メインストーリーⅠ:アバン~第5話

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アバン:プロローグ

20世紀末。
15億人もの命が失われた核戦争の末──

世界は、圧倒的武力をもって圧政を敷く
「世界帝」の支配下に置かれていた。

武器の所持が禁じられる中、
美術品として残されていた古銃を手に、
決死の戦いを挑む者たちが現れる。

彼らレジスタンスは、
銃の化身「貴銃士」の力を借りて革命戦争に勝利し、
世界は平穏を取り戻しつつあったが……。

今、新たなる脅威が忍び寄ろうとしていた──。

???(女性)──邪魔者を排除しなさい、私の騎士。
兵士ひぃ!
お、おやめください……陛下……!
???(男性)…………。
兵士ぐぁっ!!
ぅ……、な……ぜ……。
???(女性)……ああ、素晴らしい。見事だわ。
さあ、参りましょう──我が騎士ブラウンベス!
ブラウン・ベス仰せのままに。
──女王陛下(ユア・マジェスティ)。

第1話:戦いの日々1

灰色の髪の男……マスター。
2番街にてアウトレイジャー出没の情報あり。
──増援要請だ。
主人公【行こう、みんな】
【準備はいい?】
市民うわぁああっ!
な、なんなんだ、こいつらは!
???落ち着いてください!
ここは、世界連合軍が必ず皆さんの盾となります。
市民の皆さんは誘導に従って──。
アウトレイジャー……殺ス……破壊スル……ッ!
???ぐあっ!
???く、……ッ!
私たちではこれが限界か……ッ!
このままでは市民が……!
主人公【ラッセル教官!】
【お待たせしました!】
ラッセル〇〇君!
灰色の髪の男──戦闘状況を確認した。
マスター、指示を!
クールな男相変わらずマスターマスターうるせぇな。
指示がねぇと何もできねぇのかよ、雑魚が。
灰色の髪の男は? マスターの言葉がすべてに決まってんだろ。
黙って引っ込んでろ、ライク・ツー。
ライク・ツー……おい、マークス。
お前、誰に向かって指図してんだ?
マークスあんた以外誰かいるのかよ。
おい、マスターが望むなら、俺は誰を殺したって
いいんだぜ。もちろん、あんたもな。
ライク・ツーああ……!?
柔和な男まぁまぁまぁ、2人とも!
ここはぐっと飲み込んでくれよ、な?
アウトレイジャーをお縄につかせるのが先だ。
ライク・ツーうるせぇな、十手のおっさん。
戦闘では役に立たねぇんだから下がってろ!
十手なっ……!
金髪の男…………。
金髪の男Hey!
オレが相手だ、覚悟しやがれ!
アウトレイジャー……グァッ、ァ!
金髪の男うおっ!? 1か月ぶりの命中!
やればできるな~、オレ! Yeah!
金髪の男……って、ゲホゴホ。すげぇ煙!
あれ、火薬入れすぎた?
何も見えなくなっちゃった!
マークスおい、ジョージ! 余計なことするな!
狙撃の邪魔だろうが!!
ライク・ツー連射できねぇ古銃のくせに、先陣切りやがって!
ジョージあ~、ごめんごめん! HAHAHA☆
マークス&ライク・ツーごめんで済むか!
ラッセル言い争いをしている場合じゃないだろう!
アウトレイジャーの鎮圧ができるのは
君たち貴銃士だけなんだ、頼むぞ!
アウトレイジャーグ……ァ……。
アウトレイジャーアアァア……ッ!
壊ス……ッ!
十手うわ……っ!
いけない、そちtには町の人たちがいる。
おい、アウトレイジャーども、こっちだこっち!
ジョージ十手……!
そうそう、オレたちだって、後ろに隠れてるだけの
貴銃士じゃないよな! オレも手伝うぜ!
アウトレイジャー……殺ス!
マークスマスター!
……これより目標の制圧に入る。
アウトレイジャーどもを無力化するぞ。
主人公【頼んだよ!】
【戦闘開始!】

