マスターと貴銃士、その在り方。銃と共に生きる限り、安寧の運命はきっとない。
けれど、前を向いて歩み続けよう。
暗い夜を裂いて、空に輝く陽が昇るように──終わらぬ絶望はないのだから。
どんな未来が待っていても、君となら立ち向かえる。絶対に。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
きみだけの音を大切にね。
貴銃士の勇敢さを称える記念行事、
ブレイブ・マスケッターズ・デー。
その一環として開催された食事会に、
〇〇は貴銃士たちとともに参加していた。
主人公 | 【この演奏は……】 【きれいな音色……】 |
---|---|
ミカエル | ~~♪ |
〇〇が辺りを見回すと、
ホールの一角にあるピアノでミカエルが演奏していた。
ミカエル | ~~♪ ~~♪ |
---|
曲が終わるのを待って、話しかける。
主人公 | 【ミカエルの演奏だったんだ】 【今日も素敵なピアノだね】 |
---|---|
ミカエル | このピアノはいいよ。 何か……他とは違う。積み重なった時が、流れ出すような── |
ミカエル | ~~♪ |
ミカエルは〇〇に一言だけ返すと……
そのままピアノを弾き続けた。
──交流面談当日。
〇〇は、ミカエルがピアノを弾いている
ホールを訪れた。
ミカエル | ~~♪ |
---|
ピアノを弾くミカエルに、
〇〇が近づいたその時──。
演奏が止まった。
ミカエル | 弾いてみる? |
---|---|
主人公 | 【えっ!?】 →ミカエル「きみの音が聴いてみたい、と思ってね。」 【ごめん、邪魔しちゃった?】 →ミカエル「構わないよ。」 |
ミカエル | ほら、そこの椅子をお持ちよ。ここ……隣に来て、座って。 |
ミカエル | そう、鍵盤に指を置いて……うん……。 それじゃあ、始めようか。 |
主人公 | 【自分は聴いてるだけで……】 【全然弾けないよ?】 |
ミカエル | ノン、気にしないで。 きみに完璧な演奏なんて、求めていないよ。 |
ミカエル | きみが音を鳴らし、僕が鳴らし返す……。 そうやって、絡まり合う音の波を聴きたいんだから……。 |
ミカエル | ほら、早くピアノを弾いてみて? 僕にきみの音を聴かせておくれ。 |
ミカエルに促され、〇〇はピアノを弾き始める。
ミカエル | ……そう、上手く弾こうとしないで。 思うままに手を動かして……。 |
---|---|
ミカエル | ふふ。きみは勘がいい……ほら、耳を傾けてごらん。 僕たちの音が重なり、綺麗な音色を紡ぎ始めた……。 |
ミカエル | ……そう、そのまま続けて……。 |
〇〇とミカエルの連弾が、
しばらくの間、ホールに響く──。
ミカエル | ……まあ……悪くないね。 |
---|---|
主人公 | 【あ、ありがとう……?】 【楽しかった】 |
ミカエル | うん。それでわかったんだけど── |
ミカエル | ……致命的に合わないようだ、僕ときみって。 |
主人公 | 【えっ!?】 【ご、ごめん……】 |
ミカエル | 謝らないで。 こういうのは相性の問題で、個人の努力や才能さえも関係がない。 |
ミカエル | ……即興の連弾というのは、 互いの心に響くリズムや、音を奏であうもの。 |
ミカエル | ベルギーにいたとき、ファルと弾いてみたことがあるんだ。 |
ミカエル | そのときのファルの音は、ぐちゃぐちゃで 音を音で塗りつぶしあうような有様だった……。 |
ミカエル | 今のように澄んだ音ではなかったけれど、 でも、僕との連弾は悪くなかったよ。 |
ミカエル | 違いが互いを侵し合うような……絡まり合うリボンのような……。 |
ミカエル | ふふ、思い出しても気分がいい。 ファルの……彼の音を僕の音に染めていくのが、楽しかった。 |
ミカエル | ……対して、僕ときみの音は驚くほど絡まない。 互いが互いを弾き、ヤマアラシのように突き刺し合う。 |
ミカエル | 理解できないところから音がくる。 思いもしない間で刺してくるんだ。 |
ミカエル | だからこそ……── |
ミカエル | もっと聴かせて。ほら……いくよ。 |
ミカエルは有無を言わさず、
〇〇にピアノを弾かせるのだった──。
──交流面談が終わり、〇〇が去った後。
ミカエルはピアノの鍵盤をなぞる。
ミカエル | …………。 |
---|---|
ミカエル | ……あの壁の前で聴いた、あの子の綺麗な音。 |
ミカエル | 死を悼むだけの、混ざり気のない……純粋な悲しみの音。 ……とても美しかった。 |
ミカエル | 僕も、彼女に捧げよう……悲しみのメロディを。 |
ミカエルがピアノ弾き始める。
──悲しく、美しい演奏がホールを満たすのだった。
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