【どんな代償を払おうとも】ライク・ツー

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解説

カード解説

どんな手段を使っても、どんな代償を払っても、何かを成し遂げるだけの力が欲しいか。そう問われた時、彼は迷わず肯定した。
既に守るべきものは何処にもない。それでも彼は、今一度汚名を雪がんと顔を上げる。

心銃解説:過去を断つ一閃

「貴方はもう●●です」
その瞬間に僕の記憶は途切れた。
馬鹿らしい。これで見事負け犬だ。だから切り捨てた。過去を、その象徴の髪を切り捨てて、俺は──

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. 憂鬱な日

定期健康診断のため、
カサリステ内の一室へと集められた貴銃士たち一同。
ライク・ツーは、体重計を前に立ち止まっていた──

研究員次の方、どうぞ。
ライク・ツー…………。
マークス……?
おい、お前の番だぞ、ライク・ツー。
ライク・ツー…………。
マークス後ろが詰まってんだから、さっさと進めよ。
ライク・ツー……うるせぇ。わかってるっつの……。
ライク・ツーはぁぁぁ……。

重苦しい溜息のあと、
ライク・ツーはようやく体重計へと足を進める。

ライク・ツーうっ……!
マークスへぇ……あんた、見た目より重いんだな。
ライク・ツーは、はぁ!? 何見てっ……てめぇ!!
今なんつった!?
マークス……?
いや、だから見た目の割に重いんだなって。
ライク・ツーぐッ!
ライク・ツーてめぇ……失礼なこと言ってんじゃねぇよ……!
いいか、これは筋肉の重みだ。俺は鍛えてるから、
それにふさわしい重さがあんだよ! わかったか!
マークスおい、馬鹿にするな。
同じ体重なら、筋肉のほうが脂肪より重量があることは知ってる。
俺はただ、重いんだなって感想を言っただけだろ。
ライク・ツーその感想が失礼だって言ってんだよ、このクソ野郎!
そんなんじゃ、デリカシーがないって言われて、
マスターにも嫌われんぞ。
マークスはぁ?
マスターがそんなこと言うわけないだろ!
マスターをバカにするな。
マークスつーかそもそも、なんでカリカリしてんだ。
マークスあ……わかったぞ。
あんた、体重が重いことを気にしてるんだな。
ライク・ツーだ・か・ら……
さっきから重い重い重い重いうるっせぇんだよ!!!!
八九おーい、なんか全然進んでねぇけど……って、
な……なんだろこの空気……?
ライク・ツー外野は引っ込んでろ!
俺は今からこいつをぶっ飛ばす。邪魔すんな!
マークスあんたも、あんたの銃も重いのはただの事実だろ!
キレる意味がわからねえ。
つーか、俺をぶっ飛ばすだと? 返り討ちにしてやる!
ライク・ツー返り討ちの返り討ちだこの野郎!

お互いの胸倉を掴んで睨み合っていた2人は、
すぐさま殴り合いの喧嘩に突入した。

研究員ひっ……き、君たち落ち着きなさい……!
八九あー……体重計の前でバトルって、そういうことかよ。
八九UL85A2が重いのは、頑丈に作られてるからだろ?
それに人体的にも、普段からあんだけ鍛えてりゃ、
俺みたいに鍛えてない奴よりゃ断然重くて当然だろ。
八九銃の特性と努力の結果だし、
別に重かろうが気にするようなことじゃなくね……?
ライク・ツーお前も重い重い言いやがって……。
フォローしてるのか喧嘩売ってるのかどっちだ!
八九はぁ……!? 喧嘩なんか売ってねぇよ!
マークスおい、よそ見か?
それとも、俺に勝てないからって別の奴に逃げるのか?
ライク・ツーてめぇこそ、今のうちに逃げときゃ良かったって
後悔しても遅ぇからな!
八九うーわ……めんとくせぇな、ったく……。
〇〇呼んでくるか……。

再び取っ組み合いを始めた
マークスとライク・ツーを横目に、
八九はひっそりとその場から退散し──

2人の拳の応酬は、
〇〇が到着するまで続いたのだった──。

Ep2. 兄弟

十手えーと、次の授業の場所はここで合ってるかな。
ライク・ツーいや、1つ横の訓練場だ。

その時、訓練場の方から人の話し声と、
銃声が聞こえてくる。

ライク・ツー……まだ誰かいるみたいだな。
前の授業の残りか?
生徒1次、お前が試してみろよ。
生徒2……っと、マガジンがちゃんとはまんねぇな。
撃つ以前の問題だろ、これ。
ライク・ツー……ッ!!
ライク・ツー(あいつらが持ってる銃、
あれは、UL85A1じゃねぇか!)
十手ライク・ツー君? 彼らが気になるのかい?
ライク・ツーいや、うん……。
生徒2よし、マガジンOK! んじゃ、いくぞ!

