【高貴の目覚め】シャスポー

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解説

カード解説

士官学校に来て間もない頃のこと──。
絶対高貴に目覚められずにいたシャスポーは自分の過去と向き合うための旅に出る。
弔いの地で得た答えを胸に、フランスを守る貴銃士は、輝きを手にするのだった。

心銃解説:守るべきもののために

僕が絶対高貴になれないのは過去に原因があると思っていた。
僕の高貴への道筋は、あの夜に君が示していてくれたのにね。
光をくれた君に心からの感謝を。

カードストーリー

主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分

Ep1. Péché

シャスポー……恭遠教官、少しいいでしょうか。
恭遠ああ、シャスポーか。
どうしたんだ?
シャスポーその……個人的に、伺いたいことがあって。
あなたならきっと、よくご存知だと思うんです。
……絶対高貴について。
恭遠絶対高貴、か。俺は貴銃士ではないから、
あくまで『近くで見てきた者として』の話になるけど構わないか?
シャスポーええ、大丈夫です。
シャスポー僕はまだ……絶対高貴に至れていません。
士官学校へ来て、時折目にしているのに……
どうすればあの力を使えるのか、よくわからないんです。
シャスポー絶対高貴とは、本質的にはどういうものなんでしょうか。
どうすれば目覚められるのか……
恭遠教官は、どう思われますか?
恭遠うーん、そうだなぁ……。
絶対高貴や絶対非道にはまだまだ謎が多いから、
こういう現象だ!と断言はできないね。
恭遠ただ、絶対高貴に目覚めた貴銃士たちの話ならできる。
彼らに共通していたのは……確たる信念があったことだろうか。
恭遠絶対的でブレない、その貴銃士にとって大事で譲れないもの。
それがあると、比較的早く目覚めていたように思うよ。
恭遠逆に、周囲のことを気にしてしまう性格だったり、
信念を定める途中にあったりした貴銃士たちは、
目覚めるまでに苦労していたかな。
シャスポー……レジスタンスにいた別の僕は、どちらでしたか?
恭遠レジスタンスにいたシャスポーは……苦労していたね。
高い性能への自負と、ドライゼへの対抗心、
いち早く絶対高貴に目覚められない焦り……。
恭遠いろいろな要因が重なった末に……。
………………。
恭遠でも、最終的には努力が実って、
美しい大輪の花を咲かせた。
恭遠君ならきっと大丈夫だ、シャスポー。
焦らずにゆっくり、自分の絶対高貴を見つけていけばいい。
シャスポー……はい。

その夜──……シャスポーは自室で、
自分の本体である銃を手にし、ぎゅっと握りしめる。

シャスポー──絶対高貴。
シャスポー(……駄目か。それはそうだよな。
口にしただけでなれるような簡単なものではないだろうし)
シャスポーはぁ……。

シャスポーはベッドに座り、傍らに銃を置く。
その銃床に点々と散っているのは、黒い血の染みだ。

シャスポーPéché……。
シャスポー(この血も、罪も……消えることはない)

シャスポーもう誰も、何も、信じない!
シャスポー……解放ス、ル……!
シャスポー……ウゥ、僕ガ……全テ……ッ!

シャスポー…………。

──シャスポーが士官学校に来て数週間。
アウトレイジャーの出没もなく、平穏な日々が続いていたが……。

グラースふっ……お前、こんなこと紙に書いてないで、
直接言えばいいじゃないか。
シャスポー……っ、おい、返せ!
人のものを覗き見るなんて悪趣味にも程がある……!
主人公【一体何事?】
【どうして喧嘩に……?】
タバティエール〇〇ちゃん……あいつらがすまねぇな。
ちょっとした手違いがあって……。
マークス俺がシャスポーの手帳を拾ったんだ。
だが、返そうとして、間違えてグラースに渡してしまった。
グラースおっ、ちょいどいいところに来たな。
見てみろよ、〇〇。
グラースこいつ、手帳にお前への感謝の気持ちを綴ってるんだぜ。
どうせならもっと情熱的な愛の詩でも書けば──……
主人公【人のものを勝手に見るのは駄目だ】
【シャスポーに返して】
グラースはぁ……なんだよ、真面目なやつ。
わかったわかった、返せばいいんだろ。
シャスポー最初からそうしろ! まったく……!
シャスポーだいたい、マークス! 君も君だよ。
僕とこいつを間違えるなんてあんまりだろう。
マークス……だが、あんたらはよく似てて、後ろ姿だとよくわからない。
それに、フランスでは入れ替わっていたから余計にややこしい。
シャスポーあれは……やむにやまれぬ事情があったからじゃないか!
今はもう忘れてくれ。僕がこんな野蛮で
デリカシーのないやつと混同されるなんて耐え難い。
グラースああ……!?
グラースフン、よく言うぜ。
その野蛮でデリカシーのないお優しい弟が、
お前の暴走を止めてやったのになぁ!?
シャスポー……ッ!
タバティエールおいおい、グラース、シャスポー。
そのあたりでやめとけって。
シャスポー&グラース…………。
ラッセル……皆、大変だ!
近隣の街で、アウトレイジャー出没の一報が入った。
緊急出動だ!