第2話:戦いの日々2

マークス目標の無力化を確認。
……俺とマスターの勝利だ。当然の結果だな。
マークスマスター、戦闘終了だ。
破損はないか?
主人公【破損じゃなくて、怪我だよ】
【大丈夫、問題ない】
市民1ふぅ……もうダメかと思った!
助けてくれて本当にありがとうな。
さすがは世界連合軍の士官候補生だ。
市民2まさか、貴銃士の戦いをこの目で見られるなんて……。
あれが革命戦争を勝利に導いた、奇跡の力なのね!
感動したわ!
マークス当然だ、マスターは優秀だからな。
十手君も褒められてるんだよ?
ラッセル〇〇君、私も君に命を救われたよ。
ありがとう。
ラッセル……いやぁ、君の担当教官として鼻が高い!
さっそく軍に報告を……。
ラッセル……って、〇〇君、大丈夫か?
ライク・ツーおい、どけラッセル!
……〇〇、薔薇の傷を見せてみろ。
十手これは……傷が広がってるぞ。
ジョージくん、治療した方がいいんじゃないかい?
ジョージお、オレの出番だな!
任せてくれ。
ジョージよし、治療完了っと!
主人公【いつもありがとう】
【楽になった】
マークスマスター……。
ライク・ツー……ふん。
任務終わったんなら、とっとと帰ろうぜ。
服も汚れたし、早くシャワー浴びたい。
ジョージいいね、オレもうお腹ペコペコ。
食堂でバーガー食いたいな!
ラッセルそうだな。他の連中も〇〇君の帰りを
首を長くして待っているだろう。
──では、皆で士官学校に帰還だ!

第3話:入学式

──3年前。
フィルクレヴァート連合士官学校、入学式。

シド理事長私が本校の理事長、シド・コペール中将だ。
──諸君の入学を心より歓迎する。
シド理事長フィルクレヴァート連合士官学校は、
イギリス国内における唯一の陸軍士官養成機関だ。
諸君は本日から世界連合軍の士官候補生となる。
シド理事長……さっそくだが、私からの最初の指令だ。
自分の銃を手に取りなさい。
新入生たちイエッサー!
主人公【イエッサー!】

傍らには、スナイパーライフルUL96A1がある。
理事長の指示通り、その銃身を持ち上げた。

シド理事長今後、銃は諸君の大事な相棒となる。
──しかし、戦場では銃だけでは生き残れない!
あらゆる手段で戦わねばならない場面もあるだろう。
シド理事長銃という力にばかり頼るのではなく、己自身を鍛えよ。
本日より、諸君の体力、知力、精神力──
すべては世界の盾、世界の銃となるためにある!
シド理事長Be Noble, Be Truthful, and To Overcome!
(高貴であれ、誠実たれ、そして打ち克て!)
シド理事長フィルクレヴァート連合士官学校の校訓を胸に、
諸君が厳しい訓練を乗り越えることを期待する。
新入生たちイエッサー!

士官学校の入学式は、さすがに厳しい雰囲気だった。
自分はここでやっていけるのだろうかと、
〇〇の胸に、かすかな不安がよぎる。

主人公【(……いや、やるしかない)】
【(……正直、心細い……)】
上級生おい、そこの新入生!
今から寮に移動するのか?
上級生ちょうどいい、この物資を寮まで運んでくれ。

上級生が押し付けてきた荷物は、
1人で運ぶ量とは到底思えないものだった。

主人公【お、重い……!】
上級生おいおい、それくらいでへばってどうするんだ?
世界連合軍の標準装備は30kgだぞ。
主人公【イエッサー……!】

自分が入居する寮は、入口のザクロの木が
目印の、通称『ザクロ寮』だ。入口付近には、
穏やかな微笑みを浮かべた教官が立っている。

???ほう、その量の荷物を運んできたのか……!
リタイアせずに運びきるとは、
なかなか見込みがありそうだ。
ラッセル学年担当教官のラッセル・ブルースマイルだ。
えーと、君は〇〇君だね。
君の部屋は、2階の221号室だ。
ラッセルこの寮では、部屋番号が
左右で交互の連番になっている。
部屋を間違えないように注意してくれ。

寮の部屋の前までなんとか足を進める。
あと少しというところまで来た時に、
背後から悲鳴が聞こえてきた。

???おっ……とと、わわ!
そこの人、どいてどいてー!
あぶなっ……うわぁああー!

