【黒鉄の自負】エルメ

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解説

カード解説

連合軍ドイツ支部特別司令官と、その補佐。
ずっと相容れないと思っていた、公の相棒。
……本人に言うつもりもなかった本音を、
あの時何故言ってしまったのか、彼は理解していない。それでも、言ってよかったのだ。

心銃解説:鉄環の轍、鉄心葬送

一体これは何だろうね。嫌い、好き、ムカつく、羨む……ううん違うな。
彼の言動を知る度に、上手く言語化できない衝動があるんだ。
君、これは何だかわかる?

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

 

Ep1. 託された手紙

これは、〇〇が
エルメとドライゼのマスターになる以前のこと──。

連合軍ドイツ支部の一室にて、
作戦会議が行われようとしていた。

エルメ……おや? ユリシーズ少佐の姿が見えないね。
ドイツ支部兵士はっ。
ユリシーズ少佐は本日、体調が悪いため欠席です。
エルメへぇ。
エルメ(最近は敵の侵攻が多く、連戦続きだし……
体調不良を訴える日が増えてきたようだ)
ドイツ支部兵士エルメ特別司令官補佐……?
エルメ──ああ、会議を始めよう。
ではまず、状況の報告から。
ドイツ支部兵士たちJawohl!

エルメドライゼ。
一緒にユリシーズ少佐のお見舞いに行かないかい?
ドライゼ必要ない。行くならお前だけで行け。
エルメそんなのダメだよ。俺たちのマスターなんだから。
報告もあるし、特別司令官としての責務から逃げるの?
ドライゼ…………。

エルメ……ユリシーズ少佐、失礼するよ。
ダンロードライゼ特別司令官、エルメ特別司令官補佐……!
ダンローうっ……。

ダンローは反射的に起き上がるが、
すぐにうずくまってしまう。

エルメそのままでいいよ。
このところ体調が悪いみたいだから、
ちょっとお見舞いに来ただけ。
エルメ君は俺たちのマスターだから。
ダンロー……。
気を遣わせて申し訳ありません……。
ドライゼ…………。

ドライゼは何も言わず、
ダンローから目を逸らしたまま何も言わない。

ダンローミュンヘンの戦況はいかがでしょうか。
エルメ苦戦しているよ。
インゴシュタットの野戦病院を視察したけれど──

エルメは淡々と今日の作戦報告や戦況を説明する。
一方、ドライゼは眉間にしわを寄せて口を閉じたままだ。

ダンロー……がはっ! ぐっ……。
エルメ……!
ダンロー……失礼しました。
では、ミュンヘン奪還に向けて今一度……、ゴホッ!
エルメ……今日はお暇するよ。ゆっくり休んで。
ね、ドライゼ。
ドライゼ……ああ……。
ドライゼ…………。
ドライゼ(この人は近いうちに死ぬ……。
何も思うな、何も……)

ドライゼの眉間には更に深いしわが刻まれている。

エルメ…………。
エルメ(君は平然としながらも、
本当は目の前で命の灯火が消えゆくのを直視できない。
歯痒い、情けない、悔しいね)
エルメ(ま、だからこそ、ここへ一緒にきてもらったんだけど)

エルメとドライゼが、部屋を出ようとした、その時──

ダンロードライゼ特別司令官!
ドライゼ……なんだ?
ダンローすみませんが……この手紙を出していただきたいのです。
エルメそれは?

ドライゼがダンローから受け取った手紙には、
「フィルクレヴァート士官学校 〇〇」
と書かれていた。

エルメ(士官学校……? 血縁者が……?
いや、ユリシーズ少佐は天涯孤独のはず……)
ドライゼ……わかった。出しておこう。
ダンロー恩に着ます。

この手紙が、エルメたちの運命を
大きく変えることになるとは、誰も思ってもいなかった──。

Ep2. 兄の愛

ドライゼとエルメ、ジーグブルートが
ドイツの作戦から帰ってきて、数日が経った頃。

ジーグブルートはスプリングフィールドを連れて、
ドイツ料理店にやって来ていた。

スプリングフィールドここが、本場ドイツの料理を食べられるところなんですね。
ジーグブルートああ、肉も美味いがやっぱりビールが格別で……
あの時はゆっくり飯を食う暇なかったからな。
お前にドイツ料理のことを教えながら食うとするか。
スプリングフィールドな、何かあったんですか?
ジーグブルートいや、大したことねぇけど……ドライゼの奴が──
って、胸クソ悪ィこと思い出すよりも食う方が先だ!
ジーグブルートお前はこれ食ってガッツつけろ!
スプリングフィールドは、はい! ジグせんせい……!
スプリングフィールドむしゃっ! もぐっ、もぐっ!
スプリングフィールド……っ! とても美味しい……です!
噛むたびに、味わいが……!
ジーグブルートだろ? ここは結構、イケるんだ──
ジーグブルートおい、隠れろ!
スプリングフィールドえ? は、はいっ!

スプリングフィールドは、
ジーグブルートの指示に従い、テーブルの下に隠れる。

スプリングフィールドどうしたんですか?
ジーグブルートしっ!