Ep2. 拭えない血

──アウトレイジャーの討伐がなんとか終わったあと、
士官学校に戻ったシャスポーは、
〇〇の治療を受けていた。

主人公【大丈夫……?】
【痛いところはない?】
シャスポーうん……ありがとう。
……ごめんね、〇〇……。
シャスポー…………。

アウトレイジャー殺ス……!
グラースくそ……数が多いな。
絶対非道で一気に片付けるぞ!
マークスおい、その力を使いすぎるな。
マスターの負担が大きいんだぞ!
ジョージオレもいるから大丈夫だって、マークス!
絶対高貴でも攻撃するし、傷もバッチリ治すぜ☆
主人公【ありがとう、2人とも!】
【早く終わらせよう!】
ジョージよーし、いっくぜー!
絶対高貴!
マークス&グラース絶対非道!
アウトレイジャーたちグァァァ……!
アウトレイジャーたちウゥゥ……。
シャスポーまだあんなに……! 僕も戦闘に加わる!
タバティエール待て、シャスポー。
俺たちは周囲に被害が広がらないようにサポートだ。
絶対高貴ナシじゃ、連中を倒せないからな。
シャスポー……っ、僕は……二軍のお前とは違う……!
戦いの中でなら、絶対高貴に目覚められるはず……。

シャスポーは、近くにいたアウトレイジャーに向かっていく。
銃を手に、集中力を高めるが……。

シャスポー(絶対高貴! 来い、絶対高貴だ……!)
グラースおい、シャスポー! お前は下がってろ!
アウトレイジャー殺ス……。
シャスポー(──僕はなぜ、あの時アウトレイジャーになったんだろう)
シャスポー(それは……怒りと絶望に呑まれてしまったからだ。
そして……僕がシャスポー銃の名から逃れていたせいだ)
シャスポー(グラースを演じることで、自分の罪から目を背けていた。
だから──堕ちてしまったんだ。
逃げるなんて、高貴な行いではないから)
シャスポー(だけど、今は違う。
僕は『シャスポー』として、自分の罪と向き合って──)
シャスポー(……。
僕は本当に、向き合っている……か?)
アウトレイジャーウ、ウゥゥ……。

シャスポーは、手にしている銃を見る。

シャスポー……!?
シャスポー赤い……手も、銃も、赤く染まって……
これは……血……?
アウトレイジャー死、ヲ……!
シャスポー……ッ!

シャスポー(結局、僕は絶対高貴になれなかった……。
〇〇に治療でたくさん力を使わせて、
ろくに役に立てなくて……最低だ)

──数日後。

マークスおい、緊急任務だ。
何人か行けるやつはいるか?
グラース……僕が行ってやるよ。
シャスポー…………。

 

