【小夜啼鳥の籠】シャスポー

コメント(0)

解説

カード解説

これは遠い記憶の欠片。フランスでの、彼らの物語の前日譚。
鳥籠に囚われた日常。真実を囀ることさえ禁じられた彼は、ふと、自由を求めバルコニーから身を乗り出し──
(っ。今、僕……何を、考えてた……?)

心銃解説:鏡面に映る羨望

誰もが彼を「そう」だと呼ぶ。
違う。違う。僕は此処にいる。
僕を、お前に奪われてたまるか。
たとえ血塗られた名だとしても、それは、僕が僕で在る証だ。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. Isolation

──これは、世界連合軍フランス支部が
〇〇たちにアウトレイジャー討伐の救援を要請する
少し前の出来事。

グラース(※)……はぁ……。
グラース(頭が痛いし、視界がかすむ。
体もだるいし……最悪の気分だ)
タバティエールよっ。
グラース……! なんだ、タバティエールか。
タバティエール調子はどうだ?
……って、この雨じゃいいわけがないか。
グラース……マスターの警護はどうしたんだ。
タバティエールマスターは部屋で休んでる。
俺がそばにいたら落ち着かないだろうと思ってな。
ちょっと散歩中ってところだ。
タバティエールそれにしても、本当に顔色が悪いな。
お前、ロクに休んでないだろ?
グラース…………。
タバティエール……おーい、聞いてるか?
お前の調子が悪いと、マスターも心配するだろ。
無理せず休めよ。
グラース……っ!
グラースうるさい! いい加減にしろ!!
タバティエール……!
いきなりどうした、お前らしくもない。
グラース黙れ。二軍の銃が偉そうに説教するな。
グラース僕の弱った姿を見られて満足か?
それとも、僕を利用して自分の評価を上げる気か?
それは、さぞ楽しいだろうな……!
タバティエールシャスポー……。
グラース……そもそも、
今の君には僕を心配する理由はないはずだ。
もう僕に構うな。さっさと消えてくれ。
タバティエール待ってくれシャスポー! 俺は……っ!
タバティエールやれやれ……。
あんまり無理してねぇといいんだけどな……。
※立ち絵はシャスポー

メイドあの……先ほど大きな声を出されていたようですが、
何かございましたか……?
グラース……別に。
迷い込んできた犬がうるさかったから、
怒鳴って追い返しただけだよ。
メイドさ、左様ですか……。
グラース僕はマスターのところに行くからこれで。
メイドは、はい……。
グラース(屋敷の人間も、他の貴銃士も、誰一人信用できない。
周りはすべて──マスターと、僕の敵だ)

Ep2. 交差する影

〇〇たちがフランスへ行く以前──
リリエンフェルト家にて。

グラース(※1)……っ、お前……。
シャスポー(※2)やあ、奇遇だね。こんにちは。
元気だったかい?
グラース……なんで君がここにいるんだ。
シャスポーもちろん、マスターがリリエンフェルト家に
用があったからだよ。
それ以外にここにいる理由、あると思う?
グラース…………。
言い方を変える。
マスターを放ってのんきに散策か。
シャスポーマスターなら、移動で疲れて少し休んでる。
それと……その言葉、
そっくりそのまま君にお返しするよ。
グラース……僕も似たようなものだ。
マスターがゆっくり部屋で休めるように外に出ている。
シャスポーふぅん……。
グラース……なんだ。人の顔をじろじろ見たりして。
シャスポー別に?
……自分とよく似た自分じゃないヤツがいるのって、
やっぱり不愉快で目障りだなぁと思っただけ。
グラース……それは僕の台詞だ。
僕と瓜二つの顔で、したり顔をされるのは腹が立つ。
シャスポーあまり意気がるなよ。
まともに戦うこともできない、
自分のマスター1人すら守れない役立たずのクセに。
グラース……っ!
そっちこそ! 僕がいないと生まれもしなかった
後追いのクセに!!
シャスポー……なんだと?
お前、自分の立場が──。
タバティエール2人とも、そこまでだ!!
グラースタバティエール……!
タバティエールまったく。戻るのが遅いと思って見に来てみれば……。
シャスポー……相変わらず、僕の邪魔をするのが好きだね、君は。
タバティエールリリエンフェルト家の廊下で
取っ組み合いを始めそうになってたら、
誰だって止めるに決まってるだろ。
タバティエールそれより、早く戻るぞ。
マスターが俺たちを探してる。
カトリーヌ……ねぇ。
彼──グラースを見かけなかった?
テオドールシャスポー、タバティエール。どこにいる?
シャスポーああ、マスター。
グラース今戻るよ。
タバティエールふぅ、いいタイミングで呼ばれたな。
ほら、行くぞ。
グラース……チッ。
シャスポー覚えておけよ。
シャスポー僕は欲しいものは絶対に手に入れる。
──たとえ奪ってでも、ね。
グラース…………。
グラースマスターは僕が守る。
お前なんかには、絶対に渡さない。
※1:立ち絵はシャスポー
※2:立ち絵はグラース