銃を構えた生徒は、的へ向けて次々に発射していく。
その時──

生徒2……んん?

軽快に銃声を上げていたUL85A1が、突然沈黙する。
引き金を引いても何も起こらず、
生徒は銃を見分し始めた。

生徒1お、見ろよ。やっぱジャムってんぞ。
ははっ、空薬莢が弾き戻されるってマジだったんだな!
生徒2平均99発に1回ジャムるって聞いてたけど、
まだマガジン1つ目だぞ……!
やっべぇな、これ。ポンコツすぎんだろ。
生徒1重いし弾も出ねぇし、
“鈍器”の名はダテじゃねーな! はっはっは!
ライク・ツー…………。
生徒1いやー、試し撃ちだからいいけどよ。
戦場でこんなんだったら最っ悪だよなぁ。
生徒2だな。こんな銃に命預けらんねぇって。
十手銃を使った悪ふざけとは……
まったく、なんて輩だ。
十手ライク・ツー君、ちょっと待っててくれ。
俺は彼らに一言物申さねば気が済まな──
ライク・ツー……あいつらっ!
十手ラ、ライク・ツー君……?

ライク・ツー……おい。
生徒1な、なんだよ。
次の授業はまだだろ?
ライク・ツーんなことはどうでもいいんだよ。
てめぇらが雑魚すぎて見てらんねぇ。
なんだよ、その全ッ然なってねぇ銃の扱い。
生徒2は、はぁ?
雑魚なのは俺たちじゃなくて、この銃だろ!
ライク・ツーそうやって銃のせいにしてる時点で、クソ雑魚だろ。
優れた兵士ってのはなぁ、武器に多少難があっても、
使いこなして勝ってみせるもんなんだよ。
ライク・ツーそれが、お前らはなんだ?
銃でふざけて遊んで、それで士官候補生を名乗るのか?
ハッ、
十手ちょ、ライク・ツー君……!
ライク・ツーお前らみたいのに使われるなんて、銃が可哀想だぜ。
……そうだ、その銃もお前らにムカついて、
わざとジャムったのかもしれねぇぞ。
生徒1なっ……!
ライク・ツー銃に見限られるとか、
お前ら、軍人として成功する素質ゼロだから。
役立たずはさっさと士官学校から──
十手ライク・ツー君。そこまでだよ。
人を傷つけるために言葉を使うのはよくない。
たとえ、伝えたいことが正しくてもね。
ライク・ツー…………。
十手……君たち、ちょっといいかい。
そんな粗雑に銃を扱わないでほしい。
十手物にも霊が宿るというし、実際俺たちみたいに、
貴銃士として目覚める銃もいるわけで……。
生徒1あっ……貴銃士……っ! あなた方が……っ。
生徒2す……すみませんでしたっ!

ライク・ツー……フン。
十手ふぅ。これに懲りて、反省してくれるといいんだが。
しかし……ライク・ツー君が
あんな感情的になるなんて、珍しいな。
ライク・ツー別に。ただ、同じ銃としてムカついただけだから。

ライク・ツーはそう呟いて、
2人が置き去りにしたUL85A1をそっと手に取る。

ライク・ツー……クソッ。土埃がひどいし、手入れも甘い。
あいつら、何もかも酷すぎんだろ……。
十手…………。
その銃のこと、大事なんだね。
ライク・ツー…………。
この銃が、っていうか、
UL85A1が、っていうか……。
ライク・ツー……確かに、ポンコツではあるんだけどな。
これでも俺の前身みたいなもんだから、
雑に扱われていい気はしねぇよ。
ライク・ツー……ホント、
よくジャムるダメな兄を持つと大変だよ。

 

Ep3. 厄介な体質

ジョージぜぇ、はぁ……あっつぅ……。
こんな暑い日に、走る、なんて……キツすぎるぞ……!
Nooooo……!
ライク・ツーうるさい。
騒いでる体力あんなら、走るのに集中しろよ。
ジョージOh……さすがライク・ツー。
余裕そうだな……はぁ……。
でもさ──
ジョージ──のわわぁぁあっ!?
ライク・ツーうおっ!?

