【夜の森、人の領域】ペンシルヴァニア

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解説

カード解説

これは遠い記憶の欠片。アメリカでの、彼らの物語の前日譚。
日の沈んだ森は獣の時間だ。彼らの音と、星の声に耳を澄ませ、ペンシルヴァニアは夜に身を委ねる。
「俺たちを……信じてくれてありがとう」

心銃解説:まだ見ぬ明日へ進む道

山を駆ける獣たち。赤く熟れた森の恵み。見上げる、満天の星。
難しい話はない。誰よりも自由を愛する彼は、自由の国での不自由に耐えられなかっただけなのだ。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. 召銃はお祭り騒ぎ

──〇〇たちがアメリカを訪れる
しばらく前……スターズハウスの一室で、
貴銃士ペンシルヴァニアは、ゆっくりと目を覚ました。

ペンシルヴァニア(……光が……眩しい。ここは、一体……?)
ペンシルヴァニアん……?
政府高官たちWelcome to USA! Yeah~~~!

貴銃士として目覚めたペンシルヴァニアが
初めて見聞きしたのは、盛大な拍手と、
クラッカーから飛び出た大量の紙テープだった。

ペンシルヴァニア……!

あっけに取られたペンシルヴァニアの頭に、
星条旗柄の派手な帽子が被せられる。

???アメリカの開拓民を支えた偉大なる銃、
ペンシルヴァニア・ライフル!
君が貴銃士として目覚めてくれて、最高だよ!
ペンシルヴァニアこれは……ハハ、盛大な歓迎に感謝するよ。
俺が貴銃士になったことを喜んでもらえて、
……俺も嬉しい。
ペンシルヴァニアところで……あんたは誰なんだ?
女性ふふっ、このお方はアメリカの大統領よ。
ペンシルヴァニア大統領か。そいつはすごいんだな。
大統領当然さ! はっはっは!
改めて、よろしく頼むよ、ペンシルヴァニア。
ペンシルヴァニアああ、よろしく。
大統領そしてこっちが、君を呼び覚ましたマスターだ。
さぁ、2人で親睦を深めてくれ!
マイケル・ダイアモンドHello、ペンシルヴァニア。
俺が君のマスター、マイケル・ダイアモンドだ!
マイケル・ダイアモンドマスターに選ばれて実に光栄だよ。
これから一緒に力を合わせて頑張ろう!
ペンシルヴァニアああ。
俺にできることがあるならば……力を尽くそう。
マイケル・ダイアモンドその意気だ、ペンシルヴァニア!
正義の味方は、いつだって全力でなくてはなっ!
女性彼は登山家で、世界の名山に数多く登頂した人なの。
彼ほどのタフな人なら、貴銃士のマスターという大役も
ばっちりこなせるはずだって期待されてね。
ペンシルヴァニアそうか……あんたも、すごい男なんだな。
俺は目覚めたばかりで、この世界のことは、
まだよくわからない……これから、世話になる。
マイケル・ダイアモンドSure!
さぁ、堅苦しい挨拶はここまでにしよう。
マイケル・ダイアモンド俺は一応君のマスターだけど、
マスターというよりは友人のような関係になりたい。
ということで、まずは握手だな!
ペンシルヴァニア……ああ!

アメリカで目覚めた貴銃士と、そのマスター。
彼らが友情を結ぶ瞬間を目の当たりにして、
周囲から大きな歓声が上がる。

大統領マスターと貴銃士は篤い友情で結ばれた!
ペンシルヴァニアの登場で、アメリカはさらに結束し、
強く偉大な国になるだろう!
大統領さあ、諸君! グラスは持ったかい?
偉大なるアメリカと、開拓者の銃、
ペンシルヴァニアの目覚めに……Cheers!
政府高官たちCheers!!!
ペンシルヴァニアはは……元気な仲間たちだな。
これから楽しくなりそうだ。
男性Hey! Hey! さっそく質問をしてもいいかい?
ペンシルヴァニア君、独立戦争時代のことを教えてほしいよ!
女性1狩猟用のライフルだった頃の記憶ってあるの!?
ペンシルヴァニアおっと……はは。
順番に答えていくから、少し待っていてほしい。
まずは独立戦争なんだが──。

大統領……うんうん。
さっそく人気者になったようだな。
素晴らしいことだ。
大統領…………。
彼ならば……今度こそ、
アメリカを代表する強い貴銃士となってくれるはずだ……。