Ep3. マスターへの手紙

シャスポー〇〇、突然ごめんね。
主人公【大丈夫だよ】
【何か大切な話?】
シャスポー……改めて、君に伝えたい事があって来たんだ。
シャスポー僕はフランスにいた頃、
カトリーヌを救えず、アウトレイジャーになった。
シャスポーそんな僕を見捨てずに召銃してくれて、本当にありがとう。
シャスポー君の期待に応えられないまま、
こんなことを聞くのはすごく心苦しいんだけど……。
シャスポーその……僕を銃に戻すことって、できるのかな……?
主人公【どういうこと……?】
【戻すって、どうしてそんな……!】
シャスポー……〇〇、どうか誤解しないでほしい。
優しい君は自分を責めてしまうかもしれないけど、
君は何も悪くないよ。これは僕の問題なんだ。
シャスポー僕は……絶対高貴になれない。
僕の内面に問題があるからだ。
シャスポー絶対高貴になれない僕は、
アウトレイジャーとの戦闘ではまるで役に立てない。
シャスポーそして、このまま足を引っ張り続けることを、
誰よりも僕自身が……僕のプライドが許さないんだ。
シャスポー役に立てないまま、君の貴銃士を名乗って、
ここで安穩と暮らすなんて……僕には耐えられないよ。
主人公【気持ちを打ち明けてくれてありがとう】
→シャスポー「そんな……君にお礼を言われるようなことなんて、
何もないんだ。
本当に……こんな僕で、ごめんね。」

【気づいてあげられなくてごめん】

→シャスポー「〇〇……。
ううん、君は悪くないんだよ。本当に。
すべては僕の至らなさのせいだ。」
シャスポーそれで、銃に戻せるか、なんだけど……。
主人公【でも、銃に戻すことはできない】
【急いで役に立とうとしなくていいんだよ】
主人公【焦らずにできることから始めよう】
シャスポー……〇〇……。
ありがとう……。

──翌日。

タバティエール〇〇ちゃん、大変だ……!
シャスポーがいなくなった!
主人公【えっ……!?】
【どういうこと!?】
タバティエール先に食堂か教室に行ってるのかと思ったが、どこにもいない。
寮の部屋を改めてよく見てみたら、机の上にこれがあったんだ。

タバティエールが差し出したのは、
『〇〇へ』と書かれている封筒だった。

『親愛なる〇〇へ。
昨日は僕の話を聞いてくれてありがとう。
そして、心配をかけてばかりでごめんね』

『君がかけてくれた言葉は、どれも本当に嬉しかったよ。
でも、いつまでも君に甘えていちゃだめだと思ったんだ』

『君ならきっと、どんな僕でも許してくれるんだろうね。
だけど、僕は本当は許されちゃいけないんだ』

『それなのに僕はフランスにいた頃、楽な方に逃げた。
シャスポー銃の名と歴史から逃げて、
罪から目を背けていたんだ』

『そんな卑劣で罪深い行いを精算しないままでは、
僕は胸を張って君のそばにはいられない。
このままじゃ前に進めないし、絶対高貴にもなれないと思う』

『君は、できることから始めようって言ってくれたね。
今の僕にできることは何か、よくよく考えてみたんだ』

『いきなり絶対高貴になろうとするんじゃなくて、
僕の心につかえていることを1つ1つ解消していく……
まずは、そこから始めることにするよ』

『そのためにしばらく、士官学校を離れることにします。
いつか必ず帰るから、どうか待っていてください』

タバティエールよかった……自棄を起こしたわけではなさそうだな。
けど、『血の一週間』のことは、
何もあいつが悪いわけじゃないのに……。
タバティエールそれでも、あいつの心に、
深く強く染み付いちまってるんだな……。
主人公【血の一週間……】
【フランスでも少し話していたっけ】
タバティエールああ……あいつの銃床にある血痕は、
『血の一週間』でついたものらしい。
タバティエールフランス人同士が戦い、大勢のパリ市民が散った……
あの忌まわしい事件のな。
タバティエールシャスポーはあの事件に自分が使われて、
守るべきフランス人の命を多く奪う結果になったことを、
ひどく気にしていた。
タバティエールあいつ自身がやりたくてやったことじゃあないのに……。
不器用で真っ直ぐで、責任感が強いやつなんだよ。
まったく……。
主人公【心配ではあるけど……】
【必ず帰ると書いてあるから……】
主人公【信じて待つことにしよう】
タバティエール〇〇ちゃん……。
タバティエール……そうだな。
あいつも、1人でゆっくり考える時間が必要なんだろう。
タバティエール世話の焼ける奴だけど……
よろしく頼むよ、〇〇ちゃん。

