暑くて鬱陶しい夏が嫌いなスナイダー。
そんな彼に夏を楽しんでもらおうと、夏男ケンタッキーが立ち上がる……!
海川プールにBBQ、マスターとの思い出もできた……これは、サイコーの夏の記憶。
正直言うと、マスターと2人で思い出を作りたかったんすけど。
みんなでいろんなことする夏もサイコーでした!
来年の夏も、Mr.夏男の俺と過ごしましょ!
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
──夏休みのある日。
ケンタッキー | うーん……。 |
---|---|
ジョージ | Hey! ケンタッキー! 手帳とにらめっこして、どうしたんだ? |
ケンタッキー | 夏休みのスケジュール見てたんだ。 けっこう、仕事の予定が詰まってんだよなぁ……。 |
ペンシルヴァニア | ああ……。 アメリカに戻らないとならない日も多いな……。 |
ケンタッキー | そう、それ! おかげでマスターと遊べる日が少ねぇっての! |
ケンタッキー | マスターとステキな夏を満喫するためにも、 課題は前倒し進行で終わらせるか。うん! |
ケンタッキー | ……つーことで、課題やってくるわ! |
ジョージ | えっ? 今から!? |
ペンシルヴァニア | これから釣りに行かないか……と、 誘いに来たんだが……。 |
ケンタッキー | 無理! 課題が優先だ!! |
ジョージ | Wow……! ケンタッキーが燃えてるぜ……。 |
ペンシルヴァニア | 仕方ない。 俺たちだけで行くか、ジョージ。 |
ケンタッキー | いや、ちょっと待て! ペンシルヴァニア! お前だって、俺と同じスケジュールだろ! |
ペンシルヴァニア | そうだが……? |
ケンタッキー | 「そうだが?」じゃねぇー! だったら、今のうちに課題を終わらせとけよ! |
ペンシルヴァニア | ……終わらせなきゃいけないのか? |
ケンタッキー | 当たり前だろ!? 油断してたら、夏休みなんてあっという間に終わっちまうぞ! |
ペンシルヴァニア | 夏休み後……にやるのはどうだろうか……? |
ケンタッキー | はぁ~~~~?? |
ケンタッキー | バカッ!!!! |
ケンタッキー | それじゃ、夏休みの課題になんねぇだろうが! お前、ちょっとそこに座れ! |
ペンシルヴァニア | ……? わ、わかった……。 |
促されて、ペンシルヴァニアはソファに座る。
ケンタッキーは彼の前に、課題に出された参考書を広げた。
ケンタッキー | まずは科学からやれ! 1番量が少ないから! |
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ペンシルヴァニア | ……わかった。 やってみよう……。 |
ペンシルヴァニアはペンを片手に問題集と向き合った。
ペンシルヴァニア | …………。 |
---|---|
ペンシルヴァニア | ………。 ……ん……。 |
ケンタッキー | ……おい? どうしたんだよ。 |
ペンシルヴァニア | ……ぐぅ……。 |
ケンタッキー | 寝るなー!! |
ペンシルヴァニア | ……なるほど。 つまり硝石に硫黄と木炭を加える……と。なら、ここは── |
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ケンタッキー | そうそう、やりゃできるじゃねぇか。 |
ペンシルヴァニア | ああ、おかげで課題と向き合うことができた。 それじゃあ、終わろう。 |
ケンタッキー | 1ページ終わっただけで満足するな! |
ペンシルヴァニア | しかし、もう疲れた。 |
ジョージ | HAHAHA! わかる、集中すると疲れるよなー! それじゃあ、釣りで気分転換しようぜ☆ |
ペンシルヴァニア | ああ……。 |
ケンタッキー | あ、おい! ちょっと!! |
ケンタッキー | ……行っちまった。 |
──翌日。
ケンタッキー | はぁ……。 |
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ケンタッキー | (結局、あれからペンシルヴァニアは捕まらなかったし、 今朝もいつの間にかいなくなっちまったし……) |
ケンタッキー | どうすりゃ、あいつにやる気を出させられるんだ? |
