邑田は寂しかった。若人2人が、自分の知らない、なうでやんぐな話題で盛り上がっててすごく寂しかった。わしだってまだ若いし。
そんな彼が門戸を叩いたのは……
呪符展開・悪霊退散! うむ、これでわしも立派な道士よ!
……何? カンコウキャクアイテノドウシタイケン?
ちょっと何言っとるかわからんのう……。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──休日の談話室にて。
在坂 | ……呪符展開! |
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在坂&八九 | 勅・爆散!! |
邑田 | ……そなたら、何をやっておるのだ? |
在坂 | ……? 邑田は、見てわからないのか? 在坂たちは、『キョンシーファイト』の名場面を再現していた。 今の構えはとてもよかったと在坂は思う。 |
邑田 | きょん……おお、僵尸のことか。 確か、動き回る死人のあやかしをそう呼ぶのじゃったな。 |
八九 | おう。まあ、どっちかっつーと、 道術で使役してる使者って感じのイメージだけどな。 こういう呪符が貼ってあって、道士の相棒として戦う。 |
在坂 | キョンシーは力が強くて、俊敏だ。 敵だと恐ろしいが、味方につくととても心強いだろう。 在坂は、本物のキョンシーを見てみたい。 |
八九 | それは流石に無理じゃね? |
八九 | ……いや、俺らも銃だけど動き回ってるし、 どうにかこうにかすればワンチャン……? |
在坂 | 本当か……? |
八九 | わかんねーけどな?? あんまり期待すんなよ。 |
邑田 | (在坂が楽しそうなのは実によきことじゃ。 しかし……盛り上がっておるのは八九! おまけにわしは、話にいまいちついていけぬ……) |
邑田 | (はっ……! そういえば、この間八九が何やら落書きしておったな。 札らしき絵があった覚えもある。あれがきっとそうに違いない) |
邑田 | あー、ゴホン。 わしも僵尸廃都には覚えがあるぞ。こうであろう。 |
邑田 | 『悪鬼殲滅! 六根清浄! 破ッ!』 |
八九&在坂 | …………? |
在坂 | 在坂は、邑田がなんの真似をしているのかわからない。 |
邑田 | む……? |
八九 | あー……俺はわかったぜ。 邑田がやってんのは、『へっぽこ陰陽師の魔界旅行記』の真似だ。 |
八九 | つーか、キョーシハイト?じゃなくて、キョンシーファイトな。 |
在坂 | 邑田……。在坂は、知ったかぶりはよくないと思う。 |
邑田 | がぁーん……! |
在坂 | だから、邑田も『キョンシーファイト』を読むといい。 とても面白い。 |
邑田 | おお……在坂は優しいのう。 どれどれ、さっそく読んでみるとしよう。 |
邑田 | ふむふむ……。 目が大きく独特じゃが、線が流麗で見事な絵である。 躍動感も申し分なし。 |
邑田 | 『うめばやし』なるこのおなご…… 小柄で可憐ながらも身体能力に優れ胆力がある様、 在坂のようじゃのう……! |
在坂 | ……? うめばやし? そんな人物はいただろうか。 |
八九 | いや、いなかったはずだぜ。 |
邑田 | しかし、ほれ、見てみよ。 ここに『梅林』と──…… |
八九 | あー!! メイリンのことかよ!! |
邑田 | め、めいりんとな……? |
八九 | ぶっ、ふ、くくく……メイリンがウメバヤシとか……。 ジジイじゃねぇか……ッ。 |
邑田 | …………。 |
邑田 | ちぇすとぉ! |
八九 | おわっ!! |
邑田 | はぁぁ……。 |
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在坂 | 邑田……。 ちぇすとはキョンシーファイトの技ではない。 |
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邑田 | わしとて……きちんとこの漫画本を読めば、 僵尸ふぁいとーがなんたるかわかるのはずじゃ……! |
邑田 | しかし、それだけでは八九と同じ程度になっただけじゃの。 うーむ、差をつけるには……。 |
在坂 | キョンシーは力が強くて、俊敏だ。 敵だと恐ろしいが、味方につくととても心強いだろう。 在坂は、本物のキョンシーを見てみたい。 |
邑田 | そうじゃ! わしが僵尸を操れば良いのじゃ! となれば……。 |
---|
十手 | えっ? 道士になるにはどうすればいいか、だって……? |
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十手 | ここイギリスでとなると、 道士の修行ができるところはかなり限られていそうだね。 |