Ep4. シャスポーの行方

男性……おや、あなたは……?
シャスポー突然すみません。
僕は……貴銃士のシャスポーといいます。
男性ええ、お姿は遠くから見たことがありますが……。
貴銃士様がお1人で、なぜここへ……?
シャスポー……急なお願いで申し訳ないけれど、
どうかここで、あなたの仕事を手伝わせていただきたいんです。
男性え、ええ……? それは構いませんよ。
でも……いいんですか?
シャスポーはい、僕自身が、どうしてもやりたいんです。
僕は……ここでやるべきことがあるので。
シャスポーそれと……騒ぎにはしたくありませんから、
僕のことは内密にしていただけませんか?
男性それはもちろん。
ここは静かな眠りの場所ですからね。
さ、どうぞ中へお入りください。

──シャスポーが手紙を残し消息を絶ってから、
1か月が経過した。

グラースシャスポーのやつ、のんびりバカンスとは優雅なもんだな。
ま、僕は口うるさいやつがいなくて快適だけど。
グラースタバティエールも暇ができてよかったじゃねぇか。
……辛気臭い顔してんなよ。
タバティエール……辛気臭い顔、してたかねぇ。
グラース自覚なしかよ。
暇で余計なこと考えるんなら、僕の従者に任命してやるぜ。
タバティエール悪いな。今はそういう気分じゃ──……
グラースチッ、『今は』だと?
今どころかずっとじゃねぇか、鬱陶しい!
グラースあいつは戻るって言ってんだ。
1人で羽根を伸ばしてるんだろうし、心配するだけ無駄だっての。
主人公【そうかもしれないけど……】
【便りがないから心配で】
グラースあー、もう、揃いも揃って!
グラースタバティエールも〇〇も、
そんなにあいつが心配なら探しに行けよ!
主人公【探したけど見つからなかった】
【どこに行ったか全然わからないんだ】
タバティエールああ……イギリスにはいないのかもしれないな。
フランスのどこかなんだろうが……フランスも広い。
身を潜めてるなら、そう簡単には見つからないだろうな。
グラースなんだ、もう探してたのか。
主人公【思い詰めていないか心配だ】
→タバティエール「そう……俺もそれが心配なんだ。
あいつは1人で考え込むと、どんどん暗い方に行っちまいそうで。」

【タバティエール、一緒に探しに行く?】

→タバティエール「〇〇ちゃん……!
そうだな、一度会って無事を確かめたい。」
ラッセルああ、〇〇君! ここにいたのか。
レザール家のテオドール氏から手紙が届いている。
何かの要請なら日程を調整するから、確認してくれないか?

〇〇は急いで手紙を確認する。
そこには、シャスポーはどうやら
ペール=ラシェーズ墓地にいるらしいと書いてあった。

タバティエールあそこか……!
俺としたことが、なんで今まで思いつかなかったのか……。
ラッセルペール=ラシェーズ……
世界で最も有名な墓地の1つだと言われているな。
タバティエールああ。フランスの偉人の墓がたくさんあるし、
戦争の記念碑もある。
タバティエールそして……あそこは、血の一週間の終盤が繰り広げられた地。
パリ・コミューン、最後の地だ。

Ep5. 悲劇と再生

パリのペール=ラシェーズ墓地に向かった
〇〇とタバティエールは、
ある壁の前で佇むシャスポーを見つけて駆け寄った。

シャスポー…………!
シャスポーどうして、君たちがここに……?
タバティエール実は、テオドールから連絡があってな。
主人公【どうしても会いたくて来てしまった】
シャスポー……〇〇……!
ごめんね、絶対高貴に関してはなんの進展もないし、
書くことがまとまらなくて手紙も出せなかった……。
シャスポーそのせいで余計に心配させてしまったかな……。
はぁ……本当に、僕って……。
シャスポー…………。
……〇〇は、この壁を知ってる?
『連盟兵の壁』と呼ばれているところなんだ。
シャスポー1871年5月28日……
ここで、パリ・コミューンの連盟兵147人が銃殺された。
シャスポー使われた銃は──僕、シャスポー銃だ。
タバティエール……シャスポー……。
シャスポーパリで起きた大きな悲劇を悼む人々が、
100年以上経った今もたくさんいて、
ここを訪れて、美しい花々を手向けるんだ。
シャスポー今日は、花を手向けに来た老夫婦と、
少しだけ話をしたんだ。

