【嘆きのゴースト】ケンタッキー

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解説

カード解説

きっかけは、憧れか羨みか。数多の願いが向かった聖杯は、奇跡と混沌を招く。
たとえ華やかさが失われたとしても、いつまでも俯いてなどいられない。
いつだって最高の自分でいようと試みる精神こそが大事なのだから。

心銃解説:~存在感ブルース~withG

(地味になっちまった……)
(ワイなのに存在感がある!?)
対象的な2人の入れ替わりが繋ぐ奇妙な縁。魅力は人それぞれ、だけどやっぱり自分が一番!

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

 

Ep1. 『おれにきづいて』

士官学校でとある事件が起こる数日前のこと──。

ケンタッキー…………?
ケンタッキー(なんか、さっきから視線を感じるような……。
視線っつーか、微妙な気配っつーか……)

ケンタッキーは、そーっと慎重に振り向いてみる。
しかし、そこには誰もいなかった。

ケンタッキーき、気のせいだよな……?
ケンタッキー……うひぃっ!?
ケンタッキー(い、いいいい今、なんか音がしたよな……!?
ままままさか、ユーレ……)
ケンタッキー(い、いや! そんなわけねーよな!?
ないない! 絶対ない!!)

──その日の夕方。

トイレに向かっていたケンタッキーは、
自分の足音に違和感を覚えて立ち止まる。

ケンタッキー(なんか……俺の足音重なって、
違う足音が聞こえるような気がすんだけど……)

恐る恐る再び歩きだすと、
ひたひたと、静かな違う足音が重なるように聞こえてきた。

ケンタッキー……!

再びぎくりと固まったケンタッキーは、
勇気を振り絞って後ろを振り返る。
すると……そこには、一枚の紙が落ちていた。

ケンタッキー手紙……?

ケンタッキーは、二つ折りにされた便せんを開く。
インクが垂れ、ところどころ滲んだおどろおどろしい文字で、
こう書かれていた。

『おれに きづいて』

ケンタッキー………………。
ケンタッキーひ、ひっ……。
ケンタッキーぎゃあああああああ!!!!

ケンタッキーが走り去った後、
捨てられた手紙をそっと拾い上げる人影があった。

???…………。
ゴーストワイなんやけど……。
ゴースト手紙でもあかんとか……もうどないしよ……。

遡ること数時間──この日の朝のこと。

ゴースト……ん? この消しゴム……。
ゴーストなぁ……ケンタッキー。
ケンタッキーだぁかぁらぁ、風を読むんだって!
ジョージ風なぁ~、よくわかんねーんだよなぁ。
ペンシルヴァニアは狙撃の時どうやってんだ?
ゴースト……消しゴム、落としたよ……。
ペンシルヴァニアそうだな……狙撃地点の草木のゆらめきを見ている。
できれば、風が収まった瞬間がいいからな。
ジョージナルホド☆
でもさ、ゆらゆらしてる木見てると眠くなるよな~。
ゴースト……あの……。
ケンタッキーあっ、やべ! 次の授業、音楽室じゃん。
早く行かねーと!
ゴースト…………。
……まっっったく、気づかれんかった……。
ゴーストふふ……気づかれへんのはいつものこと過ぎて、
もはや傷つかんワイ……。
ゴースト……ウソ。
ほんまはちょっとだけ傷つくけど慣れてるワイや……。
ゴーストくぅっ……覚えとれよ……。
絶対、この消しゴム渡したる……!

こうして、ケンタッキーに消しゴムを渡すため
奮闘し始めたゴーストだったが、
存在に気づかれず、怯えられるばかりで夕方を迎えたのだった。


──その日の夜。

スプリングフィールドケンタッキー……大丈夫?
スプリングフィールドそんなに怖いなら今日はシャワーなしで、
濡れタオルとかでも……。
ケンタッキーだだ、大丈夫だって!
別に怖くねーし!? 負けねーし!?
スプリングフィールドう、うん……。
ケンタッキー(大丈夫だ、目ェ閉じなけりゃ怖くない……はず。
スーちゃんがいるうちに洗面台で顔だけ洗って、
シャワー室では顔濡らさないようにして──)

バシャバシャと顔を洗い、
ケンタッキーは顔をあげる。
すると──背後にぼんやりと白っぽい影が佇んでいた。

ケンタッキー(スーちゃん……?)
ケンタッキー(い、いいいや、スーちゃんは真横にいるんだから
この角度で映るはずねぇ!)
ケンタッキー(ま、ままま、まさか……!)

