を探します!!」 【でも、どこでやろうか?】 →エンフィールド「そうですね……。 近くに川床ができる場所があるかどうか……。」 |
ドライゼ | ならば、適した場所がある。 |
エンフィールド | そ、それは本当ですか!? |
ドライゼ | ああ、つい先日、連合軍の訓練地で見かけたのだ。 俺でよければ案内しよう。 |
エンフィールド | ええ、是非ともお願いします! |
十手 | 俺も設置の手伝いをするよ! |
在坂 | 在坂は川床で魚を捕まえる。 |
邑田 | 楽しそうじゃのう、網も持っていかねばな。 |
ライク・ツー | へえ……お前ら涼しいとこに行くのか? なら、俺も連れてけ。 ここ最近暑くて、まともに筋トレできてねーんだよ。 |
主人公 | 【みんなで行こう!】 【他に行きたい人は?】 |
マークス | マスターが行くなら俺も行く。 俺はマスターの相棒だ、どこに行くにも一緒だ。 |
ジョージ | Yeah! 面白そうだな! オレも行く! スナイダーも行こうぜ! |
スナイダー | 断る。ここがすでに涼しいのに、 なぜわざわざ作りに行く必要がある? 時間の無駄だ。 |
エンフィールド | そう言わずに……最近、外に出てないから敵に会ってないだろ? もしかしたら、戦えるかもしれないよ? |
スナイダー | …………。 |
エンフィールド | 涼しい場所で戦えるなんて、一石二鳥だと思わないかい? |
スナイダー | ……それもいいかもしれん。 さらにおまえを改造できれば、一石三鳥か。 |
エンフィールド | よ、よーし! 川床楽しみだな~! |
スナイダー | ……フン。まあ、涼しいならいい。 |
川床を作るため、ドライゼの案内で
〇〇たちは連合軍の訓練地へと向かった。
エンフィールド | 皆さん、きちんと揃っていますか? 点呼をとりますよ! |
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ライク・ツー | そんなことしなくたって全員いるだろ。 いない奴は置いてけばいいんだよ。 |
主人公 | 【それは困る】 →マークス「おい、マスターを困らせる発言は慎めライク・ツー。」 ライク・ツー「あー……はいはい。 暑苦しい犬ヤローは置いて行こうぜ、その方が涼しい。」 マークス「俺は暑苦しい犬じゃない。マスターの相棒だ!」 【自分が監督しなきゃ】 →ジョージ「HAHAHA! そう気負うことないって! 大丈夫、みんないるぜ!」 十手「そうだとも。 せっかくの外出なんだ、楽しまないと損だよ。」 |
スナイダー | ……おい、まだ行かないのか。 |
エンフィールド | ちょっと待って。いち、に、さん、し……── |
エンフィールド | あれ!? 邑田さんと在坂さんがいない!? |
在坂 | 邑田。乗車するにはここで切符を買うんだ。 窓口で行先を言えばいい。 |
邑田 | ほっほっほ、在坂は物知りじゃな~。 |
エンフィールド | 邑田さん、在坂さん! 勝手な行動は慎んでください。 |
邑田 | おや、すまんすまん。 在坂が切符を買えると言うのでな、 教えてもらおうと思ったんじゃ。 |
在坂 | 在坂は全員分の切符を買える。 ほら、これがエンフィールドの分だ。 |
エンフィールド | あ、ありがとうございます……って、そうじゃなくて! ほら、皆さんがお待ちですよ。 |
その時、離れたところでわっと歓声が上がった。
見ると、ドライゼが線路に立っていた。
ドライゼ | むんっ!!! |
---|---|
子ども | うおおっ! にーちゃんすげーっ! |
お母さん | まぁー、力持ちね~っ! |
エンフィールド | ちょっと、何してるんですか!? 線路に降りたら危ないですよ! |
ドライゼ | こちらの家族の荷物が、線路に落ちてしまったのでな。 大丈夫だ、まだ列車は来ない。 |
家族たち | ありがとうお兄ちゃん! |
エンフィールド | ふぅ……驚いたなぁ。でもよかった── |
スナイダー | ……俺は帰る。 |
エンフィールド | えっ!? なんで!? |
スナイダー | 暑苦しい奴らばかりで、見ているだけで暑い。 教室にいた方が涼しい。 |
主人公 | 【これから涼しい場所に行くんだよ!】 【もう少しで涼しくなるから!】 |
スナイダー | そもそも、道中が暑い。 |
エンフィールド | それはそうだけど……きょ、今日は! 士官学校の設備の点検でクーラーが使えないんだよ! |
スナイダー | ……嘘だな。 |
エンフィールド | う……っ、バレたか……。 |
スナイダー | 見え透いた嘘をつくな。 俺は帰る。 |
主人公 | 【来てくれたら、言うことを聞く!】 【来てくれたら、戦いに付き合う!】 |
