連続誘拐犯と拐われたミカエルを追う貴銃士たちとマスター。
犯人を捕らえ、ファルはお愉しみを前に残酷に微笑む。
花を愛する「彼」に向けていた優しい微笑みは──
今は幻。もう二度と戻ることはないのだ。
私、今の生活にそれほど不満はないのですよ? チーズやワインの収集も進められていますし。
あとは尋問が許されれば……楽しみが増えるのに残念です。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
ベルギー国境付近の地方都市、
エノーロワでアウトレイジャーが目撃された。
ファル | 地理的に、我々が派遣されるのは効率的ですが……。 戦力を考えると、私だけでもよかったのでは? |
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カトラリー | ……そうかもしれないけど。 ファルだけってのも心配じゃん。 |
主人公 | 【油断せずいこう】 【単独行動は危険だから】 |
カトラリー | うん。 ……あ、そうだ。 ミカエルこれ持ってなよ。 |
ミカエル | なんだい? |
カトラリー | 護身用に、僕の銃を1つ持っといて。 それなら小さくて隠しやすいから、 いざという時に役に立つと思うんだ。 |
カトラリー | ほら、恭遠さんが言ってたでしょ? 今回、敵はアウトレイジャーだけじゃないかもって。 |
恭遠 | ──アウトレイジャーが目撃されたエノーロワ近辺では 最近、行方不明事件が頻発している。 |
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恭遠 | アウトレイジャーとの関連は不明だが、 被害者は年齢も性別もバラバラで、 今のところ被害者同士の繋がりは見られない。 |
カトラリー | まだ見えてない共通点がない限り、 無差別に手当たり次第……って感じかな。 |
恭遠 | ああ、そうなる。 君たちも、任務中に何か気になることがあれば、 ベルギー支部に連絡をしてくれ。 |
カトラリー | ミカエル、すぐどっか行っちゃうんだもん。心配だよ。 自分の銃にも頓着しないし……。 だから、何かあったらこれを使って。 |
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ミカエル | 迷子の心配ならいらないよ。 きみたちがちゃんとついてきてくれるでしょう? |
主人公 | 【そのつもりだけど……】 【はぐれないように気をつけてほしい】 |
ファル | 皆さん、おしゃべりはもういいでしょう。 アウトレイジャーが出没した路地裏に 向かいますよ。 |
ファル | これまでの目撃情報から考えて、 アウトレイジャーが潜んでいそうな地域を絞り込みました。 順に見ていけば、すぐに発見できるでしょう。 |
カトラリー | わ、すごい……。 よくこんなのわかったね。 |
ファル | かつてのマスターと任務をこなしていた頃に、 このあたりには何度も訪れてよく知っていますからね。 |
ファルが書き込みをした地図を指針にして、
〇〇たちは路地裏を歩いていく。
──その時だった。
ファル | ……おや。早速お出ましのようですよ。 |
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アウトレイジャー | ウウウ……。 |
カトラリー | わっ、いきなり……!? |
ファル | カトラリーさん、どいてください。 ──絶対非道。 |
ファル | 心銃! |
ファルの放った心銃に貫かれ、
アウトレイジャーの身体は蜃気楼のように消えていった。
カトラリー | ……他にはいないのかな。 この1体だけ……? |
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ファル | 目撃情報から考えると、 少なくとも2~3体はいそうでしたが。 彼らが集団行動をするとも限りませんしね。 |
ファル | ……ところで、ミカエルさんは? |
主人公 | 【いない……!?】 【いつの間にか消えてる!?】 |
カトラリー | もう、ミカエルってば……! |
ミカエルの姿を探して、3人はもと来た道を辿った。
彼は薄暗い路地の入り口付近で立ち止まり、
曲でも考えているのかぼんやりと宙を眺めている。
カトラリー | ミカエル! 勝手にどっか行っちゃダメだって言ったじゃない! |
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カトラリーが駆け寄ろうとした時……ミカエルの背後に、
スモークガラスのワンボックスカーが急停車した。
ファル | ……ッ! |
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車のドアが開き、ミカエルが車内に引っ張り込まれる。
ファルが即座に発砲して車体に命中するが、
止めるには至らず、車はあっという間に走り去ってしまう。
カトラリー | う、そ……! |
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カトラリー | どうしよう、僕が目を離したから……! わかってたのに……! |
主人公 | 【まさか、例の誘拐犯……!?】 【すぐにベルギー支部に連絡する】 |
ファル | そう焦らずとも大丈夫ですよ。 |
カトラリー | ちょっ……なんでそんなにファルはのんきなのさ! ミカエルが誘拐されちゃったんだよ!? |
ファル | ふふ……変ですね。 カトラリーさんはよく言っているではありませんか。 ミカエルさんは天使なのだと。 |