──ドサドサドサッ!!

???いたたた……。
た、たすけて~……!

目を開けると、女子生徒が荷物の下敷きになっていた。
……驚いたことに、自分が持っていた量の
倍近くある荷物を1人で運んでいたようだ。

主人公【掴まって!】
【今助ける!】
???ふぅ……助けてくれてありがとう……!
ごめんね、ぶつかっちゃって。
あなたも新入生……だよね?
???よかったぁ、また上級生とケンカになるかと思った!
さすがに入学初日にそれはないよね……。
主人公【また?】
【上級生とケンカって?】
???いやぁ、寮に向かう途中に上級生に呼び止められて、
すごい量の荷物を持たされたんだけど──
???『それくらいでへばってどうする。
世界連合軍の標準装備は30kgだぞー』
???──なんて言われたから、
『じゃあその倍を持っていきます!』
って、ついつい意地になっちゃってさ……。
???できるものならやってみろ、って言うから、
なんとかここまで運んだんだけど……。
ぶつかっちゃって、ほんっとうにゴメンね!
???っていうか、あなたも荷物を運ばされてたの!?
涼しい顔してるから気づかなかった。
……もしかして、表情に出ないタイプ?
???……ふふ、あははは!
私もたいがいだけど、あなたも意地っ張りだね!
ヴィヴィアン私はヴィヴィアン・リントンロッジ。
フィルクレヴァート連合士官学校1年。
改めてよろしく。えーっと……。
主人公【〇〇】
ヴィヴィアンよろしく、〇〇!
ねぇ、あなたは何号室なの?
私はここの220号室なんだけど……。
主人公【えっ!?】
【向かいの部屋だ】
ヴィヴィアンってことは、〇〇は221号室!?
うわぁ! これって運命みたい!
これからよろしくね、〇〇!
主人公【こちらこそよろしく!】

それから、厳しくも充実した日々が始まった。
ヴィヴィアンとは、互いに支え合い、切磋琢磨する
親友と呼べる間柄となった。そして──。

 

第4話:しまわれた封筒

──入学から2年後。

教官フィルクレヴァート連合士官学校、射撃大会。
……優勝は〇〇!
ヴィヴィアンわぁーっ! おめでとう、〇〇!
すごい、すごいよっ! 優勝しちゃうなんて!
ラッセルおめでとう!
まさか上級生を差し置いて優勝とは……!
〇〇君には驚かされることばかりだ!
主人公【UL96A1のおかげです】
ヴィヴィアン〇〇の愛用の銃……もはや相棒だね。
すごく大切に手入れしているから、
ここぞってときに助けてくれたんだね。
ラッセルそれはそうだが……大切にしすぎも困ったものだぞ。
確か昨年か? 訓練中、銃を守って
自分が川に落ちたことがあっただろう。
ヴィヴィアンあはは、そんなこともありましたね!
ねぇ〇〇、そんなに大切にしてたら、
UL96A1が貴銃士として目覚める日も遠くないかもね!
主人公【貴銃士って、確か……】
ヴィヴィアンそうそう!
この間も、女王陛下がブラウン・ベスの貴銃士を
目覚めさせたってニュースになってたし。
ヴィヴィアンいいよねぇ、貴銃士……!
今でこそ、アイドルみたいな存在だけど、
あの革命戦争を勝利に導いた立役者だもん。
ヴィヴィアンレジスタンスのマスターと貴銃士たちの活躍がなければ
今も世界帝府の支配する世の中なんだよ?
ほんと、そう考えるだけで──
ヴィヴィアン……虫酸が走るよ。
ラッセル……2人とも、もう寮へ戻って休んだらどうだ。
〇〇君は早く愛銃のメンテナンスを
したいんだろう?
ヴィヴィアンあ……そうだよね! ごめん、〇〇。
私も〇〇を見習って、
自分の銃のメンテナンスしなくちゃ!

