【花に酔う】十手

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解説

カード解説

これは、彼が悩み歩んだ言行録。
(貴銃士なら聞こえるはずの声が俺には聞こえなかった。ひょっとして、それは……)
──桜吹雪に盃を傾け、彼は現世の幸福と欺瞞に酔い痴れる。

心銃解説:銘酔 華暦み

いろは歌の意味を知ってるかい?
うん。難しいよな。俺も、あの境地にはまだまだ至れない。
まだ、現世に酔っていたいんだ。酔って、笑っていさせてくれ──

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. 光と声の導き

──今でも時々、思い出すことがある。

緩やかに過ぎゆく時の中で、
ただ揺蕩っていたあの頃を……。

人の手の温もりなどとうの昔に忘れて、
誰の目にも触れぬ場所で、
俺は、静かな眠りについていた。

あの日……突然、温かい光に触れた気がして、
そちらへと手を伸ばすまでは──……。

十手『──男! そこを動くな、曲者め!』

──そうして、
俺は貴銃士として目覚めることになった。


十手はぁーっ……
これは、たまげたなぁ……。
ラッセル周りが気になるのかい?
街の観察もいいが、はぐれないようにだけ注意してくれ。
十手いやぁ、何もかも違うもんで……
道も、家も、人も……。
十手あ……す、すまない。
これじゃおのぼりさんだな。ははは……。
ジョージHey! あんま気にするなって。
オレも色んなもん見てびっくりしてるぞ!
十手えっ、ジョージ君もかい?
ジョージああ! 昔とはゼンゼン違うもんな!
馬車じゃなくて、車とか……
よくわかんないキカイとか……! Magical!
ジョージ古銃から貴銃士になったヤツは、
みんなそうなんじゃないかな? あははっ!
十手……そうだよなぁ!
いやぁ、ジョージ君みたいな優しい古銃の仲間がいて、心強いよ。
十手あ、そういえば……君たちと初めて会った時に、
『古銃は絶対高貴になれる』とか言っていたが……
絶対高貴とは、結局なんなんだい?
ジョージん?
召銃された時に、声が聞こえただろ?
十手声……?
ジョージ『Be Noble. 貴銃士よ、高貴であれ。
絶対高貴に目覚めよ──』って。
十手えっ……!?
そんな声、聞こえなかったぞ……。
ジョージオレもよくわかんないけど……
マークスとかライク・ツーも何かの声を聞いたって言ってたし、
てっきりそういうもんかなって……。
十手そんな……
も、もしかして……これってまずいんだろうか?
俺だけ聞こえてないなんて……。
ジョージん~……まぁ、召銃された時は
目覚めたばっかりで寝ぼけてて、
うっかり聞き逃しただけかもしれないし!
ジョージそんなに心配すんなよ!
十手もいつか絶対高貴になれるさ!
十手あ、ああ……。
十手(けど、貴銃士なら普通聞こえるはずの声が
俺には聞こえなかった)
十手(ひょっとして、それは、俺が……)

Ep2. そのときはいつ訪れる

──〇〇と十手が日本を訪れるより前、
士官学校にて。

十手おーい、〇〇君!
十手これ、さっきの調理実習で作った“まふぃん”という
菓子なんだが、よかったら──
生徒わっ!

廊下の角を曲がってきた生徒が、
十手の背中に勢いよくぶつかった。

生徒あ! すみません、ちゃんと前を見てなくて……!
失礼しました!
十手おーい、待ってくれ。
この筆記具は、君のじゃないか?
落としたぞ!
生徒あっ……! すみません、そうです!
助かった……筆記用具を忘れて授業に行ったら、
教官に呆れられるところでした……。
十手いやいや、気付けて良かったよ。
生徒あ……! あ、あの!
もしかしてあなたは、貴銃士様ですか!?
十手えっ?
ああ、まぁ……。
生徒僕、大ファンなんですよ!!
うわぁ! 会えて感激です!!
生徒貴銃士ってことは、
絶対高貴になれるんですよね!?
僕、一度この目で見てみたくて!!
十手……っ!
主人公【ええと……】
【簡単に使えるものでは……】
十手あ……はは、いいよ、〇〇君。
俺から説明する。
十手その、俺はまだ、なんだ……。
恭遠教官が言うには、すぐになれる貴銃士もいれば、
きっかけがあるまでなれない貴銃士もいるらしくて。
生徒そうなんですか……!?
それで、なれない原因ってたとえば──
主人公【急がなくていいの?】
【授業に行く途中では?】
生徒あっ、そうでした! つい話に夢中になって……
では、また!
今度絶対高貴の力をぜひ見せてくださいね!