ファル | 天使が人間ごときに害されるはずがない。 そうでしょう? |
カトラリー | ファル……。 |
ファル | マスター、お貸ししている地図を。 それから、ベルギー支部に、 この地域の犯罪者リストの要請をお願いします。 |
連合軍ベルギー支部にやってきた〇〇たちは、
ミカエル誘拐の対応を開始した。
ファル | アンデル通りとブルッセ通りを封鎖、検問を敷いてください。 エノーロワから外に出してしまえば、追跡が困難になります。 |
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ベルギー支部兵士1 | 了解! |
カトラリー | …………。 |
主人公 | 【絶対に大丈夫だよ】 【自分たちで絶対救出しよう】 |
カトラリー | ……うん。 ミカエルなら、きっと大丈夫だよね。 |
ベルギー支部少佐 | こちらの状況は。 |
ベルギー支部兵士1 | 少佐! ファル殿の助言を受け、一帯を封鎖、検問を行っています。 |
ベルギー支部少佐 | よし、引き続き頼んだぞ。 |
ベルギー支部少佐 | 君が〇〇君か。 今回の件、最近エノーロワで頻発している 行方不明事件に関連している可能性が高い。 |
ベルギー支部少佐 | 犯人グループの隠れ家となりそうな場所を、 別働隊が現在しらみ潰しに捜索しているところだ。 |
ファル | ……そちらの地図を拝見しても? |
少佐が持参した地図をチェックする。
すでに空振りだった場所には×印がつけられている。
ファル | 残った中では……この工場地帯が怪しいですね。 稼働していない施設も多いはず。 隠れ潜むにはもってこいでしょう。 |
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ベルギー支部兵士2 | 会議中、失礼いたします! 市民からの通報がありました! |
ベルギー支部兵士2 | 廃工場で爆発が発生した模様です! 巡回中の部隊が向かったところ、 行方不明となっているミカエル殿らしき姿が見えたと! |
カトラリー | ……っ! |
ベルギー支部少佐 | 現場へ急行する。 〇〇候補生たちも同行を! |
主人公 | 【イエッサー!】 |
ベルギー支部少佐 | お前たちは、救急と消防にも応援を要請するように。 廃溶剤に引火して被害が拡大する恐れもある。 警戒を怠るな。 |
ベルギー支部兵士たち | はっ! |
〇〇たちが現場へ到着した時、
すでに消防なども到着して、消火活動が行われていた。
カトラリー | ミカエル!!! |
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カトラリーが工場に飛び込もうとする。
消防士 | ダメです、近づいてはいけません! |
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カトラリー | でも、火が!! ミカエル……ミカエルー!! |
ファル | …………。 |
消防士 | 危険です、離れてください! さらに爆発するかも……! |
カトラリー | そんな……ミカエル……! |
??? | ──ら……よ。 |
カトラリー | 今の……ミカエルの声……? |
ファル | あちらから聞こえました。 罠かもしれませんので、警戒してください。 |
声の聞こえた方に駆けつけると、
火の手が迫りつつある工場の一角で
ミカエルが少女を人質にとった男と対峙していた。
男の手にはナイフが握られており、
少女の首筋に刃が当てられている。
カトラリー | ミカエル、無事だったんだ……! |
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ミカエル | うん、きみの銃が役に立ったよ。 |
男 | 動くな! こっちに来るんじゃねぇ! 道を開けろ!! |
主人公 | 【お前は逃げられない、投降しろ!】 【この建物は包囲されている!】 |
男 | うるせぇ、いいから道を開けろ!! このガキがどうなってもいいのか!! |
ミカエル | …………。 |
〇〇たちは男を刺激しないよう、
静かに左右に分かれて道を開けた。
男 | 来い! |
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少女 | いやぁっ……! |
怯える少女を引きずりながら、男が廊下に出る。
その瞬間──
ファル | こんにちは。 |
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男 | なっ!? |
物陰で待ち伏せていたファルが男の手を捻ってナイフを奪い、
そのままナイフを男の足に突き刺した。
男 | ぐああああ!! |
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カトラリー | ファル……! |
ファル | ……ほら、ぼんやりしていないで、 あなたも早く逃げなさい。 |
少女 | わ、わぁぁん……っ! 怖かったよぉ……! |
主人公 | 【もう大丈夫だよ】 【安全なところに行こう】 |
ファルは人質の少女を〇〇に引き渡す。
一部始終を眺めていたミカエルに、カトラリーが抱きついた。
カトラリー | よかった、無事で……! |
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ミカエル | うん、迎えに来てくれたんだね。 |
男 | く……そ……! |
