マスターと貴銃士、その在り方。銃と共に生きる限り、安寧の運命はきっとない。
けれど、前を向いて歩み続けよう。
暗い夜を裂いて、空に輝く陽が昇るように──終わらぬ絶望はないのだから。
どんな未来が待っていても、君となら立ち向かえる。絶対に。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
来る一年も弥栄(いやさか)の武運を祈ろうぞ。
今後も在坂共々よろしく頼む。
貴銃士の勇敢さを称える記念行事、
ブレイブ・マスケッターズ・デー。
その一環として開催された食事会に、
〇〇は貴銃士たちとともに参加していた。
邑田 | 〇〇や。 そなたも挨拶回りはそろそろ終いでよかろう。 |
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邑田 | ここには美味いものがたくさんじゃ。 そなたも気に入ったものをどんどんお食べ。 |
邑田 | 腹が減っては戦ができぬ、じゃぞ。 ほっほっほ。 |
主人公 | 【ありがとう】 →邑田「なに、年嵩の者が若者を気遣うのは当然のことじゃ。 たとえマスターであろうと、それは変わらぬ。」 【邑田は楽しめてる?】 →邑田「ほっほっほ。 わしのことも気にしてくれておるのかえ? 我らがマスターはまったく、殊勝なことよ。」 |
邑田 | ……おお、そうじゃそうじゃ。 近々、そなたと“交流面談”なる催しをするのじゃったな。 |
邑田 | 日程ももう決めてあるぞ。 当日はわしがしかと案内するゆえ、そなたはのんびり待っておれ。 |
──交流面談当日。
案内する──と言っていた邑田だが、
昨日から懲罰房に入っているという。
〇〇は恭遠から鍵を預かり、懲罰房へと向かった。
邑田 | おお、そろそろ出ようと思っておったが、 そなたが迎えに来てくれたか。 鉄格子を壊す手間が省けたわ。ほっほっほ。 |
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主人公 | 【今回は一体何を……?】 【また誰か殴った?】 |
邑田 | 侮辱には拳の一閃で返すのみじゃ。 わしも闇雲な殺生は好まぬ。 多少手加減はしたゆえ、そなたが心配することなどないぞ。 |
邑田 | そも、ここがわしの憩いの場のようなものであると、 そなたも知っておろう? |
主人公 | 【でも、喧嘩はほどほどに……】 【暴力は良くない、会話から始めよう】 |
邑田 | うーむ……。 在坂にも、短気はよくないと言われておるし…… そなたや在坂に荷運び役を何度もやらせるのも忍びなし。 |
邑田 | とはいえ、これがわしじゃからなぁ。 時を遡って、邑田経芳に安全装置を付けてもらうほかあるまいよ。 ほっほっほ。 |
邑田 | さて、房で過ごす日数はもう十分じゃろう。 予約の時間に遅れぬよう、参ろうか。 |
主人公 | 【予約?】 【どこに行く予定?】 |
邑田 | 湯呑の絵付けじゃ。 人気の教室を予約しておるゆえ、楽しもうな。 |
〇〇は、邑田に連れられて
街のポーセラーツ教室にやってきた。
邑田 | おお、ここじゃ。 洒落た湯呑を作れるよう頑張るとしようか。 |
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主人公 | 【絵付けはこれまでにもしたことが?】 【絵付けも趣味でやってるの?】 |
邑田 | いいや、わしも初めてである。 過日、日本から持ってきた気に入りの湯呑が欠けてしまってのう。 |
邑田 | この機に、自分で絵付けをして 新たな気に入りを作ろうと思ったのじゃ。 そなたと作れば、よい思い出にもなるであろうな。 |
邑田 | さ、そなたはどれに絵付けをする? 紅茶椀もよし、平皿もよく使うものゆえよかろう。 |
主人公 | 【カップ&ソーサーにしようかな】 |
邑田 | ほっほっほ。 欲張りせっとじゃな。よいよい。 |
邑田 | ものが決まれば、あとは図案、絵柄じゃ。 まずは紙に描いて考えてみるとするか。 |
邑田 | わしは……うむ。 焼き芋をびっしり描くのも面白いじゃろうか。 桜島と鳳凰というのもまた、めでたい感じで捨てがたし……。 |