疲労で足をもつれさせたジョージは、
思いっきり転倒してしまう。

盛大に地面へ頭を打ち付けるその姿に、
ライク・ツーも呆気にとられて足を止めた。

ライク・ツーお、おい……生きてるか?
ジョージ…………。
ジョージいやービックリした!!
ってか、めちゃくちゃ痛ぇ!
HAHAHA☆
ライク・ツー……平気そうだな。
ジョージああ! オレは丈夫だからな!
ジョージ……ん? なんか、ぬるっと……。

顔を触ったジョージは、
指先にぬるついた赤い液体が付着したことに気付き、
ぎょっとして目を見開いた。

ジョージうわっ! 血だ! は……鼻血か!?
やべぇ! 鼻血出てきた!
ライク・ツーおい、バカ! 手袋で拭くな!
血の染みは落ちにくいんだ。
あと、雑にぬぐったところで鼻血は止まんねーよ。
ライク・ツーほら、ティッシュやるからこれで拭け。
ジョージお~Thank you!
これを鼻の穴に突っ込めばいいんだな!
ライク・ツーちっげーよ馬鹿。出口塞いだら逆流しかねないだろ。
出てくる血はティッシュで吸い取って、
小鼻の上のところ、鼻中隔を押さえるんだ。
ライク・ツーんで、そのまま待機!
鼻が折れてなけりゃ、そのうち止まる。
ジョージ……Wow! こうか?
……んん、止まったっぽい!
ライク・ツーはぁ、世話が焼ける……。
ジョージいやー、悪い悪い! おかげで助かったよ!
訓練でもティッシュ持ち歩いてるなんて、
ライク・ツーは準備がいいなぁ!
ライク・ツーあー、これは……。
ライク・ツー……あ、ヤバ。
ジョージうわっ!? おまえも鼻血出てんぞ!?
だ、大丈夫か!?
ライク・ツー騒ぐな。 これくらい平気だから。
ライク・ツー(くそ、油断した……。この暑さでハードな運動は、
ちょっと鼻の粘膜的にキツかったか……)
ライク・ツーはぁ……。この鼻血体質、やっぱ不便だな。

Ep4. 機械の正しい直し方

恭遠今日の授業では、通信機器の使い方を覚えて、
実際に使ってみよう。
普段の任務でも役立つから、真面目に取り組むように!
恭遠最初は、モールス信号でメッセージを送ってみよう。
まずは、俺がこれから板書する文字を、
モールス信号に置き換えてみてくれ。
ライク・ツー──よし、こんなもんか。
ジョージえっ! もうできたのか!?
オレにも教えてくれよー!
ライク・ツー自分で考えないと意味ねーだろ。
シャスポーちょっと、騒がしいよ君たち。
僕の集中を邪魔しないでくれ。
えーっと……うん、これでいいはずだ。

恭遠さて、次はパソコン、テレビ、無線機だ。
グループごとに使ってみてくれ。
ライク・ツー(パソコンくらい普通に使えるっての……。
はぁ……時間のムダ)
シャスポーで、僕らはテレビをつければいいのか。
このスイッチをポンと──
……何も映らないぞ。
ジョージん? どっか調子悪いのかな……。
それじゃあ……よいしょ、っと!
シャスポーちょっ……君、何する気だい?
ジョージそんなの決まってるだろ?
まずは──振る!!!
シャスポーああ、なるほどね。
ライク・ツーはぁっ……!?
ジョージんー、まだダメか。
こういうときは──こうだ!

──バン! バン!

ライク・ツー何やってんだ馬鹿! 相手は精密機械だぞ!
叩いたら壊れるだろうが!
シャスポーそうなのか?
ライク・ツー当たり前だろ!
文明の利器相手に、力技で解決しようとするな!
ライク・ツーちゃんと説明聞いてたのか!?
まずはコンセント!
動力源ないのに電源入るわけないだろ!
シャスポーコンセント?
ライク・ツーコンセントがわからない、だと……?
ジジイ舐めてたわ……。
ジョージええっ!?
そりゃあ、オレたちは確かに
ちょっと爺さんかもしれないけど……。
シャスポー僕はまだ若い方だよ。
彼みたいな正真正銘のお爺さんと、一括りにしないでほしいな。
ジョージシャスポーまでひどっ!!
ライク・ツーいや、俺から見たらどっちもジジイなんだけど。
シャスポーふん。生意気な小僧だな!
シャスポー君はイギリスの軍用銃で、彼の後輩だろう。
歴史ある古銃である僕らを敬って、
謙虚かつ丁寧に説明するくらいしたらどうなんだ。
ライク・ツーお前らが謙虚に教えを乞う姿勢なら、
教えてやってもいいけど?
ライク・ツー偉そうにするだけしか能がない老害には、
こっちだって教える気も湧かねぇよ。
シャスポー老が……っ!?
シャスポーフフ、ははは……君、面白いことを言うね。
説明する能がないことを誤魔化すための言い訳かい?
ライク・ツー説明ならさっきしてやっただろ。
コンセントを差す、電源入れる、はいオシマイ。
こんな単純なこともわかんねぇのかよ。
シャスポーお前ッ……!
ジョージまぁまぁ、2人とも落ち着こうぜ!
それより、コンセントを差してみたのにつかないぞ?
何がダメなんだろう?
ジョージ角度変えてもう一回叩いてみるか?
こう、斜め上から……ていっ!
ライク・ツーだから叩くなって──!
アナウンサー『続いて、明日の全国のお天気をお伝えします』
ジョージおっ、ついた! やったー!
ほーら、やっぱ叩いて正解だったろ!?
ライク・ツーだ・か・ら……叩くなっつってんだろうが!
今回はたまたまだ!
なんでもかんでも叩くんじゃねぇぞ、ジジイども!

