【狐火】邑田

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解説

カード解説

これは遠い記憶の欠片。日本での、彼らの物語の前日譚。燃え盛る炎に邑田は誓う。
お前には笑う権利がある。だからこの暗さも辛さも、お前が知る必要はないことだ。
たとえエゴでも、あの日、彼はそう決めた。

心銃解説:愚俗を掃え

目隠しをして、真綿に包んで。
たとえ地獄の只中であっても、此処が極楽と囁き、言祝ごう。
それがわしの与える愛だ。
だから、ほら、笑っておくれ。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. 隠された過去の片鱗

これは邑田が、
日本で貴銃士として召銃された直後のこと──。

邑田(ほう……人の身体とは、このような感覚なのか。
何やら、ぬくいのう……)
邑田(……ん? こやつは……)
???…………。

邑田の隣には、華奢な体躯の少年がいた。
その出で立ちと独特な雰囲気から、
邑田は、彼も自分と同じ貴銃士であることを察した。

邑田(どれ、まずは挨拶でも──)

小柄な貴銃士に合わせて少し身を屈めたところで、
邑田はぎょっとしてわずかに身を引いた。

邑田……っ!
邑田(こやつの瞳……なんと重苦しい……。
年端も行かぬ童のような見目をしておるが、
一体どれほどの地獄を見てきたのか……)
在坂……どうかしたのだろうか?
邑田……はて?
ああ、そうじゃ、そうじゃ。
邑田わしは邑田。
薩摩の出、邑田経芳に作られた銃ぞ。
そなたは?
在坂在坂は、在坂だ。
邑田銃に次ぐ、統一国産銃だった。
邑田おお、そなたが在坂か。存じておるぞ。
わしの後輩じゃな。どれ、撫でてやろう──

幼子を撫でるように在坂の頭へ手を伸ばそうとした
邑田であったが、彼の帽子に刻まれた桜の紋が
傷だらけになっていることに気付いて、動きを止める。

邑田(む……? よくよく見てみれば、
銃の方の桜御紋も削られておるではないか)
邑田(桜の紋は、桜國幕府と日本を示すもの。
それを削られるなど、
何か相当な事情があったに違いないが……)
在坂……?
邑田おお、すまんな。
またぼんやりしておったわ。
邑田日本を守る貴銃士同士、懇意にしようではないか。
これからよろしくのう、在坂や。
在坂よろしく……とは何かわからない。
だが、在坂は邑田の隣にいるようにする。
邑田……ほっほっほ。うむ、それでよい!

邑田と在坂の出会いからしばらくが経った頃──。

邑田在坂……戻りが遅いのう。
まさか……いまだ任務に……?
在坂只今戻った。
邑田ああ、在さ……、ッ!?
在坂世界帝派の残党は、すべて鎮圧した。
邑田あ、在坂……そなた、その腕はどうしたのじゃ!
右腕は……まともに動かせぬのか?
ただぶら下がっておるだけのような有様じゃが……。
在坂……少し、無理をした。
腕はちぎれかけてはいるが、在坂は貴銃士だ。
そんなに慌てるようなことでもないと思った。
邑田やれやれ……勝機があって多少無理をするくらいなら、
わしとてとやかく言わぬ。
邑田しかし、ただ己が身を不用意に削り、
無謀に無謀を重ねているようであれば、
それは感心できんなぁ。
在坂……? 在坂には、違いがよくわからない。
動ける限り敵陣に踏み込んでいけば、
活路を見いだせるかもしれない。
在坂まして、在坂たちは貴銃士。腕が飛ぼうが
足がもげようが、銃が壊れなければ死なない。
無謀がよくないというのは、よくわからない。
邑田…………。
邑田(在坂は、途方もなく、自分に無頓着なのじゃな……)

──後日。

邑田在坂、何処じゃ。
……在坂や~。
在坂……すぅ……すぅ……。
邑田……おっと。
こんなところでうたた寝をしておったのか。
邑田もう夕飯の時刻じゃ。
わあ、わしと共に帰ろうぞ──
在坂……っ、う、ぅ……。
邑田……在坂?
在坂……い、やだ……。
在坂やめ、ろ……
じ、けつ……しな……で……さいご、まで……。
在坂たたか、う……たたか……え……
……さ、……まで……!
邑田……在坂!