Ep2. 恒例の勝負

ペンシルヴァニアがアメリカで召銃され、
しばらく経った頃──。

アメリカ支部兵士Hey、ペンシルヴァニア!
今朝の仕事はどうだった?
ペンシルヴァニアああ……今日はいつも以上に気合が入ったよ。
アメリカ支部兵士ん? 今日、何かあるのか?
ペンシルヴァニアまあ……少しな。
アメリカ支部兵士ああ、そういえば、ケンタッキー・ライフルの貴銃士が
召銃されたらしいな。
さっき俺たちにも公示されたよ。
ペンシルヴァニア……! そうか……!
アメリカ支部兵士ははーん。なるほどなるほど。
君が珍しくそわそわしている原因は、新しい貴銃士か。
そんなに仲間が増えるのが楽しみだったのかい?
ペンシルヴァニアそれもあるが……ケンタッキーは俺の弟分なんだ。

ペンシルヴァニア大統領……!
ケンタッキーに会いにきたんだが……!
大統領OH!
早かったなぁ、ペンシルヴァニア!
ケンタッキー……っ!
ペンシルヴァニアケンタッキー……! 会えて嬉し──

弟分の姿を見つけ、
ハグをしようとしたペンシルヴァニアだったが……。
顔をしかめたケンタッキーは、その手を払いのける。

ケンタッキーべ、べたべた触んじゃねぇ!
ペンシルヴァニア……っ!
ケンタッキー俺は、一人前のスナイパーだ!
いくら兄貴分だからって、余計な真似すんなよ!
ケンタッキー俺は……ぜってーお前には負けねぇからな!
ペンシルヴァニアケンタッキー……?

突然の宣戦布告から、数日後──。
ケンタッキーはミルクの入った大きめの瓶を
2本持ち、ペンシルヴァニアを睨みつけていた。

ケンタッキーおい!
今日はミルク早飲み対決で勝負だ!
ペンシルヴァニアまたか……。
ケンタッキーなんだよ、その顔は!
やる前から怖気づいてんじゃねーだろうな!?
ペンシルヴァニアそういうわけじゃないんだが……。
昨日はハンバーガー早食い対決、
その前はベースボール対決だっただろう?
ペンシルヴァニアそろそろ、張り合わずに協力していきたいと──
ケンタッキーうるせぇ! お前の意見なんか聞いてねぇんだよ!
早くしろ!
ペンシルヴァニアはぁ……。
ペンシルヴァニア(まぁ、危険な勝負でもないしな……)
世界連合職員1──おっ、今日はミルク早飲み対決か。
毎回かわいいことしてるねぇ!
ケンタッキーチッ、しょうがねーだろ!
撃ち合いや狩りは上から止められてんだよっ!
マイケル・ダイアモンドHAHA、盛り上がってるな!
せっかくだし、俺が審判を務めてやろう!
ペンシルヴァニアいつの間に、みんな集まって……。
……まあいい。
マスター、合図を頼む。
マイケル・ダイアモンドああ。
では、ミルク早飲み対決──スタート!
ペンシルヴァニア…………。

ひと口ひと口大きく、
安定したペースで飲み進めていくペンシルヴァニア。

ケンタッキー………!

ケンタッキーは横目でペンシルヴァニアの方を確認し、
自分のペースがやや負けていることに気付いて、
一気にペースを上げたのだが──。

ケンタッキーごっふぅ!!!
ペンシルヴァニア……!?

飲み終えた──かのように思われた直後、
むせてしまい、勢いよく牛乳を噴射する羽目になる。

世界連合職員2あはははははっ!
惜しかったなぁ、ケンタッキー!
口からミルクの噴水を出す勝負なら勝ってたぞ!
ケンタッキーわ、笑うんじゃねー……げほっ、げほっ……!
ペンシルヴァニア大丈夫か……?
ケンタッキー背中さすんのやめろ! 情けなんかいらねぇ!
ケンタッキーくっそー……今度こそ……
けほっ……負けねぇからな!
世界連合職員3ケンタッキー、ペンシルヴァニア、ナイスファイト!
楽しかったぞー!
ケンタッキーうっせーっ!
マイケル・ダイアモンドHAHA! 君たちといると、毎日賑やかで楽しいな。

 

