ブラウン・ベスの名を冠す、咲かない薔薇。
薔薇を巡り、秘め続けた思いをぶつけあった太陽と月。ずっと怖くて直視できなかった友
の思いに、決死の思いで否を言った。
もう二度と、友を失う思いはしたくない。
ベスくんは、大切な友達。
でもね、ジョージ? 君も大切な友達なんだ。どっちかだけじゃない。どっちも、大切な友達。
いつか、3人で旅に出よう。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
シャルルヴィルは、ジョージからプレゼントされた
月の模様の服を着て校内を歩いていた。
シャルルヴィル | フライドオニオンが好き♪ ボクは玉ねぎが大好き♪ |
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恭遠 | おや、シャルルヴィル。 今日は洒落た服を着ているな。 |
ケンタッキー | へえー! それ、ヴィンテージもの? すんげえクールじゃん! |
シャルルヴィル | ふふ、格好良いでしょ~。 この服、ジョージがプレゼントしてくれたんだ♪ |
ケンタッキー | え! ジョージが!? マジかよ! |
ライク・ツー | あいつ、意外とセンス良かったのか。 これ、柄物で装飾もついてるのに上品な派手さで…… 一流のブランド品みたいだ。 |
恭遠 | ああ、とてもシャルルヴィルに似合ってるよ。 |
シャルルヴィル | ありがとう、嬉しいなぁ……! あとでジョージにも、みんなが褒めてたって言っておくね! |
エンフィールド | え? ジョージ師匠? |
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シャルルヴィル | わっ!? |
エンフィールド | 失礼。シャルルヴィルさんでしたか。 師匠がいらっしゃるのかと思いました。 今日は素敵な服を着ているんですね。ええ! |
シャルルヴィル | ありがとう! これ、ジョージがプレゼントしてくれた服なんだ。 |
エンフィールド | なんと、師匠からのプレゼントですか! さすが素晴らしいセンスの持ち主でいらっしゃる! |
エンフィールド | ……おや? でも、その服……どこかで……。 |
エンフィールド | ……あっ! |
シャルルヴィル | ん? どうしたの? |
エンフィールド | 思い出しました。 この間、ジョージ師匠のクローゼットの衣替えを したのですが、それと柄違いの服が入っていたんです。 |
シャルルヴィル | えっ? |
エンフィールド | 藍色の生地に光り輝く、高貴な装飾の服。 間違いありません。ええ。 確かに、クローゼットの中にありましたよ! |
シャルルヴィル | (それって……実はお揃いの服だったってこと!?) |
シャルルヴィル | (プレゼントしてくれた時、 そんなこと一言も言ってなかったよね……?) |
シャルルヴィルは、ジョージの部屋を訪ねることにした。
シャルルヴィル | ジョージ、いる? ちょっと聞きたいことがあってさ。 |
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シャルルヴィル | あれ……いないのかな。 |
シャルルヴィル | (勝手に入るのは悪いよね……また後で来ればいいか) |
シャルルヴィルが部屋を出ようとしたその時、
半開きのクローゼットの中で、何かが光った。
シャルルヴィル | (あ……) |
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シャルルヴィルは何かに導かれるように部屋の中へと入り、
クローゼットの中を覗いた。
シャルルヴィル | ……これ! |
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シャルルヴィル | (ボクの服と同じデザインの服だ! エンフィールドが言った通り、こっちは太陽の柄……!) |
シャルルヴィル | (月と太陽でセットの服だったんだ。 これ……なんて素敵な柄だろう……) |
ジョージ | あれ? シャルル? |
シャルルヴィル | ……あ! か、勝手に入ってごめんね……。 |
ジョージ | いや、何か用があって来たんだろ? |
シャルルヴィル | えっと……この服は? |
ジョージ | あ……! |
ジョージ | えーっと……それ、シャルルの服を買ったら、 セットだってもう1着渡されたやつなんだ。 |
シャルルヴィル | そうだったんだ! じゃあさ、一緒に着ようよ! |
ジョージ | オレはいいよ! こんなお洒落なの似合わないって。 |
シャルルヴィル | そんなことないよ。 この太陽、ジョージにぴったりの柄じゃない。 |
シャルルヴィル | ボク、ずっとジョージは太陽みたいだって思ってたんだ。 ボクを照らしてくれる太陽だって……。 だから、絶対似合うよ♪ |
ジョージ | シャルル。 シャルルを照らす太陽はオレじゃないよ。 |
