生徒1 | 全体、前へ進め! |
---|---|
ジョージ&十手 | おお~~! |
十手 | 一糸乱れぬ動き……見事なものだなぁ。 |
ジョージ | なぁ、あいつらは何やってんだ? |
ラッセル | 午後の授業に向かう、”課業行進”だ。 士官候補として恥ずかしくない動きを、 ああやって身体に叩き込む。 |
ライク・ツー | ……行進なんかより、 普通にトレーニングでもする方が、 ずっと効率的だと思うけどな。 |
マークス | 軍は団体での行動だ。 協調性を身につけるためにも重要なんだろ。 ……あんたもやった方がいいんじゃないか? |
ライク・ツー | ……んだと? |
主人公 | 【2人とも落ち着いて】 |
十手 | うおっ!? ジョージ君は一体何をしているんだ……? |
ジョージ | いち、に! いち、に! 右、左! 右、左! |
ジョージ | おお!? オレ、結構上手くないか? なぁ、おまえもそう思うだろ? |
生徒2 | えっと……!? じ、自分でありますか!? |
ジョージ | おまえしかいないだろー。 HAHA、変なヤツ! |
ジョージ | っていうかおまえ、堅苦しいなぁ! カノジョとかにもそういう態度なのか? |
生徒2 | 彼女……!? い、いえ、自分にはそういった方はいませんので! |
ジョージ | マジかよ! 年頃の男にカノジョなし!? ってことは、キスとかもしたことないのか!? |
生徒2 | はっ、ありません! |
ジョージ | うっそだろ……! |
主人公 | 【こらーっ!】 【戻りなさーい!】 |
ジョージ | うお、やべっ! マスターが呼んでるから、オレ戻るな! |
生徒2 | はぁ……助かった……。 |
マークス | おい。勝手な行動をするな。 あんたのせいでマスターの評判が落ちたらどうするんだ。 |
ジョージ | 悪かったって! ……しっかし、あの年でキスしたこともないなんて、 ここのヤツらはなんてクソ真面目なんだ……! |
ラッセル | 真面目なのは大いに結構なことだよ。 |
ジョージ | そーかぁ? 若いうちに遊んだり無茶したりしないなんて、 人生損してるってカンジがするけどなぁ。 |
ラッセル | ……ここ、フィルクレヴァート連合士官学校は、 イギリスで唯一の陸軍士官学校なんだ。 |
ラッセル | ここに集う生徒には、高い能力と品位が求められる。 風紀を乱すような行いは、厳に慎まなければならない。 ……もちろん、これからは君たち貴銃士もだ。 |
ジョージ | うげぇっ!! |
十手 | なぁ、ラッセル教官殿。 不勉強ですまないが、 俺は士官学校というものについて、よく知らないんだ。 |
十手 | もう少し詳しい話を聞かせてもらえないかい? |
ラッセル | もちろんだとも。 ここは「士官学校」という名の通り、 未来の「士官」を育成する学校だ。 |
十手 | んん……? その「士官」ってのは、 軍のお偉いさんにあたるわけか? |
ラッセル | ああ。士官というのは、 軍の中枢となる重要なポジション── 少尉以上の将校のことを指している。 |
ラッセル | そして、我が校の校訓は、 Be Noble, Be Truthful, and To Overcome! (高貴であれ、誠実たれ、そして打ち克て!) |
十手 | 高貴であれ、か……。 |
ライク・ツー | ……見た感じ、結構古い建物だよな。 元から何かの施設だったのか? |
ラッセル | その通り、 ここは、旧世界帝軍の士官養成学校だった場所なんだ。 |
ライク・ツー | 旧世界帝軍の……? |
ラッセル | ああ。7何前──レジスタンスの勝利によって 世界帝府が解体されたあとに閉鎖された。 |
ラッセル | その後、世界各国が加盟する世界連合軍が発足し…… 今度は連合士官学校として、 再びこの施設が使われるようになったというわけだ。 |
ジョージ | なぁ、ここにいるヤツらって、 イギリス人だけじゃないんだな。 |