邑田が強く揺さぶりながら声を掛けると、
在坂はハッと目を開いた。

在坂あ、あぁ……。むら、た……?
邑田在坂。……哀しい夢を、見ておったのか……?
在坂夢……? 夢、とは……なんだ?
在坂は、知らない……。
邑田…………。
邑田……おいで。
今晩はおむらいすじゃよ。

──数日後。

邑田(これまでは、本人が語るまでは聞かずにおこうと、
特に話題にも出さずにいたが……)
邑田(あのように苦しむ在坂を、
このまま見過ごすこともできぬ……)

邑田もし、そなた。この館に詳しいとみた。
司書あ、はい。何かお探しですか?
邑田うむ。桜國幕府の歴史……
特に戦争史に関する書物を求めておる。
司書それでしたら、地下1階ですね。
暇なので、よろしければ僕も一緒に調べますよ。
邑田なんと奇特な人じゃ。
この館には不慣れゆえ、大助かりよ。
邑田(余計な世話だと言われるであろうか……。
それでも、わしは知りたいのじゃ)
邑田(……許せよ、在坂)

Ep2. 在坂は親睦を深めたい

邑田は、目的の書物を図書館から借りると、自室で読み進めた。
在坂に関して知れば知るほど、表情は険しくなっていく。

邑田(わしも、激動の時代の中でいくつかの戦場で使われ、
厳しい戦いを経験したものだが……)
邑田(在坂が使われた戦地は、あまりに過酷じゃ。
書物の淡々とした筆致であっても、
酸鼻を極める様が易々と想像できる……)
邑田(在坂はまさしく、地獄を見た銃なのであろうな。
でなければ、童のなりであのような目になるまい)
邑田(深淵を映すうちに、
自らも深淵となってしまったような……
そういう底知れなさがある、暗い瞳であった……)

邑田…………。
在坂……邑田?
邑田……なんじゃ? 在坂よ。
在坂邑田はよく、在坂を見ている。
在坂の顔を見るのが楽しいのか?
邑田……ほっほっほ。当たりじゃ。
在坂は愛(う)いからの、つい見てしまうな。
邑田して……在坂や、人の身体には慣れたかえ?
在坂貴銃士として存在することには、慣れた……と思う。
だが……。
邑田だが……なんじゃ?
心配ごとがあるなら、わしに言ってみよ。
在坂…………。
在坂在坂は……邑田のように、
みんなと話がしてみたい……と思う。
在坂この間……邑田が人と話しているのを見た。
……笑っていた。
……人と話すのは、楽しいのか?
邑田(……! てっきり、興味がないものかと
思っていたが……)
邑田……そうかそうか。
みなと打ち解けようとは、在坂は偉い子じゃの。
どれ、わしも手を貸してやろうぞ。
在坂……本当に?
邑田ほっほっほ。お安い御用というやつじゃよ。
最初はわしと共に、そこらの者に話しかけてみるか。
さすればそのうち慣れて、1人でも話しかけられよう。
在坂それは、とてもいい案だと、在坂は思う。
邑田……よろしく頼む。

邑田そなたたち、皆で囲んで何を見ておるのだ?
兵士1おお、邑田殿!
兵士2こちらは最近手に入れた浮世絵でして……!
在坂浮世絵……。
兵士たち……っ!

邑田の背後から在坂が現れた途端、
兵士たちの顔から先ほどまでの笑みがなくなり、
さっと視線を逸らす。

邑田……? それで、この浮世絵はどうしたのか?
なかなかよき品だと見受けるが。
兵士2あっ……はい!
田舎の祖父から譲り受けまして、
見事だったものですから、つい皆に見せたくなり……。
邑田なるほどのう……。
ほれ、在坂も見てみるとよい。
在坂ああ……。
この絵の人物は、何をしている?
兵士1……え、ええと……。

在坂が少し身を乗り出すと、
兵士たちは気まずげに視線を泳がせ、
黙り込んでしまった。

邑田(これは……兵士たちが、在坂を避けている……?)
邑田……おい。
在坂の言葉が聞こえなんだか?
答えよ。
兵士1……こ、これは商人で……!
魚商などが、橋を渡っている様子かと……。
在坂……そうか。
では、なんの魚なのかはわかるか?
兵士2さ、魚……? ええとですね……。

