20世紀末。
15億人もの命が失われた核戦争の末──
世界は、圧倒的武力をもって圧政を敷く
「世界帝」の支配下に置かれていた。
武器の所持が禁じられる中、
美術品として残されていた古銃を手に、
決死の戦いを挑む者たちが現れる。
彼らレジスタンスは、
銃の化身「貴銃士」の力を借りて革命戦争に勝利し、
世界は平穏を取り戻しつつあったが……。
今、新たなる脅威が忍び寄ろうとしていた──。
???(女性) | ──邪魔者を排除しなさい、私の騎士。 |
---|---|
兵士 | ひぃ! お、おやめください……陛下……! |
???(男性) | …………。 |
兵士 | ぐぁっ!! ぅ……、な……ぜ……。 |
???(女性) | ……ああ、素晴らしい。見事だわ。 さあ、参りましょう──我が騎士ブラウンベス! |
ブラウン・ベス | 仰せのままに。 ──女王陛下(ユア・マジェスティ)。 |
灰色の髪の男 | ……マスター。 2番街にてアウトレイジャー出没の情報あり。 ──増援要請だ。 |
---|---|
主人公 | 【行こう、みんな】 【準備はいい?】 |
市民 | うわぁああっ! な、なんなんだ、こいつらは! |
??? | 落ち着いてください! ここは、世界連合軍が必ず皆さんの盾となります。 市民の皆さんは誘導に従って──。 |
アウトレイジャー | ……殺ス……破壊スル……ッ! |
??? | ぐあっ! |
??? | く、……ッ! 私たちではこれが限界か……ッ! このままでは市民が……! |
主人公 | 【ラッセル教官!】 【お待たせしました!】 |
ラッセル | 〇〇君! |
灰色の髪の男 | ──戦闘状況を確認した。 マスター、指示を! |
クールな男 | 相変わらずマスターマスターうるせぇな。 指示がねぇと何もできねぇのかよ、雑魚が。 |
灰色の髪の男 | は? マスターの言葉がすべてに決まってんだろ。 黙って引っ込んでろ、ライク・ツー。 |
ライク・ツー | ……おい、マークス。 お前、誰に向かって指図してんだ? |
マークス | あんた以外誰かいるのかよ。 おい、マスターが望むなら、俺は誰を殺したって いいんだぜ。もちろん、あんたもな。 |
ライク・ツー | ああ……!? |
柔和な男 | まぁまぁまぁ、2人とも! ここはぐっと飲み込んでくれよ、な? アウトレイジャーをお縄につかせるのが先だ。 |
ライク・ツー | うるせぇな、十手のおっさん。 戦闘では役に立たねぇんだから下がってろ! |
十手 | なっ……! |
金髪の男 | …………。 |
金髪の男 | Hey! オレが相手だ、覚悟しやがれ! |
アウトレイジャー | ……グァッ、ァ! |
金髪の男 | うおっ!? 1か月ぶりの命中! やればできるな~、オレ! Yeah! |
金髪の男 | ……って、ゲホゴホ。すげぇ煙! あれ、火薬入れすぎた? 何も見えなくなっちゃった! |
マークス | おい、ジョージ! 余計なことするな! 狙撃の邪魔だろうが!! |
ライク・ツー | 連射できねぇ古銃のくせに、先陣切りやがって! |
ジョージ | あ~、ごめんごめん! HAHAHA☆ |
マークス&ライク・ツー | ごめんで済むか! |
ラッセル | 言い争いをしている場合じゃないだろう! アウトレイジャーの鎮圧ができるのは 君たち貴銃士だけなんだ、頼むぞ! |
アウトレイジャー | グ……ァ……。 |
アウトレイジャー | アアァア……ッ! 壊ス……ッ! |
十手 | うわ……っ! いけない、そちtには町の人たちがいる。 おい、アウトレイジャーども、こっちだこっち! |
ジョージ | 十手……! そうそう、オレたちだって、後ろに隠れてるだけの 貴銃士じゃないよな! オレも手伝うぜ! |
アウトレイジャー | ……殺ス! |
マークス | マスター! ……これより目標の制圧に入る。 アウトレイジャーどもを無力化するぞ。 |
主人公 | 【頼んだよ!】 【戦闘開始!】 |
マークス | 目標の無力化を確認。 ……俺とマスターの勝利だ。当然の結果だな。 |
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マークス | マスター、戦闘終了だ。 破損はないか? |
主人公 | 【破損じゃなくて、怪我だよ】 【大丈夫、問題ない】 |
市民1 | ふぅ……もうダメかと思った! 助けてくれて本当にありがとうな。 さすがは世界連合軍の士官候補生だ。 |