ラッセル | ハハ……そうだよ。連合軍の学校だからね。 加盟している各国から、生徒を募っているんだ。 |
ラッセル | ただし、入学者選抜は非常に厳しい。 多くの志望者がいるが、 入学できるのはほんの一握りだ。 |
十手 | ということは…… 〇〇君はえらく優秀なんだなぁ。 |
マークス | ふふん。当たり前だろ。 俺のマスターなんだから。 |
ライク・ツー | 理由になってねぇよ……。 |
ラッセル | ああ。〇〇君はとても優秀な生徒だ。 射撃大会の件で、校内でも有名人なのさ。 |
主人公 | 【ありがとうございます】 【恐縮です】 |
十手 | ……あれ? またジョージ君がいなくなったぞ。 |
マークス | ったく、あのブラウン・ベスの中身違いは……! ふらふらどこ行きやがった。 |
ジョージ | おーい! Big Newsがあるんだ! 聞いてくれ! |
マークス | おい、勝手な行動すんなって言っただろうが。 マスターに迷惑かけんな。 |
ジョージ | ごめんごめん。でもさ、いい情報をGetしたんだよ! 街のイケてる奴が集まってわいわいする店があるって。 カワイイ女の子もいっぱいらしい! |
ジョージ | さっそく今から行こうぜ! |
マークス&ライク・ツー | 行かねぇよ。 |
ジョージ | かぶった! |
マークス&ライク・ツー | …………。 |
ラッセル | 残念だが、どのみち行くことはできないぞ。 外出が許されるのは土日だけ。 そして、外出には許可証が必要だ。 |
ジョージ | マ、マジかよ!? |
ラッセル | 紛れもない事実だ。 |
ジョージ | Noooooo~~~!!! |
ラッセル | ──さて、このあたりの案内はおおよそ済んだな。 |
---|---|
ラッセル | 最後に、注意事項について伝えておこう。 ジョージ。特に君は注意して聞くように。 |
ジョージ | オレだけ名指し!? |
ライク・ツー | 普段の行いのせいだろ。 |
ラッセル | ……いいだろうか。 この学校は山と運河に囲まれているが、 山への立ち入りは禁じられている。 |
十手 | 山歩きはいい運動になりそうなもんだが…… どうして禁止なんだい? |
ラッセル | 先ほど言った通り、 ここは旧世界帝軍の施設を流用している。 山にはその廃墟が残っていて危険なんだ。 |
ラッセル | それに、山の地形も複雑なようでね。 過去には山に入った生徒が遭難した例もあった。 |
ラッセル | 山に面している東門から、立ち入り禁止区域だ。 間違っても、そこから抜け出したりしないように。 |
主人公 | 【(東門……)】 【(ヴィヴィアンが殺された場所……)】 |
マークス | ……マスター、大丈夫か? 顔色が悪い。 |
ラッセル | ……辛いことを思い出させてしまったな。 |
ラッセル | 次は食堂を案内するよ。 深呼吸をしながら、ゆっくり歩こう。 |
ラッセル | ……〇〇君。 君には、本来一生徒が負うべきではない、 大きな負担がかかっている。 |
---|---|
ラッセル | 君の貴銃士たちも力になってくれるだろうが、 彼らは人としてはまだまだ未熟だ。 困ったことがあれば、なんでも私に相談しなさい。 |
ラッセル | 私では力不足の点もあるかもしれないが…… 担当教官として、面倒を見てきた。 これから先も、君の力になりたいんだ。 |
主人公 | 【ラッセル教官……】 【ありがとうございます】 |
ジョージ | おおー! すげぇ広いな! |
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ラッセル | ここが食堂だ。 士官学校には世界各国から生徒が集まっているからね、 各国の多様な食事を提供している。 |
ジョージ | バーガーもあるのか!? |
ラッセル | もちろん。人気メニューの1つだな。 |
ジョージ | Great!!! 土日以外は外出できないって聞いてガックリしたけど、 食堂で美味いモンを食べられるってのはいいな! |