ジョージ | ブラウンだよ。その服を着るのは……。 |
シャルルヴィル | ……! |
シャルルヴィル | だから、隠してたの……? |
ジョージ | うん……。 |
シャルルヴィル | (ジョージには……ジョージの譲れない思いがあるんだ……。 ボクは、踏み込むべきじゃなかったのかな……) |
シャルルヴィルは何も言えず、
気まずい空気のままジョージの部屋を後にするのだった──。
シャルルヴィル | はぁ……。 |
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シャルルヴィル | (ジョージは本当に自分よりも、ベスくんが存在すべきだって 思っているのかな……?) |
シャルルヴィル | (いつも本当に楽しそうにしているのに。 〇〇やみんなと一緒にいれて、 一番ジョージが喜んでいるんじゃないかなと思えるほどに……) |
シャルルヴィル | (心のどこかでは、このまま皆と一緒にいることを 望んでいるんじゃないの……?) |
シャルルヴィル | (ジョージの本心がわからないよ……) |
その時、シャルルヴィルの耳に突然息が吹きかけられた。
シャルルヴィル | ぎゃっ!! |
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グラース | ──ははっ! |
シャルルヴィル | ……グラース! びっくりさせないでよ! |
グラース | あんまりにも、雨が降る前のくもり空みてぇな顔を してたからさ。 さては、デートでも断られたか? |
シャルルヴィル | ち、違うよ。 ちょっと── |
シャルルヴィル | (あ、でもジョージが“あの”ブラウン・ベスだって ことは秘密なんだ……) |
シャルルヴィル | ──とある人と、喧嘩っていうか、 気まずくなっちゃって……本心が知りたいんだよね。 |
グラース | 本心ね……それならいいゲームがあるぜ。 |
シャルルヴィル | え……? |
グラース | 『Truth or Dare?』の開幕だ! シャスポー、タバティエール。 どうせ暇なんだろ? お前らも参加しろよ。 |
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シャスポー | はあ? なんで僕らまで君のゲームに付き合わなきゃいけないんだ? |
タバティエール | まあまあ、シャルルくんを助けると思って参加しようぜ。 |
シャルルヴィル | ボクもよくわかってないんだけど……。 |
グラース | 『Truth or Dare?』のルールは知ってるか? まずはTruthかDareを選ぶんだ。 |
グラース | Truthを選んだら、聞かれた質問に必ず答えなきゃいけない。 Dareなら、罰ゲームだ。罰ゲームはお前らで決めていい。 |
グラース | まずは僕が例としてやってやろう。 僕に隠すことは何もないし、Truthだ! さぁ、なんでも質問してみろ。際どいことでもいいぞ! |
三人 | …………。 |
グラース | 質問は? |
シャスポー&タバティエール | いや、特に……。 |
グラース | おい! |
グラース | 何かあるだろ! 質問! |
シャルルヴィル | え、えっと……好きな食べ物って何? |
グラース | トリュフだな……って、くらだねぇ質問するな! もっと、ファーストキスの味は? とか、 忘れられない夜は? とか、そういうのだよ!! |
シャスポー | 君のそんな低俗なことに興味はない! |
グラース | フン! つまんねぇ奴ら。 じゃあ次はシャスポーの番だ。TruthかDareを選べ。 |
シャスポー | はぁ……なんで僕が。 Truthだ。 |
グラース | 付き合った人数は── |
タバティエール | グラースのいいところは!? |
シャスポー | そんなのあるわけない。 |
グラース | あぁ!? いいとこだらけだろうが! 言わねぇと罰ゲームだぞ。 |
シャスポー | ……。 …………能天気なところ。 |
グラース | はあ? |
シャルルヴィル | ふふっ、確かにそうかも。 |
グラース | 能天気って悪口じゃねぇか? 答えになってねぇだろ! 罰ゲームだ、罰ゲーム! |
シャスポー | 僕はちゃんと答えたまでだ。 そうだろ? タバティエール。 |
タバティエール | まあ、そうだな。 |
グラース | あー、しらけた。こんなゲームは終わりだ! 違うゲームをするぞ! 次のゲームは── |
シャルルヴィル | (みんなと笑って、少し元気が出たかも……。 グラース、ありがとう) |
──シャルルヴィルとジョージは、『ブラウン・ベス』と
名付けられた薔薇の世話で喧嘩をしてしまったが、
無事に仲直りをした後のある日のこと。
ジョージ | Hey! 今日って暇? シャルルと一緒に行きたい場所があるんだ! |
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シャルルヴィル | 暇だよ!! ジョージと一緒に出かけたい! |