市民2 | まさか、貴銃士の戦いをこの目で見られるなんて……。 あれが革命戦争を勝利に導いた、奇跡の力なのね! 感動したわ! |
マークス | 当然だ、マスターは優秀だからな。 |
十手 | 君も褒められてるんだよ? |
ラッセル | 〇〇君、私も君に命を救われたよ。 ありがとう。 |
ラッセル | ……いやぁ、君の担当教官として鼻が高い! さっそく軍に報告を……。 |
ラッセル | ……って、〇〇君、大丈夫か? |
ライク・ツー | おい、どけラッセル! ……〇〇、薔薇の傷を見せてみろ。 |
十手 | これは……傷が広がってるぞ。 ジョージくん、治療した方がいいんじゃないかい? |
ジョージ | お、オレの出番だな! 任せてくれ。 |
ジョージ | よし、治療完了っと! |
主人公 | 【いつもありがとう】 【楽になった】 |
マークス | マスター……。 |
ライク・ツー | ……ふん。 任務終わったんなら、とっとと帰ろうぜ。 服も汚れたし、早くシャワー浴びたい。 |
ジョージ | いいね、オレもうお腹ペコペコ。 食堂でバーガー食いたいな! |
ラッセル | そうだな。他の連中も〇〇君の帰りを 首を長くして待っているだろう。 ──では、皆で士官学校に帰還だ! |
──3年前。
フィルクレヴァート連合士官学校、入学式。
シド理事長 | 私が本校の理事長、シド・コペール中将だ。 ──諸君の入学を心より歓迎する。 |
---|---|
シド理事長 | フィルクレヴァート連合士官学校は、 イギリス国内における唯一の陸軍士官養成機関だ。 諸君は本日から世界連合軍の士官候補生となる。 |
シド理事長 | ……さっそくだが、私からの最初の指令だ。 自分の銃を手に取りなさい。 |
新入生たち | イエッサー! |
主人公 | 【イエッサー!】 |
傍らには、スナイパーライフルUL96A1がある。
理事長の指示通り、その銃身を持ち上げた。
シド理事長 | 今後、銃は諸君の大事な相棒となる。 ──しかし、戦場では銃だけでは生き残れない! あらゆる手段で戦わねばならない場面もあるだろう。 |
---|---|
シド理事長 | 銃という力にばかり頼るのではなく、己自身を鍛えよ。 本日より、諸君の体力、知力、精神力── すべては世界の盾、世界の銃となるためにある! |
シド理事長 | Be Noble, Be Truthful, and To Overcome! (高貴であれ、誠実たれ、そして打ち克て!) |
シド理事長 | フィルクレヴァート連合士官学校の校訓を胸に、 諸君が厳しい訓練を乗り越えることを期待する。 |
新入生たち | イエッサー! |
士官学校の入学式は、さすがに厳しい雰囲気だった。
自分はここでやっていけるのだろうかと、
〇〇の胸に、かすかな不安がよぎる。
主人公 | 【(……いや、やるしかない)】 【(……正直、心細い……)】 |
---|---|
上級生 | おい、そこの新入生! 今から寮に移動するのか? |
上級生 | ちょうどいい、この物資を寮まで運んでくれ。 |
上級生が押し付けてきた荷物は、
1人で運ぶ量とは到底思えないものだった。
主人公 | 【お、重い……!】 |
---|---|
上級生 | おいおい、それくらいでへばってどうするんだ? 世界連合軍の標準装備は30kgだぞ。 |
主人公 | 【イエッサー……!】 |
自分が入居する寮は、入口のザクロの木が
目印の、通称『ザクロ寮』だ。入口付近には、
穏やかな微笑みを浮かべた教官が立っている。
??? | ほう、その量の荷物を運んできたのか……! リタイアせずに運びきるとは、 なかなか見込みがありそうだ。 |
---|---|
ラッセル | 学年担当教官のラッセル・ブルースマイルだ。 えーと、君は〇〇君だね。 君の部屋は、2階の221号室だ。 |
ラッセル | この寮では、部屋番号が 左右で交互の連番になっている。 部屋を間違えないように注意してくれ。 |
寮の部屋の前までなんとか足を進める。
あと少しというところまで来た時に、
背後から悲鳴が聞こえてきた。
??? | おっ……とと、わわ! そこの人、どいてどいてー! あぶなっ……うわぁああー! |
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──ドサドサドサッ!!