ローレンツ | Mr.ケンタッキー。 朝からため息をつくなど君らしくないな。 |
ケンタッキー | ああ……それがさ。 ペンシルヴァニアが課題をやらずに逃げやがるんだ。 |
ローレンツ | なるほど。 それは由々しき事態だ。 |
ローレンツ | ならば……エンハンシング効果を利用してはどうだ。 |
ケンタッキー | エンハ……? なんだそれ? |
ローレンツ | 平たく言えば『褒めて伸ばす』……だ。 |
ケンタッキー | おぉ、なるほどな。 つまり、「解けてスゲー」とか「さすがだな!」とか おだてりゃいいってことだろ? |
ローレンツ | 一般的には、そのような言葉が用いられているな。 努力や過程を認められれば、頑張ろうと思うものらしい。 |
ケンタッキー | なるほどな、俺も褒められると頑張ろうって思うぜ。 |
ケンタッキー | よし、やってみるわ。 アドバイス、ありがとな! |
ローレンツ | いやなに。 しかし、君がMr.ペンシルヴァニアのことを そんなに深く考えているとは思わなかったな。 |
ケンタッキー | え? い、言うほど考えてるか? |
ローレンツ | 課題の心配は親身になっていると表現できると思うが? |
ケンタッキー | い、言われてみりゃあ、確かに……。 |
ケンタッキー | ……なんで、俺、あいつのことでこんなに悩んでるんだ? |
ケンタッキー | あれ? なんか、すっげーバカらしくなってきた! |
ペンシルヴァニア | おはよう、ケンタッキー。どうかしたか? |
ケンタッキー | ……っ! この諸悪の根源めっ! |
ペンシルヴァニア | ……いてっ。 |
ローレンツ | こうして青い八つ当たりが パンチに変わって炸裂したのであった……合掌。 |
──ケンタッキーたちがガーデンプールで遊んでいる時のこと。
スプリングフィールド | ……はふっ。 あっつあつで、美味しいですね。 |
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シャルルヴィル | うん、できたてで最高だね! まさかここで本格的なスイーツを楽しめるなんて思わなかったよ。 |
ケンタッキー | ……あれ? 何食ってるんだ? |
スプリングフィールド | チュロスだよ。 ここのフードコートで売ってたんだ。 |
シャルルヴィル | 他にも色々あったよ。アイスにチュロス、 フィッシュ&チップスでしょ、カレーでしょ、ケバブまで! |
ケンタッキー | ……聞いてたら腹減ってきた。 俺もちょっと見てくる! |
ケンタッキー | ここがフードコートか……! |
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ケンタッキー | ってか、スゲーいい匂いがするな。 これはカレー……ってかグリーンカレーだったりする? |
ケンタッキー | ケバブ……はさっき、BBQしたばかりだしやめとくか。 カレーって気分でもないし、やっぱ甘いもんかな? |
ケンタッキー | チュロス……は、スーちゃんたちと一緒だし……。 ……夏だしアイスにするか! |
ケンタッキー | (そうだ! マスターの分も買ってこよう……!) |
ケンタッキー | へへっ、喜んでくれたらいいな。 |
ケンタッキー | てか、フレーバー15個もあるのかよ! な、悩む~! |
タバティエール | ……おや? この声は── |
---|---|
ケンタッキー | ──注文は以上っす! お願いします! |
店員 | ただいまお作りしますね! |
タバティエール | ああ、やっぱり。ケンタッキーくんじゃないか。 |
ケンタッキー | あっ!? なんでこのプールにいるんだよ! |
グラース | なんでって、夏は危険なアバンチュールの季節だからだろ? |
ケンタッキー | ……は? |
タバティエール | ははっ、つまり遊びに来たってことだよ。 |
シャスポー | 目を離すとすぐ消えるから困ってるんだけどな。 今もちょうど、こいつを捕まえてたとこだ。 |
グラース | チッ……! プールまでついてくるとは本当に弟思いな奴らだぜ。 |
タバティエール | ケンタッキーくんも遊びに来てたのか? |
ケンタッキー | 俺? お、俺ももちろん、遊びに来たに決まってるだろ! |