スナイダー | ほう……? 二言はないな? |
スナイダー | なら、さっさと行くぞ。 |
エンフィールド | はぁ……本当に帰ってしまうんじゃないかと冷や冷やしました。 |
エンフィールド | (こんなんで大丈夫なんだろうか……。 これから乗り継いで田舎の方に向かうのに……) |
ジョージ | とうちゃーーくっ☆ |
---|---|
邑田 | これはこれは、風光明媚である。 |
ドライゼ | 森が近いから山菜なども採取できるぞ。 釣りができるテラスがあって、この一帯は涼しい。 避暑地としても有名らしい。 |
ライク・ツー | 確かに、涼しくていいな。 風が気持ちいいいぜ。 |
ドライゼ | では、早速準備にはいる。 |
十手 | 茣蓙(ござ)を持ってきたから、 日本風の川床にするのはどうだい? |
ドライゼ | ならばこっちに。 ここなら広くて、全員が座れるだろう。 |
ジョージ | Nice! こういうのをフーゼがあるって言うんだろ? |
ライク・ツー | 風情な。お前も手伝えよ。 |
邑田 | どれ、在坂や。西瓜を川で冷やすとしようか。 |
在坂 | 在坂は野菜も冷やそうと思う。 キュウリを持ってきた。 |
マークス | マスター、疲れてないか? 座って休んでてくれ。 |
主人公 | 【大丈夫、手伝うよ!】 【みんなでやった方が早く終わるよ!】 |
エンフィールド | ええ、そうですね! みんなでやりましょう! |
ドライゼ | では、マスター。こっちを持ってくれ。 |
エンフィールド | ……おや? スナイダーの姿が……。 |
ジョージ | おーい、エンフィールド! こっちを手伝ってくれー! |
エンフィールド | は、はい! 師匠、今行きます!! |
スナイダー | 確かに、ここは涼しい。 暑くて何もする気になれなかったが……。 |
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スナイダー | 久しぶりに強いヤツを探しに行くか。 |
スナイダーが1人で森の中を散策していると、
近くの茂みがガサリと音を立てる。
スナイダー | ……! |
---|---|
老婆 | よいしょ……よいしょ……。 ふぅ……持ってき過ぎちゃったかねぇ。 |
スナイダー | (チッ、年老いた人間か。紛らわしい奴だ) |
老婆 | あ、あんた……ッ! |
老婆 | エルヴィンじゃないかい!? アタシだよ、アタシ! 待っておくれ、エルヴィン! |
スナイダー | (なんだ、コイツ……。 そう言えば、エンフィールドが言っていたな──) |
エンフィールド | いいかい、スナイダー。 知らない人に「オレだよ、オレ!」と言われたら 注意するんだ。それは詐欺だからね! |
---|---|
スナイダー | 詐欺? フン、そんなものに引っかかったりしない。 それを言うならエンフィールド、おまえこそ気をつけろ。 |
エンフィールド | ハハハ! 僕が詐欺に引っかかるなんて、ありえないよ。 僕は君と違って慎重なんだから。 |
スナイダー | (なるほど、これが詐欺か) |
---|---|
老婆 | エルヴィン! アタシだよ、アタシ!! |
スナイダー | ……悪いが、俺はエルヴィンではない。 |
老婆 | ……あれま、本当だ。 悪いねぇ、息子と似ていたもんだから……ごめんねぇ。 |
スナイダー | フン、面倒なヤツだ。 だが、涼しくて気分がいい。強い敵を探しに── |
??? | ひぃぃーーっ!!! |
スナイダー | ……今のは、さっきの人間の悲鳴か? |
スナイダー | …………。 |
悲鳴のした方へと向かうと、老婆が熊に襲われそうになっていた。
老婆 | ひぃ……っ! |
---|---|
熊 | グルゥゥ──ガァッ! |
スナイダー | ──失せろ。 |
熊 | グルゥ……。 |
スナイダー | フン、威嚇射撃だけで逃げるとはな……。つまらん。 |
老婆 | あんた……さっきの。 アタシを助けてくれたのかい? おかげで命拾いしたよ! ありがとう……! ありがとうねぇ…… |
老婆 | これ、売りに行こうと思ってたんだけど……お礼に貰っておくれ! トウモロコシは好きかい? 他にもいろんな野菜があってね……。 |
スナイダー | いらん、俺は草など食べん。 |
老婆 | そうかい? ……おや、服が汚れちまったねぇ。アタシのせいで……。 |
スナイダー | これくらい、なんてことはない。だから離せ。 |
老婆 | 待っておくれ。これも作ったから売ろうと思ったんだけど…… 良かったらあんたが着てくれないかい? |
スナイダー | ……なんだ、この長い布は。 作ったということは、服なのか? |
老婆 | アタシの母が日本出身でね。 だからイギリスじゃ珍しいかもしれないけど、いい布だよ。 |