十手 | 和食はあるのかい……? |
ラッセル | ああ。 和食も人気が高いから、時々用意されているよ。 |
十手 | おお……! それは楽しみだ! |
ラッセル | ……そろそろ約束の時間だな。 みんな、これから理事長室に挨拶に行く。 |
ラッセル | 〇〇君の貴銃士として、 恥じない行いを心がけてくれよ。 |
シド理事長 | おお、来たかね、〇〇君。 |
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シド理事長 | 君のさっそくの活躍は耳にしているよ。 アウトレイジャー討伐は順調なようだね。 |
ライク・ツー | ……なぁ。ヴィヴィアンについてはどうなったんだ。 |
シド理事長 | …………。 |
シド理事長 | リントンロッジ候補生の死をどう処理するか、 まだ学校側として、対応が固まっていなくてね。 彼女の行動には、謎が残っていることであるし……。 |
シド理事長 | ただ……未来ある若者の命が失われたことは事実。 私としては、事故死として公表し、 公式に葬儀ができたらと考えているよ。 |
主人公 | 【そう、ですか……】 【よろしくお願いします……】 |
ライク・ツー | …………。 |
ライク・ツー | おい。お前が今さらへこんだところで、 あいつが死んだっていう事実は変わらねぇ。 |
ライク・ツー | 後悔する暇があるなら、これからどうするかを考えろ。 その方が合理的だし、あいつのためになる。 ……そうだろ? |
主人公 | 【……そうだね】 【……ありがとう】 |
ライク・ツー | ん。わかったんならいい。 |
十手 | ……ライク・ツー君は、 器用だけど不器用なんだな。 |
ジョージ | だな! |
ライク・ツー | おい、お前ら……! |
ラッセル | こら、君たち。 |
ラッセル | ……失礼しました。 理事長、紹介させていただきます。 |
ラッセル | リリエンフェルト家にて、 〇〇候補生が新たに召銃した 貴銃士2名です。 |
ラッセル | 我が国が誇る名銃、ブラウン・ベス──なのですが。 |
ラッセル | 彼は、アメリカ独立戦争にてアメリカ側で使用された、 “ジョージ”という人格の貴銃士です。 |
ジョージ | よっ! よろしくな、おっさん。 |
主人公 | 【こら!】 【ジョージ!!】 |
ラッセル | そして彼は、日本で作られた奇銃、十手です。 |
十手 | は、はじめまして。 よろしくお願いいたす! いや、いたします! |
ラッセル | 彼らはリリエンフェルト家が所有していたものですが、 士官学校あずかりとなり、〇〇君とともに 連合国軍の任務につくことが承認されています。 |
シド理事長 | ふむ……それは非常に心強い。 古銃の貴銃士は、絶対高貴という力を持つというしな。 |
シド理事長 | 我が校の校訓は、 Be Noble, Be Truthful, and To Overcome! (高貴であれ、誠実たれ、そして打ち克て!) |
シド理事長 | これは、革命戦争当時に レジスタンスとして活躍した貴銃士たちのモットー、 「Be Noble(高貴であれ)」に基づくものだ。 |
シド理事長 | ジョージ君、十手君。 君たちがかつての貴銃士たちの意志を継ぎ、 その高貴さを示してくれることを期待するよ。 |
十手 | あ……、俺は、そんな大層なことは……。 |
ジョージ | おう! オレは、苦しんでいる人がいるなら助けたい! 高貴とかは、まだよくわかんねーけど……。 たぶんそれが、オレの絶対高貴だから。 |
ジョージが力強く言い切った途端に、
彼の身体が淡く、温かな光を放ち始める。
シド理事長 | おお……! これが噂に聞く、貴銃士の絶対高貴……! |
---|---|
シド理事長 | 素晴らしい、実に素晴らしい。 ぜひとも、我らカサリステとともに、 世界の平穏に貢献しようではないか。 |