Ep3. 自由を求めて

ケンタッキーから一方的にライバル視されていた
ペンシルヴァニアだったが……。

公務の合間におこなわれる
ささやかな対決は、
彼にとって、いい気分転換にもなっていた。

ケンタッキー──くそっ! 明日は負けねーからな!
マイケル・ダイアモンドいや~、今日もふたりは白熱していたな。
共にぶつかり合い、高め合うライバル……!
いい関係だ! Great!!
ペンシルヴァニアはは……だといいんだが。
秘書盛り上がっているところ失礼いたします。
そろそろ公務のお時間です。
秘書本日は正午より軍の訓練に参加しつつ兵の慰労、
夕方には近隣の街へ向かって国民と交流し、
夜には要人方との会食、となっております。
ペンシルヴァニアそれは……みっしりだな……。
ペンシルヴァニア(貴銃士として国に所属する以上、
仕方ないことかもしれないが……)
マイケル・ダイアモンドペンシルヴァニア……?
どうしたんだい?
ペンシルヴァニア……いや、なんでもない。
そろそろ移動するか。

いささか窮屈さを覚えながらも、
ペンシルヴァニアが公務をこなす日々は続いた。

ペンシルヴァニアはぁ……。
ペンシルヴァニア(肩が重いな……。これが肩こり……か)
ペンシルヴァニア(今日は朝から事務仕事だったからな……。
窓でも開けて外の空気を取り入れて、
リフレッシュしよう……)

窓を開けると、爽やかな風が入り込んでくる。
外は晴れて、雲一つない青空だ。ペンシルヴァニアは
そのまましばらく、空を自由に飛ぶ鳥を眺めていた。

ペンシルヴァニア(今日はいい狩り日和だな……)
ペンシルヴァニア……! そうだ!!

ペンシルヴァニアおぉーい! マイケル! ナンシー!!
マイケル・ダイアモンドおや? どうした、ペンシルヴァニア!
ペンシルヴァニアなぁ、時間を作れるか!? 狩りに行きたいんだ!
マイケル・ダイアモンドWow! それはナイスアイディアじゃないか!
ぜひとも行きたいな!
ナンシー、スケジュールはどうだい?
秘書えっ……狩り、ですか?
そうですねぇ……狩りとなると……。
ええと……。

秘書のナンシーは、
分厚いスケジュール帳をめくり始める。

秘書──7日後なら空きがございますね。
ペンシルヴァニアな、7日後……っ!?
秘書はい。
ペンシルヴァニアそんな……。
明日の午後の予定は、確かキャンセルになったと……。
秘書いえ、その時間は、市街地視察が入ることになりました。
それに……。
秘書狩りができるような土地と言いますと、
ここから遠いですし、準備も必要でございますから。
経費と時間が──
ペンシルヴァニア…………。
ペンシルヴァニアそうか、わかった……。
……無理を言って、悪かった。
マイケル・ダイアモンドペンシルヴァニア……。
秘書承知いたしました。
では、マイケル様とペンシルヴァニア様の
本日の予定についてですが……。
秘書市民からの手紙に対し、
いくつか返事を書いてあげてください。
民衆の心を掴むのも、貴銃士様の大事な仕事です。
秘書手紙は3時間後に取りに伺います。
それでは、またのちほど。
ペンシルヴァニア……はぁー……。
マイケル・ダイアモンド狩りか……。
君はもともと猟銃だし、上手いんだろう?
腕前を見たいものだな……!
ペンシルヴァニアえ……。
マイケル・ダイアモンド今の時期は……やっぱり、鹿だろうか?
特に今日みたいな快晴だと、
ただ森を歩くだけでも気持ちよさそうだな!
ペンシルヴァニア……! マスターも、そう思うか?
マイケル・ダイアモンドもちろんだとも!
俺は釣りくらいしか経験がないんだが、
狩猟だって、君が教えてくれるんだろう?
ペンシルヴァニアもちろんだ、任せてくれ!

そうして──
ペンシルヴァニアとマイケル・ダイアモンドは、
とある決断を下すこととなる。


マイケル・ダイアモンド──ペンシルヴァニア。
準備はできたかい?
ペンシルヴァニアうん。大丈夫だ。
マイケル・ダイアモンドよし、それじゃあ出発だ!
自由の世界へ、いざゆかんっ!!
ペンシルヴァニア──ああ!