十手……はぁ。
主人公【大丈夫?】
【あまり気にしないで】
十手いや、〇〇君に気を遣ってもらうほどでは……
なんて、そう言っても君は気にするか。
十手その、いつも……みんなのことを考えるんだ。
ジョージくんは貴銃士になってすぐに絶対高貴に目覚めて
大活躍している。
十手マークス君とライク・ツー君も、
諸刃の剣と言えるかもしれないけれど……
絶対非道という強大な力を駆使して、人々を守っているね。
十手……俺はというと……戦いではろくに役に立てないし、
古銃の貴銃士のくせに、絶対高貴にもなれない。
十手君に負担をかけているだけの、ただ飯ぐらいの役立たずだ。
もしかしたら……
俺は、元の十手に戻った方がいいのかもしれないな。
主人公【そんなことない】
【いつも助けてもらってる!】
十手〇〇君……かたじけない……。
けど……。
十手…………。
さっきの子が言っていたように、
早く絶対高貴にならないとな……。

 

Ep3. 盆栽の魅力

桜國幕府に招待された〇〇と十手は、
日本へ向かうために、連合軍の空港へ移動していた。

十手この車……いつもの車とほとんど同じに見えるが、
乗り心地は天地の差だな……!
十手こんないい車を寄越してくれるほど、
俺たちの日本行きに期待がかかってるんだろうなぁ。
十手ああ……早く日本の地を歩いてみたい。
日本の風を、この身に受けてみたいもんだ。
十手一体どれくらいで着くんだろうか……。
あ、忘れ物なかったかな……?
主人公【珍しくソワソワしてる……】
【日本を離れてから長いの?】
十手すまない、日本に戻るのは150年ぶりくらいだから、
久しぶりの帰郷が嬉しいやら不安やらで……。
十手コレクションとして扱われていた頃は、
売られ、買われ、譲られ──誰かから誰かに渡り……
といったことを繰り返してたんだ。
十手そこからなんの因果か海を越え……
『江戸時代の十手鉄砲』として、
若きクレマン・ド・リリエンフェルトの手に渡ったのさ。
十手で、そのあとは……100年ほど、
収蔵庫で眠り続けていたらしい。
十手君が貴銃士として目覚めさせてくれなければ、
きっとあのまま収蔵庫で朽ちていただろうなぁ。
主人公【ラッセル教官のファインプレーだった】
【偶然だけど召銃できてよかった】
十手【ラッセル教官のファインプレーだった】
→ははっ、そうだな。
落とされたことに感謝しないとだ。

【偶然だけど召銃できてよかった】
→〇〇君にそう思ってもらえているなら……
嬉しいことこの上ないよ。ありがとう。
十手とはいえ……今までがそんな感じだったから、
現代の日本の知識は、まったくないんだ。
きっと、驚きの連続だろうなぁ……!
十手せっかくだし、観光なんかもできるといいな。
君に、盆栽や日本庭園なんかも見せてあげたいんだ。
主人公【ボンサイ?】
十手知らないかい?
盆栽は、盆栽鉢っていう小さめの容器で、
松や苔なんかをこう、じっくり育ててね……。
十手……あ、いや……やめておこう。
盆栽は、かなり渋い分類の趣味だ。
君みたいな学生さんは興味ないだろうから……。
主人公【興味深いと思う】
【詳しく教えてほしい】
十手えっ……そ、そうかい?
なら、盆栽の何が魅力かって話してもいいかな。
十手そもそも盆栽は、俺の前の持ち主の趣味だったんだ。
趣味といっても、最初は儲けようと思って始めてね。
十手一級品の盆栽にはものすごい高値がつくから、
そんなものを拵えてやるぞと一念発起して
有り金はたいて苗を買っちゃって……。

十手カラタチバナっていう正月の縁起のいい──
……あ、こんな話ばかりじゃいけないね。
もっと君が楽しい話によう。
主人公【十分楽しんでるよ】
十手ええっ、本当かい? でも、地味な話だよ。
聞いても楽しくないだろうし……
無理に付き合わなくても……。
主人公【無理はしてない】
【続きを聞かせてほしい】
十手そこまで言うなら……。
それでそのカラタチバナってのは葉の斑の入り方が
いかに美しいかってのが価値になるんだけど、俺の──
十手いや、でも……やっぱり……
こんな話はつまらないと思うから……。
主人公【大丈夫!】
十手……本当かい? なら──
十手いや、やっぱり……。
主人公【大丈夫だって!!!】
十手えっ! は、はい!
十手それじゃ、品評会での話を──

Ep4. 桜の木の下で

──〇〇と十手が日本訪問を終え、
士官学校に戻ってきたあと。

十手いやぁ、すっかり春だな……。
春と言えば──
八九新作ゲームの発売時期だな。
十手はは、それは年中じゃないのかな──んぐっ!?
八九……!?
おい、邑田!? 一体何を──
在坂在坂は、八九を捕まえる。
八九はぁ? っておい、離せ……!
邑田ほっほっほ、無駄な抵抗はやめい。
大人しくわしらについてくれば、
悪いようにはせんからのう……。

