楽しみのはずの食事が苦痛なものになっていく──。そんな彼の舌に「幸せの味」を教えてくれたのは、異国の貴銃士たちだった。
弾む心に任せて、足取りは軽く。こんな世界が、あったなんて!
虚妄を着飾る孤独な人形。物陰で囁く名もなき影が君を追う。
甘美な幻影の日々に別れを告げて、夢見た未来へ旅立とう。君を導く仲間と共に、新たな世界へ。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──ある日の士官学校にて。
ケンタッキー | っし! 今回の任務も無事終了! 早速マスターに報告しに行かねーと!! |
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ケンタッキー | ……ん? あれって……。 |
カトラリー | ……? なんか、視線を感じる……。 |
ケンタッキー | …………。 |
カトラリー | な、何? ジロジロ見て……。 |
ケンタッキー | ……おぉっ……おおお……? |
カトラリー | え? |
カトラリー | ……わっ、ちょっ……何するんだよ! |
ケンタッキーは、カトラリーの手ごと掴んで、
食器型の銃をまじまじと見つめる。
ケンタッキー | 細けぇ……これが引き金で……わ、マジで銃口がある。 柄の部分が銃身ってことだよな。 この繊細さで銃としての使用にも耐えるって……ほおおお……。 |
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カトラリー | ちょ……離して! |
カトラリー | ……い、いきなり来てなんなの? べらべら勝手に喋って、手まで掴んで……うるさいし失礼だよ! |
ケンタッキー | あ? 褒めてんだろうが。 手を掴んだのは悪かったけど……お前も失礼だろ! |
十手 | 2人とも、どうしたんだい? ただごとではない様子だったが……。 |
カトラリー | こいつがいきなり来て、僕の銃をジロジロ見てきて……。 |
ケンタッキー | 俺は、こいつの銃がすげぇなって思って見てたんだよ。 褒めてたのに、こいつがキレ始めて……。 |
十手 | ふむふむ。なるほどなぁ。 |
十手 | まず……カトラリー君。 ケンタッキー君は本当に真っ直ぐに、 君の銃が素敵だと思って褒めたんだよ。 |
カトラリー | ……本当に? |
十手 | ああ、間違いない! 俺が保証するよ。 |
十手 | ケンタッキー君は、銃職人が注文主一人一人に合わせて作った こだわりのある銃なんだ。そして彼自身も、銃の機構や装飾…… 職人のこだわりを見る目が一段とある。 |
十手 | そのケンタッキー君が褒めてるんだから、 カトラリー君の銃はやっぱり見事だってことなんだね。 |
カトラリー | ふ、ふーん……? |
十手 | しかし……ケンタッキー君の勢いが、 少しばかりよすぎたのかもしれないね。 それで、カトラリー君がびっくりして身構えてしまったのかなぁ。 |
十手 | 俺も、見事な盆栽を見つけると、つい吸い寄せられてしまう。 そんな感じだったんじゃないかと思うんだが、どうだい? |
ケンタッキー | ああ……。 確かに、銃ばっか見てて、ぐいぐい行っちまったかも。 |
十手 | ふむふむ。 しかしこれで、2人とも悪気はなかったってわかったね。 |
ケンタッキー | おう。 |
カトラリー | うん……。 |
十手 | それじゃあ改めて……。 ケンタッキー君、彼がカトラリー君。 俺と同じで仕込み銃なんだ。 |
カトラリー | そうだよ。……だから使い方には要注意。 柄の先端が銃口だから、ディナーの最中にそれを忘れると 自分の腕を撃ち抜く羽目になっちゃうよ。 |
ケンタッキー | ふーん。 つーか、機構もすげぇけど装飾もイカしてんな! もうちょい見せてみろよ。 |
カトラリー | えっ!? |
カトラリー | (下手に扱うと危ないってわかったら、 ちょっとは引くかと思ったのに…… 装飾までもっと見たいって言い出すのは予想外なんだけど!?) |
カトラリー | ……ヤダ。 |
ケンタッキー | はぁ? なんでだよ! ちょっとくらい見せてくれたっていいだろ、ケチケチすんなって! |
カトラリー | ヤダっつってんの! しつこい奴は嫌いなんだけど!? |
ケンタッキー | んでだよ!? |
十手 | ははは……仲がいいなぁ。 |