十手 | 道士の本場は中国だろうから、なんと言ったかな……? 中国風の街……そう、チャイナタウン! あそこに行けば、何か情報があるかもしれないよ。 |
邑田 | おお……! それはよき考えじゃ。 早速れっつらごーじゃ! |
十手の助言を受け、邑田はチャイナタウンを訪れた。
邑田 | 来てみたはいいものの…… そのあたりに道士がおるとも思えぬ。 まずは聞き込みをすべきであろうか……。 |
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邑田 | とこか、情報通の者がいそうな場所は──…… |
??? | きゃあああーーっ!! 誰か、止めてー!! |
邑田 | むっ!? |
悲鳴が聞こえてきた方を見ると、持ち手のいない荷車が、
勢いよく坂道を転がり下りているところだった。
人々が手を伸ばすが、勢いを増した荷車は誰にも止められない。
市民1 | マズい、このままだと坂下の店に直撃だ! おーい、みんな逃げろ!!! |
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邑田 | これはいかん……! 車軸を撃ち抜けば多少勢いは弱まるじゃろうが、 向きが変わって勢いよくどこぞの店に突っ込むのは同じじゃ……! |
邑田 | 何か打つ手は……。 |
邑田が考えていると、近くにいた老人が、
老いを感じさせない足取りで駆けていく。
老人 | ここはわしに任せい! |
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邑田 | なっ……! 危ないぞ、御老体! |
老人 | 心配無用! ていやっ!!! |
暴走する荷車の前に飛び出した老人は、
手にした呪符を荷車に貼る。
すると──……瞬く間に荷車はぴたっと停止した。
見物人たち | おおっ!! |
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邑田 | 札で荷車の動きを止めた、じゃと……? まさか……あの御老体こそが道士なのかえ……!? |
老人 | はっはっはっ。 わしにかかれば、この程度造作もないこと。 ……さぁさ、お代はこの帽子の中に。 |
邑田 | そこな御老体! |
老人 | ……む? |
邑田 | さぞや名のある道士とお見受けする! どうかわしにも修行をつけてくれまいか? |
老人 | ほう……? お若いの、お前さんは道士になりたいのか。 |
邑田 | いかにも。 わしは道士になるための術を探してここへ来たのじゃ。 そなたに教えを頼みたい。この通り! |
老人 | ……道士の術は、門外不出の秘技。 しかし……お前さんのその眼差し、 生半可な覚悟ではないとお見受けする。 |
老人 | 厳しい修行だが、ついてこれるか? |
邑田 | 無論じゃ。 在坂のためならば、たとえ火の中水の中よ。 |
老人 | よし、ならば来るがいい。 |
邑田 | うむ! |
邑田は老人に連れられ、山の奥深くまでやってきた。
邑田 | ほう……ここが道士の修練場というわけか。 |
---|---|
男性 | よーし! 俺も今日から道士になるぞー! |
子供 | ねぇ、おかあさん! わたしもメイリンみたいになれる? |
母親 | ええ、もちろんよ。 一緒に頑張りましょうね。 |
邑田 | あのような幼子まで……。 道士とはこのように人気の高い職業だったのじゃな。 |
老人 | よくぞ集まった、未来の道士たちよ! これより、道士講座を開始する! |
受講者たち | はいっ!! |
老人 | まずは、道士の心得から話すとしよう。 |
道士の修行は、一週間以上にわたって続いた。
基本的な心得から呪符の書き方、精神統一法、
印の結び方などなど……。
途中で初級から上級までにクラス分けがされ、
邑田ただ1人は最上級クラスで
厳しい山修行に明け暮れることとなった──。
老人 | ……これにて、道士講座は終わりである。 最上級クラスの合格者が出るとは……よくやった!! |
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邑田 | ほっほっほ。言うたであろう。 在坂のためならば、わしはなんでもできる。 滝は心地よい打たせ湯、火渡りも足湯が如しじゃ。 |
老人 | あっぱれ! お前さんは免許皆伝じゃ。 その証としてこの巻物を渡そう。特製の呪符は餞別じゃ。 |
邑田 | 感謝するぞ、道士殿。 |
老人 | うむ。 道士としての道に迷うことがあれば、いつでもここを訪れよ。 ……ああ、お代はあちらの係の者にな。 |
受付 | はい、道士番号452番の方ですね! 今回の講座代、免許代、呪符代を合わせまして、 金額はこちらになります。 |