ケンタッキーが真っ青になって硬直した瞬間、
背後から何者かに肩を掴まれたのだった。

ケンタッキーひぎゃーーーーッッ!!

ケンタッキー…………あれ?

ケンタッキーが目を覚ますと、
そこには見慣れた寮室の光景があった。

スプリングフィールドああ、なるほど……。
そういうことだったんですね。

スプリングフィールドが誰かと話している声が聞こえ、
ケンタッキーはそちらへぼんやりと目を向ける。

ケンタッキー(ん? え……?
でも、スーちゃんの隣、誰もいねーよな……??)
スプリングフィールドあ、ケンタッキー?
やっと目が──
ケンタッキースーちゃん……!
だ、誰と話してるんだよっ!!
スプリングフィールドえ?
スプリングフィールドゴーストさんだよ……?
ケンタッキーGHOST!?
あ、ああああ悪霊!?
スプリングフィールドあっ、いや、そっちのゴーストじゃなくて
貴銃士のゴーストさんが……。
ケンタッキーいねーだろ……!?
スプリングフィールドいるよ??
ゴースト……いる……。
ケンタッキーんぎゃっ!?

はっきりと声が聞こえて、ケンタッキーは飛び上がりながら
声の方を意識してしっかり見る。
そこには確かにゴーストがいた。

ゴーストやっと気づいた、か……。
……これ、渡したかったん、だ……。
ケンタッキーあっ……!
今朝から見つかんなかった消しゴム!

それから、ゴーストはこれまでのいきさつを
ケンタッキーに説明した。

ケンタッキーそういうことだったのか……!
なんか、気づかなくてごめん。
ゴーストいや……いつものこと、だから……。
ケンタッキーいつもの……?
いつもこんなんだと大変だし周りもこえーだろ……!?
お前、もっと存在感出せねぇの?
ゴーストぐうっ……。
ゴースト(そんなもん、出せたらとっくに出しとるわ……!!)

Ep2. 覚悟のカラコン

フィルクレヴァート士官学校創立7周年記念行事の裏で、
貴銃士たちが入れ替わるという珍事件が起こっていた。

ケンタッキーはゴーストと入れ替わり、
あまりの存在感のなさに打ちひしがれていたところを、
ゴーストたちに発見されたのだった。

ゴーストほら……。
全員集合するんだ、と……。行く、ぞ……。
ケンタッキーその前に……お前、ちょっとこっち来い。
ゴーストえっ?

ケンタッキーに突然腕を掴まれたゴーストは、
そのまま寮まで連行されたのだった。


ケンタッキー…………。
ゴーストな、なに……!?
ケンタッキーお前……カラコンしてねーじゃん!!
ゴーストえ……?
ケンタッキー鏡見てみろ、鏡!
ゴーストんん……?
……あ、目の色が、いつもと違う……。
ケンタッキーその……普段はカラコン付けてんだよ。
このことは、マスターくらいにしか言ってねぇ。
ゴーストふぅん……そうな、のか……。
ゴーストこのヘーゼルも、別にいいと、思うけど……。
ペンシルヴァニアも、こんな感じの色、だよな……。
……あ、元になった銃だし、お揃いなのか。
ケンタッキーちげーよ!!
お揃いとか言うなっ!!
ゴーストええ……?
実際よく似……てると思うけど……。
ケンタッキーとにかく!
このことは、ぜってー他のやつらに言うなよ!
ゴースト……わかった。
ゴースト(しばらくカラコンなしでうろついとったし、
何人かにはバレとるやろうけどな……)
ケンタッキーっつーわけで、その目のままでうろうろすんなっ!
今すぐカラコンつけろ!
ゴーストえ……。嫌、だ……。
ケンタッキーあぁ!?
ゴーストコンタクトって、目ん玉の中に入れるやつ、だろ……?
そんなの、付けたことないし……怖すぎる……。
ケンタッキー怖い怖いって思ってるから怖いんだよ!
ちょちょっとペッて入れるだけなんだから我慢しろ!
ゴーストで、でも……。
ケンタッキーそもそも、それ俺の身体だろ!?
俺のセンスとイメージの問題なんだよ!
ケンタッキーそれくらい好きにさせろよ! 頼むから!!
ゴースト(まあ、確かにこれ、あんさんの身体やもんな……)
ゴーストわかった……やってみるか。