シド理事長 | ──ブルースマイル曹長。 彼らをカサリステの入り口に案内したまえ。 |
ラッセル | はっ、承知しました。 |
ジョージ | よーし、行こうぜ! |
十手 | (ジョージ君は、いつも奔放で 何も考えていないみたいなのに…… 本当はしっかり、信念を持っている) |
十手 | (それに比べて俺ときたら…… 銃としても役立たずで、絶対高貴にもなれない……) |
十手 | はぁ……。 |
ジョージ | Wow……立派な図書館だな……! |
---|---|
十手 | 書物がこんなにたくさん……! これを読み切るには何十年── いや、百年くらいかかるかもしれないなぁ……。 |
ライク・ツー | ……おい。 カサリステの入り口に案内するんじゃなかったのか? なんでここに連れてきた。 |
ラッセル | それは── |
??? | ようこそ! フィルクレヴァート連合士官学校の本の聖地にして アタクシの城である図書館へ! |
マークス | ……なんだ? このおばさん。 |
主人公 | 【しーっ!】 【失礼だよ】 |
ゾーイ | 皆様、おこんにちは。 アタクシはこの図書館の司書を務める、 ゾーイ・モンテルノッテですわ。 |
ゾーイ | ……というのは、表の顔で。 |
ゾーイ | アタクシの裏の顔…… それは、スーパー・シークレット・オーガニゼーション ──その名も「カサリステ」の受付嬢ですの! |
ラッセル | ……まぁ、そういうことだ。 この図書館には、カサリステへの秘密の入り口がある。 だから君たちをここへ連れてきたんだ。 |
ジョージ | へぇ~! それで、いくつくらいなんだ? |
ゾーイ | アタクシは27ですわ。オホホホッ! |
ライク・ツー | 大胆にサバ読んだな……。 |
ジョージ | っていうか、オレが聞きたかったのは、 秘密の入り口の数なんだけど……。 |
ゾーイ | あら! 恥ずかしい勘違いをしてしまいましたわね! ……それより、皆様のお顔がやけにぼやけますわ。 なんでかしら? |
ゾーイ | ……あらやだ! アタクシったら、リーディンググラスのまま! |
ライク・ツー | なんか格好いい言い方してるけど、 それ老眼鏡のことだろ……。 |
ゾーイ | 何か言いまして? えー、眼鏡眼鏡……これでよし、と。 |
ゾーイ | ……あら、あなたは……! |
ジョージ | ん? オレの顔になんか付いてる? |
ゾーイ | …………。 |
ゾーイ | まあ! なんて麗しい方々なのでしょう! さすがは貴銃士さま、といったところでしょうかね。 オホホホ、眼福眼福♪ |
ゾーイ | 貴銃士の皆様には、カサリステでの 定期検査に来ていただくことになりますから、 そのときはアタクシにお声がけを。 |
ゾーイ | しっかり案内しますわ。 それでは以後、お見知りおきを~! |
ラッセル | ではまたな、ゾーイ。 彼らをくれぐれもよろしく頼むよ。 |
ゾーイ | Bye~♪ |
十手 | なんだかすごい人だったな……。 |
---|---|
ラッセル | ゾーイは、悪い人ではないんだが……。 君たちが単独でカサリステへ行くことはないだろうから まぁ、安心してくれ。 |
ラッセル | ……さて、これで校舎案内は終わりだ。 さっそく午後から、君たちも授業に── |
十手 | ──ぐぅ |
全員 | …………。 |
十手 | め、面目ない……。 その、腹が減ってしまってだな……。 |
ジョージ | オレも腹減った~! なあなあ、食堂行こうぜ! |
ラッセル | すまない、昼食のことを忘れていたな。 腹ごしらえをしてから、 各自教室に集合するようにしよう。 |
ライク・ツー | そのことなんだけど。 なんで俺らが授業なんか受けなきゃいけないわけ? |
ライク・ツー | 貴銃士はアウトレイジャーと戦えばいいんだろ。 俺には十分過ぎるほど力があるし、 授業を受ける必要性を感じられない。 |
ラッセル | 確かに、戦闘能力に関してはそうだ。 だが、君たちは貴銃士として人の身体を持ち、 これから士官学校で暮らすことになる。 |
