これは遠い記憶の欠片。どこかでの、彼らの物語の前日譚。
硝子に映る自分の姿が『誰か』に重なり、ジョージはふと目を奪われる。
(髪はこうで……帽子をちゃんと被ってた)
(……ブラウン……)
時々、頭をよぎるんだ。「ここにいるべきなのは誰だった?」って。
オレ、今幸せだよ。最高に楽しくて、皆のことが大好きだ!
だからこそ、オレは、お前が──
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
雲一つない青空が広がる、とある日。
イギリスでは、マーガレット女王の戴冠式が
華々しく行われていた。
イギリス市民たち | God save the Queen! |
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イギリス市民1 | 18歳の若き女王陛下…… 新しい時代の幕開けを感じるなぁ。 |
イギリス市民2 | 世界帝による暗黒の世は終わった……! ああ、なんと素晴らしい日だ! |
マーガレット | わたくしは感謝いたします。 今日という日を、愛する国民とともに迎えられることに。 |
マーガレット | そして、皆さんに彼を紹介できることに! |
ブラウン・ベス | …………。 |
奥の扉から前に進み出てきたのは、
赤いコートを身に纏った一人の青年だった。
イギリス市民たち | ……? 彼は一体……? |
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マーガレット | さぁ、わたくしの親愛なる貴銃士、 もっと前へ。 国民の皆さんに、あなたの高貴な姿を見せてあげて。 |
ブラウン・ベス | 仰せのままに、女王陛下(ユア・マジェスティ)。 |
マーガレット | 皆さん、彼の名はブラウン・ベス。 イギリス王室の収蔵品として、 長らく保管されていた歴史ある名銃です。 |
マーガレット | そして……わたくしが召銃した貴銃士ですわ。 |
女王の言葉を受け、人々の間にどよめきが走る。
イギリス市民1 | 貴銃士ブラウン・ベスといえば、 先の革命戦争の英雄だぞ! |
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イギリス市民2 | 消えたはずの貴銃士が、女王のもとに現れたとは! なんという奇跡! |
ブラウン・ベス | 俺は女王に仕える貴銃士であり、騎士だ。 ……騎士道のなかに、“Loyalty”というものがある。 |
ブラウン・ベス | 騎士たるもの、忠誠を尽くし、その身に代えても主人を守る。 それが、“Loyalty”だ。 |
ブラウン・ベス | これは、大英帝国に生まれた貴銃士の使命だと考えている。 |
ブラウン・ベス | 俺はマーガレット女王陛下に、永遠の忠誠を誓う。 彼女が愛するイギリスを、その民を、命をかけて守ろう。 |
ブラウン・ベスが女王に跪き忠誠を誓うと、
ホールは大歓声に包まれた。
イギリス市民1 | すごいぞ、英雄の……貴銃士の復活だ! |
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イギリス市民2 | 貴銃士、ブラウン・ベス…… なんて高貴なたたずまいなの! |
イギリス市民3 | あれが、貴銃士……絶対高貴なる存在! ブラウン・ベス様、我らの騎士に、万歳! |
マーガレット | ブラウン・ベス、ありがとう。 女王として、最良の初日となりました。 |
ブラウン・ベス | ……俺も、胸がいっぱいだ。 |
ブラウン・ベス | (この歓声を忘れはしない。 宣言を胸に、精進し続けると誓う……!) |
──イギリス、ウィンズダム宮殿にて。
マーガレット | ブラウン・ベス。 今日はお天気もいいし、せっかくだから庭で ティータイムをと思うのだけど……どうかしら? |
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ブラウン・ベス | ああ、いい気分転換になりそうだ。 風も心地いい |
マーガレット | ええ…… ふふっ、風がバラの香りも運んできてくれるわね。 |
マーガレット | やっぱり、バラは素敵だわ。 香りも、その美しさも…… 身にまとうトゲすら愛おしい。 |
マーガレット | あなたの軍服も、バラのように鮮やかな赤色で…… とてもエレガントよ。 |
ブラウン・ベス | そうだろうか……。 マスターが気に入っているのなら何よりだ。 ありがとう。 |
マーガレット | お礼を言うのは、わたくしの方よ。 あなたのマスターになれたのは……本当に幸運だったのだから。 |
マーガレット | 祖国への忠誠も、強さも……そして名声も。 あなたはすべてを兼ね備えています。 |
マーガレット | そんなあなたがいれば、 国民はより、イギリスを誇りに思えるはず。 この国は、これからもっと素晴らしい発展を遂げるわ。 |
ブラウン・ベス | ……そうか。 |
