シャルルヴィル | あっ……! |
---|---|
シャルルヴィル | な、なんてことするのさ! ケースを割るなんて、乱暴すぎるっ! |
ライク・ツー | うるせーな。 ブラウン・ベスは絶対高貴になれるって聞いたぞ? |
シャルルヴィル | た、確かにそうだけど、 量産銃のうちの1挺が絶対高貴になれたからって 全部がなれるわけじゃ……! |
ライク・ツー | 現状可能性が高いのは、こいつだろ。 早くしろよ。 うちのマスターが死んだらどうしてくれるんだ? |
ライク・ツー | こいつが死んだら、俺たちも消えるんだ。 ……そんなのはごめんだね。 |
ライク・ツー | それとも、お前が絶対高貴になって 治療してくれるのかよ? |
シャルルヴィル | そ、それは……。 |
布ごと、ブラウン・ベスを持ち上げて手にとってみる。
ずっしりとした銃からは、歴史の重みを感じた。
イギリスを長きにわたって支えたブラウン・ベス。
彼なら、薔薇の傷を治すために
力を貸してくれるだろうか。
主人公 | 【ブラウン・ベスに触れても?】 【貴銃士になってほしい】 |
---|---|
シャルルヴィル | ……ロジェ様に怒られても、 ボク、知らないからね! |
ライク・ツー | 〇〇。 お前の正直な気持ちを込めてみろ。 ……できるよな? |
主人公 | 【もちろん】 【やるしかない】 |
ブラウン・ベスの銃身に、〇〇は
祈りを込めた右手で、そっと触れる。
その途端、ブラウン・ベスが光を放ち、
光があたりを眩く照らしていった。
ブラウン・ベス(?) | …………。 |
---|---|
ラッセル | …………! |
ブラウン・ベス(?) | ……Hello, Everybody! |
ライク・ツー | あ? |
マークス | は? |
ラッセル | え? |
主人公 | 【ええっ??】 【は、はろー……?】 |
シャルルヴィル | ベスくん……? |
ブラウン・ベス(?) | ん? オレの名前はジョージだけど? |
シャルルヴィル | ジョージ……? えっ……あ、ああ! そ、そうくるっ!? |
ライク・ツー | どう来たんだよ。 |
シャルルヴィル | えーっとね。 ブラウン・ベスって銃には2つの側面があるんだ。 |
シャルルヴィル | ひとつは、さっきそのおじさんが説明してた イギリス初の制式銃としての側面。 |
ラッセル | (お、おじさん……!?) |
シャルルヴィル | そしてもうひとつは── アメリカ独立戦争で、 イギリス軍と戦った銃としての側面。 |
マークス | イギリス軍と? イギリスの銃なのにか。 |
シャルルヴィル | 量産銃、って言ったでしょ。 ブラウン・ベスはアメリカとイギリス両軍の 主要な装備だったんだ。 |
ライク・ツー | じゃあ、つまりこいつは……。 |
シャルルヴィル | そう、おそらくは── アメリカ独立戦争で用いられた、アメリカ側の人格! |
ジョージ | ん? おまえ…… もしかして、あのシャルルヴィルか! |
ジョージ | いやぁ、久しぶりだなあ! アメリカ独立戦争では、 アメリカ側で一緒に戦ったよな! |
ジョージ | 久々に会えてうれしいぜ! 300年ぶり? はっはっは! |
シャルルヴィル | う、うん……ひ、久しぶりだね。 |
シャルルヴィル | あのね。実は、この人たちが 絶対高貴になれる貴銃士を探してて……。 |
ジョージ | Oh! 絶対高貴ね~。 それはなかなか大変そうだな。見つかりそうか? |
マークス | いや、あんたに期待して呼び覚ましたんだが。 |
ジョージ | え、オレ!? |
ジョージ | HAHAHA! 頼ってくれるのは嬉しいけど、 オレなんて無理無理! |
ライク・ツー | は? 何言ってんだよ。 古銃の貴銃士だろ? なれるだろ。 |
ジョージ | 古銃の貴銃士ってだけで全員がすぐに 絶対高貴になれるってワケじゃないよ。 |
ジョージ | なっ、シャルルヴィル? |
シャルルヴィル | え!? ボ、ボクは……。 |
ジョージ | おまえも、絶対高貴に目覚めるのに苦労しただろ? |
シャルルヴィル | ああ、そうだね。それはもちろん。 |
ジョージ | こんなキレイなシャルルでも苦労したんだ。 高貴じゃないオレには、できなさそうだよ。 マジでごめんな。他の奴らにでも── |