ジーグブルートの目線の先には、
店の入り口に立つドライゼとエルメの姿があった。

エルメうちのジグ、委員会の当番をサボって
街に来ているみたいなんですけど……
こちらの店には顔を出してませんか?
店主え、ええっと……。
ジーグブルートあいつら……!
当番ってあいつらが勝手に決めた煙突掃除当番だろうがっ!
スプリングフィールドあっ!
ジーグブルートいってッ!!!

怒りのあまり、ジーグブルートはテーブルの下にいることを忘れ、
立ち上がろうとしてテーブルに頭をぶつけた。

エルメ…………。
スプリングフィールドだ、大丈夫ですか!?
ジーグブルート(やっべ! エルメの野郎に見つかったか!?)

ジーグブルートは、口に手を当てて再び小さくなり、
テーブルの下から様子を窺う。

エルメ月水金のこの時間にジグが店に来ていたら、
今度は追い返してくださいね。
店主はぁ。わかりました。
ドライゼよろしく頼む。
では、我々はお暇しよう。エルメ。
エルメそうだね。

ドライゼとエルメが店を出ようとするが、
エルメは踵を返して、店に戻ってくる。

エルメそれと──あのテーブルの会計をお願い。
店主は、はい。
スプリングフィールド(会計って……まさか……)

スプリングフィールドが、
少しだけテーブルの下から顔を出すと
微笑むエルメと目が合う。

スプリングフィールド……っ!
エルメじゃあ、これで。
ジーグブルート……あいつら行ったか?
ったく、俺のこと監視しやがって……!
スプリングフィールドあー……。
ジグせんせいにとっては鬱陶しいだろうと思いますけれど……。
スプリングフィールドあれはたぶん、心配性なだけですよ。
一応お兄さんなりに、可愛がろうとしてくれてるんだと思います。
ジーグブルートあぁ? んなわけあるか!
さっ、ドイツ料理を楽しむぞ!
スプリングフィールド(素直じゃない弟を持つお兄さんと、
愛情表現が独特な兄を持つ弟……
……ふたりとも、大変だなぁ……)

Ep3. こたつの魔力

──その日。
フィルクレヴァートは今年一番の寒さを記録した。

エルメ……くしゅん!
主人公【大丈夫?】
【風邪?】
エルメ大したことないよ。
でも、今日は一段と冷えるね……くしゅん!
十手エルメ君がくしゃみ? 珍しいこともあるもんだ。
十手……わっ! 手がすごく冷えてるじゃないか!
主人公【早く温かくしないと】
【風邪をひいたら大変!】
十手そうだ!
2人とも、俺の部屋にくるといいよ!

エルメ……あれはなんだい?

エルメが指差す方を見ると、
テーブルの板の下から布団のような布が飛び出していた。

十手これは、こたつさ! 暖かいから入ってごらん!
主人公【お言葉に甘えて】
【……お邪魔しまーす】

〇〇とエルメは、
恐る恐るこたつの中に入っていく……。

エルメ……これは!
十手どうだい? いいもんだろう?
こたつに入りながらお茶を飲んで、みかんを食べる。
これが日本風の冬の過ごし方ってわけさ!
エルメ……動かなくても暖かいなんて、画期的だ。いいね。

──次の日、
〇〇が談話室にいると、
十手が慌てた様子で駆け寄ってきた。

十手大変だ、〇〇君!
エルメ君が俺の部屋でまったく動かなくなってしまったんだ!
十手悪いが一緒に俺の部屋に来てくれないか?
主人公【もちろん!】
【エルメが……珍しい】
十手俺も最初はびっくりしたんだが……とにかく急いできてくれ!

八九ぎゃあーーーーっ!!
十手は、八九君!? どうしたんだい?
八九裸のイケメンが……十手の部屋で転がってる……。

八九おーい、十手~。
この間貸したラノベなんだけどよ……。
エルメ…………。
八九ふぎゃっ!?

八九の目に、こたつで眠る何者かの姿が飛び込んでくる。
その美しい寝顔は眩く輝いていて──

八九(えっ!? こたつの神様……!?)
八九ん……?
いや、よく見たら……ドイツのエルメか……?
エルメん~……。
八九えっ、なんで十手の部屋にエルメが……ってか、
裸……そもそも、こたつ……で寝て……???
八九ぎゃあーーーーっ!!
情報量が多すぎて処理しきれねぇーっ!!!

八九……というわけなんだが、
どうしてエルメが裸で十手のこたつで寝てんだ?
十手気に入ってくれたのは嬉しいけど、
脱水や低温火傷が心配だなぁ。
それにこたつで寝ると余計に風邪をひいてしまうよ。
主人公【裸でこたつ……】
【ま、まさか……!】
八九〇〇、何かわけを知ってんのか?
主人公【(鉄の日に入ったのかも……)】
【(でも、これは他の貴銃士には言えない)】
十手〇〇君?
主人公【特殊な事情だから……】
【今日まるまる1日、エルメに部屋を譲って】
十手ええっ!?
八九そんなもん、エルメを動かせばいいんじゃねーか。
し、失礼しまーす。
エルメ……ぐぅ……。

腕を引っ張りこたつから出そうと引っ張ってみるが、
エルメはその手を振り払い、より奥へと引っ込んでいった。

八九……仕方ねぇ、諦めろ。
十手そ、そんなぁ……!
八九しかし、こたつの魔力はイケメンさえもだめにするのか……
恐ろしいやつだぜ。
十手俺のこたつぅ……!!

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