2人は寮に戻って、ヴィヴィアンの部屋で一緒に
銃のメンテナンスをすることにした。
さっそく、ケースからUL96A1を取り出す。

〇〇は、解体、清掃……と
黙々と手を動かしていたが、ふと、ヴィヴィアンの手が
あまり進んでいないことに気づいた。

ヴィヴィアン…………。
主人公【ヴィヴィアン?】
【体調でも悪い?】
ヴィヴィアンえ? あー……ごめん、大丈夫。
ちょっとぼーっとしちゃって!
ヴィヴィアン…………。
ヴィヴィアン…………。
……あのね。
ヴィヴィアン私、実は……自分の銃のこと……
このUL85A2のことが、苦手なの。

UL85A2は、ヴィヴィアンが愛用している銃で、
汎用性の高いアサルトライフルだ。
……世界帝軍でも使用されていたという。

ヴィヴィアンおかしいよね。
将来、世界の盾、世界の銃として人々を守ることが
私たち士官候補生の使命になるのに。
主人公【きっと大丈夫だよ】
ヴィヴィアンありがとう。
〇〇に大丈夫だって言ってもらえると、
なんだかそんな気がする。
ヴィヴィアン…………。
……ねぇ、この封筒なんだけどさ。

ヴィヴィアンは机から1枚の封筒を取り出した。
ぴったりと封がされており、
宛名などは書かれていないようだ。

ヴィヴィアン変なこと、頼んでもいいかな。
──この手紙をね、
〇〇に持っていてほしいの。
ヴィヴィアンもしも……もしも、だよ?
ヴィヴィアン万が一、私が……。
私が死ぬようなことがあったら、
この封筒を開けてほしいんだ。
ヴィヴィアンこんなこと頼めるの、
〇〇だけなの。
お願いできないかな……。
主人公【そんな、縁起でもない】
【どうしてそんなことを?】
ヴィヴィアン……え?
……あ、あはは、だよね~☆
ヴィヴィアン冗談だよ、冗談!
変なこと言ってごめんね、〇〇!
ヴィヴィアン……っと。
ごめん、ちょっと演習場に忘れ物しちゃったみたい!
取ってくるね!

そう言うなり、ヴィヴィアンは
足早に部屋を出ていく。

主人公【ヴィヴィアンの様子がおかしかった】
【……やっぱり心配だな】

ヴィヴィアンを追いかけて構内を歩いていくと、
演習場に向かう途中に人の気配があった。
物陰で誰かが話しているようだ。

その声の片方に聞き覚えがある。
──……ヴィヴィアンだ。

ヴィヴィアン……はい。わかりました、……ですね。
では、結晶を……する。
ヴィヴィアン決行は……ということですね。
はい、では……東の門で、……お任せください。

一体誰と、なんの話をしているのだろう。
『結晶』というのはなんのことだろうか。

それに、東の門は立入禁止区域のはずだ。
士官候補生が入っていい場所ではない──

ヴィヴィアンそれでは、のちほど。
主人公【(こ、こっちに来る!)】
ヴィヴィアン……わっ! なんだ、〇〇だったの。
びっくりした~!
ヴィヴィアン……どうしたの、変な顔して。
主人公【誰かと話していた……?】
【ここで何をしていたの?】
ヴィヴィアン…………。別に、何も。
演習場に忘れ物取りに行ってただけだよ。
見間違えじゃない?
ヴィヴィアンそれよりね、ビッグニュース!
これから〇〇の射撃大会優勝を祝って、
食堂でパーティが開かれるんだって!
ヴィヴィアンさ、行こう!
主役がいなくちゃ始まらないじゃん。
ほらほら~、今夜は寝かさないぞ☆

