【Kiss Your Past】ミカエル

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解説

カード解説

追悼式典に向かう途中で貴銃士たちが迷い込んだのは、1960年代のベルリン。
明かされる過去、無情な戦場。それでも過去は変えてはならないとミカエルは警告する。
繊細な『歴史』の旋律を乱さないように。

心銃解説:新たに紡ぐレクイエム

『同じ』で『違う』過去の『僕』
旋律をなぞって気づくのは、近しいけれど決して重ならないこと。
ねぇ、『きみ』はそこにいるの?
いたとしてもどうか眠っていて。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

 

★4覚醒後のカードイラストに表示されるメッセージ

過去の僕より、今の僕を
君には見てほしいんだ。

Ep1. 追憶の葬送歌

──トルレ・シャフの隠れ家に関する情報を入手したという
連合軍の要請で、八九は突入任務に参加していた。

連合軍兵士……クリア! 無人です。
八九クソ……少し遅かったみてぇだな。
けど、慌てて逃げたならなんか情報は転がってるか……?

八九は、もぬけの殻になっている家の中で、
トルレ・シャフの動きに関する手がかりがないか探す。

八九うおっ……!? なんだ、この部屋……!?
楽譜に楽器にすげぇ量だな……。

ある一室には、トルレ・シャフのアジトとは思えないほど大量の
楽譜、楽器、レコードなど、音楽関連の品々が収められていた。

八九(トルレ・シャフ──要するに世界帝信者で、
こんだけの音楽好きって……)

1つの可能性を思い浮かべながら、
八九は棚から楽譜の束を取り出してみる。

八九……!
ミゼルリスト・N・ミカエル……。

──数日後。

ミカエル……以前の僕の曲の、楽譜?
八九おう。アジトにいた奴が音楽コレクターだったみたいでさ。
いろいろ置いてある中にそれがあったんだ。
カトラリーわぁ、ミカエルが作った曲……!?
見せて見せて!
カトラリー(……って、これ、世界帝軍時代のなんだよね……?
でも、曲に罪はないし……うん。
ミカエルの演奏で聴いてみたいなぁ)
八九(楽譜見ただけじゃどんな曲かぱっとわかんねぇけど、
聴いたことあるやつだったりするか?)
ミカエル……どうして譜面が残っているんだろうね?
八九へ?
ミカエル当時のことはわからないのだけれど……
僕は楽譜を書けなかったのではないかな。
八九……あ。
ミカエル手を借りるなりすれば不可能ではないだろうね。
でも違う僕だとしても……そんな面倒なことをするよりも、
思い浮かぶままに新たな曲を奏でることを選びそうだ。
カトラリーそれなら、ほら、あれじゃない?
ミカエルの演奏を聴いた人が感激して、
自分で楽譜に起こしてみたとか!
主人公【すごく耳が良い人ならできるかも】
【音楽に詳しい人なら可能かも……?】
八九耳コピってやつか。
不可能ではねぇと思うけど、マジでやってたらすげぇな。
カトラリー大変でも楽譜にしたいって気持ちはわかるよ……!
ミカエル……そう?
カトラリーミカエルの演奏は即興が多くて、
もちろん、即興だからこその良さもあるんだけど……。
カトラリーでも、聴いているそばから消えていってしまうのが惜しくて……!
この曲をもう一度聴きたい、
感動を残しておきたいって思うもん。
カトラリーこの一瞬がずっと続けばいいって思う気持ちは……
僕も、ミカエルとか十手とかファル、
〇〇と出会ってから何回か感じたことあるよ。
カトラリーだからわかるし、そういうものだって思うと、
すごく納得するっていうか……。
ミカエル…………。
ミカエルホールに行こうか。
士官学校にある中で、あそこのピアノが1番好きだから。

〇〇たちがホールに着くと、
ミカエルはピアノを弾き始めた。

八九(この曲、あの時の……)

──革命戦争中の12月。
ミカエルは、世界帝軍特別幹部の貴銃士89とホクサイへ
白いカードを手渡す。

ミカエルそうそう……これは、君たちへの招待状だよ。
はい、89。ホクサイ。
89えっ……! い、いいのかよ!
うぉ、やべえ……クリスマスにピアノの演奏会とか……!
ホクサイミカエルクンのピアノかぁ。
ゆっくり聴くのは久しぶりだから、楽しみだよ~。
89……っし!
明日のためにもさっさと逃げたヤツ捕まえっか!

八九(懐かしいな……。
あのクリスマスリサイタルで弾いてた曲だったのか。
まさか、また聴ける機会が巡ってくるとはな)
ミカエル────……。

ミカエルは突然指を止めると、
やや乱雑に鍵盤蓋を閉め、両手で耳を押さえる。

カトラリーミカエル……!
どうしたの!?
八九お、おい……!?
ミカエル──変拍子で飛び交う銃弾と、快哉の声。
無邪気に笑う幼い声。
並んで口にする、様々な食事の美味……。
ミカエル夜を思わせる甘さの香水。
これが青だ、と指先に触れる器具の冷たさ……。
ミカエル世界と自らを呪う声と、それを覆い囲う独善の言の葉の雨。
空に溶けるような透明の感触。
花壇に揺れる花々の、柔らかな香り……他にも……。
八九……!
よくわかんねぇど、それって……。
ミカエル……きみには、これが何かわかるの……?
これは……以前の僕の記憶だと思う?
八九お前……思い出したのか……?
ミカエル……確かにこれは、僕に近しい者が作った曲、だと思う。
でも、今の僕の曲じゃない。
ミカエル鼓膜から胸の奥に無理やり手を入れられて……
臓腑をかき回されているみたいだ。
……僕とは半音ずれていて不協和音にしかならないよ。
ミカエル何か……少しだけれど確実に違う何かがある。
砕け散った硝子を、血だらけになるほど必死に拾い集めても、
それはもう2度と元には戻らないんだ……。
ミカエル……そうか。こんなに違うんだ。
はじめは同じ白でも、染まった布は二度と元には戻らない。
ファル、きみも……。
カトラリー……ミカエル!
もういいよ、思い出したりなんてしないで……!
ミカエル(……かつての『僕』は、どこでどう壊れたのだろうね。
今となっては、僕自身ですらわからない)
ミカエル(実はイレーネ城の戦いの最中で壊れていたのか、
あるいは僕自身がそれを選んだのか、
記録にあるように輸送中の乱闘で破損したのか……)
ミカエル(……まあ、わからなくてもいい。
今の僕には関係のない、知る必要のないことだから)
ミカエルねぇ……きみたちは、僕に、昔の僕になってほしい?
主人公【自分が知るミカエルは1人だ】
【ミカエルが望まないことを自分は望まない】
カトラリーそうだよ! 昔なんて知らない!
僕にとってミカエルは、ここにいるミカエルなんだから……!
ミカエル……そう……。
八九…………。

ミカエルは譜面台に置いていた楽譜を手にすると、
八九に差し出した。

ミカエルどうぞ。きみにあげる。
八九えっ。

ミカエルは、八九が受け取った楽譜の表紙に書かれている
『ミゼルリスト・N・ミカエル』の名を、
最後にそっとひと撫でした。

ミカエル……さよなら。
きみには、ここはあげないよ。

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