ファル | ああ、大丈夫ですよ。 あなたのことは忘れていません。 お聞かせ願いたいことが多いので……ゆっくり楽しみましょう。 |
ファル | 行方不明者の詳細、組織、犯行動機、目的……。 会話の種はたくさんありますね。 |
ファル | ペラペラ喋ってくださっても構いませんが…… 私、お仕置きというものに少々興味がありまして。 楽しませていただけるなら歓迎しますよ。 |
ファルは、男の傷口を容赦なく踏みにじった。
男 | うぐっ……ぁああッ! |
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カトラリー | ファル……顔、怖いよ……! |
ファル | 心外ですね。これは笑顔でしょう。 |
カトラリー | そ、それはそうかもしれないけど……。 |
主人公 | 【ベルギー支部に引き渡そう】 【私刑は禁止されている】 |
ファル | …………。 |
ファル | マスターの仰せであれば、仕方ありませんね。 |
ファルが男を蹴り転がす。
合流してきたベルギー支部の兵士たちが男を確保した。
ファル | もうおしまいですか。 残念ですね。 |
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カトラリー | ファル……。 |
──トルレ・シャフ本部にて。
エフ | アインスお兄様、おかえりなさい♥ どこに行ってらしたの? |
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アインス | これを受け取っていた。 |
どさりと置かれた袋の中には、
いろいろな花の種子の袋が入っている。
エフ | ウフ♥ アインスお兄様は本当にお花がお好きね。 もちろん、今回も赤いお花なんでしょ? |
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エフ | ……この種……。 |
エフは、赤いポピーの写真が印刷されている種子の袋を見つけ、
ピタリと手を止めた。
エフ | (シャーレーポピー…… 約束の、花……) |
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ゴースト | 目印は、赤い花── ファルはんには、そう伝えとくわ。 |
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エフ | お兄様……。 |
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アインス | ……ただ、色が気に入っただけだ。 |
アインス | ここじゃ、花は育たねぇ。 どこかに種子を蒔きに行くぞ。 |
──翌日。
人気のない寂れた公演に、2人の姿があった。
アインス | ここなら、当面誰も触らないだろうな。 |
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世話する人もいないのか、荒れてしまっている花壇。
枯れた花を抜き、土をほぐして、
2人はシャーレーポピーの種を蒔いていく。
エフ | やーん! 爪に土が入っちゃったわ。 |
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アインス | 手袋をやっただろう? なぜ使わない。 |
エフ | 今日は……この手で土を触ってみたかったの。 |
エフ | ほら、昔……。 こんなふうに、みんなで花を植えたことあったでしょ? |
エフ | あの時のアタシは、土なんてやぁよって触らなかったわ。 |
アインス | そうだったな。 |
エフ | でも……花が咲いた時、 一緒に植えればよかったって、ちょっと後悔したの。 |
──イレーネ城の庭園の一角にて。
アインスの花壇が、満開の花で鮮やかに彩られていた。
エフ | まあ! 綺麗ねぇ。 さすがアインスお兄様だわ♥ |
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ファル | 庭師が世話しているエリアに勝るとも劣りませんね。 アインスが日頃から世話をしていた成果でしょう。 |
アインス | ……ファル、お前もだろう? |
アインスは摘んだポピーで作った花束を、
ファルに持たせる。
ファル | はい? 私は何もしていませんが。 |
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アインス | 俺がいない時、水やりをしていたと聞いた。 それに、芽を抜きに来たカラスを追い払ってるのも見たぜ。 |
ファル | ……っ! |
ファル | ……見られていましたか。 アインス……盗み見とは、あなたも人が悪いですね。 |
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エフ | フフ……♥ やだ、ファルちゃん。 照れてるのぉ? |
ファル | 違います。 |
エフ | あはは、やっぱり照れてるじゃなぁい! |
アインス | ……ははっ! |
エフ | (……あの時の、ファルちゃんの笑顔……。 やぁね、こんなこと思い出して……) |
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エフ | (今思えば……あれが『幸せ』だったのかしら。 アインスお兄様も、アタシも……ファルちゃんも) |
エフ | ……ファルちゃん……。 |
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