ラッセル | だから、現代社会についてや、人との関わり…… 連合軍に所属する者として、 色々なことをしっかり学んでほしいんだ。 |
ラッセル | それに…… 君は、自己研鑽は嫌いではないと思ったんだが。 |
ライク・ツー | …………。 ま、独学するよりは、人に習ったほうが手っ取り早いか。 ……わかったよ。 |
ジョージ | よーし、それじゃあ食堂へ Let’s Go~~~! |
ラッセル | ……はは。君の貴銃士たちは、 一癖も二癖もあるけれど、愉快なものだね。 |
ラッセル | 常識やマナーはまだまだ学ぶ必要があるが…… こと戦闘面においては、本当に心強い。 |
ラッセル | それに、心から君を慕っているようだ。 きっと、信頼できる仲間になってくれるだろう。 |
マークス | おーい、マスター! 早く食堂に行こう! |
ラッセル | おっと、呼ばれてしまったな。 君もしっかり昼食をとって、午後に備えるように。 |
主人公 | 【はい!】 |
ゾーイ | はぁ……。 危うく怪しまれてしまうところでしたわ。 |
---|---|
ゾーイ | “ジョージ”という貴銃士が来ると聞いていたのに、 まさか彼が“ブラウン・ベス”と同じ姿だなんて……。 |
ゾーイ | ……“彼女”と接触しないように、 これまで以上に警戒しなくてはいけませんわね……。 |
ラッセル | さて、と……。 彼らはちゃんと初授業を受けられているだろうか……。 |
---|---|
ラッセル | ……ん? なんだ、ずいぶんと騒がしいな……。 |
マークス | ……おい。 あんたのヘマをマスターのせいにすんじゃねぇよ! |
生徒1 | ヒッ……! お、俺は悪くない……! |
生徒2 | 離してやってくれよ! それに、いくら貴銃士でも喧嘩は罰則ものだぞ! |
マークス | ああ? んなくだらねぇこと知るかよ。 こいつがヘンテコなビンを落としたせいで、 マスターが注意されたんだぞ! |
生徒1 | 〇〇がちゃんと受け取らなかったんだ! 俺は悪くねぇ! |
マークス | てめぇ……! |
主人公 | 【マークス!】 |
ラッセル | やめないか、2人とも! ……まったく、ライク・ツーは何をして── |
生徒3 | ラッセル教官。ライク・ツーくんは、 向こうで机を並べてベッド代わりにして寝ています。 |
ラッセル | 何……!? そうだ、十手は── |
十手 | ふらすこにびぃかぁ…… まずは言葉を覚えるのに精一杯で、 授業に置いていかれそうだ……。 |
十手 | ろくに戦えないし絶対高貴にもなれない、 おまけに授業もよくわからない俺って……。 はぁぁぁー……。 |
ラッセル | とても話しかけられる雰囲気ではないな……。 ジョージは── |
ジョージ | ……なんだこれ? 「混ぜるな、キケン」……? |
ジョージ | キケンって、何が起こるんだ? 火が出たり爆発したりすんのかな? |
生徒4 | あっ、おい、やめ── |
ジョージ | そーれっ! |
生徒4 | こいつやりやがった! おいみんな、有毒ガスが出るぞ!! |
生徒4 | 窓を開けろおおおぉぉっ! |
生徒たち | うわぁああああっ!!! |
生徒たち | 貴銃士たちがいると授業になりませんっ!! |
ラッセル | どうやらそのようだな……。 対処を考えるとしよう……。 |
主人公 | 【疲れた……】 【嵐みたいな1日だった……】 |
---|
久々に寮に戻り、向かいの部屋──
ヴィヴィアンの部屋だったところに入る。
ヴィヴィアンの私物はすべてなくなり、
空っぽの家具だけが残されている。
彼女がいた痕跡はどこにもない。
主人公 | 【……静かだ】 |
---|
少しお調子者の彼女と
この寮で過ごした日々は、
思い返せばいつも賑やかで、楽しいものだった。
だからなおさら、静けさが寂しさをいざなう。
??? | うおっ!? |
---|
──ドタッ!