ペンシルヴァニアは、デスクの上に
『広い世界を旅したい』と書いたメモを置く。

ペンシルヴァニア…………。
あとは、任せたぞ──ケンタッキー。

Ep4. 夜の森で

時は流れ……ペンシルヴァニアとケンタッキーが、
士官学校に訪れるようになってからのこと。

マークスマスター、随分歩いてきたが……疲れてないか?
主人公【これくらい平気】
【大丈夫】
ペンシルヴァニアそうか。
ならば……引き続き、慎重に進んでいこう。
ペンシルヴァニアここはアウトレイジャーだけでなく……
熊の目撃情報もあったらしいからな。
どちらにもすぐ対応できるよう……警戒してくれ。
ジョージ熊か~。川でサーモンを素手でバシャッ!
って取るとこ、見てみたいな~!
ケンタッキーは? いやジョージお前、
熊ってマジで激ヤバなんだからな?
緊張感ねーなぁ……。
ケンタッキー──ん?

ケンタッキーが目を細め、マークスが身構える。
次の瞬間、近くの茂みから、
勢いよく熊が飛び出してきた。

ウゥゥッ……!
ペンシルヴァニア出たっ……!
全員、このまま熊から目を離さずに──
アウトレイジャー……殺、ス……。
ジョージえぇぇぇぇっ、ここでアウトレイジャーかよ!?
ケンタッキー最っ悪の挟み撃ちじゃねーか!
……くそっ!
グルルルルッ……!
アウトレイジャー殺ス……殺ス……。
ジョージくっ……このまま戦うのか!?
ちょっとこれは……。
ペンシルヴァニア危険すぎる!
一旦散って、後から合流するぞ……!
主人公【了解!】
マークスマスターは、俺と一緒に!
手を──。
グアアアアッ!
マークス……うおっ!?

〇〇へ駆け寄ろうとしたマークスの前に、
熊が立ちはだかる。

ペンシルヴァニアマスター、こっちへ!
右側から逃げるぞ!
ケンタッキーもこっちに来い!
ケンタッキー言われなくてもわかってるっての!

ケンタッキーふぅ……マスター、大丈夫っすか!?
怪我とかしてませんか!?
主人公【2人のおかげで無傷で済んだ】
【平気だよ】
ケンタッキーはー……! 良かったぁぁ~……!
ひとまず逃げ切れたみたいですし、
これで当分は大丈夫っスね……!
ケンタッキーマークスとジョージの野郎?
あいつらは気にしなくていいんっすよ!
ダテに厳しい訓練積んでないっスから!
ペンシルヴァニアだが、すっかり日も暮れてしまったな……。
暗くなった森を不用意に歩くのは危険だから、
今日はここで野営するとしよう。
ペンシルヴァニア俺は焚き火用の枝を集めてくるから、
ケンタッキーは〇〇の護衛を頼むぞ。
ケンタッキーは? おい、勝手に決めんな。
しかも森の中歩くのは危険だって、
お前が言ったばかりだろうが。
ペンシルヴァニア俺は山歩きに慣れているし、
遠くには行かないから大丈夫だ。
……それじゃあ、マスターは頼んだ。
ケンタッキー…………。

戻ったペンシルヴァニアは、手際よく火をおこす。
そのまま2人の護衛を申し出ると、
渋るケンタッキーを制して周囲の見回りへと出かけた。

ケンタッキー──おい。
お前……さっきから何考えてんだよ。
ペンシルヴァニア何って……別に……。
それより、もう少し休め。
見張りの交代まで、まだ時間があるぞ。
ケンタッキー……!
薪のときといい、さっきから頼んでもねぇのに
変な気ぃ遣いやがって……!
ペンシルヴァニアそんなつもりはない。
俺よりもケンタッキーといる方が、マスターも安心だと──
ケンタッキーはぁ……?
お前がそんなだから……!
主人公【喧嘩はやめよう】
【落ち着いて】
ケンタッキーあっ……すんません、マスター。
俺……っ。
……ちょっと、頭冷やしてくるっす!
主人公【ケンタッキー】
【待って!】