カトラリー | (装飾部分にあるセイレーンの彫刻、 見られるの嫌だけど……) |
カトラリー | でも……そこまで言うなら、 ちょ、ちょっとだけなら……。 |
ケンタッキー | あ? なんか言ったか? |
カトラリー | な、なんでもないっ! |
ケンタッキー | はぁ? なんだよ、気になるだろ! |
カトラリー | なんでもないったら! 一回で聞き取れなかったのが悪いんだよ! |
ケンタッキー | だからもう1回言えって! |
カトラリー | ヤダ。しつこい! |
十手 | うーん……これは、喧嘩するほど仲が良い、の方でいいのかなぁ。 ははは……。 |
シャスポー | はぁ……いつまで降れば気が済むんだ……! |
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タバティエール | はは……イギリスだから、ある程度は仕方ないよな。 ミントティーでも飲むか? 少しはすっきりすると思うぜ。 |
シャスポー | ……いる。 わかってるならさっさと淹れて持ってくればいいだろう。 |
タバティエール | へいへい。 ちょいと待っててくれよ。 |
シャスポー | …………。 |
シャスポー | (ああ……頭が痛い。 タバティエールはまだなのか? 窓に当たる雨の音が鬱陶しくて余計に苛々する……!) |
タバティエール | シャスポー、待たせた── |
戻って来たタバティエールたちの存在に気づかず、
シャスポーは耐えかねたように窓を開け、
空に向かって叫ぶ。
シャスポー | いい加減にしろ! いつまでもじめじめじめじめして!! |
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タバティエール | おいおい、そんなことしたら 余計に湿気が入ってくるぞ……。 |
シャスポー | うっ……。 |
自分の大声も響いて余計に痛む頭を押さえながら、
シャスポーはソファにぐったりと座り込んだ。
タバティエール | ほら、ミントティーだ。 |
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シャスポー | それより、この湿気をどうにかしてくれ。 ああ……からっとして気持ちがいいフランスが恋しい……。 |
ミカエル | おや……彼は故郷が恋しくて参っているんだね。 僕がフランスの曲を弾いてあげようか。 |
シャスポー | フランスの曲は普段なら歓迎するけど…… 今はピアノの音が頭に響きそうだから断る。 |
カトラリー | ミカエルのピアノを聴かないなんてね。 雨くらいでみっともないやつ。 |
カトラリー | ……ふふ。次に長旅をする時は、故郷の土でも持ってきたら? 僕がかけてやるから。 |
シャスポー | は……? 僕を埋めようってのか? 僕は壊れてもないのに、土葬するなんて失礼にもほどがあるぞ。 |
カトラリー | ち、違う! あんたが頭痛がするって言うから── |
シャスポー | ……まさか土に埋めれば頭痛が治るとでも? 大昔のベルギーかどこかの迷信かい? |
カトラリー | いや、そうじゃなくて……だから── |
ローレンツ | ふむ、興味深いな。 |
カトラリー | うわっ!? いつからいたの!? |
ローレンツ | 廊下を歩いていたら、興味深い会話が聞こえたものでね。 |
ローレンツ | Mr.カトラリーが、土を持ってきてはどうかと言ったのは…… 俺の推測が正しければ、昔の船乗りたちの習わしをふまえた、 なかなか高度な皮肉交じりの冗談だろう。 |
タバティエール | ん……? どういうことだ? |
ローレンツ | 諸君ももちろん、壊血病は知っているだろう。 『大航海の病』とも呼ばれ、 当時多くの船乗りたちの命を奪った、実に恐ろしい病だ。 |
ローレンツ | 今でこそ、ビタミンCが長期間欠乏することが原因だとわかり、 対策も容易になっている病だが、当時は原因も治療法も不明。 しかし、長期間陸地から離れるのが駄目なのだとは気づいていた。 |
ローレンツ | そこで、18世紀の船乗りたちは、病人に故郷の土をかけたのだ! 陸地から離れることが原因なら、 土の匂いを嗅ぐことで治るだろうと信じ……。 |
ローレンツ | 体調不良のMr.シャスポーが、フランスが恋しいと言ったので、 Mr.カトラリーは、伝承に基づいたジョークを言った。 ふっ……Q.E.D. |