ジョージ | マジでごめんな。他の奴らにでも── |
---|---|
マークス | …………。 |
マークス | ……ふざけるな。 お前もシャルルヴィルもいい加減にしろ! |
マークス | マスターはお前ならと思って呼び覚ましたのに、 ハナから無理だと諦めて見捨てるのかよ! それでも貴銃士か!? |
マークス | マスターを見ろ! こうしている間にも、 マスターの薔薇の傷はどんどん進行してるんだ! |
マークス | 時間がないっつーのがわかんねぇのかよ!? のんびりしてる場合じゃねぇんだ! |
ジョージ | …………。 |
ラッセル | マークス……。 |
マークス | ……はぁ。 |
マークス | こんな奴を頼りに来た俺が馬鹿だった。 |
マークス | 時間がない。 マスター、行こう。 |
マークス | この際、どこの銃だっていい。 なんとか宮殿に行って、 革命戦争で戦った貴銃士を呼び覚ませばきっと── |
ジョージ | …………。 |
ジョージ | ……待って! |
マークス | もういい。 |
ジョージ | 違うんだ……。 いや、違わないんだけど、うん。 |
ジョージ | おまえがマスターのことを想う気持ち、 伝わったよ。 |
ジョージ | それに、マスターからの思いや願いも…… さっき呼び覚まされた時に、なんとなく感じた。 オレは人を助けたい。だから、マスターの声に応えた。 |
ジョージ | だから……。 ごめん、ほんとのこと言う。 |
ジョージ | オレは絶対高貴にはなれない。 今はなれないけど、でも……! |
ジョージ | いつか絶対高貴になるのは、オレの夢なんだ! |
ジョージ | だからマスター……お願いだ。 オレもそばにいさせて? |
ジョージ | 絶対高貴、いつかなれるように努力する。 必ず、なってみせる。 |
ジョージ | オレはさ、 マスターみたいに苦しんでいる人を助けたいんだ! |
ジョージ | その日が来るまで…… いや、絶対高貴になったそのあとも、 マスターに忠誠を誓うよ。 |
ジョージがそっと〇〇の右手をとり、
薔薇の傷が血を滲ませる手の甲に
恭しく口づけをした。
その時──
ラッセル | な、なんだこの光は? |
---|---|
主人公 | 【もしかして、これが……?】 【絶対高貴……?】 |
マークス | これが、絶対高貴……。 |
温かい光。
──身体が、軽い。
ずっと続いていた苦痛が、
光に浄化されるように消えていく。
マークス | ……! マ、マスター! |
---|---|
マークス | 見ろ! おい、見ろ! マスターの傷が、修繕されていくぞ!! |
ジョージ | えっ……? もしかして、オレ……? |
主人公 | 【ありがとう】 【助けてくれたね】 |
ジョージ | オレ、なれたのか? ──絶対高貴に。 |
ジョージ | …………。 |
ジョージ | よっっしゃ~~~!!! |
マークス | マスターが! 元気になったぞ!! |
ラッセル | 俺にも見せてくれ! ……本当だ。 |
ラッセル | 信じられない。 絶対高貴にはこんな力があるのか……。 |
ライク・ツー | へぇ……。 すごいじゃないか! |
シャルルヴィル | ……!! |
シャルルヴィル | さ、さすがだね、ジョージ。 …………。 |
ジョージ | Thank you、シャルルヴィル。 ……それに、マスター! |
ジョージ | オレ、マスターに会えて本当によかった。 これから、よろしくな! |
ラッセル | ひとまず、これで安心だな。 一度、学校に戻って…… |
---|---|
ラッセル | ……あっ!? |
ライク・ツー | おい、なんか棚から落ちたぞ。 |
ラッセル | し、しまった。 貴重なものかも……ん? |
ラッセル | これは銃か? まったく見たことがない形だ。 |
シャルルヴィル | ここにあるのは奇銃だよ。 別の道具を銃に改造したものだけど…… これは……なんだろうね。 |
ラッセル | 奇銃か。 革命戦争では、食器や杖の仕込み銃も 活躍したと聞くが……。 |
ラッセル | 〇〇君も見るかい? |
主人公 | 【ぜひ】 【せっかくなので】 |
??? | …………。 |
ラッセル | うわぁ!? |
??? | ──男! そこを動くな、曲者め! |
??? | 俺の目と鼻の先で盗人を働くたぁ、見上げた根性だ。 |
