解説

カード解説

庭園での偶然の出会いが、2人のシャスポーを繋げ、人と貴銃士の違いを明白にする。
芽生えるのは人への羨望。同じ速度で時を過ごすことへの渇望。
それは決して叶わない望みだが、だからこそ今の尊さが輝くのだ。

心銃解説:僕らを包む優しい雨

もし僕が君と同じように成長し、老い、死ぬことができたなら……って考えてしまうんだ。
貴銃士の僕と人の君の時間が重なる奇跡の今が、永遠になればいいのにね。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

 

Ep1. 筋肉は裏切らない

──ある日の放課後。
シャスポーは美術部の部室へと向かった。

シャスポーBonjour. 遅くなってしまったかな。
美術部員1シャスポーさん、こんにちは!
ちょうど始めようとしていたので、時間ぴったりですね!
シャスポーそう? ならよかったよ。
今日は確か、みんなで課題をやってみるんだったね。
結局、課題は何になったのかな。
美術部員2人物デッサンです!
今日のために、特別にモデルを頼んでいるんですよ。
シャスポーモデルを呼ぶなんて、本格的じゃないか。
それは楽しみだね。
美術部員2あ、噂をすれば……ちょうどいらっしゃったみたいですね!
美術部員1モデルさん、どうぞお入りください!
ドライゼああ。今日はよろしく頼む。
シャスポー……!?
美術部員1本日はモデルを引き受けてくださってありがとうございます!
すごくすごく楽しみにしていました!!
美術部員2以前、訓練中にドイツ支部特別司令官ドライゼさんの
素晴らしい肉体美を拝見してから、
デッサンさせていただくのが夢だったんです……!
ドライゼそうか。
皆の技術向上の手助けになるのならば、
誠心誠意、モデルを務めるとしよう。
シャスポーは……。
美術部員1シャスポーさん?
シャスポーはぁぁぁあ~~~!?
シャスポーふざけるな!
なんで僕が君なんかをデッサンしなくちゃいけないんだ……!
美術部員2え、シャスポーさん? どうしたんですか?
シャスポーうっ……い、いや……取り乱してすまないね。
ドライゼが来るのを知らなかったから、
少し驚いただけなんだ。
ドライゼうむ、シャスポー。今日はよろしく頼む。
シャスポー(くっ……!
なんでこいつをまじまじ見て絵を描かなきゃならないんだ……!)
シャスポー(けど、僕以外の部員は喜んでいるし、
彼らの学びの場を邪魔する訳にはいかない……。
フランスが誇る貴銃士として、広い心で対応しなくては……)

シャスポーは他の部員と共にドライゼを囲うように座り、
デッサンを始める。

シャスポー(ダメだ……!
モデルがドライゼだと思うとイライラして
どうしてもデッサンに集中できない……!)
シャスポー(どうにかこの窮地を乗り越える方法はないのか……?)
シャスポー(そうだ、目の前にいるのを「ドライゼ」ではなく、
ドライゼそっくりの別人だと考えるようにしよう!)
ドライゼ…………。
シャスポー(無理だ……!)
シャスポー(どうあがいてもドライゼでしかない……ッ。
圧が……顔面の圧が強すぎるせいだ……!)
シャスポー(いっそ、顔を見ないようにすればいいんじゃないか?
今回の主題は筋肉。別に、顔まで描く必要はないはずだ。
首から下、身体だけに集中しよう!)
シャスポー(よし、これなら描けそうだ……)

シャスポーはようやくデッサンに集中することができ、
滑らかに鉛筆を走らせはじめた。

シャスポー……美しい筋肉だな……。
美術部員2シャスポーさんもそう思いますか!
僧帽筋から三角筋へメリハリがありつつ滑らかに続く筋肉が描く、
壮大な山々の稜線のような佇まい……! 惚れ惚れしますよね。
シャスポーああ……悔しいけれど、全体的に均整が取れていて、
すべてが絶妙なバランスで構成されている。
鍛えるものの視点から見ても素晴らしいし、描きたくなる筋肉だな。
シャスポードライゼ……僕は君のことは嫌いだが……
君のその筋肉を頭ごなしに否定することだけはできない。
腹筋も、張りがあって陰影がわかりやすく芸術的だ。くっ……!
ドライゼそ、そうか……。
ドライゼ(これは……一応褒められている、のか……?)
シャスポー僕が素晴らしいと言ってるんだ。もっと喜べばいいだろう!
まったく、嘆かわしいよ……。
ドライゼについていることだけが実に惜しい筋肉だ……。