邑田 | 承知した。 しかし、成り行きで参加したがために、手持ちがない。 代金は桜國幕府の自衛軍に回してもらえんかのう。 |
受付 | かしこまりました。 |
──数週間後、自衛軍の基地にて。
葛城 | おや? イギリスからの書状……自衛軍、邑田殿宛の請求書か。 |
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葛城 | ええと、金額は……ひゃ、100万UC!? 道士修行代として……!? |
葛城 | どういうことですか、邑田殿~っ!!! |
──人形にまつわる騒動もすっかり落ち着いた、
ハロウィン当日のこと。
邑田 | 最後まで慎重かつ繊細に……── 米粒よりは随分大きいが、油断は禁物じゃからのう……。 |
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在坂 | ……? 邑田、何をやっている? |
邑田 | ああ、在坂や。よいところに来た。 これを見てみよ。 ちょうど今、出来上がったところである。 |
在坂 | ……! 南瓜の提灯だ……! |
邑田 | うむ。これで思う存分にとりっくおあとりーとをするのじゃ! |
在坂 | 在坂は、邑田が器用だと知っていた。 だが、これはすごい……。 在坂は、とても嬉しい。 |
邑田 | ほっほっほ。それは何よりである。 在坂がはろうぃんを存分に楽しむことこそが、 わしの願いじゃからな。 |
邑田 | さぁ、これを引っ提げ、お菓子をぶんどってくるがよい。 |
在坂 | わかった。 では、行ってくる。 |
邑田 | ほっほっほ! さて、わしは在坂の勇姿を見守るとするかのう。 |
十手 | ふぅ……波乱を乗り越えると、 平穏な日常がより一層愛おしくなるものだなぁ。 |
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主人公 | 【平和が一番だね……】 【その節はいろいろとありがとう】 |
在坂 | 見つけた……十手、〇〇。 |
十手 | ……お、在坂君。 なんとも芸術的な南瓜提灯を持っているねぇ! |
在坂 | 邑田が作ってくれた。 ──ゴホン。トリック・オア・トリート、だ。 |
十手 | おっと! はろうぃんでは何をするか、 俺もちゃあんと聞いているよ。 はい、とりぃと! 一口最中だよ。 |
在坂 | 〇〇。 マスターにもトリックオアトリートだ。 |
主人公 | 【はい、お菓子】 →在坂「感謝する。 在坂は、大事に食べることにする。」 【しまった、お菓子を持ってない……】 →在坂「お菓子がないと、いたずらをするのだったか……? でも、在坂は、それはよくないと思う。 つけておいて、あとでまた来るのがいいだろうか。」 十手「ははっ、なんとも在坂君らしいね。 それじゃあ、またあとで!」 |
邑田 | ほっほっほ。 在坂が楽しそうで何よりじゃ。 その調子でたぁんと菓子を──…… |
---|---|
八九 | ……おい、何してんだ? すっげー変質者っぽいぜ……。 |
邑田 | しーっ! 声がでかいわ! そなたも身を潜めよ! |
八九 | へいへい……。 んで、何してんだ? 在坂のストーカーか? |
邑田 | 意味はわからぬが、何やら気に食わぬ意味のように思える。 ちぇすとが必要かえ? |
八九 | いや、必要ないっす! さーせん!! |
在坂 | 邑田、八九。 |
邑田&八九 | ほわっ!? |
在坂 | 忘れていた。 邑田と八九にも、トリック・オア・トリートだ。 |
邑田 | ほっほっほ、よいぞ。 ほれ、菓子じゃ。好きなだけお食べ。 |
在坂 | ああ。礼を言う。 |
在坂 | 八九はどっちだ? お菓子か? それとも悪戯か? |
八九 | ……ふっ、当然菓子なら用意してあるぜ。 ほらよ、これでどうだ! |
在坂 | たくさんある。 ……もぐ、もぐ……。 |
八九 | お、おい……もっと落ち着いて食えよ……。 |
在坂 | 食べ終わった。 八九、トリック・オア・トリート。 |
八九 | な……!? おかわり要求か? ……じゃあ、これ。俺の分だけど── |
在坂 | いただくとしよう。はむっ。 |
八九 | 一口かよっ! |
在坂 | 八九、在坂はさっきの菓子が気に入った。 トリック・オア・トリート。 |
八九 | しかもさらに要求!? 図々しすぎだろ……もう全部渡したぞ! |
邑田 | なんじゃと……? |
在坂 | ハロウィンは、 好きなだけ好きなお菓子を食べられる日ではなかったのか……? |
八九 | ハロウィンって、 こんなカツアゲみてえなイベントじゃねぇだろ……っ! |
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