??? | いたたた……。 た、たすけて~……! |
---|
目を開けると、女子生徒が荷物の下敷きになっていた。
……驚いたことに、自分が持っていた量の
倍近くある荷物を1人で運んでいたようだ。
主人公 | 【掴まって!】 【今助ける!】 |
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??? | ふぅ……助けてくれてありがとう……! ごめんね、ぶつかっちゃって。 あなたも新入生……だよね? |
??? | よかったぁ、また上級生とケンカになるかと思った! さすがに入学初日にそれはないよね……。 |
主人公 | 【また?】 【上級生とケンカって?】 |
??? | いやぁ、寮に向かう途中に上級生に呼び止められて、 すごい量の荷物を持たされたんだけど── |
??? | 『それくらいでへばってどうする。 世界連合軍の標準装備は30kgだぞー』 |
??? | ──なんて言われたから、 『じゃあその倍を持っていきます!』 って、ついつい意地になっちゃってさ……。 |
??? | できるものならやってみろ、って言うから、 なんとかここまで運んだんだけど……。 ぶつかっちゃって、ほんっとうにゴメンね! |
??? | っていうか、あなたも荷物を運ばされてたの!? 涼しい顔してるから気づかなかった。 ……もしかして、表情に出ないタイプ? |
??? | ……ふふ、あははは! 私もたいがいだけど、あなたも意地っ張りだね! |
ヴィヴィアン | 私はヴィヴィアン・リントンロッジ。 フィルクレヴァート連合士官学校1年。 改めてよろしく。えーっと……。 |
主人公 | 【〇〇】 |
ヴィヴィアン | よろしく、〇〇! ねぇ、あなたは何号室なの? 私はここの220号室なんだけど……。 |
主人公 | 【えっ!?】 【向かいの部屋だ】 |
ヴィヴィアン | ってことは、〇〇は221号室!? うわぁ! これって運命みたい! これからよろしくね、〇〇! |
主人公 | 【こちらこそよろしく!】 |
それから、厳しくも充実した日々が始まった。
ヴィヴィアンとは、互いに支え合い、切磋琢磨する
親友と呼べる間柄となった。そして──。
──入学から2年後。
教官 | フィルクレヴァート連合士官学校、射撃大会。 ……優勝は〇〇! |
---|---|
ヴィヴィアン | わぁーっ! おめでとう、〇〇! すごい、すごいよっ! 優勝しちゃうなんて! |
ラッセル | おめでとう! まさか上級生を差し置いて優勝とは……! 〇〇君には驚かされることばかりだ! |
主人公 | 【UL96A1のおかげです】 |
ヴィヴィアン | 〇〇の愛用の銃……もはや相棒だね。 すごく大切に手入れしているから、 ここぞってときに助けてくれたんだね。 |
ラッセル | それはそうだが……大切にしすぎも困ったものだぞ。 確か昨年か? 訓練中、銃を守って 自分が川に落ちたことがあっただろう。 |
ヴィヴィアン | あはは、そんなこともありましたね! ねぇ〇〇、そんなに大切にしてたら、 UL96A1が貴銃士として目覚める日も遠くないかもね! |
主人公 | 【貴銃士って、確か……】 |
ヴィヴィアン | そうそう! この間も、女王陛下がブラウン・ベスの貴銃士を 目覚めさせたってニュースになってたし。 |
ヴィヴィアン | いいよねぇ、貴銃士……! 今でこそ、アイドルみたいな存在だけど、 あの革命戦争を勝利に導いた立役者だもん。 |
ヴィヴィアン | レジスタンスのマスターと貴銃士たちの活躍がなければ 今も世界帝府の支配する世の中なんだよ? ほんと、そう考えるだけで── |
ヴィヴィアン | ……虫酸が走るよ。 |
ラッセル | ……2人とも、もう寮へ戻って休んだらどうだ。 〇〇君は早く愛銃のメンテナンスを したいんだろう? |
ヴィヴィアン | あ……そうだよね! ごめん、〇〇。 私も〇〇を見習って、 自分の銃のメンテナンスしなくちゃ! |
2人は寮に戻って、ヴィヴィアンの部屋で一緒に
銃のメンテナンスをすることにした。