在坂在坂は、みんなとちゃんと話したのは初めてだ。
邑田……うむ、上出来であったな。
在坂なら、そのうちもっと打ち解けられるであろう。
在坂そうだろうか……? ならば在坂は、
これからもっと兵士と話をするようにしよう。
邑田兵たちと話す時は、わしも呼んでおくれ。
そなたがすぐに独り立ちしてしまっては、
ちぃと寂しいからのう。
在坂だが……在坂は、
いつまでも邑田に頼るのは、悪いと思う。
邑田ほっほっほ。
かようなこと、気にする必要はないぞ。
邑田(先ほどの兵士たちの態度……。
在坂の底の知れなさに恐れを抱いているのであろうか。
あれが、あやつらに限ったことでないとなると……)
邑田(在坂が歩み寄ろうとしたところで、
望んだような結果になるとは限るまい。
わしがそばにいてやれる時はよいが……心配じゃ)
邑田(だが今日のことをきっかけに
在坂が前向きになれたのならば、これでよい。
本当のことなど、知る必要はなかろう……)

邑田(さて、在坂はどこかのう……。
今日は一日別行動を強いられてしまったが、
元気にしておるだろうか?)
邑田……む?

邑田は、室内に入ってすぐに、異様な空気を感じた。
しーんと静まり返った重い空気の中で、
対峙する2つの人影がある。

……在坂と、兵士の1人だ。

在坂在坂は……。
兵士3や、やめてくれ! 俺を見るな!
気味が悪いんだよ……!
兵士3なんだよ、その全部見透かしてるような目!
内心で俺たちのことを見下してるんだろ……!
在坂…………。
兵士3……やめろっ、その目!
俺を責めるな……!!
邑田……っ!!
邑田……!
兵士3ぐはっ……!!

邑田は、問答無用で兵士を殴り飛ばす。
吹き飛んだ兵士は気絶して起き上がらないが、
周囲の兵士はすっかり邑田に気圧され、動けない。

在坂…………。
邑田おいで、在坂。
部屋で茶でも飲もうぞ。
在坂…………。
在坂の目は……気味が悪い、のか……。

 

Ep3. 幸せへの第一歩

邑田は、在坂が兵たちと馴染めるよう、
できるかぎり穏便に取り計らおうとした。

だが、在坂を気味悪がる者は多く、
元来短気な邑田は、心無い言葉を投げつける輩へと
容赦なく拳を振るうことが度々となった──。

兵士あの……規則ですので……すみません。
自分は外にいますので、何かあったらお声がけを。
邑田ふん。懲罰房に入れる相手を間違っておろうが。
日本のために貴銃士として目覚めた在坂に対し、
ちぃと目が特徴的だからといってあの仕打ち……。
邑田奴らの方こそ、懲罰房に入れて然るべきであろう。
……ま、しばらく医務室から出られぬほど、
きつく仕置をしてやったから無理であろうが。
邑田……ん?
在坂邑田……。
邑田おおっ、在坂ではないか。
わざわざこんなところまで出向いてくれるとは。
在坂在坂は、差し入れを持ってきた。
……ツナマヨだ。
邑田おお! それは嬉しいのう。
ちょうど腹が減っておったのだ。
邑田うむうむ。
在坂が持ってきてくれた、つなまよなる握りを食えるなら、
ここもさほど悪くはないかもしれんのう。
在坂…………。
在坂は、突然人を殴るのは、よくないと思う。
邑田何を言う。突然であるものか。
在坂……? 邑田なりに、理由があるのか。
邑田(む……? なんじゃろうか、この言い方は……?)
邑田(在坂は、あまり気にしておらぬのか?
それとも、わしが在坂のために怒るなどとは
思っておらぬのか?)
在坂在坂は、邑田を諭しに来た。
邑田に殴られた兵士の中には、重傷者もいる。
その兵士たちが可哀想だ。
邑田(あの者たちは、在坂を侮辱しておったというのに、
そのように気にかけてやるのか……)
邑田……在坂は、本当に優しいのう。
邑田こんなに優しい在坂は……やはり、人に好かれ、
皆に囲まれ楽しく過ごすべきだというのに……。
在坂いや……。
在坂は、そうは思わない。
邑田……なに?
在坂……在坂は、近頃ずっと考えていた。
在坂が来ると、皆は俯いて、何も話さなくなる。
笑っていた者も皆、無表情になる。
在坂この間の兵士が言っていた。
在坂の目は、気味が悪いと。
在坂……在坂がいると、皆が嫌な気持ちになる。
そんな在坂が人から好かれることは、ありえない。
在坂……そんなことにも気付いていなかった在坂が、
皆と楽しく過ごせる日など、来るはずが──
邑田それは違うぞ、在坂。絶対にじゃ。
在坂…………。
在坂……だが……。
…………。
邑田……信じられぬか?
ならば……わしが証明してやろう。
在坂……証明……?
邑田うむ。在坂が楽しく過ごせる日が来る。
それを、わしが証明してやる。
在坂…………。
邑田そうさな。
手っ取り早いのは、こうして笑うことだ。
ほれ、口の端をこうして上げて……ふっ、どうじゃ?
在坂……在坂は、笑うということがわからない。
笑顔はどうすれば浮かぶのか、想像もつかない……。
邑田ふむ……ならまずは、
笑うことから、わしが教えてやろう!