??? | であえ、であえ~! この同心十手が相手になるぞぉ! |
十手 | …………。 |
全員 | …………。 |
主人公 | 【(ポカーン)】 |
十手 | ……え、っと……? |
十手 | どうしたんだい、お前さんたち。 ずいぶんと、その……張り合いがないな? |
ラッセル | す、すまない。 君は、一体……? |
十手 | おっと、よくぞ聞いてくだすった。 |
十手 | 俺は指し火式火縄銃の十手鉄砲。 江戸時代の奇銃だ。 |
ラッセル | ふむ、君も古銃の貴銃士ということか。 |
十手 | そういうことだな。 |
十手 | わかったところで、神妙にお縄につけぃ! |
ライク・ツー | おらっ。 |
十手 | ぐわっ! |
十手 | いきなり蹴るとは、どういう了見だ……。 |
ライク・ツー | なんかよくわかんねーけど…… 一応、古銃の貴銃士ってことだよな。 ってことはお前も絶対高貴になれるのか? |
十手 | 絶対高貴! |
十手 | …………。 ぜ、絶対……高貴……とは……? |
ライク・ツー | はぁ。 ダメだこりゃ。 |
ラッセル | ラ、ライク・ツー!? 銃をしまうんだ! |
十手 | な、何をする気だ!? |
ライク・ツー | 何って。 お前は絶対高貴になれないんだろ? |
ライク・ツー | しかも、お前の銃……なんだそれ? 指し火式って……戦場で毎回マッチでも擦るのか? |
ライク・ツー | そんな足手まとい、いらねぇから。 ……ジョージがいれば十分だ。 |
ライク・ツー | いらないなら、とっとと銃に戻す。 ……合理的だろ? |
十手 | ま、待ってくれ! |
十手 | その、絶対ナニガシというのは知らないが、 俺はそちらの御仁の力になりたくて……。 |
ライク・ツー | だから、絶対高貴になれなきゃ力になれねーんだよ。 |
十手 | そんな。 ま、待ってくれ……! |
ジョージ | Hey! Hey! Hey! ちょっと待てよ、2人とも。 |
ジョージ | そんなにお堅いこと言うなって。 ……な? |
ジョージ | アクシデントで召銃されたけど……十手だっけ? オレそんな銃見たことないよ、COOL! |
ジョージ | なんか、面白そうじゃん。 それに、人数が多い方が賑やかで楽しいだろ? |
ジョージ | な、マスター! マスターもそう思うだろ? |
主人公 | 【その通り!】 【一緒に行こう!】 |
十手 | ……っ! お、恩に着るよ! |
十手 | 助け舟、痛み入る。 本当にありがとう! マスター! |
ライク・ツー | ……お前ら、甘すぎ。 |
ラッセル | ふぅ。 アクシデントはあったが、なんとか体制は整ったな。 |
ラッセル | では、改めて学校に戻ろうか。 |
シャルルヴィル | ジョージたちのことは、 ロジェ様にボクから言っておくよ。 |
---|---|
主人公 | 【ありがとう】 【よろしくお願いします】 |
マークス | 世話になったな。 |
シャルルヴィル | あと……1つ、ボクから助言。 薔薇の傷跡は、マスターが「力」を使うほどに 広がっていく。使い過ぎに気を付けてね。 |
マークス | ああ……わかってる。 |
主人公 | 【気にしすぎないで】 【大丈夫だよ】 |
マークス | どんな手段を使っても、 どんな代償を払っても……。 |
マークス | ……いや、なんでもない。 |
ライク・ツー | ほら、早く行くぞ。 |
十手 | ほう……! これが、異国の風景か……! |
ラッセル | 俺は車を手配してくるよ。 人数が増えたが……まぁ、大丈夫だろう。 |
ラッセル | 賑やかになるなぁ。はは! |
ジョージ | …………。 オレ、絶対高貴になれたんだ……。 |
ジョージ | あいつは……。 あいつはなれなかったのに、どうして……? |
ジョージ | Wow……! すっげぇ立派な建物だな! |
---|---|
ライク・ツー | ……古臭いけどな。 |
十手 | 歴史を感じていいじゃないか。 俺はなかなか好きだよ。 |
ラッセル | 長旅ご苦労様! ここが、これから君たちの活動拠点となる フィルクレヴァート士官学校だ。 |
ラッセル | さっそくだが、軽く施設の案内をしよう。 まずはどこから回るか──。 |