ジョージ | よかった! それじゃあ、早速今から行こうぜ! |
シャルルヴィル | うん! |
シャルルヴィル | (やったあ、ジョージとお出かけなんて嬉しいな♪) |
シャルルヴィル | (あ、場所を聞いてなかったな……。どこに行くんだろう? でも、ジョージと一緒なら、きっとどこでも楽しいよね) |
ジョージに連れられて、ついたのは昆虫博物館だった。
シャルルヴィル | えっ……ここ……? |
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ジョージ | うん! 世界一大きいカブトムシがいるって在坂に聞いたんだ! 他にも珍しい虫がたくさんいるんだって! |
シャルルヴィル | へえ……そうなんだ……。 |
シャルルヴィル | (うわぁ……どうしよう。 ボク、あんまり虫は得意じゃないんだけどなぁ……) |
ジョージ | あっ! シャルル見てみろよ、すんごい細くて長い虫だ! |
シャルルヴィル | ワァ……ホントダネ。 |
シャルルヴィル | (ぎゃああああ! デカすぎるぅ!!) |
ジョージ | おお! こいつすげー脚がいっぱいだ! |
シャルルヴィル | ススス、スゴイネェ……。 |
シャルルヴィル | (ひぃぃ、無理ぃ……!!!) |
シャルルヴィル | (で、でも、せっかくのお出かけだし……! ジョージは楽しそうだし……我慢! 我慢だシャルルヴィル! 歩兵の気合いを見せるんだ……!) |
ジョージ | はー、ここのエリアは見応えあったなー! |
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シャルルヴィル | ウン、珍シイ虫ガタクサンイタネ! |
ジョージ | へへ、シャルルも楽しそうでよかった! この先に世界一大きいカブトムシのコーナーがあるはずなんだ! |
シャルルヴィル | あ、ジョージ。あそこじゃない? |
ジョージ | Woooooooo! ヘラクレスオオカブト……間違いない! 世界一大きいカブトムシだ!! |
博物館のスタッフ | こんにちは! このコーナーではお触り体験ができますよ。 持ってみますか? |
ジョージ | はい! |
シャルルヴィル | あ、ボクはいいです。 |
ジョージ | おいシャルル、遠慮するなって~。 クイズ研究会で虫平気になったよな? 大丈夫だって! スタッフさん、シャルルの手にもお願いします! |
シャルルヴィル | ッ……。 |
博物館のスタッフ | では、お2人にお渡ししますね。 |
ジョージ | 間近で見るとすっごく大きいなぁ! なっ? シャルルもそう思うだろ? |
シャルルヴィル | ウン……オオキイ……スゴーイ……! |
ジョージ | あ! 記念に写真撮ろう! |
ジョージとシャルルヴィルはカブトムシを手に乗せ、
スタッフに写真を撮ってもらうのだった。
シャルルヴィル | (……うわ、撮ってもらった写真のジョージは すごい笑顔なのに、ボクの笑顔ぎこちない……!) |
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シャルルヴィル | ……まぁ、これも思い出だよね! |
ジョージ | ん? なんか言った? |
シャルルヴィル | ううん、なんでもないよ! それより、次の展示コーナーは何がいるの? |
ジョージ | ああ、最後は蝶の温室だって。 |
シャルルヴィル | へぇ……。 |
シャルルヴィルとジョージが温室の扉を開けると、
目の前に蝶が舞い降りた。
シャルルヴィル&ジョージ | わあ、綺麗……! |
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シャルルヴィル | すごい、すごいよジョージ! こんなにたくさんの花の周りに蝶が舞っていて……。 まるで夢の中にいるみたいだよ! |
ジョージ | ああ、そうだな。 |
シャルルヴィル | ふふっ、本当に綺麗……♪ ジョージもこっちにおいでよ! |
ジョージ | …………。 |
シャルルヴィル | ジョージ? |
ジョージ | おう! 今行く……! |
2人が昆虫博物館を出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。
ジョージ | 今日は楽しかったな! 付き合ってくれてありがとう。 |
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シャルルヴィル | ボクの方こそ、誘ってくれてありがとう! ジョージと来れて楽しかったよ。 また一緒に出かけて写真撮ろうね! |
ジョージ | ……ああ、そうだな。 |
シャルルヴィル | ふふ、絶対行こうね。約束だよ♪ |
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