第5話:ヴィヴィアンの謎

──祝賀会の夜は、賑やかに更けていった。
消灯時間が過ぎ、皆が寝静まったころ。

扉が開くかすかな物音が聞こえてきて、
〇〇は目を覚ます。

音は──聞き間違いでなければ、
向かいのヴィヴィアンの部屋から聞こえたものだった。

主人公【(ヴィヴィアン……?)】
【(こんな夜中にどうしたんだろう)】

ノックをするけれど、返事がない。
扉を開けてみると、ヴィヴィアンの姿はなかった。
そして、UL85A2も消えている。

嫌な胸騒ぎがした。
素早く身支度を整えると、UL95A1を手にして
東の門──立ち入り禁止区域へと向かった。


主人公【この門の先が、立ち入り禁止区域……】
ヴィヴィアン……はい。わかりました、……ですね。
では、結晶を……する。
ヴィヴィアン決行は……ということですね。
はい、では……東の門で、……おまかせください。
主人公【ヴィヴィアンはここに向かったはず】

フィルクレヴァート連合士官学校は、
かつて圧倒的な武力で世界を支配していた
世界帝軍の施設を流用して作られている。

東の門の向こうには、その廃墟が
そのまま放置されている……という噂だ。

生徒たちが勝手に出入りしないよう、
普段から門は厳重に施錠されているはずだが──。

──そっと押してみると、
門はきしんだ音を立てて開いた。
誰か……ヴィヴィアンがここを通ったのだろう。

主人公【……入ってみよう】

周囲を警戒しつつ、〇〇は
立ち入り禁止区域に足を踏み入れる。

その時だった。

──パァンッ!!

ヴィヴィアンうっ……!

1発の銃声が響いたかと思うと、
見慣れた人影──ヴィヴィアンが倒れるのが目に入る。

主人公【ヴィヴィアンッ!】
ヴィヴィアン〇〇……?
ど、うして、ここに……。
ぐっ! ゴフッ! ……ッ!
ヴィヴィアンお、お願い、この箱……。
この箱を、ラッセル教官、に……!
ヴィヴィアン……ッ……。

力を振り絞るようにして、ヴィヴィアンは
〇〇の手に小さな木箱を握らせた。
その直後、彼女はぐったりとして動かなくなる。

主人公【そん、な……】

──助からない。
直感的に、そう理解した。

主人公【嘘だ……!】
【ヴィヴィアン、どうして……!】

呆然としていると、足音が近づいてきた。
鈍く光る銃口が、こちらへ向けられる。

ガスマスクの男たち殺ス……壊ス……!
ガスマスクの男アアアァアアァ!
主人公【逃げないと……!】
【ラッセル教官に木箱を届けないと!】

〇〇は、全速力で駆け出した。
──逃げろ、逃げろ!

追いつかれたら、殺される──!

ヴィヴィアンから託された木箱を握りしめる。
ラッセル教官に、なんとしても渡さなければ──。

──緊張と混乱からか、足がもつれた。

転倒した衝撃で、ヴィヴィアンから託された木箱を
取り落としてしまう。
衝撃で蓋が開き──小さな赤い結晶が転がり落ちた。

ガスマスクの男殺……ス……!

こいつらに渡してはいけない。
そんな予感がして、箱から転がり出てきた結晶を
咄嗟に掴んだ瞬間──……。

主人公【……っ!】

結晶を掴んだ右手に、激しい痛みが走る。
苦痛が全身を襲い、
誰かの怨嗟の声が頭の中に響く──。

熱い血が流れる感覚に、右手の甲に目をやると──
薔薇の花のような傷が、赤々と刻まれていた。

ガスマスクの男殺、ス……!

向けられる銃口──殺される。
そう思ったとき、身体が無意識に動いた。

主人公【(絶対に、死んでたまるか……!)】

日々の訓練を身体が覚えている。
──応戦しなくては。
背負った銃に、素早く手が伸びる。

──UL96A1の銃身に触れた、その瞬間。
愛用の銃が、まばゆい光を放つ。

主人公【……っ!?】

──そこには、灰色の髪の男が立っていた。

灰色の髪の男…………。
灰色の髪の男──おい、てめぇら。
俺のマスターに銃口向けてんじゃねぇよ。
灰色の髪の男俺は……マスターの銃。
スナイパーライフルUL96A1だ。
灰色の髪の男……マスターの敵は、俺がまとめて無力化する!

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