 

Ep3. お節介なあの人

シャルルヴィルさ、どんどん食べて。
どのお菓子も一級品で美味しいよ!
グラース(※)…………。
シャルルヴィルあ、もしかして甘いものはあんまり好きじゃない?
ほら、こっちなら甘さ控えめだよ。
グラースいえ、味の問題ではなくて……。
……どうして僕は、リリエンフェルト家の庭で
あなたとお茶会をしているのだろうかと。
シャルルヴィルそりゃあもちろん、ボクが招待したからさ。
最近ピリピリしてるみたいだから
息抜きでもどうかと思ってね。
グラース余計なお世──
グラース…………。
シャルルヴィルどうかした?
グラースいえ……。
グラース(……性能は僕より劣っていても、
僕のマスターより格上の家の貴銃士……
ヘタな真似はできないか……)
グラース……気遣いは嬉しいですが、僕のためだけに、
他家の……それもリリエンフェルト家の貴銃士の手を
わずらわせるわけにはいきません。
グラースそれに、できればマスターのそばにいたいので……
申し訳ないですが、そろそろ戻らせてもらおうかと。
シャルルヴィルあ、その紅茶、冷める前に一口飲んでみて?
冷めても美味しいけれど、
ボクは熱いほうが好きかな~。
グラース……僕の話、聞いてます?
シャルルヴィルまあまあ。いいから座ってよ。
……そんなに焦らなくても大丈夫。
シャルルヴィル今回はボクのわがままで呼び出してしまったからね。
君のマスターは今頃もてなしを受けて、
ゆっくり休んでいると思うよ。
グラース……そういうことか……。
グラース…………少しばかり不本意ですが、
マスターに休息の場を作ってくれたこと、感謝します。
シャルルヴィルさて、なんのことやら。
ボクはただ、同郷の貴銃士とお茶会がしたかっただけだよ?
グラース……建前は承知していますよ。
グラースどうせなら、マスターも一緒に
お茶会に呼んでもらえればもっと嬉しかったのですが。
シャルルヴィルあはは、ごめんね。
でも、君たちがボクと結託して何か企んでる~、なんて
変な噂が立つのも困るでしょ?
グラース……それは確かに困りますね。
マスターの立場を悪くするのは、
僕の本意ではありませんから。
シャルルヴィル……君は本当に、マスターを大切にしているんだね。
グラース当たり前でしょう。
マスターは僕を大切にしてくれるし、
僕もマスターのことを守りたい。
シャルルヴィルそっか……。
……うらやましいな。
グラース……?
シャルルヴィルあ、カップが空になってるじゃん。
紅茶のおかわり、いるよね?
グラース……いただきます。
グラース……ん? これ、さっきのと違う……?
シャルルヴィルご名答♪
これはハーブティーの一種でね。
リラックス効果があるんだって。
グラース……この茶葉、分けていただくことは?
シャルルヴィルもちろん!
今日のお礼ってことで、
帰りに茶葉をプレゼントするよ♪
グラース……ありがとう、ございます。
グラース(帰ったらマスターにこのお茶を淹れてあげよう。
ふふ……マスターの笑顔を見るのが楽しみだな)
※立ち絵はシャスポー

Ep4. 鳥籠の中で

グラース(※)──それじゃあ、僕はちょっと外すから、君は休んでいて。
僕が戻るまで、うかつにドアを開けてはいけないよ?
カトリーヌええ……。
グラース……さてと。
※立ち絵はシャスポー

グラース……ああ、執事長。ちょっといいかな。
執事長おや、わたくしめに何か御用ですか?
グラースここ最近のアウトレイジャー騒動もあって
マスターは、少し気が滅入っているようでね。
グラース屋敷にこもりきりでは身体にも良くないし、
気分転換に少し外出させてあげたいんだ。
執事長……申し訳ありませんが、それはなりません。
グラースなぜ? ちょっとくらいならいいじゃないか。
執事長外出は控えるようにと、
奥様から厳しく言いつけられておりますので。
グラース……! またあいつか……!
グラース……はぁ。
わかった、じゃあ庭でいいから、お茶の用意を──
執事長そちらもお受けしかねます。
今後一切、特別な用件を除いては、
屋敷の外へは一歩も出させてはならぬとのご命令です。
グラース……!
どいつもこいつも言いなりか!
執事長……それがわたくしどもの務めですので。
グラース横暴に目をつぶり、加担し、
マスターを苦しめるのがそんなの楽しいのか?
……この外道どもが!
執事長お待ち下さい、グラース様!
グラースもういい!
言い訳は聞きたくない!