Ep5. ライク♡ツー

ライク・ツー(恭遠のやつ、どこに行ったんだ?
今日中にレポート出せって言ってたくせに、
職員室にいねぇし……)
ライク・ツー(……あれ?
今、向こうから恭遠の声が聞こえたような……)

ジョージ──ってことだったんだよ!
恭遠なるほど。それなら改善点がいくつかある。
ジョージほんとか!? なら、今すぐ教えて──
ジョージ──おっ、ライク・ツー!
恭遠……ッ!?
ライク・ツー……?
恭遠……あ、ああ、ライク・ツー……。
ライク・ツーは……? なんだよ、その反応……
俺に聞かれちゃマズい話でもしてたってのか?
ジョージん? ゼンゼンそんなことないぞ。
恭遠、どうしたんだ?
恭遠いや……すまない。
世界帝軍にいた同名の貴銃士を知っているせいで、
たまに反射的に、こう、な……。
ライク・ツーああ、そういう……。
恭遠……失礼をしたな。
気を悪くしてしまっただろうか……。
ライク・ツーいや、別に気にしてねーよ。
ライク・ツー俺が世界帝軍にいた奴と同じ名前にしたのは、
同じ銃だと勘違いして接触してくる
間抜けな奴らをぶっ飛ばすためでもあるし。
ライク・ツー言わば、狙い通りっつーか。
ジョージ世界帝軍にいたライク・ツーか~。
どんな奴だったんだ?
恭遠ライク・ツーと同じ『UL85A2』から生まれた
貴銃士『ライク♥ツー』……。
世界帝が従えた貴銃士たちの1人だ。
恭遠元世界帝軍の兵士から聞いた話によると、
ライク♥ツーの趣味は筋トレで……
とてもストイックな貴銃士だったそうだ。
ジョージ趣味が筋トレって、ライク・ツーと似てるな!
同じ銃だと、趣味も似るのかな?
ライク・ツーま、体を鍛えるのはいいことだからな。
ジョージで、他には他には!?
恭遠あとは……ブランド品を買いあさるのも好きで、
豪奢なセレブファッション……なんてものを、
とても好んでいたらしい。
恭遠実際、彼を見かけた時は、
いつも派手で目立つ服装をしていたな。
ジョージへぇ~、そういうところは、
こっちのライク・ツーとは違うみたいだ!
ライク・ツー…………。
恭遠ああ、あと……一番の特徴は髪型だな。
高いところで髪を2つに束ねていた。
ツインテール、というのだったか……。
恭遠服もピンクだったから、全身ピンクでね。
ファーやリボンなんかも身に着けていたから、
最初は女性の貴銃士かと思われていたよ。
ジョージええっ! それって、女装が趣味ってことか!?
ライク・ツー違うっての!
ジョージ痛っ! なんで殴るんだよ!?
ライク・ツー……なんか、イラッときた。
恭遠ほ、ほら……ジョージはただ驚いただけで、
女装を悪いことだなんて言ってないから……。
ライク・ツーいや、女装って決めつけんなよ。
男でも可愛いもんが好きな奴とかいるだろ。
ライク・ツー好きな格好してたら、たまたま女っぽくなっただけ……
……かもしれないだろうが。
恭遠それもそうだな。
俺も少し、古い考え方をしていたようだ。
ジョージそれは悪かったけど!
だからって、殴るなんて酷いじゃないか~!
ライク・ツーはいはい、悪かったな。

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