暑くて鬱陶しい夏が嫌いなスナイダー。
そんな彼に夏を楽しんでもらおうと、夏男ケンタッキーが立ち上がる……!
波乱は続けど終わり良ければすべて良し。
絆が深まり芽生える、ある夏の記録。
夏は嫌いだ。暑いし、勝手に汗が出て、べたべたして鬱陶しい。
だが……冷たい水に入るのも、爽快な遊戯も悪くなかった。
次の夏も、少しは楽しめそうだ。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──スナイダーが〇〇たちと遊びに行く前日。
ケンタッキー | おーい、スナイダー。 明日の準備はできてんのか? |
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スナイダー | ……? 準備? |
ケンタッキー | うわ! まさか何もしてねーの!? |
ケンタッキー | 気持ちを盛り上げるための服とかグッズだよ! ファッションは重要だろーがよっ! |
スナイダー | そんなものには興味がない。 |
エンフィールド | お待ち下さい、ケンタッキーさん! |
エンフィールド | スナイダーの服なら僕が用意しておきました! ほら、ここに! |
ケンタッキー | おおっ! エンフィールド! |
エンフィールド | こちらをご覧ください! |
ケンタッキー | ふんふん! 上がチェック柄のポロシャツに? 下は白い……長ズボン……。 |
ケンタッキー | そんで……革靴……。 |
エンフィールド | ええ! 英国貴銃士のオフスタイルに相応しく、 品のよいトラッドスタイルにしてみたんです! |
ケンタッキー | あ、あり得ねぇ……。 |
エンフィールド | ええっ!? |
エンフィールド | な、何を言うんですか……! 夏といえばポロシャツでしょう? スポーティさも取り入れていますし、 加えてギンガムチェックでオシャレにも気を遣って── |
ケンタッキー | ダメだ。 100歩譲ってチェック柄はセンスの違いだと認めてやるが── |
ケンタッキー | 革靴は動きづらい。 ってか、海に行く予定だから歩きづらいだけじゃなくて 靴が傷むぞ。 |
エンフィールド | ……うっ! |
ケンタッキー | そもそもスナイダーはクール系なんだから、 もっとシンプルなヤツの方がいいって! |
エンフィールド | そ、そうでしょうか……? スナイダー、君はどう思う? |
スナイダー | 知らん。 だが、動きやすい服の方がいいことは確かだ。 |
エンフィールド | で、でしたら! 他にも候補があるので、そっちを持ってきます! |
エンフィールド | お待たせしました! |
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エンフィールド | これならどうです? 白のTシャツに七分丈ズボン、そしてサンダルです! 浜辺でも動きやすいですし、とてもシンプルでしょう? |
ケンタッキー | 確かにシンプルにはなったが……足りねぇな。 |
エンフィールド | 足りない……? |
ケンタッキー | ああ、このファッションには、 夏を楽しむぞっていうパッションが見えねぇんだ! |
エンフィールド | パッションが……!? |
エンフィールド | うぅっ……! ごめん、スナイダー……。 僕の力が足りないばかりに……。 |
スナイダー | いや、どうでもいい。 |
ケンタッキー | 待てよ……閃いたっ! |
ケンタッキー | ……こうだーっ!! |
ケンタッキーはハサミでTシャツを裁断し始めた。
エンフィールド | ああっ!? 何をするんですか!! |
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ケンタッキー | 夏に袖なんていらねぇ! 取っ払って、腕を真夏の日差しに解放してやる! |
ケンタッキー | これを……こうして── ……んでもって、こう……!! |
エンフィールド | ひぃいい! Tシャツが原型を留めなくなっています! |
ケンタッキー | ……よし、できた! |
ケンタッキー | おい、試しに着てみてくれ。 |
スナイダー | ……わかった。 待っていろ。 |
スナイダー | 着てきたぞ。 |
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2人 | おお!! |
ケンタッキー | うまく着こなしてるじゃねえか! 俺のチョーカーと羽織もばっちりだ! |
エンフィールド | スナイダーが……街のアウトローな若者みたいに なってしまった! |
主人公 | 【何を話しているの?】 【スナイダーの服が!】 |
ケンタッキー | あ、マスター! 明日スナイダーが着る服を見繕ってたんすよ! |
主人公 | 【似合ってるよ】 【すごく格好いい!】 |
スナイダー | ……ふん。 |
ケンタッキー | あざす! エンフィールドが持ってきた服を、俺がアレンジしたんす! |
主人公 | 【ケンタッキーらしいセンスだね】 【さすが、ケンタッキー!】 |
ケンタッキー | へへっ……へへへへっ!! |
エンフィールド | でも、英国貴銃士としてはどうでしょう? ちょっと品がないような気がしますが。 おへそも出てるし。 |
ケンタッキー | はっ? ヘソ出しがいいんだろ? |
エンフィールド | いやいやいや! 袖もありませんし、まるで不良みたいな格好ですよ。 |
ケンタッキー | うるっせー! このカタブツめ!! |
スナイダー | 涼しければ、袖もへそもどうでもいい。 |
主人公 | 【涼しい?】 【気に入った?】 |
スナイダー | ……まあ、悪くはない。 |