さっそく、ケースからUL96A1を取り出す。
〇〇は、解体、清掃……と
黙々と手を動かしていたが、ふと、ヴィヴィアンの手が
あまり進んでいないことに気づいた。
ヴィヴィアン | …………。 |
---|---|
主人公 | 【ヴィヴィアン?】 【体調でも悪い?】 |
ヴィヴィアン | え? あー……ごめん、大丈夫。 ちょっとぼーっとしちゃって! |
ヴィヴィアン | …………。 |
ヴィヴィアン | …………。 ……あのね。 |
ヴィヴィアン | 私、実は……自分の銃のこと…… このUL85A2のことが、苦手なの。 |
UL85A2は、ヴィヴィアンが愛用している銃で、
汎用性の高いアサルトライフルだ。
……世界帝軍でも使用されていたという。
ヴィヴィアン | おかしいよね。 将来、世界の盾、世界の銃として人々を守ることが 私たち士官候補生の使命になるのに。 |
---|---|
主人公 | 【きっと大丈夫だよ】 |
ヴィヴィアン | ありがとう。 〇〇に大丈夫だって言ってもらえると、 なんだかそんな気がする。 |
ヴィヴィアン | …………。 ……ねぇ、この封筒なんだけどさ。 |
ヴィヴィアンは机から1枚の封筒を取り出した。
ぴったりと封がされており、
宛名などは書かれていないようだ。
ヴィヴィアン | 変なこと、頼んでもいいかな。 ──この手紙をね、 〇〇に持っていてほしいの。 |
---|---|
ヴィヴィアン | もしも……もしも、だよ? |
ヴィヴィアン | 万が一、私が……。 私が死ぬようなことがあったら、 この封筒を開けてほしいんだ。 |
ヴィヴィアン | こんなこと頼めるの、 〇〇だけなの。 お願いできないかな……。 |
主人公 | 【そんな、縁起でもない】 【どうしてそんなことを?】 |
ヴィヴィアン | ……え? ……あ、あはは、だよね~☆ |
ヴィヴィアン | 冗談だよ、冗談! 変なこと言ってごめんね、〇〇! |
ヴィヴィアン | ……っと。 ごめん、ちょっと演習場に忘れ物しちゃったみたい! 取ってくるね! |
そう言うなり、ヴィヴィアンは
足早に部屋を出ていく。
主人公 | 【ヴィヴィアンの様子がおかしかった】 【……やっぱり心配だな】 |
---|
ヴィヴィアンを追いかけて構内を歩いていくと、
演習場に向かう途中に人の気配があった。
物陰で誰かが話しているようだ。
その声の片方に聞き覚えがある。
──……ヴィヴィアンだ。
ヴィヴィアン | ……はい。わかりました、……ですね。 では、結晶を……する。 |
---|---|
ヴィヴィアン | 決行は……ということですね。 はい、では……東の門で、……お任せください。 |
一体誰と、なんの話をしているのだろう。
『結晶』というのはなんのことだろうか。
それに、東の門は立入禁止区域のはずだ。
士官候補生が入っていい場所ではない──
ヴィヴィアン | それでは、のちほど。 |
---|---|
主人公 | 【(こ、こっちに来る!)】 |
ヴィヴィアン | ……わっ! なんだ、〇〇だったの。 びっくりした~! |
ヴィヴィアン | ……どうしたの、変な顔して。 |
主人公 | 【誰かと話していた……?】 【ここで何をしていたの?】 |
ヴィヴィアン | …………。別に、何も。 演習場に忘れ物取りに行ってただけだよ。 見間違えじゃない? |
ヴィヴィアン | それよりね、ビッグニュース! これから〇〇の射撃大会優勝を祝って、 食堂でパーティが開かれるんだって! |
ヴィヴィアン | さ、行こう! 主役がいなくちゃ始まらないじゃん。 ほらほら~、今夜は寝かさないぞ☆ |
──祝賀会の夜は、賑やかに更けていった。
消灯時間が過ぎ、皆が寝静まったころ。
扉が開くかすかな物音が聞こえてきて、
〇〇は目を覚ます。
音は──聞き間違いでなければ、
向かいのヴィヴィアンの部屋から聞こえたものだった。
主人公 | 【(ヴィヴィアン……?)】 【(こんな夜中にどうしたんだろう)】 |
---|
ノックをするけれど、返事がない。
扉を開けてみると、ヴィヴィアンの姿はなかった。