〇〇も紙を前に、何を描こうかと悩む。
やがて、薔薇の絵を描き始めた。
邑田 | …………。 |
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邑田 | そなたは、薔薇は嫌いではないのかえ? |
主人公 | 【嫌いではないけど……?】 【どうして?】 |
邑田 | ……そなたには、薔薇の傷があるじゃろう。 複雑なところではないのかと思ってのう。 |
邑田 | そなたは、優秀な士官候補生じゃ。 そのようなものがなくとも、立派な士官となれたはずじゃ。 |
邑田 | 畢竟(ひっきょう)、そなたが様々なことに 巻き込まれておるのは、その薔薇のせいであろう。 |
邑田 | 立派な一士官ではなく、『マスター』と成らざるを得ず。 狙撃手としての未来にも影を落としておる……。 |
──数日前。
邑田 | はて? 在坂はどこに行ったのか……。 極上さつまいもパイなるものを共に食そうと思ったのじゃが。 |
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??? | 〇〇先輩さ……。 |
邑田 | ……ん? |
邑田は、〇〇の名前が耳に入り、
声が聞こえた方へと足を進める。
女子生徒1 | 次の射撃大会は出ない感じするよね。 貴銃士のマスターとして各国を飛び回ってるのはカッコイイけど、 休みも多くなっちゃったし……。 |
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女子生徒1 | もしかしたらさ、 射撃の授業出たくないってのもあるのかもね。 前は射撃大会優勝とかしてすごかったのになー。 |
男子生徒1 | あんだけ貴銃士引き連れてたら目立つから、 スナイパーとか無理だよなー。 もはや自分で銃を撃つ必要もなさそうだし。 |
男子生徒2 | っていうか、薔薇の傷があるせいじゃないか? 平気だって言ってるの聞いた人いるらしいけど、 あんな大きい傷が手にあったら精密な射撃とかできないだろ。 |
女子生徒1 | あー……。 そっか、そうだよね……。 |
男子生徒1 | けどまあ、貴銃士がいるから気を抜いてるとこはあるかもな。 聞いたか? ブレイブ・マスケッターズ・デーの噂。 |
男子生徒1 | 士官学校の中にいたのに誘拐されたらしいけど、 警備を正面から突破するくらいの大人数が侵入したら 当然大騒ぎになるだろ。 |
女子生徒2 | そうだよね。 なんで寮からいきなり行方不明?って不思議だったやつ。 |
男子生徒1 | 教官がひそひそ話してたんだけど、 なんでも、貴銃士が危険だとかなんとか言われて、 誘い出されたんじゃないかって。 |
女子生徒1 | ええ……。 慌てずにちゃんと確認取ればわかることだよね。 そういうのに騙されるって……なんかショック。 |
男子生徒2 | 弛んでる感じするなー。 そもそも外に出るには教官に連絡が必要なのにさ、 自分は特別だし、規則は二の次ですーって? |
邑田 | …………。 |
生徒たち | あっ……! |
生徒たちが邑田に気づき、一様に気まずい顔になる。
邑田は無表情のまま、拳を握り──……。
邑田 | …………。 |
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主人公 | 【邑田?】 【大丈夫?】 |
邑田 | おお、すまん。少しぼーっとしておったわ。 ……それで? おぬしはその薔薇の傷、嫌ではないのかえ? |
主人公 | 【複雑なところはある】 【確かに、狙撃には不利になる】 |
主人公 | 【でも、自分にとって欠かせないものだ】 【でも、皆と繋がっている大切な証だから】 |
邑田 | ……そうか。 ならばわしがこれ以上、とやかく言うのは野暮というもの。 |
邑田 | 絵付けを楽しむとしようぞ。 米粒あーと……主に『愉快な八九しりーず』で培った わしの筆さばきをとくとご覧あれ、じゃ! |
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