イルカと遊べる場所があると聞き、スナイダーたちは
プールの近くにある入り江へとやってきた。
スプリングフィールド | この入り江に、イルカたちが遊びに来てるんです。 |
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スナイダー | ……どこだ? |
ケンタッキー | あ! 波の間に背びれみたいなのが見えるぜ。 |
主人公 | 【本当にイルカなのかな?】 →スナイダー「イルカじゃなければ……シャチか?」 【行ってみよう!】 →スナイダー「シャチだったらどうする?」 |
イルカたち | キュイ! |
スプリングフィールド | あ、イルカさんが顔を出しました! |
主人公 | 【触ってみる?】 →シャルルヴィル「うん、さっき触ってる人がいたよ! 半分飼育されてる感じで、人に慣れてるみたい。」 【触っても大丈夫かな】 →ケンタッキー「大丈夫だと思うっす! 触り方のレクチャーの立て看板もありますし、 この子たち、スゲー人に慣れてますから!」 |
スプリングフィールド | プールのお客さんや近所の子供たちが よくイルカと遊んでいるらしいです……! |
シャルルヴィル | それじゃ、 驚かさないように、そーっと……。 |
スプリングフィールド | ……わっ! すべすべしてる……! |
シャルルヴィル | かわいい~! |
スナイダー | …………。 |
主人公 | 【人懐っこいよ】 【スナイダーも撫でてみたら】 |
〇〇に手を引かれ、
スナイダーもイルカに触れてみる。
スナイダー | ……! 思ったより柔らかい。 |
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イルカたち | キュイ! キュイ! |
スプリングフィールド | わっ! |
ケンタッキー | あっ! イルカがスーちゃんとスナイダーの顔にキスした! |
スナイダー | ……! |
スプリングフィールド | わ、わ……! うれしくて、し、心臓が……きゅっとしました! |
シャルルヴィル | ちょ、そのコメントがかわいいよ! |
その時、強い風が吹いて、
シャルルヴィルの麦わら帽子が飛ばされる。
シャルルヴィル | あっ! ボクの帽子が!! |
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帽子はふわりと空を舞い、海に落ちた。
ケンタッキー | うわっ、かなり遠くまで飛んだな。 しかも、潮の流れに乗っちまった。 |
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スナイダー | 沖まで流されるだろう。 |
スプリングフィールド | そ、そんなぁ! |
イルカたち | キュイ……? |
肩を落とすシャルルヴィルたちを見て、
イルカたちが海の中へと消える。
スプリングフィールド | あ……! |
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流された麦わら帽子に追いついたイルカは、
それを器用に口に乗せて戻ってきた。
シャルルヴィル | ウソ!? 拾ってきてくれたの!? |
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スプリングフィールド | すごい……! イルカさんたち、ありがとう! |
イルカたち | キュイ! キュイ! |
ケンタッキー | スッゲー! イルカって賢いんだぁ。 |
スナイダー | ほう……。まるでエンフィールドのようだ。 |
ケンタッキー | はぁ? どこがだよ? |
スナイダー | 別に。 ただ、こいつらがエンフィールドに似ていると思っただけだ。 |
ケンタッキー | いや全然説明になってねーけど!? |
スナイダー | ………………。 |
エンフィールド | こら、スナイダー! |
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エンフィールド | この間も注意しただろ? テスト用紙を紙飛行機にして飛ばしちゃダメだって! |
スナイダー | また拾ってきたのか。 |
エンフィールド | 当たり前だよ! こんな大切なものを! |
エンフィールド | ほら。 もう飛ばしちゃダメだよ。 |
エンフィールドは拾ってきた紙飛行機をスナイダーに渡す。
スナイダー | ……ふん。 |
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スナイダーは紙飛行機を受け取ると、再び窓の外に飛ばした。
エンフィールド | うわぁ!!! 言ったそばから君って奴は!!! |
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スナイダー | ……ふふっ。 |
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スプリングフィールド | ……?? |
シャルルヴィル | あ、お土産屋さんがあるよ。 寄っていこうよ! |
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スプリングフィールド | はい! 何が売ってるんでしょう。 |
ケンタッキー | いろいろあるみたいだな。 お、さっきのイルカグッズもあるぜ! |
スナイダー | ……ほう? イルカのグッズ……か。 |
スナイダー | (〇〇に土産を買えと言われたな……) |
スナイダーは土産屋に入ると、
商品を一通り見てみる。
しばらくして、あるボールペンを手に取った。