主人公 | 【……!?】 |
---|
突然、部屋の外から大きな声と物音が聞こえた。
何事かと思い、
〇〇が少しだけドアを開けてみると──。
マークス | お前ら、何しやがる! |
---|---|
ジョージ | HAHAHA! 悪い悪い! そんなに驚くとは思ってなくてさ。 |
十手 | すまない、マークス君。 ジョージ君を止めようとしたんだが、 間に合わなくて……。 |
主人公 | 【どうしたの?】 【何してるの?】 |
マークス | マ、マスター! いや、これは、その……。 |
ジョージ | オレは、マークスが部屋の前で ウロウロしてたから、何してんだろうと思って 後ろからちょっとびっくりさせてみたんだ。 |
ライク・ツー | 俺は通りかかっただけだ。 ……んで、マークスは何してたんだ? すっげー怪しかったけど。 |
マークス | べ、別に変なことは……! ただ、なんつーか、その……。 |
マークス | 士官学校に戻ってきて、1人になったら マスターが落ち込むんじゃないかと思って……。 |
ジョージ | ……励まそうと思った? |
マークス | まぁ、そんなところだ。 ……俺は、マスターの相棒だからな。 どんな時もそばにいて、力になりたい。 |
ジョージ | ヒュ~! 熱烈だな! |
マークス | うっ、うるせぇ! |
主人公 | 【……ありがとう】 |
マークス | ……マスターは、どうやって笑ってるのが一番だ。 |
十手 | ……ふふ。 〇〇君が笑ってくれたなら、 俺も転んだ甲斐があったよ。 |
ライク・ツー | ……ま、シケた面してるより、よっぽどマシだな。 |
ジョージ | ──よーし! それじゃあみんなで、パーッとトランプしようぜ! |
ライク・ツー | はぁ……? なんでトランプ? |
マークス | マスターには休息が必要だ。却下。 |
ジョージ | おいおい、カタいこと言うなって。 楽しむのも休むうちじゃん! |
ジョージ | な? 頼むよ~、1回だけやろーよ! 十手のおっさんもやるだろ? |
十手 | お、俺もかい? |
十手 | でも、みんなの足を引っ張るかも……。 |
ジョージ | 大丈夫だって! マスターもみんなとやりたいだろ? |
主人公 | 【そうだね】 【やろう!】 |
ライク・ツー | ……ふん。 ほんとーに1回だけだからな。 |
ジョージ | やっほう! 行こうぜ~! |
賑やかさに包まれて、
〇〇を蝕んでいた寂しさが薄らいでいく。
──ヴィヴィアンは、二度と戻らない。
だけど、自分は1人じゃない。
そう思えた、優しいひとときだった。
──翌日。
ジョージ | 今日の授業はなんだろな~。 よくわかんねーけど、意外と楽しいよな、授業! |
---|---|
十手 | ジョージ君は前向きだなぁ……。 俺は、これから先やっていけるのか不安だよ。 |
ライク・ツー | 社会やらで各地の特産物なんか覚えて なんになるってんだよ……。 はぁ、だる……トレーニングしてぇ。 |
マークス | 今日は無礼な奴がいなきゃいいんだが……。 俺がマスターを守り抜かないとな。 |
ジョージ | つーか、他のやつら来ねぇなぁ。 もしかして、教室間違えたか? |
ラッセル | おはよう、諸君。 全員揃っているな。 |
十手 | え? これで全員なのかい? |
ラッセル | それについてはこれから説明しよう。 まずは、君たちに紹介したい人がいる。 |
恭遠 | ──はじめまして。 私は、恭遠・グランバードだ。 |
恭遠 | 君たちが、新しく目覚めたという貴銃士だね。 よろしく頼むよ。 |
ラッセル | 恭遠氏は、革命戦争でレジスタンスのマスターと、 その貴銃士たちと共に戦った指揮官だ。 |
ライク・ツー | ……マジかよ。 |
十手 | すごいお方なのだな……! |
ラッセル | その功績により、世界連合本部の審議官として、 イギリス支部に赴任されていたが── |