懲罰房を出てからの邑田は、在坂を笑わせようと
試行錯誤の日々を送っていた。

邑田在坂は、なかなか手強いのう……。
駄洒落、落語、くすぐり……どれも笑ってくれなんだ。
あとは、どうしたら──。
邑田──なぬっ!?

スッテーン!

考え事で足元をよく見てなかった邑田は、
落ちていた山芋の皮を踏んづけて、
思いっきり転倒してしまった。

邑田ええい、誰じゃ!
このようなものを廊下に放置しよったのは!?
???ふっ……!
邑田ん……?
在坂ふふ、ははは……っ!
邑田が、すごく、綺麗に滑って転んで……
在坂はあんな光景を、初めて見た……!
邑田……!
在坂ふ、ふふ……っ!
あははは……っ!
邑田(本来ならば、山芋の皮なぞ放置した犯人を
とっちめておきたいところでおあるが……)
邑田(在坂のこの笑顔に免じて、
今回は特別に許してやろうかのう……!)

Ep.4 雪中椿

邑田が在坂の笑顔を見ることに成功してからしばらく。
2人は、上層部からの司令を受けて、親世界帝派の
残党が潜んでいるという地区へ向かっていた。

邑田さて……連中はどこじゃろうか。
それらしき姿は見当たらぬが。
在坂狩りでは、辛抱強く獲物を待つものだ。
在坂は、弁当を持ってきた。邑田の分もある。
これを食べながら待とう。
邑田おお! 在坂はほんに優しいのう。
ならばさっそくいただくとしよう。
これは在坂が用意したのかえ?
在坂いや、食堂の料理人に頼んだ。
在坂では、このような立派な弁当は作れない。
邑田そうかそうか。おお……立派なお重じゃ!
美味そうな弁当をもらえてよかったのう。
在坂ああ……。
だが、在坂は気がかりだ。
弁当をもらった時、料理人は恐れていたように思う。
在坂在坂は自分ではよくわからない。
在坂の目は、そんなに怖いのか?
邑田……何を言う。
そなたの目は怖くなどない。
在坂だが、思い返してみれば邑田も、
最初に在坂と会ったとき、何か驚いた様子だった。
邑田む……確かにちぃとばかし驚きはしたが、
わしはそなたを恐ろしいと思ったことはないぞ。
そなたは心優しい、実によい子じゃからな。
邑田そなたの過去に何があろうとも、
目がちょっぴり人とは違おうと、関係ない。
わしは、そなたのことが愛しいのである。
在坂……!
在坂在坂も……邑田のことは、大事だと思う。
邑田ほっほっほ。それは重畳。

2人が和やかに笑い合っていた時──
突如、大きな爆発音が轟く。

邑田何事じゃ!?
在坂、急ぎ向かうぞ!

親世界帝派の残党…………。
在坂……見つけた、あそこだ。
邑田……先ほどの爆音は、あやつらが仕掛けたものか。
こんな辺鄙な場所で爆発を起こしたのは、
対応にやって来た軍の人間を狙うためか……?
邑田ここは、不用意に動くべきではないな。
さて、奴らをどのようにして捕らえるか……。
応援が来るまで、少し待とうかのう。
在坂在坂は、すぐに動くべきだと思う。
在坂が先陣を切る。
邑田も続いて来てほしい。
邑田これ、待たぬか在坂。
連中がどんな仕掛けをしておるかもわからぬのだ。
突っ込むのは度が過ぎる無謀というものである。
在坂だが──。

その時、2人からあまり離れていない位置で、
2回目の爆発が巻き起こる。

先行しようと前に出ていた在坂の身体は、
爆風で吹き飛ばされてしまった。

邑田在坂ッ!!!