シャスポーは文句を言いつつも、
一心不乱にデッサンを続けるのだった。

Ep2. 変わらないもの

──庭園のオーナーから、
レジスタンスのシャスポーについての話を聞いた日の夜。

恭遠おや? シャスポー、どうしたんだい?
シャスポー……あ……ええと……。
恭遠……とりあえず部屋の中へ入ってくれ。
お茶でも淹れよう。

シャスポー……レジスタンスのシャスポーについて、
お聞きしたいことがあって……。
恭遠……!
それは……構わないが、理由を聞いても?
シャスポー実は──……。
恭遠……そうか。
オーナーさんは、あの時の戦闘の被害者だったんだね……。
シャスポーはい。彼女の話を聞いて、いろいろと思うことがあって……。
恭遠俺でよければ、話してくれないか。
シャスポー……レジスタンスのシャスポーは、
オーナーの娘さんを必死で助けようとしたんですよね。
なのに、彼女は貴銃士に対して恐怖を抱くことになった……。
シャスポーもちろん、貴銃士を恐ろしく思う人がいるというのもわかります。
当時彼女が経験したのは、あまりにも衝撃的な出来事だし……
責めるつもりはないんです。
シャスポーけど……なんだか、あれこれと考えてしまって。
雨の日みたいにずっと、気分が晴れないというか……。
シャスポー貴銃士に対する複雑な感情というのは、
人間にとって、普遍的でよくあることなんでしょうか。
恭遠うーん、そうだなぁ……。

──革命戦争中。
レジスタンスの反撃が始まって間もない頃のこと──。

恭遠──スプリングフィールドの様子は?
レジスタンスのシャルルヴィル出血が止まらなくて……。
どうしよう、顔が真っ青だ。
死んじゃうかも……!
レジスタンスのブラウン・ベス落ち着け!
マスター、頼めるか。

レジスタンスのメディックでありマスターである人物が、
スプリングフィールドの負傷部位に、
薔薇の傷が刻まれた手をかざし、治療をする。

レジスタンスのメンバー傷が治った……!?
その手は、傷を治す奇跡の手なのか……?
恭遠マスターは、貴銃士の負傷ならば
文字通り「手当て」するだけで治せるんです。
レジスタンスのメンバーき、じゅうし……? 恭遠、彼らは一体何者なんだ?
恭遠戸惑うのも無理はありません。
私も未だに、これは夢ではないかと思う時もありますが……。
恭遠見ての通り、彼らは現実の存在としてあり、
我々に力を貸してくれています。
恭遠そして、彼らを呼び覚ます特別な力を持っているのが
マスターなのです。

恭遠複雑な感情を……という人は、少数派かもしれない。
けれど、戸惑う人は多かったかな。
恭遠7年前は特に、貴銃士というのは未知の存在だったからね。
初めて貴銃士を見た人で、驚かない人はいなかったと思う。
そして、大半は受け入れてくれたが、そうではない人もいた。
シャスポー…………。
シャスポー……あの、もう1つ質問してもいいですか?
恭遠ああ、もちろん。俺が答えられることならば。
シャスポーレジスタンスのシャスポーは、どんな貴銃士だったんですか。
恭遠…………。
恭遠彼は……君のように故郷のフランスをとても愛し、
誇り高くて、自信に満ち溢れていたよ。
恭遠しっかりと自分を持っていたし、
真面目で責任感が強いのもあって、
時には仲間とぶつかり合ったりもしていたかな。
恭遠マスターの役に立とうと一生懸命でね。
努力家でとても頼りになる、素晴らしい貴銃士だった。
シャスポー彼は……いい貴銃士だったんですね。
恭遠ああ、とても。
シャスポー僕が同じ『シャスポー』だからって、
気を使って話を盛っていませんか?
恭遠はは、盛ってないよ。
元レジスタンスの間では、そういう評価なんだよ。
俺以外に聞いても、似たような答えが返ってくるはずさ。
恭遠そうだな……
もう少しあけすけに言ってしまった方が、
もっと身近に感じられるだろうか?
恭遠ドライゼにはよく反発して喧嘩……というより、
好戦的な言い方をしてはドライゼに戸惑われていたかな。
シャスポーうっ……。
恭遠マスターのそばにいようとして、
同じくそばにいたがる他の貴銃士たちを押し退ける
力強さもあったね。
シャスポーそ、そうですか……。
恭遠……なんて言ってみたけれど、
それもご愛嬌と思えるくらいだったさ。
恭遠たとえば、ローレンツや、ゲベールという貴銃士がいたんだが、
彼らに対する物言いはきつく思えても、
実は的確なアドバイスだったりしてね。
恭遠俺としては、君たちは芯のところがよく似ているように思えるよ。
恭遠同じ種類の量産銃から召銃された貴銃士でも、
性格や信念の根っこが同じであるとは限らない。
ただ、君と彼は、そういうところから似ている気がするんだ。
シャスポーそうなんですか?
恭遠ああ。特に、いい部分がね。
恭遠 貴銃士という存在に忌避感を持つ人がいるのは仕方がない。
だけど、別に気にしなくていいさ。
恭遠君たちは俺たち人の願いに応えて目覚めてくれたんだ。
そして、願いに応えようと力を尽くしてくれている。
だから……自信を持ってほしい。
シャスポーええ、もちろんです。
アドバイス、ありがとうございました。

