【完璧主義の鉄の秘密】エルメ

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解説

カード解説

これは遠い記憶の欠片。ドイツでの、彼らの物語の前日譚。
兄として指揮官補佐として、常に完璧たろうとするエルメ。けれど『人間らしい振る舞い』は、ある日突然限度がくる。
「もうこのまま、銃になってしまいたい……」

心銃解説:ぜんまいばねを巻く時間

鉄の日。すべてをかなぐり捨てて鉄になる日。残念ながら、体は捨てられないのが難だけど──
ん、いやなんで怒るの?なんで?
だって鉄が服着てたら変だろう?

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. ドライゼの秘密

これはまだ、〇〇が『おじさん』に会うために
ドイツへと向かうより前の、連合軍ドイツ支部での話──。

エルメ今日もアウトレイジャーに苦戦したね。
対人と対アウトレイジャーでは戦い方がまるで違うし、
いきなり出てこられると損害が大きくなる。
ドライゼああ。どこにアウトレイジャーが出ても
速やかに対応できるよう、貴銃士の配置を
今一度組みなおす必要がある。
エルメそうだね。
ジグが1人でちゃんとセーブして戦えれば、
俺ももう少し自由に動けるんだけど……。

作戦会議が進む中、
部屋の扉をノックする音があった。

ドライゼ入れ。
兵士──失礼いたします!
ドライゼ……っ!?

部屋に現れた兵士の軍服は、
べったりとついた血と土で汚れていた。

兵士先刻の戦闘においての
我が隊の被害状況について、
取り急ぎご報告に参りました。
エルメちょっと。
君、怪我をしているの?
兵士いえ、これは重傷者を背負って運んだためで
私の血ではございません。
兵士報告に移ってもよろしいでしょうか……?
ドライゼ……ああ。始めろ。
エルメ(……?)

兵士──現時点での報告は以上です。
のちほど、報告書もまとめて提出いたします。
では、失礼いたします!
ドライゼ……ご苦労。
ドライゼ──おい! 待て!
兵士はっ……!?
ドライゼドアノブが汚れている!
兵士あっ! も、申し訳ございません!
掃除用具を持ってまいります!
ドライゼ…………。
軍の施設は、常に整理整頓し清潔に保つべきだ。
ドライゼその服ではまた他の場所を汚す。
速やかに着替えるように。
兵士Jawohl!
エルメ(随分と綺麗好きなんだね……)

──それから、数時間後。

エルメ(──ん? あれは……)
ドライゼ…………。

ドライゼが、鬼気迫る形相で廊下に座り込んでいる。
よく見ると、先ほどの会議室のドアノブを
丹念に磨いているようだった。

エルメ(あのあとすぐにあの兵士が戻ってきて、
地や土埃の汚れはしっかり取れていたはずなのに……
なんでドライゼがまた掃除を?)
ドライゼだめだ、汚れている……。
まだ、取れない……!
エルメ……!
エルメ(もしかして、彼は……)

エルメ──ふぅ、なんとか片付いたね。
派手に返り血を浴びてしまったけれど、
まあ良しとしよう。
ドライゼよくやった、エルメ……。
エルメどうしたの? ドライゼ。
顔色が悪いけど。
ドライゼいや……なんでもない。
エルメそう?
……さっきの、いい指揮だったよ。
さすがはドイツ支部特別司令官だね。
ドライゼ……なんの真似だ。
エルメ互いを称えるための握手だよ。
何か問題があるかな?
ドライゼ…………。
エルメ今後もお互いに力を合わせていこう。
──さぁ、手を。
ドライゼ……っ!
離れろっ……!
エルメ……ああ、やっぱり。
君って、血や汚れが苦手なんだね。
エルメ自分では絶対に引き金を引かないのも、
そこに理由があるのかな?
ドライゼ……! 貴様っ……!
エルメははっ、ごめんごめん。
別に言いふらそうなんて思ってないから、安心して。
ドライゼ……っ。

エルメまさか、あの真面目で高潔で、
欠点なんてないようなドライゼに
こんな弱点があったとはね……。
エルメははっ……!

Ep2. 銃は銃

兵士エルメ特別司令官補佐!
ジーグブルートさんが……!
エルメん? ジグがどうしたの?
兵士とにかく大変なんです!
急いできてください!