マーガレット | ええ! わたくしは、イギリスをもっと良くしていきたいの。 |
マーガレット | ブラウン・ベス。 だからどうか、未熟な私の手助けをしてくださいね。 |
ブラウン・ベス | もちろんだ。 俺はマスターのために、全力を尽くす。 |
ブラウン・ベス | マスターの力になれることが、 貴銃士の誉れなのだから。 |
マーガレット | ありがとう……。 |
マーガレット | ……あら、わたくしとしたことが。 お話に夢中で、お茶とお菓子のことを忘れていたわ。 ねぇ、このビスケット、食べてみて? |
ブラウン・ベス | ああ……んっ!? か、硬……! なんだこれ……石じゃないか。 |
マーガレット | ふふっ、石だなんて……! でもね……こうして食べると、とっても美味しいのよ! |
ブラウン・ベス | ……! 紅茶に浸すのか? |
マーガレット | ええ。こうすると、柔らかくなるの。 お行儀が悪いって、怒られちゃうのだけれどね。 |
ブラウン・ベス | ふむ……。 |
ブラウン・ベス | ……ああ、確かに美味い。 だが……やはり行儀は悪いな。 |
マーガレット | そうなの。だから……このことは、 2人だけの秘密にしてちょうだいね。 |
ブラウン・ベス | ああ、それがいいな……ははっ。 |
──イギリス、ウィンズダム宮殿にて。
マーガレット | ふぅ……ご苦労さま、ブラウン・ベス。 挨拶回りばかりで、疲れたでしょう。 |
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ブラウン・ベス | いや、俺は…… それより、マスターのほうが疲れてるんじゃないか? 顔色があまり良くない。 |
ブラウン・ベスが
帽子をベッドに置こうとした──その瞬間。
マーガレット | やめてっ! |
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ブラウン・ベス | ……っ!? |
険しい表情をした女王が、
ブラウン・ベスの手ごと帽子を思い切りたたき……
帽子は床へと落とされた。
ブラウン・ベス | マスター……? 一体、どうしたんだ……? |
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マーガレット | あっ……わたくしったら……! で、でも! ベッドの上に帽子なんて置いたら…… 不幸になってしまうわ! |
ブラウン・ベス | (それは確か……大陸の方の迷信だったか……? 聞いたことはあるが、イギリスではあまり 気にする人はいないと思っていた……) |
ブラウン・ベス | 申し訳ない、マスター。 今後は、このようなことはしないと誓おう。 |
マーガレット | え、ええ……。わたくしの方こそ、 あなたの手を叩いてしまって……。 本当に……ごめんなさい……。 |
マーガレット | 痛くなかった? ああ、冷やした方がいいかも……ひっ!? |
マーガレット | い、いるわっ! なんてことなのっ! |
ブラウン・ベス | えっ……マスター? 何がいるって……? |
マーガレット | バンシーよ! いつの間にか、城に侵入してきたんだわ……! いや、やめて……! 叫ばないで……! |
ブラウン・ベス | (バンシー……? 確か、人の死を叫び声で予告するといわれている 妖精のこと……か?) |
ブラウン・ベス | しっかりしろ、マスター……! 俺にはそんな声、何も聞こえないが……。 |
マーガレット | いいえ! バンシーが叫んでいるの! わたくしの死を、告げているの……! わたくしは……きっと誰かに、殺されてしまうんだわ! |
ブラウン・ベス | まさか……そんなわけがない。 少し落ち着こう。 外の空気を吸ってみれば、きっと気分もよくなる。 |
マーガレット | なんてことを言うの……!? 外の方が危険だわ! わたくしを恨む者は、たくさんいるのだからっ! |
ブラウン・ベス | ……!? |
ブラウン・ベス | そんなことはない……! イギリスの人々は、女王陛下のことを大切に思って── |
マーガレット | あああっ! どうしてわたくしが、こんな苦しみを 味わい続けなければいけないの!? |
マーガレット | 怖い! 恐ろしいわ……! うう、誰か助けて……!! |
ブラウン・ベス | ……マスター、手を。 大丈夫だ、俺がマスターを守るから……! |
マーガレット | ああ、ブラウン・ベス……お願いよ。 わたくしのそばにいてちょうだい……。 |
ブラウン・ベス | (なぜ、こんなことに……。 あの穏やかに微笑むマスターは、 一体どこに行ってしまったんだ……!?) |
ブラウン・ベス | (……きっと、疲れているせいだ。 休めばいずれ……元のマスターに、戻るはず……) |
ブラウン・ベス | (それ以外のことは……考えないでおこう……) |
時は流れ……これはジョージが士官学校で
過ごすことになってからの、ある日の話──。
ジョージ | ……ん? いい匂いだ。 ……この香りは……。 |