マークス | マスター、疲れてないか? 早く部屋に戻って休もう。 マスターに士官学校の案内は必要ないしな。 |
ジョージ | なあなあ! 向こうに見えるヘンな形の建物ってなんなんだ? |
ライク・ツー | そういや……。 おい、ラッセル。士官学校なんだから、 まともなトレーニングルームくらいあるんだろうな? |
ラッセル | あ、ああ……施設は充実しているぞ。 |
ラッセル | それはそうと、私のことはラッセル教官と呼びなさい。 貴銃士であれど、士官学校で暮らす上のルールだ。 |
ライク・ツー | あぁ? |
十手 | ラ、ライク・ツー君……。 日本には郷に入れば郷に従え、 ということわざがあってね。 |
十手 | 新しい土地や環境に来たら、 そこでの習慣ややり方に従うべき、だという── |
ライク・ツー | うるせぇな。 大して役に立たねぇ妙な銃のくせに、 口だけは一人前かよ。 |
十手 | うっ、うぅ……。 |
ライク・ツー | ここに来るまでの戦いでも── |
アウトレイジャー | 殺、ス……! |
---|---|
十手 | 俺の出番だな。 十手鉄砲の力をとくと見よっ! |
十手 | ……って、火種がないっ! |
アウトレイジャー | ……殺ス……消ス……! |
十手 | ひ、ひぃっ! |
ライク・ツー | はぁ!? ったく、何やってんだよてめぇ! |
アウトレイジャー | ウッ、グァ……ッ! |
ライク・ツー | はぁ……。てめぇ何考えてんだ。 戦場で悠長に火種探してる暇なんか ねぇに決まってんだろ! |
十手 | す、すまない……。 しかし助かったよ。ありがとう。 |
──バァンッ!!
十手 | ヒェッ!!!??? |
---|---|
ジョージ | うおっと! 変なところに飛んじまった! 悪い十手、大丈夫かー!? |
十手 | だ、大丈夫だが……。 |
ジョージ | あー、びっくりした。 当たんなくてマジでよかったよ。あっはっは! |
十手 | は、はぁ……。 |
ライク・ツー | チッ……これだから古臭い銃ってやつは。 役に立つどころか邪魔にしかならねぇな……。 |
マークス | おい、まだ来るぞ! ……数が多いな。 |
ライク・ツー | 一気に片付けるか。 戦えない奴を守りながら長期戦は無理だ。 |
マークス | …………。 短期決戦の方が、マスターへの負担も少ないか……。 |
主人公 | 【大丈夫、絶対非道を使って】 【2人の力を貸してほしい】 |
マークス | ……っ、ごめん、マスター……! |
マークス&ライク・ツー | ──絶対非道! |
アウトレイジャー | グァァァ……ッ! |
十手 | こ、これが、絶対非道……。 とんでもない力だな……。 |
ライク・ツー | よし、片付いたな。 |
マークス | マスター! 傷は大丈夫か? |
主人公 | 【平気だよ】 【そんなに悪化してない】 |
ジョージ | おいおい、そんな白い顔して無理すんなって! オレがすぐに治すからさ。 |
ジョージ | マスター、手を貸してくれ。 |
十手 | おお……。 すごい、傷が治っていく……。 |
ジョージ | よーし、こんなもんだな! |
十手 | (マークス君とライク・ツー君は、 絶対非道の凄まじい力で、 アウトレイジャー相手に堂々と戦っている……) |
十手 | (ジョージ君は俺と同じ古銃だけど、 絶対高貴になってマスターの傷を癒せる……) |
十手 | (……何もできないのは俺だけ、か……) |
ライク・ツー | お前もさっさと、 絶対高貴に目覚めるとかなんとかして、 役に立つようになれよ。 |
---|---|
ライク・ツー | 戦場で使えねぇ奴を庇って戦う余裕はない。 わかったな。 |
十手 | あ、ああ……。 |
ジョージ | あんまり気にすんなよ、十手。 絶対高貴にいつどうやって目覚めるかなんて、 オレたち自身にもよくわかんねーんだしさ。 |
ジョージ | それに……あいつも一応、 おまえのこと心配して言ってるんだと思うし! |
十手 | ……ありがとう、ジョージ君。 |
ラッセル | あー……。 君たち、ちょっといいか。 |
ラッセル | まずは士官学校の雰囲気を知るために、 訓練の様子を見に行こう。 私についてきてくれ。 |
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