マスターと貴銃士、その在り方。銃と共に生きる限り、安寧の運命はきっとない。
けれど、前を向いて歩み続けよう。
暗い夜を裂いて、空に輝く陽が昇るように──終わらぬ絶望はないのだから。
どんな未来が待っていても、君となら立ち向かえる。絶対に。
主人公名：〇〇
主人公の一人称：自分
来年もあなたが私を必要とするならば
お付き合いしますよ。
貴銃士の勇敢さを讃える記念行事、
ブレイブ・マスケッターズ・デー。
その一環として開催された食事会に、
〇〇は貴銃士たちとともに参加していた。
食事会の途中──
〇〇は、ファルが会場にいないことに気がついた。
| ファル | …………。 |
|---|---|
| 主人公 | 【ファル！】 【ここにいたんだ】 |
| ファル | ああ……あなたでしたか。 |
| ファル | すみません。 不快だったもので、離席を。 |
| 主人公 | 【大丈夫？】 【どこか具合が悪い？】 |
| ファル | いえ……。 |
| ファル | 祝いの場では、どうしてああも 馬鹿みたいに花を使うのでしょうねぇ。 |
| 主人公 | 【どうしてだろう……？】 【花……確かに、たくさんあった】 |
| ファル | いえ、あなたを困らせたいわけではありませんよ。 私はこれで失礼します。 |
| ファル | ……ああ。 交流面談の日は、あなたの部屋へお伺いしますので悪しからず。 |
そして迎えた、交流面談当日。
約束通り、ファルは〇〇の部屋へとやってきた。
| ファル | …………。 |
|---|---|
| 主人公 | 【…………】 【あの、ファル……】 |
〇〇とファルは、
互いに無言のまま向かい合い、座っていた。
| ファル | …………。 |
|---|---|
| 主人公 | 【今の時間って、交流面談だよね】 【何か話さない……？】 |
| ファル | ええ、今は交流面談ですが…… 特に私から話すこともありませんしねぇ。 |
| 主人公 | 【何かやりたいこととか……】 【どこか行きたいところとか……】 |
| ファル | ないですね。 |
| 主人公 | 【じゃあ、ワインとか……】 【チーズでも食べに行く……？】 |
| ファル | ……？ それは面談とは違いますよね。 |
| ファル | 特になければ、私はこれで帰らせていただきます……。 |
| 主人公 | 【待って！】 【もう少し話そう！】 |
| ファル | はぁ……。 |
| 主人公 | 【トランプでもする！？】 【最近読んだ本で、面白いものあった！？】 |
| ファル | それも面談とは趣旨がズレている気がしますが……。 |
| 主人公 | 【一発芸を覚えたから、見て！】 【ファルの好きな歌、歌うよ！】 |
| ファル | 遠慮しておきます。特に興味がありませんので。 |
| 主人公 | 【じゃあ、ファルが興味のあることを……！】 【何か2人で楽しめそうなことを……！】 |
| ファル | …………。 |
| ファル | ……あなたは私のマスターですよね？ 私に何かさせたいのなら回りくどい物言いをせず、 指示をしてください。 |
| ファル | 「楽しめ」というのであれば、そういう指示を。 私もそのように振舞いましょう。 |
| 主人公 | 【そういう指示や命令はしたくない】 【自分が言いたいのはそうじゃない】 |
| ファル | はぁ……では、なんだと言うんです？ |
| ファル | 私が人間のように喜んだり楽しんだりする様子を 見たがっているのは『あなたたち』でしょう？ |
| ファル | 私はそんなことを望んでいません。 望んでもいないことをさせたがるのは、なぜですか？ |
| 主人公 | 【……！】 【そんなつもりじゃ……】 |
| ファル | ……おや？ 顔色が変わりましたね。 もしや……『罪悪感』というやつですか？ |
| ファル | 私が記憶を失った経緯など、興味ないのですが……。 |
| ファル | カトラリーさんやあなたは、 私に負い目を感じているようにお見受けします。 |
| ファル | 聞いたところによると── あなたは世界帝軍に、ご両親を殺されたそうですね？ |
| 主人公 | 【それは……！】 【…………】 |
| ファル | 記憶があった頃の私は……世界帝軍だったのですよ？ あなたの直接の仇ではありませんが……。 |
| ファル | それでも「あなたの両親と同じようなもの」を 大量に殺した悪鬼だったそうですよ？ |
| ファル | 私があなたの仇でないのは、ただ管轄が違ったから。 それだけです。 |
| ファル | ほんの少し管轄がずれていたら…… 私があなたの両親を撃ち殺していた可能性も 大いにありますからねぇ。 |
| ファル | そんな相手に気をかけるのは、 優しいとか甘いを通り越して──馬鹿です。 |
| 主人公 | 【…………】 |
| ファル | もっとシンプルな関係になりませんか？ 私は武器、あなたは射撃者。 |
| ファル | ただそれだけだと思うことが、お互いのためでは？ |
| 主人公 | 【でも……】 【ファル……】 |
| ファル | …………。 |
| ファル | …………では、私はこれで。 |
静かに立ち上がると、ファルはそのまま部屋を出ていった。
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