邑田が急いで駆け寄る。
在坂は息をしているものの、
頭から血を流し気を失っていた。

邑田あやつら……。己が何をしでかしたか、
死を願う程の苦しみとともに思い知るがよい……!

邑田く、くくく……。
親世界帝派の残党……ッ!
な、なんだお前は……!?
邑田……貴様ら、雪に咲く椿を見たことがあるか?
親世界帝派の残党なんの話だ……!
邑田豪雪に耐え忍び、鮮やかに凛と咲き誇るその花は、
実に崇高なものなのじゃ。
凡人が易々と触れて汚すことなど、決して許されぬ。
邑田つまり……そなたらは、ここで終いじゃ。
邑田──疾く、去ね。

数分後──。

兵士──邑田殿、在坂殿!
爆発がありましたがご無事ですか!?
邑田こちらはすべて片付いた。
わしは、在坂をマスターのもとへ連れていく。
兵士お怪我を……?
といいますか、あの……
これだけの人数の敵を、お1人で?
邑田この程度、わしの敵にはならぬ。
邑田……とはいえ、ちぃと頭に血が上って、
やりすぎてしまったかもしれんな。
もし生存者がいたならば、尋問を頼むぞ。
兵士は、はいっ……。
在坂…………。
邑田在坂……
わしとそなたは、何の縁かこの時代まで銃として存在し、
そして、同じマスターのもとで共に貴銃士となった。
邑田わしが隣にいる間は……
そなたがこれ以上苦しまずに済むよう、守るからな。
ずっと、ずっと……守るからな……。

Ep5. 幸せの同盟

──邑田と在坂が士官学校に来るようになって、
しばらく経ったある日のこと。

邑田…………。
主人公【こんにちは】
【何を見てるの?】
邑田ああ、〇〇か。
ふふっ……そなたも外を覗いてみるとよい。

八九……あれ、在坂。
なんでこんなとこいるんだ?
焼きそばパンとオムライスおにぎりならちゃんと──
在坂在坂は、八九を迎えに来た。
八九はぁ……? パシったくせにかよ。
どういう風の吹きまわしだ……?
在坂八九が遅いからだ。
在坂が欲しいものが、なかなか届かない。
だから取りに来てやることにした。
八九あーそういうこと……はいはい。
俺の心配じゃねーんだよな、知ってた。

その時、ふと強い風が吹いて、
在坂の帽子が飛ばされてしまう。

在坂あ……。
八九……っと!
おお、今の、ナイスキャッチじゃね?
ほら、もう飛ばすんじゃねーぞ。
在坂……!
八九あっ……! い、今のはなんつーか、
別に、注意したとかじゃなくて、注意しろってことで!
生意気とかじゃねーから、怒るなよ……?
在坂……在坂は、八九に感謝している。
八九……! そうかよ。
在坂今日は風が強い。
在坂は、また帽子が飛んでしまう前に
さっさと校舎の中へ戻りたい。
八九へ? あ、ああ、わかった!
わかったから……引きずるなっ!

邑田……微笑ましい光景であったろう?
主人公【2人は仲がいいみたいだ】
【なんだか和むね】
邑田ふふ……そなたもわかってくれるか。
そなたは、在坂と八九にも好意的であるしのう……。
邑田……ところで。
そなたは……在坂の目を、怖いと思うか?
主人公【……?】
【怖くはない】
邑田……ふむ。
いやはや、気持ちのいいぐらい真っ直ぐな眼じゃ。
邑田戦争というのは、どれも多かれ少なかれ凄惨なもの。
中でも在坂が経験したのは、ひときわ過酷なものじゃ。
邑田だからこそ……貴銃士となり感情を持った今、
わしは、在坂に幸せになってほしい。
邑田そのためにわしは、
あらゆる恐ろしいことから、在坂を守ると決めたのだ。
ま、これはわしの勝手な誓いなのじゃがのう。
邑田ただ、わし1人では目が届かぬところもある。
ゆえに、よければそなたにも、
協力してもらいたいのだが……。
主人公【もちろん!】
【喜んで協力する】
邑田うむ……! よい返事じゃ。
そなたがいれば、在坂も心強かろう。
主人公【1つだけ、条件がある】
邑田条件とな……?
主人公【邑田に、自分自身も大事にしてほしい】
【邑田も幸せでないと】
邑田…………。
ほっほっほ。
まさか、そんなことを言われるとはのぅ……。
邑田覚えておくとしよう。
では、取引成立じゃ。
これからよろしく頼むぞ、〇〇。

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