グラース……ついに軟禁にまで……!
グラースマスター相手にここまでするとは、
いったいどれだけ性根が腐っているんだ……!
メイド1……見て……よ……
メイド2……や……ね……
グラース……!

グラース……はぁ。
グラースこれじゃあ僕たちは、まるで籠の中の鳥だ……。
グラース閉じ込められて、徐々に飛ぶ力を失っていき……
最後には鳥籠の中で──
グラースうぐっ……。
グラース今日は特に湿気もないはずなのに、頭痛が……
いや、マスターの現状を鑑みれば当然か……。
グラース(窮屈な屋敷の一室で
些細な自由すら奪われていくマスター……)
グラース(マスターは僕以外の誰にも頼れない。
力になれるのは僕だけなのに
僕は彼女を守りきれていない)
グラース(どうすればいい。
どうすれば僕はマスターを守れる?
どうすれば、この地獄から逃げ出せる……?)
グラース……ああ、そうだ。簡単なことじゃないか。
グラースいっそマスターと一緒にこのバルコニーから
飛び降りてしまえば、楽に──
???チチチッ。
グラース──っ!!
グラース……僕は今、何を……!
サヨナキドリピュイッピュイッ
グラースそうか……
君が僕を引き留めてくれたんだね。
ありがとう……。
サヨナキドリチチチッ
グラースまったく……僕もどうかしていたな。
──いや、だが……。
グラース「飛び降りる」っていうのはさすがに短絡的だけど、
「この家を出る」という考え自体は
悪くないかもしれないな。
グラースいっそ、マスターを連れて、
誰も僕たちを知らない土地へ逃げてしまおうか……。
グラースこの小鳥のように、
何も持たずに羽ばたいてしまえば、
幸せに少しは近づけるのかな……。
サヨナキドリピチチチチッ!
グラースあっ……。
グラース行ってしまった……。
グラース…………。
グラース……そろそろマスターのところへ戻らないと。
遅れると心配させてしまうしね。

Ep5. たったひとつの願い

──〇〇たちがフランスでの任務を終えて
しばらく経った頃、士官学校にて。

主人公【シャスポー、いる?】
【ちょっといいかな】
シャスポー〇〇?
どうしたんだい?
主人公【届け物だよ】
【シャスポーに会いにきた】
シャスポーえっ? 僕に?
シャスポーこれ……前のマスターからの手紙?
シャスポーそういうことか。
届けてくれてありがとう、〇〇。
シャスポー宛名に君の名前も書いてあるみたいだけど、
もう読んだ?
まだなら今から僕と一緒に読もうよ。

シャスポーえっと……この前の結婚式のお礼と
近況報告が中心みたいだね。
シャスポー……ふふっ。
『みなさんに祝福してもらえて本当に幸せでした』だって。
こんなに喜んでもらえて、僕も嬉しいな。
シャスポーそれに、この結婚がいい機会になって、
レザール家とロシニョル家は
以前よりも歩み寄りの姿勢が強くなってきたみたい。
シャスポー少しずつだけど交流も増えてきてるって。
主人公【よかった】
【これからが楽しみだね】
シャスポーうん。
両家の仲が良くなればきっと、
彼らはもっと幸せになれるだろうしね。
シャスポー……あの家には、
つらい思い出も多いけれど……
あの人が幸せになれて、本当に良かった。
主人公【前のマスターのところに戻りたい?】
【彼らのことが気になる?】
シャスポーえっ! それは……もちろん少しは気になるよ。
だけど、彼らはもう、僕たちがいなくても大丈夫。
シャスポー2人が今こうして幸せに生きているのなら、
僕はそれだけで満足だよ。
シャスポー今の僕は君のもので、
君のために力を使うと誓った貴銃士だ。
シャスポー今の僕にとって一番大事な人は、
前のマスターじゃなく──君なんだよ。
シャスポー君は僕に自由をくれた。
……今度こそ、僕は僕の大切なものを……
君のことを守ってみせるよ、〇〇。
シャスポー……だから、絶対に僕を見捨てないで。
僕を君のそばにいさせてね。
シャスポー……ずーっと、一緒だよ?
〇〇。

コメントを書き込む


Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

まだコメントがありません。

×