──数分後。

ケンタッキーよーし!
そのまま、目ぇ開けてろよ……。
ゴーストひぇ……。
ケンタッキーおい、目ェ閉じんな!
ゴーストと、閉じてない……。
ケンタッキー閉じてる! めちゃくちゃ閉じてるから!!
頑張ってかっ開け!!
ゴースト(目、開けなあかんのはわかっとるのに、
そんだけのことがむっずいわ……)

ゴーストは目を閉じたくなるのをなんとか我慢し、
どうにか頑張って目を開こうとする。

ケンタッキー違うっ!!
ゴーストええ……? 目、開けてる、だろ……!?
ケンタッキー開けてるけど、お前今、白目になってっから!!
ゴースト(んなアホな……!)
ケンタッキー……いい加減、覚悟決めろよ。

ケンタッキーは真剣な顔つきでゴーストの顎を
片手で持ち、自分の方へと向かせた。

ゴースト(これは……俗に言う『顎クイ』……!?)
ケンタッキー落ち着け、安心しろ。
なんにも怖くねぇから。
ケンタッキーお前は、俺の顔だけ見てろ。
ゴースト(えっ……目の前にあるのは、ワイの顔のはずやのに……
なんか、キラキラして見える……!?
なんや、この胸のざわめきは……!)
ゴーストあっ。
ケンタッキーよし! うまく入ったな!

ゴーストがぼーっとしている隙に、
ケンタッキーはカラコンの装着に成功する。

ゴースト(くそぅ……!
なんかよぉわからんけど、敗北した気分や……!)
ケンタッキーおし、じゃあ次だ!
ゴースト次……?
ケンタッキーお前の目は1個じゃねーだろ。
次、もう片方な! 今みたいにちゃんと開いとけよ。
ゴーストひっ……! ひぃ~~っ!!

Ep3. やっぱり勝てない

──7周年記念行事を終え、
入れ替わりも無事に解決したある日のこと。

士官学校の裏庭をゴーストが散歩していると、
温室のガラスに向かって何かを呟く八九を見つけた。

ゴースト(……ん? 何しとるんや? あいつ……)
八九……ねぇ。
俺の身体でみっともないことをしないでくれるかな?
ゴースト……!?
ゴースト(演劇か……? でも、あいつは舞台とか立たんやろうな。
なら、誰かの真似しとるんか……?)
八九うぇっ、なんか違うんだよな……。
エルメが入ってる時のあの格好良さはどこに行った……?
声も顔も俺だし理論上可能なはずなのによ……。
ゴースト……!
ゴースト(ワ、ワイもケンタッキーが入っとる時のワイは
ちゃんと存在感あるし妙にキラキラしく見えてええなぁ、
羨ましいなぁて思っとったし真似したいとも思ったけど……)
ゴースト(実際こうやって誰かの真似しとるやつ見ると、
全身むず痒ぅてぞわぞわそわそわして耐えられん……っ!)
ゴーストうああぁぁぁあああ……。

ゴーストが羞恥心で崩れ落ちながら呻くと、
その声で初めてゴーストがいたことに気づいた八九が飛び上がる。

八九ひょあっ!?
ま、ままままさかお前、今の見て……!?
八九うわああああ~~~!!!!