咄嗟に引き留めようとする〇〇だが、
その腕を、ペンシルヴァニアが掴んで止めた。

ペンシルヴァニア──後は追うな。
ペンシルヴァニア夜の森は危険だ。
マスターを行かせるわけにはいかない。
ペンシルヴァニアケンタッキーは山を熟知しているし、
野生の勘も働くから心配はいらないさ。
……大丈夫、必ず無事に帰ってくる。
ペンシルヴァニアあんたの役目は──
ここでアイツの帰りを信じて待つことだ。
主人公【ペンシルヴァニアがそう言うなら】
【わかった】
ペンシルヴァニア……ありがとう。
俺たちを信じてくれて。

Ep5. マスターの危機

とある昼下がり──〇〇は
ペンシルヴァニアの案内で、
森の中の野いちご群生地へとやって来ていた。

ペンシルヴァニアお、食べ頃のが結構たくさんあるな。
みんなのお土産にもできそうだ。
さっそく手分けして摘んでいこう。
ペンシルヴァニアだが……俺からあまり離れないようにしてくれ。
主人公【了解】
【気を付ける】

──数十分後。

野いちごを摘むのに集中していた〇〇は、
ふと顔を上げ、木陰に小鹿がいることに気付いた。

主人公【見て、小鹿だ】
【可愛いなぁ】

近くにいるはずのペンシルヴァニアに声を掛けるが、
返事がない。慌てて周囲を見回し、最初の地点から
離れてしまったことに、〇〇は気付いた。


ペンシルヴァニアだが……俺からあまり離れないようにしてくれ。

ペンシルヴァニアの言葉が頭をよぎり、
〇〇が急いで戻ろうと踵を返した時──

──ガサッ

主人公【ペンシルヴァニア……?】

──ガサガサッ

主人公【あれは……!】
【親鹿……!?】

茂みから現れたのは、ペンシルヴァニアではなく、
大きな体躯の鹿だった。
親鹿なのか、小鹿が駆け寄り、足元にじゃれつく。

可愛らしい光景だが、
親鹿が体勢を低くして地面を掻くので、
〇〇は緊張感とともに身構えた。

主人公【(小鹿を害そうとしたと勘違いされたかも)】
【(攻撃されそうだ……)】

そして次の瞬間──
猛然と突進してきた親鹿を、〇〇は
間一髪のところで横に飛びのいて避ける。

しかし、親鹿の方もすぐに方向転換し、
再び〇〇へと狙いを定めた。

主人公【(傷つけたくない)】
【(だけど、このままじゃ危ない……)】

メスなので角はないが、大きな体躯から繰り出される
突進と体当たりを食らえば、
骨折や内蔵損傷の恐れもある。

山の中では治療を受けられない──
最悪の場合、命にかかわる事態になる可能性もあった。

生きるか死ぬかの瀬戸際で、〇〇は、
唯一持っていた武器であるナイフを強く握りしめる。
その時──

ペンシルヴァニア〇〇!

──パァン!

親鹿……!

ペンシルヴァニアが威嚇射撃をすると、驚いた親鹿は、
小鹿を引き連れて山の奥へと駆け込んでいった。

ペンシルヴァニア離れていたことに気付かず、すまない。
怪我はないか?
ペンシルヴァニアほら、掴まってくれ。

ペンシルヴァニアの手に掴まり、
〇〇は立ち上がった。

〇〇が無事であることを確認するように
頭から足まで見たペンシルヴァニアは、
大きなため息とともに座り込んだ。

ペンシルヴァニアはぁぁぁ……。
主人公【だ、大丈夫!?】
【どこか怪我を!?】
ペンシルヴァニア……いや、俺は平気だ。
ただ……ほっとして、気が抜けてしまった。
ペンシルヴァニア……あんたが無事で、よかった。
鹿に襲われてるあんたを見て、心臓が止まるかと……。
ペンシルヴァニア……すまなかったな、〇〇。
今の時期、山の動物たちは子育てをしている。
親は気が立っていて、遭遇すると危険なんだ。
ペンシルヴァニアだから、俺から離れないように……とだけ
言っていたんだが……。
ちゃんと事前に説明しておくべきだった。
主人公【忠告してくれていたのに、ごめん】
【はぐれてしまって、ごめん】
ペンシルヴァニアいや……。
あんたが離れたことに気付かなかった俺にも、責任はある。
主人公【ペンシルヴァニアのおかげで助かった】
【助けてくれてありがとう】
ペンシルヴァニア俺も……ちゃんとマスターを守れて、よかったよ。
さ、野いちごは十分採れたな。
甘くて美味しい……ジャムを作ろう!

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