【騎士の追憶】ジョージ

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解説

カード解説

ある日シャルルヴィルに届けられた手紙。その差出人は──ブラウン・ベス。
現在と過去が交錯し、綴られた思いに触れた時……シャルルヴィルとジョージは、彼の騎士道に何を思うのか。

心銃解説:Knightliness:R

すごくいい夢だなって思うんだ。
だってこうして二人で遊べるのって、多分一生ないことだから。
オレはすごい楽しいよ。……ブラウンは、どう?

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

 

Ep1. 時を超えて

シャルルヴィルふぁぁ……。
ランチ食べ過ぎたかなぁ……。
シャルルヴィル……ん?

シャルルヴィルは、ふと視界に入った広葉樹の枝に
見慣れた帽子が引っかかっていることに気がついた。

シャルルヴィルあれ、これってジョージの帽子だよね。
なんでこんなところに?
ジョージおーい! シャルル!
ジョージよかったぁー! 見つけてくれたんだな!
シャルルヴィルジョージ! 帽子探してたの?
ジョージうん! 屋上で昼寝してたら、いつの間にかなくなってて……。
風に飛ばされちゃったんだと思うんだけど。
マジでビビったよ!
シャルルヴィルそうだったんだ。ちょうどこの木に──……
ジョージブラウンの大事な帽子なんだ。
オレがなくすわけには絶対いかないから……。
見つかって本当によかった……。
ジョージ……ありがとう、シャルル。
シャルルヴィル…………。
シャルルヴィル……なんで?
ジョージえ?
シャルルヴィルなんで、ベスくんのなの?
確かに、そうでもあるけど……ジョージの帽子でしょ?
シャルルヴィルどうしていつもそんな風に……、……っ。
ジョージえっと……。
シャルルヴィルジョージ自身も大事にしなよ。
いつもブラウン、ブラウンって……!
シャルルヴィルボクにとってはジョージも大事な仲間で、友達で──
ジョージ……シャルル。
ジョージシャルルの一番大事な仲間はブラウン・ベスだろ。
オレもなんだよ。
ジョージオレは別に、オレを大事にしてないわけじゃないよ。
ただ、オレはブラウンのために生まれたみたいなもんだし……
やっぱり、あいつの方がどうしても大事なんだ。
シャルルヴィルそんな……っ。
シャルルヴィル…………っ。
ジョージ…………。
ジョージシャルル……ごめん。
ジョージ(でも、オレの心も、運命も決まってる)

シャルルヴィル…………。
ラッセルあ、シャルルヴィル!
シャルルヴィル……はい?
ロジェ……!
シャルルヴィル。
シャルルヴィルロジェさん……!? お久しぶりです!
どうして士官学校へ?
ロジェああ。実は……この手紙を君に届けに来たんだ。

ロジェは封筒から手紙を取り出し、シャルルヴィルの前に置いた。
初めて見る筆跡で、宛名はリリエンフェルト家のシャルルヴィル。
差出人は──。

シャルルヴィルブラウン・ベス……。
……これって……?
ロジェこの手紙が届いたのは、2年前だ。
シャルルヴィルっ!!
ロジェあの事件──彼が凶行に走った日の翌日、私の手元に届いた。
事件が起きる直前に出した手紙だろう。
シャルルヴィルそ、んな……。
ロジェ……今思えば、私はあの当時すでに気をおかしくしていた。
彼の凶行を聞き、その当人から来た手紙など渡すべきではないと、
君に渡す前に握り潰した……。
ロジェ最近になり、机の裏に落ちていたこの手紙を見つけたのだ。
もう捨てたものかと思っていたから、驚いたよ。
ロジェそして──本来読むべきだった君へ渡すべきだと、
こうして届けに来た。
ロジェ君への手紙を、私の独断で止めてしまい、すまない。
どうか、受け取ってくれ。
シャルルヴィル…………。

シャルルヴィル(ベスくんは、手紙を返してくれなかった。
気恥ずかしくて手紙は苦手だって言って……。
だから返事がないのも当然だと思っていたけど)
シャルルヴィル(まさか……ベスくんが手紙をくれてたなんて……)
シャルルヴィル(あの頃、確かに彼は何か異変を感じてた。
この手紙を読めば、それがわかる……?)