ラッセル | 貴銃士に詳しいということで、 急きょ本校へおいでいただくことになった。 |
ラッセル | 恭遠氏にはこれから、 新設する「貴銃士特別クラス」を担当していただく。 つまり──今日から彼が、君たちの教官だ。 |
マークス | 貴銃士特別クラス? マスターと授業が別になるってことかよ! んなのあり得ねぇ! |
ラッセル | ……言っておくが、こうなったのは 昨日の君たちの行いを、学校側が重く見たからだよ。 |
ラッセル | あわや殴り合いの喧嘩になる、 机の上で熟睡する、 しまいには有毒ガスを発生させる……! |
ラッセル | これでは、とてもじゃないが、 通常クラスではやっていけない。 |
マークス | くっ……! おい、ジョージ! あんたが余計なことするから……! |
ジョージ | ええっ、オレ!? マークスだって喧嘩してただろ!? |
十手 | ふ、2人とも落ち着こう……! |
ライク・ツー | ……そうやってすぐ騒ぎを起こすから、 別クラスにされたんだろ。 |
マークス | …………チッ。 |
恭遠 | はは……この賑やかさ、なんだか懐かしいよ。 また貴銃士と過ごすことになるなんて、感慨深い。 |
ジョージ | よろしくな、キョードー! オレはジョージだ。 |
恭遠 | ジョージ……? そうか、君は……。 |
恭遠 | こちらこそ、よろしく頼む。 |
マークス | ……マークスだ。 |
恭遠 | ああ。君のことは聞いているよ。 マスターの相棒だそうだね。 |
マークス | おう! その通りだ! |
十手 | えー、俺の名は十手。 ご指南、どうぞよろしくお願い申し上げる! |
恭遠 | 丁寧にありがとう。 十手というと、日本の奇銃だな。 |
十手 | ……! よもやご存知だったとは! |
恭遠 | 私の母は日本人でね、 日本のことについて、少しは耳にしているんだ。 それで、君は──。 |
ライク・ツー | イギリスのアサルトライフル、ライク・ツーだ。 |
恭遠 | ライク・ツー……! |
ライク・ツー | ……おい。 世界帝のとこにいた銃と一緒にすんじゃねぇよ。 |
恭遠 | あ、ああ……。 そうだな、すまない……。 |
ライク・ツー | …………。 |
ラッセル | それでは、さっそく今日から、 恭遠氏の指導を受けてくれ。 |
ジョージ&十手 | おう! |
マークス&ライク・ツー | ……了解。 |
主人公 | 【……ふぅ】 【やっと1週間終わった……】 |
---|
貴銃士たちの士官学校生活も、
恭遠教官が来てくれたおかげで、少しずつ軌道に乗り始めている。
アウトレイジャーの襲撃やヴィヴィアンの死が、
まるで幻だったみたいな、穏やかな日常。
しかし──
主人公 | 【明日は、ヴィヴィアンの葬儀か……】 |
---|
明日の予定──ヴィヴィアンの葬儀が、
あの悲劇が現実のものだったと思い知らせる……。
リントンロッジ夫人 | うう……ヴィヴィアン……。 |
---|---|
聖職者 | ──我らが姉妹、 ヴィヴィアン・リントンロッジの肉体は、 死を迎えました。 |
聖職者 | しかしその魂は神のみもとに召され、 天の御国で永遠の命を得るのです。 |
聖職者 | 皆で祈りましょう。 神よ、彼女の魂をみもとに迎え、 ここに集った皆の心に慰めをお与えください。 |
主人公 | 【…………】 【ヴィヴィアン……】 |
ラッセル | 大丈夫かい、〇〇君。 さぁ、ヴィヴィアン君に花を捧げよう。 |
──棺の上に捧げられた、たくさんの花。
そこへもう1輪、白い花を手向ける。
主人公 | 【(絶対に、真相を明らかにする)】 【(ライク・ツーのことは任せて)】 |
---|
決意を新たにしながら、彼女の安寧を願った。
ライク・ツー | …………。 |
---|---|
ライク・ツー | ヴィヴィアン・リントンロッジ……。 |
ライク・ツーの指先が、