カトラリー | そ、そうだよ! 話がわかる奴もいたみたいだね。 |
シャスポー | 悪いけど、今は冗談を聞いている気分じゃない。 頭痛をからかわれたって不愉快だし、僕は部屋で休むよ。 |
タバティエール | おい、シャスポー! やれやれ……ごめんな、カトラリーくん。 |
カトラリー | …………。 |
ミカエル | カトラリー……? |
カトラリー | ……っ。 |
カトラリーは無言のまま、
談話室から飛び出して行ってしまった。
カトラリー | な、なんなの……!? 頭が痛い痛いってうるさいから、 ちょっと茶化してやっただけなのに! |
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カトラリー | なんであんな……っ! うっ……ぐすっ……。 |
ミカエル | ……悲しい音だね。 僕がピアノを弾いてあげるから、おいで。 |
カトラリー | ……うん。 |
恭遠 | おはよう。みんな、席についてくれ。 今日は、みんなに嬉しいお知らせがあるんだ。 |
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恭遠 | ロイヤル・ミュージカル・カンパニーが、 近々フィルクレヴァートへ興行に来ることになっていてね。 劇団側から、君たち貴銃士クラスを招待したいと連絡があった。 |
シャルルヴィル | わぁ、すごい……! 世界でも有数の劇団の公園を見られるなんて、ラッキーだね♪ |
恭遠 | ああ。とてもありがたいオファーだから、 貴銃士クラスの文化授業の一環として、 〇〇君と君たちとで観劇に行くことが決まったよ。 |
恭遠 | 演目は、『オズの魔法使い』だろうだ。 楽しみだな! |
マークス | マスターと俺とで、カンゲキをしに出かけられるのか……! 楽しみだな、マスター……! |
主人公 | 【そうだね】 【楽しみだね!】 |
ライク・ツー | つーか、お前だけじゃなくて、貴銃士クラスとだろ。 |
マークス | で、カンゲキってのは何をするんだ? |
ライク・ツー | 知らなかったのかよ……。 そのまんま、演劇を見ることだっての。 |
スプリングフィールド | あの……『オズの魔法使い』って、どんなお話なんですか? |
シャルルヴィル | 主人公の女の子ドロシーと、愛犬のトトが、 魔法がある不思議な国「オズ」を冒険するお話なんだ。 |
シャルルヴィル | 何が起こるかわからない方が、見てて面白いと思うから、 これ以上は内緒! |
シャルルヴィル | ドキドキ、ワクワク、ハラハラがあって、 大切なものにも気づかせてくれる素敵なお話だから、 きっとスフィーも気に入ると思うよ。 |
スプリングフィールド | ふふ……楽しみです。 |
カトラリー | …………。 |
主人公 | 【どうかした?】 【オズの魔法使いは好きじゃない?】 |
カトラリー | 別に……。 ただ、オズの魔法使いは前に観たことがあるから退屈だなって。 |
カトラリー | ほら、シャルロットはあんな感じだから、 ミュージカルとかバレエを見に行くことも多かったんだ。 |
カトラリー | だから、有名な作品はだいたい見たことがあるんだよね。 |
カトラリー | まあ、好きな作品だったら、何回見てもそんなに飽きないけど。 たとえば……『オペラ座の怪人』とか。 |
カトラリー | ねぇ、〇〇も知ってるでしょ? オペラ座の怪人。 |
主人公 | 【もちろん】 →カトラリー「ふふ。まあ当然だよね。」 【タイトルは知ってる】 →カトラリー「タイトルは……ってことは、まさか。 ちゃんと見たことないの?」 カトラリー「それなら今度、僕とちゃんと見に行こうよ。 傑作なんだから。 未来の士官として、それくらいの教養がないとね。」 |
カトラリー | 19世紀末のパリ── 華やかなオペラ座で暗躍する、仮面をつけた怪人……。 もう始まりの段階でかっこいいんだけど……。 |
カトラリー | ストーリーもいいんだよ。 オペラ座で起きることはすべて、 劇場の地下に潜むファントムが支配してるんだ。 |
カトラリー | 誰にも、そうとは知られないまま……。 Pitiful creature of darkness── 闇に住む哀れな生き物ってね……! ふふ……。 |
八九 | ウ……ッ!! |