Ep2. ブラウン・ベスの手紙

その日──イギリスのウィンズダム宮殿では、
フランス大統領夫妻を始めとする各界の著名人等を招いた
宮中晩餐会が行われていた。

食事を終え、後席ではゲストたちと歓談する時間になる。
シャルルヴィルはブラウン・ベスと会話する機会を伺い、
そわそわと視線を送っていた。

シャルルヴィル──長年の研究の成果が実を結ばれて……。
ノベール賞受賞者恐れ入ります。
研究を始めた当初は──
シャルルヴィル(……うーん、だめだ)
シャルルヴィルなるほど……そのような逆境にも負けずに……。
シャルルヴィル(ベスくん……全然目が合わない)

視線の先では、マーガレット女王とブラウン・ベスが
ゲストたちと歓談している。

シャルルヴィル(いつもならなんとなく目が合って、
それから適当なタイミングでバルコニーか庭園に出て
おしゃべりしてる頃なのに……)
シャルルヴィル(今日は女王陛下のそばにずっとくっついてるなぁ)

マーガレット女王皆さん、とても楽しい夜をありがとう。
我が国との変わらぬ深い友情に感謝します。
シャルルヴィル(……なんてしてるうちに、お開きになっちゃった!)
ロジェシャルルヴィル。私はまだ少し話がある。
先に出ていろ。
シャルルヴィルはい……ロジェ様。

シャルルヴィル(今日はベスくんと話せなかったな……。
ま、こういうこともあるよね。残念だけど仕方ないか)

シャルルヴィルが廊下を進んでいると、急に腕を掴まれた。

シャルルヴィルわっ!?
ブラウン・ベス来い!
シャルルヴィルえ……えええっ!

そのまま腕を引っ張られて、2人は廊下の奥の部屋に入った。

シャルルヴィルちょっと……どうしたの?
ブラウン・ベス女王の様子が変なんだ。
シャルルヴィルえ?
ブラウン・ベスおまえには言ってなかったが……。
最近、幻聴や幻覚に悩まされてる。
それで今日も、パーティ中に誰かに殺されるって怯えていた。
シャルルヴィルええっ……? そんな……。
ブラウン・ベスだから、俺がずっとそばにいたんだ。
今もあまり離れてはいられない。
女王の不安は日に日に増してきてる……。
ブラウン・ベスこれからはおまえとも話せなくなるかもしれない。
シャルルヴィルえっと……理解が追いつかないよ……!
なんでそんなことに……?
何か原因に思い当たりは?
ブラウン・ベス悪い、もう戻らなきゃ。
──じゃあな、シャルル。
シャルルヴィルあ……手紙! 手紙書くから……!

ブラウン・ベスは軽く頷いて、部屋をあとにした。

シャルルヴィル…………。

シャルルヴィル『昨日の話、驚いたよ。
優しくて穏やかなあの方がそんな状態だなんて……。
でも、考えてみたら、こっちも少し似てるかもしれない』
シャルルヴィル『優しかったロジェ様が、変わっちゃった。
幻覚や幻聴はないみたいだけど、些細なことから考えが飛躍して、
怒ったり責めたりして──普通じゃない感じがする時もある』

使用人シャルルヴィル様、お出かけですか?
シャルルヴィルあ……ちょっと散歩。
すぐ戻るから、ロジェ様には内緒にしてね。
使用人承知いたしました。
お気をつけて行ってらっしゃいませ。
シャルルヴィルうん、ありがとう。アハハ……。

シャルルヴィルふぅ……危ない。
早くポストに……。
シャルルヴィル『マスターになった重圧がそうさせているのかな……。
でも、元々責任ある立場にいた2人に
揃って病的な変化が出るのはどうしても気になっちゃうよ』
シャルルヴィル『ボクたちが絶対高貴になれないことと、何か関係があるのかな。
それとも、貴銃士のマスターはそうなってしまうのかなぁ……。
だとしたら、ボクたちはどうすればいいんだろう……』
シャルルヴィル『ベスくん、手紙は苦手って知ってるけど、
どうか返事をちょうだい。君たちのこと、心配してるんだ 』
シャルルヴィルベスくん……。

Ep3. 一番大事なもの

シャルルヴィル……ジョージ。
ジョージシャルル……!
シャルルヴィルあの、さっきはごめんね。
ボク、ジョージの覚悟をわかっていたつもりなのに──
ジョージううん、オレの方こそごめん。
シャルルがオレ自身も大事に思ってくれて、嬉しいんだ。
シャルルヴィル…………。
シャルルヴィルあのね、お願いがあるの。
この手紙を、一緒に読んでほしい。
ジョージ手紙?