老婆 | ほらほら、野菜と服。 遠慮せず持って行きな。あんたは命の恩人だからね。 |
スナイダー | いらんと言っているだろ……チッ、面倒な人間だ。 |
エンフィールド | おーい、スナイダー! どこにいるんだー? |
---|---|
ライク・ツー | アイツのことだから帰ったんじゃねーの? |
エンフィールド | そんな……っ!? スナイダーのためにここまで来たのに……! |
スナイダー | 俺がなんだと? |
エンフィールド | スナイダー! どこに行ってたんだい? |
スナイダー | 涼しくなったからな、森で強い奴がいないか探していた。 |
ジョージ | Wow! 元気になったならよかったな☆ それで何かいたか? |
スナイダー | いや、熊くらいしかいなかった。 |
邑田 | むむっ!? 熊がおったのか!? 在坂や、危ないから森には近付いてはならん! |
在坂 | むしろ熊と戦ってみたいと在坂は思う。 |
邑田 | 絶対にならんッ!!! |
主人公 | 【怪我はない?】 →スナイダー「威嚇射撃で逃げ出した。 それより、助けた人間から貰った。重いからやる。」 【手に持ってるのは……?】 →スナイダー「熊から助けた人間がくれた。 野菜と長い布だ。布は人間が作ったと言っていた。」 |
十手 | おおっ、これは立派な夏野菜だね! それと……スナイダー君が持ってるのは、 もしや──浴衣じゃないかい!? |
ドライゼ | 浴衣……たしか日本の衣服だったか? |
邑田 | さよう。とても着心地がよく、涼しいものよ。 ほっほっほ、スナイドルよ。良い物を貰ったのう。 |
スナイダー | ……いらん。 |
十手 | ええ……せっかくだから着てみなよ。 俺が着付けてあげるからさ、ほらほら。 |
スナイダー | おい、押すな。着ないと言っているだろう。 |
ドライゼ | あいつらが戻ってくるまでに他の準備を進めよう。 |
マークス | マスター、パーティーまでもう少しだ。待っててくれ! |
十手 | お待たせ! どうだろうか? |
---|---|
スナイダー | ……確かに、涼しい気がする。 だが、動きが……。これでは戦いにくい。 |
エンフィールド | せっかく十手さんが着せてくれたんだから、 今日はもう戦うのはなしにして……みんなと楽しもう! |
ジョージ | それじゃあ──川床納涼パーティーだっ! |
ドライゼ | ほら、焼きソーセージができたぞ。 |
マークス | マスターの肉は俺が焼く! |
邑田 | 在坂や、この肉は実に美味じゃのう。 胡瓜もよく冷えておる。味噌をつけると絶品じゃ。 |
在坂 | 在坂はヨーヨーで遊んでる。 邑田が食べるといいと、在坂は思う。 |
邑田 | 遊ぶのも良いがきちんと食べねばならん。 ほれ、とっても美味であるぞ、ほ~れ。 焼き茄子に焼きとうもろこしもあるぞ。 |
在坂 | ……ヨーヨーで遊んだら在坂も食べる。 |
十手 | んん~! 冷やしたキュウリやトマト、とても美味いなぁ! きっとスイカも食べ頃なんじゃないかい? |
主人公 | 【持って来る!】 【──うわっ!?】 |
スナイダー | ……っ! |
〇〇がスイカを持ち上げようとした、その時──
川底で足が滑ってしまい、バランスを崩す。
それに気づいたスナイダーが、手を差し伸べてくれたのが見えた。
なんとか踏ん張って持ちこたえた〇〇だったが、
次の瞬間──
スナイダー | ……おい、なぜ俺がこうなる。 |
---|---|
スナイダー | チッ、こんなところで転ぶとはな……。 動きにくい布のせいだ。 |
エンフィールド | わっ! 大丈夫かい、スナイダー? |
スナイダー | ……濡れた。 |
エンフィールド | 〇〇さんを助けようとしたんだね。 本当に偉いよ! |
エンフィールド | でも、〇〇さんは無事で君が尻餅をつくなんて……。 ふふっ、珍しいこともあるものだね! |
スナイダー | ……ッ! 見てないで手を貸せ。エンフィールド。 |
エンフィールド | はいはい。 |
スナイダー | チッ。布がまとわりつく……。 |
十手 | 大丈夫かい? スナイダー君。 |
ジョージ | HAHAHA☆ 涼しくなっていいんじゃないか? |
エンフィールド | 確かに! ジョージ師匠の言う通りですね! |
スナイダー | ……おい、何好き勝手言ってる。 |
スナイダー | 〇〇、おまえのせいだ。どうしてくれる。 |
スナイダー | 謝罪などいらん。 その代わり明日は約束通り、俺のいいなりになってもらう。 存分に戦いに付き合ってもらおうか……いいな? |
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