エルメ──で、理由は?
ジーグブルート…………。
エルメ黙っていたらわからないでしょ。
何も言わないってことは、特に理由なく、
兵士たちに殴りかかったということなの?
ジーグブルートちげーよ!
……くそっ。
ジーグブルート……あいつらが胸クソ悪ぃ話をしてたのを
たまたま聞いたんだ。
エルメへぇ。どんな?
ジーグブルートドライゼが部下思いだとか、
エルメはどんな時も頼りになるだの
てめぇらがいればドイツ支部は安泰だの……。
ジーグブルートそれだけなら、別にどうでもいいくだらねぇ感想だ。
だがよ……。
ジーグブルートあいつら、俺のことを貶しやがった!
性格も態度もよくねぇだとよ。
俺の100分の1も使えねぇザコの分際で!
エルメ(……間違った評価だとは思わないけど)
ジーグブルートしまいにはあいつら……!
ジーグブルートよりにもよって、この俺を
『ドライゼやエルメの足を引っ張る欠陥銃』だとかぬかしやがった!
エルメ……はぁ。
エルメ君が殴った兵士は、軍医が治療中だよ。
なんとか意識はあるけど、設備が整った病院へ
移送しなきゃいけなくなるかもしれない。
エルメ兵士たちが言うには、彼が「やめてくれ」と懇願しても、
君は執拗に殴り続けたらしいね。
これは事実?
ジーグブルート知るか。痛ェのが嫌で喚いてただけだろ。
こっちが大人しくやめたところで、
あいつらは余計にグダグダ悪口言うんだよ。
ジーグブルート二度と口が利けないくらいに締め上げとかねぇと。
エルメあのね、むやみに兵士を殴ってはいけないんだよ。
軍の規律が乱れるだろう?
ジーグブルートああ?
なら、あいつらの暴言を見過ごせって言うのかよ!?
ジーグブルート俺は欠陥銃なんかじゃねぇってのに。クソが!
エルメうーん……要するに、
悪口を言われて頭にきたから殴ったってことだよね。
エルメジグ、俺たちは銃、貴銃士だよ。
感情に振り回されて動くなんて、
銃として失格だと思わない?
ジーグブルート…………!
エルメあ、ジグ──。
エルメはぁ……わからないな。
エルメジグはどうして、
人間みたいな振る舞いをするんだろう。
感情に任せて、冷静さを失って……。
エルメ銃は銃。
人間の姿をとるようになったところで、
真の意味では人間にはなれないのにね。

 

Ep3. 解かずにはいられない

???あ、あの……。
エルメああ、ゴーストかな。
どうぞ、入って。
ゴースト失礼、します……。
エルメそれで君は、どうして俺に呼ばれたのかわかる?
ゴーストえっ……!
……いや、さっぱり……。
エルメそうか……。
エルメ君が召銃されてから、しばらく経ったけど……
なんだか、戦いにくそうにしていたから。
何か理由があるなら、解決しておくべきだと思ってね。
ゴーストそれは……ええと……。
お役に立てず……すんません……。
エルメ君は、自分がどうすれば戦いやすくなると思う?
ゴースト……そもそも俺、は……
試作で終わった銃で、実戦向きじゃないから……。
ゴースト湿気に弱いし、暴発することもあるし……
弾もべらぼうに高いから、あんまり撃つのも……。
エルメ君の性能については、当然知っているよ。
なんてったって君は、俺の後継になり損ねた子だから。
ゴーストす、すんません、義兄さん……。
エルメ性能のことは今はいいんだ。
ゴースト、君は貴銃士なんだから、
貴銃士としての戦い方を身に着ければいいだろう?
エルメ戦い方に注意は必要だけど、絶対非道もある。
銃としての優秀さと、貴銃士としての強さは、
また少し違う問題だ。
エルメ君だって、きちんと自分なりの戦い方を見つければ、
十分に戦力になれると思うのだけれど。
ゴースト……それは、義兄さんが優秀だから思うこと……だ。
俺、は……そんな風に器用には……。
エルメ言い訳はいいから。
任された仕事はきっちりしてほしいな。
ゴーストええっ……。
ゴーストえげつなぁ……
フォローもせんと、ばっさり切りよったわ。
自分、心ないんとちゃうか……。
エルメん……?
今、少し違うしゃべり方をしたよね?
方言とか訛りってやつかい?
ゴーストえ、あ、いや……。
エルメ癖がある口調だけど、何に由来してるのかな?
ゴースト……き、聞き間違い、じゃないか……?
エルメううん、それはない。
どうして隠すのかな?
理由でもあるの?
エルメあ。もしかして……
君が言葉に詰まりながら話すのは、そのせいなのかな?
それなら──
ゴーストちょ、待っ……も、もう面談の趣旨とか
関係ないやないか……。
エルメあ、それそれ。
もっといろいろ話してみてよ。
ゴーストいや、その……ド、ドライゼ……!
エルメ……あ、逃げた。

ゴーストドライゼはどこや……。
はよあいつを止めてくれ……!