十手これは……立派な桜だ……!
八九おおお……こんな街中の公園に
桜並木があるとはな……!
邑田うむ、いかにも。
かように見事な桜があるならば、
花見をせぬわけにはいかんだろう?
在坂3日後に、キセルが来校予定だ。
歓迎のために日本の行事を利用する……
という名目なら、在坂たちの主張も通るはず。
邑田今日も「下見」という名目で
外出許可をもぎ取ったことであるしのう。
十手はは……なるほど、それはいい考えだ!
ぜひ参加させてもらいたいよ……!
八九はぁ、そうかよ。
ならあんたらだけで楽しみな。
俺はゲームするからパ──
邑田&在坂…………。
八九……ハイ、スンマセン……。

──3日後。

キセルおおっ!?
こいつは立派な桜だなァ!
それに……お重に酒まで用意されてるときた。
十手はは、いいだろう?
邑田君と在坂君、
それに〇〇君の提案なんだよ。
キセル異国英吉利の街並みを背景に、
桜見ながら飲んで食ってってか!
ったく、こりゃまた粋だねェ!
邑田して、八九。
紅ほのかは入っておるのじゃろうな?
八九はぁ……こっちにあんだろ!
あんたがしつこく言ってたから、
いっぱい持ってきてやったんだよ!
在坂八九が夜からの場所取りで疲れていないか、
在坂は心配だ。
八九いや、誰がんなことするか!
シート張って「使用予定だから近づくな」って
張り紙しとくだけで、十分だったっつーの!
キセルおい、十手!
今日はとことん飲むぞ! ほら、盃出しな!
十手えっ? 飲むのかい?
〇〇君の前で酔っ払うのは
ちょっとなぁ……。
キセル何言ってやがんだ!
こんなにキレイな桜の前で飲まねぇたぁ、
花に失礼ってモンだぜ!
十手ええ……。
十手……でも、確かにその通りか!
よーし、俺も飲むぞっ! 一杯頼むよ!
キセルよしきたァ!
在坂在坂は、とても腹をすかせている。
……どれも、美味い。
八九あ、おい! それ俺のウィンナーだろうが!
邑田ほっほっほ、よいではないか。
それより八九、盃が渇いておるぞ。
ほれ、わしが注いでやろう!
八九いや、俺飲まねぇよ! この酔っ払いめ!
くそ、早く帰りてぇ……。
キセルははっ……くーっ!
つまみが美味いと、花見酒も格別だなァ!
ほら十手も、もっと飲みな!
十手ああ!
ん~っ、美味いな~!
はぁ~~、まったくいい心地だ!
十手〇〇君、楽しんでるか?
いっぱい食べてるか~? あははははっ!
主人公【楽しんでるよ】
【美味しいね】
十手よかったぁ……
〇〇君に喜んでもらえるのが、一番だ!
俺は、そのためにいるんだからなぁ……。

十手の手にしていた盃に、
ひらりと桜の花が舞い落ちる。

十手おお……ははっ。
風流だなぁ……! ああ、風流だ……!

Ep5. ふたりの特別な盆栽

十手──ん? 〇〇君じゃないか。
どうしたんだ?
主人公【これを見せたくて】
十手これって……ノートかい?
なになに? タイトル、BONSAI……
十手……! 盆栽について、まとめてある……!?
これは、〇〇君が書いたのか!?
十手盆栽の歴史、盆栽の種類、盆栽の育て方……
これだけの情報をまとめるなんて、すごいな!
主人公【十手の話が興味深かったから】
【盆栽について理解したかったから】
十手それで、ここまで……!
いやぁ、本当によく書けてるよ。
盆栽のついての基礎知識は、ばっちりだな……!
十手知識を得たなら、次は実際に育ててみるといい!
育てる過程で、また新しい発見があるはずだ。
主人公【育てやすいものはあるかな?】
【十手のおすすめは?】
十手そうだな……初心者なら王道かつ定番の松や、
真柏(しんぱく)あたりだろうか。
常緑樹だから、年中葉の付いた状態を鑑賞できるよ。
十手ああ、でも華やかさを楽しめる梅や桜、藤とか……
季節の移り変わりが葉の色の変化で楽しめる紅葉とかも
いいかもしれない。
十手それぞれに魅力があるから、
自分の好みのものを選ぶといいよ。
十手……こんな風に話していたら、
俺も盆栽をやりたくなってきたな。
でも、いつまで育てられるかわからないし──
主人公【一緒にやろう】
【2人で協力すれば大丈夫】
十手えっ、いいのかい?
だったら……!
十手あっ! いやいやいや。
無理しなくてもいいんだよ!
十手俺に気を遣って提案してくれたんだと思うけど、
育て上げようと思ったら、豆盆栽でも2年くらい、
小品盆栽では3年もかかるんだ。
十手もし途中で俺がいなくなったら……
俺の分まで、長い間、君ひとりで
面倒を見なければいけないことになる。
十手そんな苦労はかけられないさ。
こんなおじさんの都合に
若い君が付き合う必要はないんだよ。
主人公【気にしないでほしい】
【自分自身がやりたいから】
十手ほ、本当かい……?
君がそこまで言うなら……やろう!
十手……ははっ。
君は本当に、優しい子だなぁ……。
十手それじゃあ……
どんな盆栽を育てるか、一緒に決めようか。

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