---|
匂いのする方へと歩いていったジョージは、
校舎を曲がった先に鳥籠状の温室を見つけた。
そこには、様々な種類のバラが咲き誇っている。
ジョージ | へぇ~! こんなところに、温室があったのか! 道理で、バラの香りがしたわけだ。 |
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ジョージ | …………。 綺麗だな……。 |
ジョージ | (バラは、あの人が好きだった……) |
ジョージ | ──ん? |
ふとジョージは、自身の姿が温室のガラスに
反射していることに気付く。
ジョージ | (……ブラウン) |
---|
ジョージは、記憶の中にあるブラウン・ベスを
思い浮かべた。
ジョージ | (髪はもうちょっとこうで…… 帽子をちゃんとかぶってた) |
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少し身なりを整えた後、
ジョージはガラスに映った自分を見てハッとする。
ジョージ | …………。 |
---|---|
ジョージ | ブラウン……。 …………。 |
??? | ──えっ……。 ジョー、ジ……? |
ジョージ | あっ……! |
シャルルヴィル | …………。 |
シャルルヴィルと目が合ったジョージは、
慌てて前髪を崩した。
シャルルヴィル | よかった。ジョージだよね? |
---|---|
シャルルヴィル | びっ──…… |
ジョージ | ……? |
シャルルヴィル | ──っくりした~!! |
ジョージ | ……ははっ。ごめんごめん! いやー、ブラウンってこんな感じだったっけ~って思って、 ちょっと真似してみたんだ! |
シャルルヴィル | ……! そ、そうだったんだね! |
シャルルヴィル | よかった……君もどこかに 行っちゃうのかと思ったよ……。 |
ジョージ | ん? なんだそれ! シャルルは変なこと言うな~! |
シャルルヴィル | ……うん、そうだね。あははっ。 |
シャルルヴィル | ちょっと……疲れちゃったな。 寮に戻って、休むよ。 |
ジョージ | ああ、そうした方がいい。 それじゃ、またな! |
ジョージ | …………。 |
ジョージ | オレは、どこにも行かないよ。 ──ただ、還るだけさ。 |
ジョージ | Wow! バンズ、ベーコン、パティ、チーズ、チキン、ピクルス…… バーガーの材料がいっぱいだ! |
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十手 | ああ。ジョージくんのお望み通り、 できるだけたくさん用意してみたんだ。 |
ジョージ | Thanks! これでオリジナルバーガーパーティーの準備はバッチリだ! たくさん食べような、〇〇! |
主人公 | 【おー!】 【それじゃあ、始めよう!】 |
ジョージ | Yeah! どれを挟もうかな~♪ ふんふん♪ |
ジョージ | ……よーし、決めた! 今日は好きなものを全部入れた、 スペシャルバーガーを作るぞ~! |
シャルルヴィル | ええっ! だ、大丈夫? |
ジョージ | もちろんさ! オレの手さばき、見ててくれよ。 えっと、肉と……そんでもって肉と、 さらに肉と~……。 |
十手 | はは…… 野菜も食べないと、体に悪いよ? |
ライク・ツー | って、そのハンバーガー…… お前の顔くらいあんじゃねーか! どうやって食べんだよ。バカか? |
ジョージ | え~? このBIGなサイズがいいんだぞ! ライク・ツーもまだまだだな~。 |
ジョージ | Hey! マスター! 完成したオレのバーガーを見てくれ! |
主人公 | 【お、大きい……!】 【す、すごいね!】 |
ジョージ | ボリューム満点でいいだろー? |
シャルルヴィル | わぁっ……! よく崩さずに作れたね……! |
ライク・ツー | やっぱバカだ。 それ、ぜってー1人じゃ食べきれないだろ。 |
ジョージ | いやいや、うまいからぺろりといけるぞ! それじゃあ……いただきまーす! |
主人公 | 【いただきます!】 |
ジョージ | う~~ん! Delicious☆ やっぱりバーガーは最高だな! |
マークス | マスター! 俺が作ったハンバーガーを食べてみてくれ。 |
十手 | ははっ! たまにはこういうのも楽しくていいね。 |
ライク・ツー | 騒がしいだけだろ。 ま、手軽に食えるのはいいけど。 |
シャルルヴィル | ボク、ハンバーガーって初めて食べるよ! けっこう美味しいね~。 |
ジョージ | …………。 |
ジョージ | ……あいつもこうやって、みんなと笑い会えるかな。 |
主人公 | 【今、何か言った?】 |
ジョージ | ん? ああ……バーガー、めちゃくちゃ美味いなって言ったんだ。 Yummy♪ Yummy♪ |
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