新たに刻まれたばかりの彼女の名前をなぞる。
これは、士官学校に縁のある軍人が亡くなった際に
名前が刻まれる石碑──メモリアルウォール。
ヴィヴィアンへの疑いは払拭されていないが、
表向きは不幸な事故だったということになり、
ここに名前が刻まれることになった。
マークス | マスター、苦しいのか……? |
---|---|
主人公 | 【……どうして?】 |
マークス | なんとなく、そう感じた。 |
マークス | ……なぁ。 俺、マスターに聞きたかったことがあるんだ。 |
マークス | 俺がまだ、貴銃士じゃなくて銃だった時……。 マスターから今みたいな気持ちが、 なんとなく伝わってくることがあった。 |
マークス | 心臓のあたりがもやもやして……そうだ。 俺が絶対非道で、マスターを 傷つけてしまった時の気持ちみたいな……。 |
マークス | 悔しい……、いや、悲しい……? そういう、どうしようもない気持ち。 |
マークス | ああいう時、マスターは何を考えてたんだ? |
主人公 | 【……亡くなった両親のこと、かな】 |
マークス | なくなった……って、死んだ……のか。 |
主人公 | 【世界帝軍に殺されて……】 |
マークス | ……! |
──特別、珍しい話ではない。
世界帝府による圧政が敷かれていた当時、
こういった悲劇はありふれたものだった。
レジスタンス活動をしていた彼らは、
ある日突然やってきた世界帝軍によって射殺された。
……それを、幼かった〇〇も目撃した。
孤児になった〇〇が学校に通えたのも、
入学に際してUL96A1を贈ってくれたのも、
経済的な支援をしてくれるある人物のおかげだった。
マークス | マスター……。 俺は、マスターに大事にしてもらって、 マスターの相棒として扱ってもらえて、嬉しかった。 |
---|---|
マークス | ──本当に、嬉しかったんだ。 |
マークス | マスターが俺を大事にしてくれたみたいに、 俺もマスターのことが大事だ。 |
マークス | だから、俺は……マスターのことを、支えたい! 相棒として、マスターの貴銃士として、 俺にできることがあれば、なんだってする。 |
マークス | それを、忘れないでくれ。 |
主人公 | 【……ありがとう】 |
──数日後。
恭遠 | よーし、みんな。 針に糸は通せたか? |
---|---|
十手 | よし、できたぞ。 ……俺は、裁縫はできるのかもしれないな……! |
ジョージ | Noooo! こんなの無理だろ! |
ライク・ツー | 俺はこんなことやりたくねーんだけど? ……破れた服を繕って着るなんて、絶対やだし。 |
マークス | ……標的が小さすぎる。無謀だ。 |
恭遠 | も、もう少し頑張ってみよう。 いざとなったら糸通しというものもある。 |
ライク・ツー | はぁ……。 |
ラッセル | 授業中失礼する! |
ラッセル | 君たち! アウトレイジャーの目撃情報が入った。 これから呼ぶ者は出撃準備を整えて正門に集合! |
マークス | 了解した。 裁縫なんかより、戦闘の方がよっぽどラクだな。 |
ライク・ツー | それは同感。 |
十手 | 俺は呼ばれないだろうから…… 裁縫の続きでもしておくか。 |
ジョージ | よっしゃー! 気合入れていこうぜ! |
ゾーイ | ──さぁ、お花を交換しましょうね。 |
---|---|
ゾーイ | ご覧あそばせ。見事な赤い薔薇ですよ! |
??? | …………。 |
ゾーイ | ん~! 香りも素晴らしいですわ。 さすがは最高級の薔薇ですわねっ! |
ゾーイ | 花瓶ともばっちりマッチしておりますわ♪ |
??? | ……ぅ……ぁ。 |
??? | ……ラウン、ベス……。 |
ゾーイ | …………。 女王陛下……。 |
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