スナイダー | ……ふっ。 |
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スナイダー | (イルカそっくりなあいつには、ちょうどいいだろう) |
貴銃士たちと〇〇が
プールと花火を楽しんだ数日後──
恭遠 | 今日はみんなに聞きたいことがある。 |
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恭遠 | 最近、夜にプールへ何者かが勝手に忍び込んで 遊んでいるようなんだ。 心当たりがある者はいるか? |
邑田 | ……ふむ? 在坂や、何か知っておるか? |
在坂 | いや……在坂は何も知らない。 |
恭遠 | そうか……。夜間の単独での遊泳は危険だ。 続くようなら、プール自体を禁止せざるを得ない。 皆、見かけたら注意してくれないか。 |
エンフィールド | ええ、もちろんですとも! 見かけたら……ではなくて、 僕がその不届き者を見つけてみせますよ! |
恭遠 | 本当かい? ありがとう、エンフィールド。 だが、くれぐれも気を付けてくれよ。 |
スナイダー | ……ご苦労なことだ。 |
──その日の夜。
エンフィールド | さあ、スナイダー! 今日から見回り開始だよ。 こっそりプールで遊ぶ不届き者を見つけよう! |
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スナイダー | なぜ俺までもが……。 見つけ次第、撃つからな。 |
エンフィールド | そ、それはダメだよ? |
エンフィールド | ……あれ? スナイダー、あそこ── |
スナイダー | ……ああ、灯りのついたランプが置いてあるな。 |
エンフィールド | やっぱり、誰かいるんだ! |
スナイダー | ……水音もする。 プールで泳いでいるのか? |
エンフィールド | 誰です! 出てきなさい……! |
2人はプールサイドへと駆け込み、
水中の人影を探す。
スナイダー | ……誰もいないぞ。 |
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エンフィールド | おかしいな? ランプだけ置いて、逃げたのか……? |
スナイダー | ──いや、何か気配がする。 |
エンフィールド | ええっ!? で、でも、周りには誰もいないようだけど……。 |
スナイダー | ──いる。近づいてくる。 |
エンフィールド | へ、変なこと言わないでくれよ……! |
スナイダー | ……気づかないのか? もう目の前に── |
エンフィールド | うわあぁっ! |
ゴースト | あれ……? 遊びに来てくれた、のか……? |
エンフィールド | え……? ゴーストさん!? |
スナイダー | プールで泳いでいたのはおまえか。 |
ゴースト | そう……だ。 昼間は日焼け、するから、な……。 夜、入ってたん……だ。 |
エンフィールド | なら、朝、聞かれた時に、 ちゃんと恭遠教官に申告しなきゃダメじゃないですか! |
ゴースト | 朝……? |
スナイダー | ……朝礼の時、こいつはいたか? |
エンフィールド | え……? いなかったっけ? |
ゴースト | いないことすら……気づかれない、のか……。 |
エンフィールド | あ……いなかったのなら、ごめん。 いるものかと思っていたよ。 |
ゴースト | フォローになってない、ぞ……。 |
スナイダー | だが、なぜプールに入っている。 おまえは泳ぐのが好きなのか? |
ゴースト | 好き……って、いうか…… みんなで、プール……楽しんだって、聞いて……。 俺、いなかったから……。 |
ゴースト | ちょっと、いいなぁと思って……。 でも、昼間は無理、だったから……。 |
エンフィールド | なるほど……そういうことだったんですね。 |
スナイダー | それで、おまえは夜中に一人で泳いで満足なのか? |
ゴースト | う……それは、微妙。 なんか、虚し寂しい……。 |
エンフィールド | ええ、そうでしょうね。 ですからこうしましょう。 ナイトプールを開催するんです! |
ゴースト | ……! |
──その後、恭遠にきちんと許可を取り、
ナイトプールが開催された。
ドライゼ | ふん……! ふん……! ふん……!! |
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エルメ | ふふ、いい泳ぎっぷりだね。 |
ジーグブルート | 負けねぇぜ……! |
マークス | 俺もたくさん、練習したんだ! ……ぶはっ! |
スナイダー | 奴ら……速いな。 |
ライク・ツー | へー、やる気のあるやつが多いじゃん。 じゃあ、一列でスタートする? |
十手 | おお、勝ち抜き戦かい? 盛り上がりそうだね! |
ゴースト | あ……あれ? ナイトプールって……こんなガチ……? あれ……? |
ドライゼ | おい、ゴースト! お前も練習した成果を見せるんだ! |
エルメ | ドイツの貴銃士たるもの、25メートル15秒は最低ラインだ。 わかっているね。 |
ゴースト | ひぇっ……。 |
ジーグブルート | ほら、来いよ。ここのレーン開けてやる。 |
ゴースト | え、え……。 |
スナイダー | おい、早くスタートラインにつけ。 貴銃士たちとプールに入れて満足なのだろう? |
ゴースト | い、いや……そう、だけど……。 |
ゴースト | (思っとったんと、ぜんぜん違う~!!) |
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