シャルルヴィルは、手紙のことをジョージに話した。

ジョージそんな大事な手紙を、オレも読んでいいのか?
シャルルヴィルもちろんだよ。
ベスくんのことを誰よりも理解してるのはジョージだもん。
シャルルヴィルそれに……ボクだけだと、なんだか……緊張しちゃって。

シャルルヴィルの手紙を持つ手が、かすかに震えている。
ジョージは勇気づけるように、その手を両手で包んだ。

ジョージ……読んでみよう。
ブラウン・ベス『シャルルヴィルへ。
手紙を読んだ。会った次の日に書くなんて、おまえもマメだな。』
ブラウン・ベス『陛下は医者にかかることになった。
気持ちが楽になる薬を処方されたみたいだが、
あまり効果が出ていないみたいだ。』
ブラウン・ベス『今朝も、これでは強制的に退位させられるって泣いていた。
おまえのマスターも相変わらずみたいだな。』
ブラウン・ベス『絶対高貴がどうとか、貴銃士のマスターがとか書いてあったが、
そんな考えはやめろ』
ブラウン・ベス『俺たちは貴銃士だ。自分たちやマスターに対して
疑心暗鬼になるのは、貴銃士の在り方じゃない。
高貴に、誇り高く生きること。それを貫くんだ』
ブラウン・ベス『絶対高貴の力が使えなくても、マスターが変化してしまっても、
俺たちがやるべきことに変わりはない。
貴銃士として高貴であり続けるんだ』
ブラウン・ベス『俺は誇りを捨てない。おまえも捨てるな』
シャルルヴィル……ブラウン・ベスより。
シャルルヴィル……っく……。
ジョージブラウン……。
シャルルヴィルやっぱり、ベスくんが、アウトレイジャーになるなんて、
おかしい。こんなに高貴で、強くって……! ……っ!
ジョージああ。絶対に、おかしい。
ブラウンは誇り高い貴銃士だった……!
ジョージシャルル……ブラウンのために、頑張ろう。
あの夜に何があったか──明らかにしよう。
シャルルヴィルうん……っ!

──その晩。

???これで、どうだ!
???へぇ、サクリファイスか。やるな。
ジョージ投了してもいいんだぜ?
ジョージ(あれ……?)
ジョージ(オレ、ブラウンとチェスしてる……?)
ジョージ(ああ、これ、夢か。あの手紙を読んだから、それで……)
ブラウン・ベスおまえにしちゃ小賢しい手を使ったな。
だが──。
ジョージあっ!!
ジョージああ~~っ! そういう抜け道があったか……!!
ブラウン・ベスチェスで俺に敵うと思うなよ。
ジョージもう1回! 次はもうちょっといい線いけると思うからさ~!
ブラウン・ベスふん。何回やっても変わらないと思うぞ。
ま、あと1戦くらいなら付き合ってやる。
ジョージThank you☆
ジョージ……そういやさ。
ブラウンにとって、一番大事なものってなんなんだ?
ブラウン・ベス……? 簡単には答えられない質問だな。
俺には大事なものがたくさんある。
大英帝国、そこに住む人々──……。
ブラウン・ベスけど、大事なものを守るためには、
俺が俺として、正しく力を使うことが必要だ。
ブラウン・ベスだから元を辿ると、俺の心の在り方──……
騎士道精神が揺らがないことが一番なのかもしれない。
ジョージおまえは真面目だなー。
でも、それ聞いてなんかすっきりしたよ。
ブラウンはブラウンで、全然ブレなくて──……
ブラウン・ベス正しく、力を……。
ジョージ……ブラウン?
ブラウン・ベス力……ヲ、俺……ガ……。
ジョージブラウン!!
ブラウン・ベスア……アアアアア……!!
ジョージ待ってくれ!! ブラウン──ッ!!

ジョージ……っ!!
ジョージハァ……ハァ……。
ジョージ(大丈夫、夢だ……!)
ジョージ待っててくれよ……ブラウン……。

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