自分の部屋へと戻りながら、
シャスポーは恭遠から聞いた話を思い返す。

シャスポー(レジスタンスのシャスポーは、
自らを犠牲にしてまで少女を助けようとしたのに、
結果として、恐怖の対象として心に刻まれてしまった)
シャスポー(彼は本当にそれでよかったのだろうか?って、
ずっと……モヤがかかったように、スッキリしなかった。
でも、「僕と同じ」だと思ったら、モヤが晴れた気がする)
シャスポー(称賛されたいとかではなく、困っている人がいれば助けたい。
それがたとえ僕らを嫌っている人でも、怖がっている人でも
助けになりたい……僕はそう思う)
シャスポー(もちろん、ちょっと複雑に思う部分はあるけれど……。
だからって、助けたことや、助けようと手を尽くしたことを
後悔なんてしたりはしない)
シャスポー(きっと彼──違う『僕』も、同じなんだ。
僕を理解して、共に歩んでくれる大切な人がいるのなら、
きっと、どんな時でも迷わず進んでいける)
シャスポー僕は、守る銃でありたい。
〇〇が言ってくれたように。
今までも、これからも、ずっと……。

Ep3. お絵描き教室開催!

──紫陽花フェスタが無事に終了して、少し経った頃。
〇〇はシャスポーと談話室にいた。

シャスポー……それでね、ドライゼをモデルにデッサンをしたんだけれど、
美術部員たちがすごく気に入ってしまって、
また呼ぼうって言っているんだよ……。
主人公【シャスポーもなんだかんだ楽しそうだね】
【デッサンは楽しかった?】
シャスポー……絵を描くのは好きだからね。
ねぇ、君も興味があるなら、僕と一緒に描いてみない?
僕でよければ、喜んで描き方を教えるよ。
主人公【挑戦してみようかな】
【本当!?】
シャスポーよーし、こういうのは早い方がいいよね。
明日の放課後、美術室に……いや、待てよ。
せっかくなら邪魔の入らない静かな場所で教えてあげたいし……。
シャスポーそうだ、貴銃士クラスの教室で描くのはどう?
放課後にはどうせ誰も残ってないだろうし、
〇〇の都合が合えば……だけど。
主人公【大丈夫】
【ちょうど空いてる】
シャスポーああ、〇〇と一緒に絵を描けるなんて、
嬉しいな……約束、忘れないでね。