──数分後。
ようやく少し落ち着きを取り戻した2人は、
揃ってしゃがみ込んでいた。

ゴーストそ、その……わかる、よ……。
ゴースト俺も……ケンタッキーが入ってる時、
中身が俺じゃない俺は……
存在感もあるし、堂々としてて、いいなぁと思った……。
八九お前もか……?
不思議だよな……違うのは中身だけなのによ、
なんか見た目も格好良く見えてきて……。
八九んで、気づいちまったんだよ。残酷な事実に……。
俺がアレなのは、見た目云々以前に
中身のせいなんじゃないかってな……。
ゴースト気づきたくなかった……。
存在感がないのは、俺の中身のせいだって……。
でも、気づいてしまった……。
八九&ゴースト…………。
八九……でもよ?
これって逆に言うと、伸びしろがあるってことじゃね?
ゴースト……!
そうだ……そうかもしれない……。
八九っし、こうなりゃ自分改造プロジェクト始めるしかねぇ。
お互いを客観的に見合えば、1人でサムイ真似するよりいいしな。
ゴーストああ……!

八九まず……一番違うのが喋り方とか、声の出し方だよな。
お互い、もうちょいハキハキ喋るのはどうだ?
ゴーストそれから、堂々と……生き生きした感じも……。
八九おう。表情もだな。
自分は強者だ、イケてるナイスガイだって思い込んで……。
っし、挨拶から試してみるか。
八九やあ、俺は八九。日本から来た貴銃士だぜ。
困ったことがあれば俺に言えよ。よろしくな!
ゴーストお……俺はゴースト。ドイツ生まれの貴銃士だ。
速射には自信があるん……だぜ! よろしくな!
八九……うん、お前、ちょっと爽やかになった……かな?
ゴーストそっちも……自信ある感じになったなぁ。
八九&ゴースト…………。
八九……けど、やっぱ、こういうのキャラじゃねーわ……。
挨拶だけならなんとかなっても、これを四六時中キープは無理。
ゴーストた、たしかに……。
ケンタッキーあのさー……。
今の、見てたんだけど。
八九&ゴーストぎょえわっっ!!!!????
八九い、いいいいつから見て……!!
ケンタッキーあー、えっと……。
主人公【2人でアイデアを出し合ってるあたりから】
【ごめん、実は割りと最初から……】
ゴーストヒェッ……。
ケンタッキーお、おい! 大丈夫か!?
八九死……っ! 恥ずか死……っ!!
うぐぁぁあああ……切腹させてくれ……。
ケンタッキー早まるなって……!
お前ら、ちょっと話聞け!
八九&ゴーストはい……。
ケンタッキーえーっと……さっきのあれだけどよ、
やめた方がいいと思うぜ……?
八九はい! すんませんでしたぁぁ!!
陰キャがイケ貴銃士になろうとしてマジさーせんっ!
八九つーかなれるわけもないっすよね!
はははは……。
八九(あー、銃に戻りてぇ……)
ケンタッキーいや、そうじゃなくて!
最後まで聞けって!!
主人公【無理に自分を変えなくていいと思う】
【2人とも、そのままでいいと思うけど】
ケンタッキーそうそう。マスターの言う通りだ。
八九&ゴーストえ……?
ケンタッキーまず、ゴースト。
ケンタッキーお前は見た目儚げで綺麗って感じだけど、
中身は案外面白いっつーところがギャップあっていいじゃん。
ケンタッキー存在感は……確かにあそこまでないのはキツいから、
出せるなら出したいだろうけど。
ケンタッキーでも、幻感があってさ、ミステリアスとも言えるだろ?
そういう方向性で押し出していけば、
お前の魅力が活きるんじゃねーの?
ゴースト(……えええ……! ほんまに……!?)
ケンタッキー八九、お前はいまのアンニュイっつーか、
気だるげな感じがいいと思うぜ。
ケンタッキー無理して爽やか路線行くより、
ちょっとダークでアンニュイなミステリアス感で行った方が
似合うと思うぜ。
八九(今のままの俺にも、いいところがあったのか……!?)
ケンタッキーまあ、自分磨いてもっと気分アゲてぇ!ってのもわかるから、
自分を変えたいってんなら応援すっけどな。
ケンタッキーでもさ、今の自分否定すんなよ。
今のいいところ、磨いてけばいいんだって。な!
八九&ゴースト……!
八九(これが……真の陽キャの尊い輝き……)
ゴースト(こいつには勝てへん……勝ちたいって気ぃすら湧かん。
ええやつやな……祝ったろ……)

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