八九 | (うおおおお……すっげぇむず痒いが…… どうする? 一応言っといてやるか……? いや、でも……うーん、言うのが情けってやつか……!?) |
八九 | あ、あのよ……。 |
カトラリー | 何? もしかして、あんたもファントムの良さを語りたいの? |
八九 | いや、そうじゃなくて……。 |
八九 | ……なぁ、今は意味がわからねぇかもしれねぇけど、 真面目に聞いてくれ。 |
カトラリー | ……は? |
八九 | 未来のお前のために、そういうことは言わない方がいいぜ。 タイムマシンを作って、 過去の自分を消しに行きたくなるからよ……。 |
カトラリー | ……は? 何言ってんの? |
八九 | いや……なんつーか、 目の前で今まさに黒歴史が作られてるのに耐えられなくてよ……。 |
カトラリー | はぁ……? 耐えられないってまさか、 シャニュイ子爵の方がいいとか言うわけ? |
カトラリー | 信じらんない……。見たのに理解できてないなら、 僕がちゃんとファントムの良さを解説してあげるから── |
八九 | (はぁ……。後悔する日が来ても知らねぇぞ……) |
キセル | はは、相変わらずここは賑やかだな。 |
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キセル | おっと、向こうのあいつらは……。 |
キセル | よう、十手にカト坊! メシも食わねぇで何やってんだ? |
十手 | おお、キセル君。こっちに来ていたんだね。 日本から取り寄せた魚の缶詰が届いたもんで、 早速食べようとしてたんだ。 |
十手 | そしたら、カトラリー君が缶詰には馴染みがないみたいでね。 長い任務の時には食べることもあるだろうし、 せっかくだから開ける練習もしようって話になったのさ。 |
カトラリー | ねぇ、十手。本当にこのやり方でいいの? 全然開かないんだけど……。 |
キセル | ヘェ…………。 魚の缶詰……。 |
カトラリー | ……あ、この缶詰……美味しいやつだ。 軽く焼いて食べるのもおすすめだよ、はい。 |
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ケイン | ほう……。 カトラリーさんは食に通じてらっしゃるのですね。 |
カトラリー | そう? よくあるオイルサーディンだし、 別にこれくらい普通でしょ。 |
キセル | …………。 |
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カトラリー | ねぇ、何ぼーっとしてるの。 缶詰開いたんだけど。 |
キセル | おおっ、やればできるじゃねェか! やったな、カト坊。 |
カトラリー | ちょっと、子供扱いしないでくれる? やり方とコツがわかれば、別に難しくともなんともないし。 |
カトラリー | それで、これどうするの? このまま食べる? |
キセル | ……そのまま食べてもいいが、温めたほうが美味いぜ。 |
カトラリー | へぇ、そうなんだ。 鍋に移して火にかければいいの? それとも湯煎? |
キセル | なーんにもない時は、缶ごと炙ったモンだが…… そうだな、鍋を借りてきて湯煎にかけるかねェ! |
小鍋で缶詰を湯煎にかけて温める間、
カトラリーはいくつかの食材を持ってきて調理台に並べる。
十手 | カトラリー君、何をするんだい? |
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カトラリー | 缶詰だけじゃ食事にならないでしょ。 だから、バゲットを切って軽く炙るんだよ。 水煮の缶だから、香りづけにハーブも準備するの。 |
カトラリー | 十手、缶詰は温まった? |
十手 | うん、いい感じみたいだ! |
カトラリー | それじゃあ、魚と相性がいいディルをベースにした ミックスハーブと、黒コショウも少しかけて、 オリーブオイルも……よし。 |
カトラリー | あとは、これをバゲットに乗せて食べてみて。 |
キセル | どれどれ……。 んん、こいつはうめェ! |
十手 | ほろっと崩れる水煮に爽やかな香りが加わって、 サクサクで香ばしいパンとの相性も抜群だなぁ……! |
キセル | カト坊にかかると、缶詰が洒落た料理になるんだなァ! シェフみたいじゃねェか! |