シャスポー | 誰と? |
ケンタッキー | そ、それは……。 |
ケンタッキー | …………スナイダーだ。 |
グラース | はっ? マジかよ。 |
タバティエール | へぇ……意外だな。 |
シャスポー | ていうか、その服はどうしたんだ。 肩が片方ずり落ちてるし……。 ボタンが取れたなら、タバティエールにつけてもらったら? |
ケンタッキー | これはファッションだっての! わざと!! |
シャスポー | ファッション……? それがか? |
グラース | ああ、おぼっちゃんはこれだから。 僕はわかるぜ。 アウトローっぽさを出してるんだろ? |
ケンタッキー | 微妙に俺の美学が伝わってない気もするが……。 まあ、そんな感じ。 |
シャスポー | まったく君もグラースも貴銃士としての品がなさすぎるよ。 もっと自覚を持って節度を保ち、気品ある立ち居振舞いを── |
ケンタッキー | ああ、もううるせぇな! 夏休みぐらい羽伸ばしてもいいだろうが、ホクロ!! |
シャスポー | ホク──!? |
グラース | お、言うな。そうだ! いちいち、口うるせえホクロ!! |
シャスポー | なっ……グラース!! 君にも同じ場所にあるくせに!! |
タバティエール | おいおい、こんなところで喧嘩はよせよ。 |
店員 | ……あの、ご注文のアイスクリーム、できました! |
ケンタッキー | あ! サンキュ! これ、お代っす! |
タバティエール | あれ? 2つ? |
タバティエール | スナイダーくんは甘いものは嫌いだよな。 |
シャスポー | 1人で2つ食べるのか? |
ケンタッキー | え……えっと、 こ、これはその……ペンシルヴァニアの分だ! |
タバティエール | え? ペンシルヴァニアくんはたしか今日、用事で── |
ケンタッキー | わりぃ! アイス溶けるから、俺、もう行くわ! じゃあな!! |
シャスポー | あ、おい! |
グラース | 慌ただしいヤツ……。 |
ケンタッキー | やっべー! ……あとで突っ込まれるかな。 |
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ケンタッキー | ま、とりあえず誤魔化せたか……? マスターもいるって気づかれたら面倒だからな。 |
ケンタッキー | (……マスターとの貴重な時間は これ以上絶対、誰にも譲らねぇぞ!) |
──ケンタッキーたちが海や川、プールで
夏を満喫してから数日後。
スプリングフィールド | ……どうしたんだろう……。 |
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ケンタッキー | あれ? 何やってんだ、スーちゃん。 それ、在坂の水槽だよな。 |
スプリングフィールド | あ、ケンタッキー。 えっと……在坂さんが用事で何日か留守にするらしくて、 その間水槽のお世話を頼まれたんだ。 |
ケンタッキー | へー。一人でできそう? 手伝おうか? |
スプリングフィールド | ありがとう。 今、朝ご飯をあげたんだけど……。 |
スプリングフィールド | ハサミ次郎が食べてくれなくて……。 |
ケンタッキー | ハサミ次郎? なんだそりゃ! |
スプリングフィールド | ザリガニの名前だよ。 在坂さんがつけたんだって。 |
スプリングフィールド | 大きなはさみがあるからかな? こっちのヤゴは、とんぼ。 |
ケンタッキー | まんまじゃねーか! |
スプリングフィールド | こっちの金魚鉢には金八郎(ごんぱちろう)と銀八郎。 金八郎は元々在坂さんが飼っていて、 プールで見つけた銀八郎が増えたんだ。 |
ケンタッキー | ま、1人で寂しく泳いでるより仲間がいた方が楽しいよな。 |
スプリングフィールド | うん……! |
スプリングフィールド | それにしても、ハサミ次郎、大丈夫かな……。 昨日の餌も残してるみたいなんだ……。 |
ベルガー | なあ、これやれよ。 |
2人 | わあっ!? |
ケンタッキー | いきなり現れんなよ! びっくりしただろうが!! |
ベルガー | ザリガニ! こいつなら食うんじゃね? |
ベルガーが手のひらを広げると、
そこにはたくさんのイトミミズが蠢いていた。
2人 | ひぃいい!! |