──翌日の放課後。

シャスポーは〇〇のために
画材などの必要道具をそろえてから、教室に戻った。

シャスポー〇〇、お待たせ!
道具を持ってき──
シャスポー……!?
シャスポーな、な、なんで君たちがいるんだ!?
エンフィールド絵画は紳士の嗜みですからね! ええ!
シャスポーいや、そういうことじゃなく!
君ら、いつも教室に誰1人残ったりしないだろう!?
今日に限って、なんで……。
マークスマスターがこのクラスに来たのなら、
マスターの銃である俺が教室に残るのは当然だろう。
ケンタッキーシャスポーに絵を教えてもらうって聞こえてよ。
俺もイケてるアートをマスターと一緒に描きてぇと思って!
グラースハッ……残念だったな。
〇〇と2人っきりで過ごせるとか思ってたんだろ。
簡単に抜け駆けできると思うなよ?
シャスポーグラース、貴様……っ!
タバティエールあーはいはい。ほら、シャスポー。
〇〇ちゃんと待たせてるぞ。
放っておいていいのか?
シャスポーあ! ごめんね、〇〇。
騒がしくなってしまうけれど、こいつらも一緒でいいかい?
主人公【もちろん!】
【みんなで楽しもう】
シャスポーはぁ……仕方ないから君達にも絵を教えるけれど、
〇〇の邪魔をしたりしたら
教室を出て行ってもらうからな!
シャスポーさて……。
初めてだし、基本の静物デッサンをやってみようか。
シャスポーりんごと洋ナシを1つずつテーブルに置くから、
好きな位置に座ってデッサンしてみて。

──しばらくして。
シャスポーはデッサンを描き終わり、見回りを始める。

シャスポー(まずは……〇〇から見てみよう)
主人公【割とよく描けたかな】
→シャスポー「うん、とても素敵に描かれていると思うよ。
〇〇の素直なところが絵にも表れているね。」

【ちょっと自信ないかも】

→シャスポー「僕にはとても伸びしろのある絵に見えるよ。
このりんごの部分は特にセンスがあると思うな。」
シャスポー……あとは、この部分にもっと陰影をつけると
いいんじゃないかな?
もっと、自分の描いた絵に自信を持って。
マークスおい、次は俺の絵を見てくれ。
シャスポー(なんだこの絵は……小さな子供が描いた絵に、
謎のセンスが加わって、ある意味芸術的……。
いや、でもデッサンとしては……どうなんだ?)
シャスポー……元気でいいんじゃないかな。
マークスそうか!!
シャスポー(僕の手に負えるものではない。別次元の絵に評価はできない。
……見なかったことにしよう)
ケンタッキー次は俺だな!
シャスポー(これは……! デッサンではなく、もはや抽象画!!)
シャスポーこ、個性的だね……。
ケンタッキーだろ? りんごと洋ナシから着想を得てこうしてみたぜ!
鉛筆だけじゃ味気ないし、カラフルな方が楽しいよな!
シャスポーええと、デッサンというのは見たままを描くことで
技術を磨く……まあいい。
シャスポー(これも僕の手に負えるものではない、別次元の絵だ。
……もうその道を突っ走ればいいだろう。
次はエンフィールドか……)
エンフィールドううん……。
いや、しかし……この部分は……。
シャスポーん? なかなか上手に描けているじゃないか。
何を悩んで……というか、この余白の文章はまさか……。
エンフィールドもちろん、マスターに捧げる詩です!
シャスポー今日は詩作教室ではなく、絵の……まあいい……。
シャスポー(絵はうまいけど、横のポエムのせいで気が散る……!
デッサンの意味をまともに捉えている奴はいないのか!?
……ん?)
グラースなんだよ、僕の絵に文句でもあるのか?
シャスポー……普通だな。
グラースなんだと!?
シャスポー器用だけれど、特別絵の練習をしたわけでもない学生が、
美術の授業中に頑張って描いた絵って感じだ。
つまり平凡だ。
グラースおい、馬鹿にしてんのか?
シャスポー違う……褒めてるんだ……。
お前はこのままでいい、グラース。
普通のままでいてくれ……。
グラースはぁ? 意味わかんねぇぞ!
タバティエール……ちなみに俺は?
シャスポータバティエールは……特に僕から言うべきことはないな。
普通に上手いと思う。
タバティエールへぇ、そいつはどうも。
シャスポー強いて言えば……なんだか、タッチが渋いな。
タバティエール渋い……?
シャスポーああ、渋い……。

──こうして、シャスポーによる即興の絵画教室は終わった。

シャスポーはぁ……ようやく終わった。
主人公【楽しかった!】
【ありがとう、シャスポー】
シャスポー〇〇が楽しいって思ってくれたのなら、
苦労も吹き飛んでしまうよ。
シャスポーでも、次は絶対に2人きりで外にスケッチに行こう……!
君に見せたい風景がたくさんあるんだ。

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