カトラリー | は、はぁ!? 別に……これくらい誰だってできるでしょ。 |
十手 | いやいや、俺には無理だよ。 なぁ、キセル君! |
キセル | おうよっ! 誇っていいんだぜ、カト坊。 |
カトラリー | だから、カト坊って言うなっての……! |
──ある日の食堂にて、
カトラリーは生徒たちの様子を観察していた。
カトラリー | …………。 |
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カトラリー | (士官学校って、いろんな国から生徒が集まってるから、 見る分には結構面白いとこだよね) |
カトラリー | (〇〇は、普段あいつらと一緒に勉強してるんだ。 マスターっていう特殊な立場だけど、ちゃんとやれてるのかな) |
カトラリー | ……ん? |
在坂 | …………。 |
カトラリー | (ぼーっとしてる……? でも、目は動いてるから……もしかして、僕と同じことしてる?) |
カトラリー | ……あのさ。 あんたも、人間観察してたりする……? |
在坂 | ……そうだ。在坂はよく人を見ている。 |
カトラリー | へぇ……。 じゃあさ、一緒にしてみる? |
在坂 | ……一緒にやりたいというなら、在坂は構わない。 |
カトラリー | それなら、今食堂に来た2人の観察からね。 |
男子生徒1 | 腹減った~! 何食べようかなー。 |
男子生徒2 | うーん……よし、俺はハンバーグ定食にしよっと! おばちゃーん、ハンバーグ定食1つ!! |
男子生徒1 | おっ、いいな! おばちゃん、俺もハンバーグ定食!! |
食堂のおばちゃん | ごめんねぇ、今のでハンバーグ定食は最後だったのよ。 |
男子生徒1 | そ、そんなぁ……。 じゃあ、コテージパイのセットで……。 |
カトラリー | ははっ、運がないやつ。 ああいう奴ってたぶん、同じようなことが何回もあるタイプだよ。 |
在坂 | 在坂は…… 食べたいものが食べられない苦しみを知っている。 |
カトラリー | ……! |
男子生徒2 | なぁ、俺もコテージパイと悩んだんだ。 ハンバーグ半分やるから、そっちも半分くれないか? |
男子生徒1 | いいのか!? へへっ、なんか得した気分だ。ありがとうな! |
カトラリー | ふぅん……。 運がない奴が可哀想だから、同情してるのかな。 |
カトラリー | マナーは悪いけど…… 士官学校の奴らに洗練されたマナーはまだ期待できないか。 |
在坂 | 一緒に食べている2人が不快でなくて、 どちらも嬉しそうだから……在坂は、マナー違反ではないと思う。 それに、結果を見ると、品切れは不運でもなかった。 |
カトラリー | え、なんで? |
在坂 | 分け合えば一度に2種類食べられて、2人とももっと嬉しい。 ……在坂は、品切れでなくても、あの2人は違うものを頼んで、 分け合っていたのではないかと思う。 |
カトラリー | そんなものかなぁ……。 |
カトラリー | ……あ、次の生徒がきたよ。 なんか、腹の探り合いしてる感じじゃない? |
女子生徒1 | ……あ! 限定のスイーツが出てるみたいだよ。 別腹ってことで……食べちゃう? |
女子生徒2 | うわ、美味しそうっ! だけど……お昼食べ過ぎたから、どうしよう。 最近ちょっと顔が丸くなった気がするし……。 |
女子生徒1 | えー? そう? どうせ授業で動きまくるんだし大丈夫だって! あれだったら半分こしようよ。 |
女子生徒2 | うーん、それなら食べちゃおうかな……! |
カトラリー | うわ……太ったかもって友達が気にしてるのに勧めるなんて、 もっと太っちゃえって思ってるのかな。 性格悪いね。 |
在坂 | そうだろうか? 在坂は、友達思いの優しい人だと思った。 |
カトラリー | えっ……!? |
在坂 | 本当は1人で丸々1つ食べたいのに、 我慢している友達が一緒に気兼ねなく楽しめるよう、 半分にすることを提案したのではないだろうか。 |
カトラリー | …………。 |
カトラリー | ……あんたって意外に、深い物の見方をするんだね。 |
在坂 | そうだろうか? 在坂は……カトラリーは意地が悪いと思った。 |
カトラリー | ちょっ、僕は褒めたのに……! そこは褒めるところじゃないの!? |
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