Ep4. エルメの厄介な日常

ドライゼ作戦は以上だ。
エルメ、お前から見て問題はあるか?
エルメあ……うん、いいんじゃないかな。
ドライゼ集合は早朝だ。
しっかりと準備しておけ。
エルメ…………。
ドライゼエルメ?
エルメん……? ……ああ。
ドライゼ…………。
これは……そろそろいつもの『アレ』か……?

ドライゼ…………。
ドライゼ(エルメが来ないということは……
まさか──)

ドライゼおい、エルメ!
起きているか?
ドライゼはぁ……やはりか。
おい、入るぞ。
エルメ…………。
ドライゼお前……。
軍服もマントも、またこんな脱ぎ散らかして……。
エルメ銃に、服なんて必要ない……。
ドライゼお前というやつは……!
エルメ……何もかも、どうでもいい……。
ドライゼせめて何か着ろ!
ベッドへ行け!
エルメなんで……?
俺はこのままで……なんの支障もない。
エルメ今は動きたくないんだ……。
気に障るっていうなら、君が勝手にすればいい……。
ドライゼ……はぁ……。
ドライゼほら服だ。
せめて着るぐらいは自分でやれ。
エルメはぁー……ドライゼ、何か食べ物持ってきて。
寝たままで、あんまり噛まずに食べられるもの。
ドライゼ何を言うかと思えば……
今のお前の姿、弟たちが見たら泣くぞ。
エルメいやいや……ジグとゴーストに何か言ったら……
俺も、君の秘密をみんなに話しちゃうよ……?
ドライゼなっ……!
……こんな状態でも、タチが悪いな。
ドライゼとにかく食事を運んでくるから、
それまでに顔を洗え! 髪を整えろ!
エルメえー……。
ドライゼそれすらもできないようであれば、
俺はもう面倒を見きれんぞ!
エルメあーあ。わかった、わかったよ……。

──これが、連合軍ドイツ支部の
エルメの部屋で、毎月不定期に繰り広げられている、
極秘の日常風景である。

Ep5. 彼との接し方

エルメとドライゼが、
〇〇の貴銃士となり、
度々士官学校に来るようになってからのこと──。


エルメ貴銃士は銃、考える鉄。
俺は召銃されてこの身を持ったけれど、
人間として扱われたいわけじゃない。
エルメもちろん、あなたからもね……マスター。

エルメマスター、訓練お疲れ様。
今日は暑いね……。
ちゃんと水分補給をしなきゃだめだよ。
エルメ──って君に注意したら、
なんだか俺も喉が渇いてきた。
えっと、俺のボトルはどこだっけ……。
主人公【これをどうぞ】
エルメ……ん? なんで、オイル?
これは銃のメンテナンスに使うものだろう……?
主人公【エルメは銃だから】
【人間扱いされたくないって……】
エルメ……もしかして、この間俺が言ったこと?
それで、銃の水分補給ならオイルって考えたわけか。
エルメふ……あはははっ。
君って時々馬鹿正直というか、
突拍子もないことをするね。
エルメ確かに人間扱いは無用だと言ったけれど……
今の俺って、一応人間の体を模しているわけだから。
エルメ肉体に関しては、食事とか睡眠とか、
人間と同じようにケアしないと駄目だと思うんだよね。
エルメさすがに、貴銃士の身体でオイルを飲んだりしたら、
無事でいられるかわからないし……。
ほら、マークスだって、時々お腹を壊してるだろう?
エルメつまり、そういうこと。
まぁ、俺をきちんと銃として認識してくれてるのは、
嬉しいんだけどね。
エルメ…………。
エルメははっ……それにしても、
ここでさっとオイルを出してくるなんて……。
主人公【ごめん】
【勘違いしてしまった】
エルメ一瞬何事かと思ったけど、面白かったし、
気持ちはありがたく受け取っておくよ。
エルメこのオイルも、銃のメンテナンスに
ちゃんと使わせてもらおうかな。
エルメありがとう、〇〇。
これからも、俺が『考える鉄』だってこと、忘れないように。
よろしくね。

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