そして、UL85A2も消えている。
嫌な胸騒ぎがした。
素早く身支度を整えると、UL95A1を手にして
東の門──立ち入り禁止区域へと向かった。
主人公 | 【この門の先が、立ち入り禁止区域……】 |
---|
ヴィヴィアン | ……はい。わかりました、……ですね。 では、結晶を……する。 |
---|---|
ヴィヴィアン | 決行は……ということですね。 はい、では……東の門で、……おまかせください。 |
主人公 | 【ヴィヴィアンはここに向かったはず】 |
---|
フィルクレヴァート連合士官学校は、
かつて圧倒的な武力で世界を支配していた
世界帝軍の施設を流用して作られている。
東の門の向こうには、その廃墟が
そのまま放置されている……という噂だ。
生徒たちが勝手に出入りしないよう、
普段から門は厳重に施錠されているはずだが──。
──そっと押してみると、
門はきしんだ音を立てて開いた。
誰か……ヴィヴィアンがここを通ったのだろう。
主人公 | 【……入ってみよう】 |
---|
周囲を警戒しつつ、〇〇は
立ち入り禁止区域に足を踏み入れる。
その時だった。
──パァンッ!!
ヴィヴィアン | うっ……! |
---|
1発の銃声が響いたかと思うと、
見慣れた人影──ヴィヴィアンが倒れるのが目に入る。
主人公 | 【ヴィヴィアンッ!】 |
---|---|
ヴィヴィアン | 〇〇……? ど、うして、ここに……。 ぐっ! ゴフッ! ……ッ! |
ヴィヴィアン | お、お願い、この箱……。 この箱を、ラッセル教官、に……! |
ヴィヴィアン | ……ッ……。 |
力を振り絞るようにして、ヴィヴィアンは
〇〇の手に小さな木箱を握らせた。
その直後、彼女はぐったりとして動かなくなる。
主人公 | 【そん、な……】 |
---|
──助からない。
直感的に、そう理解した。
主人公 | 【嘘だ……!】 【ヴィヴィアン、どうして……!】 |
---|
呆然としていると、足音が近づいてきた。
鈍く光る銃口が、こちらへ向けられる。
ガスマスクの男たち | 殺ス……壊ス……! |
---|---|
ガスマスクの男 | アアアァアアァ! |
主人公 | 【逃げないと……!】 【ラッセル教官に木箱を届けないと!】 |
〇〇は、全速力で駆け出した。
──逃げろ、逃げろ!
追いつかれたら、殺される──!
ヴィヴィアンから託された木箱を握りしめる。
ラッセル教官に、なんとしても渡さなければ──。
──緊張と混乱からか、足がもつれた。
転倒した衝撃で、ヴィヴィアンから託された木箱を
取り落としてしまう。
衝撃で蓋が開き──小さな赤い結晶が転がり落ちた。
ガスマスクの男 | 殺……ス……! |
---|
こいつらに渡してはいけない。
そんな予感がして、箱から転がり出てきた結晶を
咄嗟に掴んだ瞬間──……。
主人公 | 【……っ!】 |
---|
結晶を掴んだ右手に、激しい痛みが走る。
苦痛が全身を襲い、
誰かの怨嗟の声が頭の中に響く──。
熱い血が流れる感覚に、右手の甲に目をやると──
薔薇の花のような傷が、赤々と刻まれていた。
ガスマスクの男 | 殺、ス……! |
---|
向けられる銃口──殺される。
そう思ったとき、身体が無意識に動いた。
主人公 | 【(絶対に、死んでたまるか……!)】 |
---|
日々の訓練を身体が覚えている。
──応戦しなくては。
背負った銃に、素早く手が伸びる。
──UL96A1の銃身に触れた、その瞬間。
愛用の銃が、まばゆい光を放つ。
主人公 | 【……っ!?】 |
---|
──そこには、灰色の髪の男が立っていた。
灰色の髪の男 | …………。 |
---|---|
灰色の髪の男 | ──おい、てめぇら。 俺のマスターに銃口向けてんじゃねぇよ。 |
灰色の髪の男 | 俺は……マスターの銃。 スナイパーライフルUL96A1だ。 |
灰色の髪の男 | ……マスターの敵は、俺がまとめて無力化する! |
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