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ベルガー | たぶん、コイツはこーゆーのがスキだって! |
ケンタッキー | ま、まあ、食べそうな気はする……な? |
ベルガー | おう! メシだぞー♪ |
ベルガーは水槽にイトミミズを投入するが──
スプリングフィールド | 食べ……ませんね? |
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ベルガー | ありぇ……? イトミミズ嫌いか? なら、小魚か。 |
ケンタッキー | コイツ、魚食うのか! |
ベルガー | ああ、このでっけーはさみでバチン!って挟んで パクパク食うんだぜ。 |
スプリングフィールド | ……! それ、どこで手に入りますか……? |
スプリングフィールドたちは
ベルガーがよく訪れるという店にやってきた。
スプリングフィールド | うわあ……! いろんな生き物がいますね……! |
---|---|
ベルガー | スゲーだろ! 俺、この店よく来るんだぜー。 |
ケンタッキー | お前が首から提げてるソレ、なんだ? |
ベルガー | んあ? クソメガネが寄越した小遣い入れ。 なくすから首からかけておけって言われてんだー。 |
スプリングフィールド | うさぎさんのお財布ですね。 かわいい……! |
ベルガー | あっ! パイソン! |
スプリングフィールド | ひぃい! おっきな蛇……!! |
ベルガー | オマエ弱っちぃんだからよ、 パイソンの餌にされっかもしれねぇぜ! |
スプリングフィールド | ええ! 僕食べられちゃうんですか!? |
ケンタッキー | んなワケないって! |
ベルガー | あひゃひゃ! お、落ち葉カエル今日も潰れてんなー! |
スプリングフィールド | つぶれ……? わ! すごく平べったいカエルだ! |
スプリングフィールド | コモリガエルっていうんですね……! ……ふふっ、なんだか愛嬌があってかわいい……! |
店の生き物たちをじっくりと観察した後、
エサ用に買ってきた小魚をザリガニに与えたが──
スプリングフィールド | ……食べてくれませんね。 |
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ベルガー | コラ! スキキライはよくねーぞ! |
ケンタッキー | ここ最近で一番の『お前が言うな』だな。 |
スプリングフィールド | 在坂さんから預かってるのに、 僕が弱らせちゃったらどうしよう……。 |
ケンタッキー | うーん……様子を見るしかねぇよな……。 |
スプリングフィールド | うん……。 |
──翌日。
スプリングフィールド | うわぁっ!! |
---|---|
ケンタッキー | どうした、スーちゃん!! |
スプリングフィールド | ハサミ次郎が2匹に増えてる!! |
ケンタッキー | なにっ!? |
ケンタッキー | ……本当だ。 って、あれ? 1匹、色が薄くねーか? |
ベルガー | あ。 コイツ、ダッピしてんじゃん。 |
スプリングフィールド | 脱皮……? |
ベルガー | 皮、脱ぐんだよ。 俺が飼ってるテキサス1号もやるぜ? ダッピ前は動きが鈍くなんだよなー。 |
ケンタッキー | なるほど……! だからコイツ、餌を食わなかったのか。 |
在坂 | スプリングフィールド……。 |
スプリングフィールド | あ、在坂さん……! お帰りなさい……! |
在坂 | ……頼んだ世話、してくれたみたいだな。 |
スプリングフィールド | うまくできたかはわかりませんが……。 |
在坂 | みんな、元気……に見える。 在坂は感謝する。 |
スプリングフィールド | ……あの、これからもお世話、手伝ってもいいですか? なんだかみんなのこと、好きになっちゃって……。 |
在坂 | もちろんだ。 ハサミ次郎はみんなのハサミ次郎だと、在坂は思う。 |
スプリングフィールド | ……はい! |
ケンタッキー | よかったな、スーちゃん! |
ライク・ツー | ……いや、よくできた教育番組かよ! まあいいけど……あんまり虫増やすのは勘弁……。 |
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