老紳士あなたは……もしや、貴銃士シャスポー様では?
今はイギリスの士官学校にいらっしゃると思っていましたが、
ここで一体何を……?
シャスポー僕は……自分が犯した罪と向き合いたくて、
ここにやってきました。
老紳士なんという高貴なお心をお持ちで……!
さすがは貴銃士様だ。
シャスポー……そんなことはありません。
シャスポー僕は長い間、自分の罪から逃げていたんです。
だから……僕は今も、絶対高貴になれない。
その資格がないんです。
老紳士絶対高貴……。
それがあなたにとってどれほど大切なものなのか、
知る由もないですが……。
老紳士あなたがフランスを思う気持ちは本物だ。
私たちにはそれだけで十分ですよ。
シャスポーえっ……?
老婦人シャスポーさん。
歴史の重みを、あなただけが背負う必要なんてないわ。
老婦人銃口や砲口を天に向ければ、礼砲や弔銃になる。
狩り人が生き物を狩れば、命をつなぐ糧たる食料を得る。
人が人に向ければ……悲劇を生む。
老婦人銃口がどこを向くかは、銃でなく人が決めるものよ。
罪はあなたではなく、人にこそある……私はそう思うわ。
老婦人だから人は、悲劇の場所をこうして残し、
後世まで語り継いで、忘れないようにするのではないかしら。
同じ悲劇を繰り返さないための戒めとして……。
老紳士ええ。あなたの心がけは本当に立派なものです。
しかし……我々にはどうも、
贖罪があなたのすべきことだと思えないのですよ。
シャスポー…………!
シャスポーそれを聞いて、〇〇の言葉を思い出したんだ。
シャスポー君は、僕がアウトレイジャー化した時に
『シャスポーは、フランスを守る銃だ!』って言ってくれたよね。
シャスポーあの言葉を思い出して、ハッとしたよ。
僕はもう、答えをもらっていたんだって。
シャスポー罪がないと言われても、僕はきっと贖罪をやめきれない。
でも、それだけに囚われいちゃいけないよね。
僕がこうして貴銃士として目覚めた理由は別にあるんだから。
シャスポー〇〇は……僕の存在を望んでくれた。
フランスを守る貴銃士として……。
シャスポー随分遠回りをしてしまったけれど……僕は強くなりたい。
そう思えるようになったんだ。
たとえ、絶対高貴になれないとしても……。
主人公【シャスポーなら強くなれる】
【一緒に強くなろう】

かすかに震えるシャスポーの手を、
〇〇はそっと握った。

シャスポーそれと……タバティエール、すまない。
お前の姿勢は正しかった。
タバティエールシャスポー?
シャスポー絶対高貴になって戦うことだけが、貴銃士の在り方じゃない。
その時その場でできる限りを尽くし、人々を守る。
それができるお前を……僕は、尊敬する。
タバティエール……! シャスポー……。
シャスポーできもしないことを高望みして、
勝手に落ち込んだって仕方がない。
僕は今持てる最大限の力で、〇〇や皆を助けるよ。
主人公【頼もしいよ】
【頼りにしてるよ、シャスポー】

──パァン!

タバティエール今のは……銃声!?
連合軍フランス支部兵士……〇〇候補生、タバティエール殿!
アウトレイジャーです! 至急応援を願います!
シャスポー大変だ……! 僕も行くよ。
急ごう、〇〇!

Ep6. 永遠の忠誠を

兵士の案内で向かった先には、
複数のアウトレイジャーと対峙する兵士たちと、
逃げ惑う人々の姿があった。

アウトレイジャー殺ス……殲滅、スル……!
市民女性きゃああああ!!
タバティエール皆、落ち着いて避難を!
兵士が誘導してくれてるから、指示に従って、慌てず確実にな。
大丈夫、俺たち貴銃士もついてるぜ。
市民男性貴銃士様……!?
シャスポーええ。僕たちが来たからには、もう大丈夫ですよ!

タバティエールとシャスポーの登場によって、
人々の酷いパニック状態は落ち着き、避難が進む。
──その時だった。

少女きゃっ!
アウトレイジャー殺……ス……!

足がもつれて転んだ少女にアウトレイジャーが気づき、
ゆっくりと銃口を向ける。

シャスポー……ッ!
シャスポー(肉壁になればなんとかあの子を救えるか……?
でも、僕が倒れたあとにあの子もやられてしまう。
共倒れになって守れないなら意味がない……!)
シャスポー(貴銃士である僕がやられたら、パニックも酷くなる。
だけど、このままじゃあの子が……! どうすれば……!?)
主人公【あの子を助けて!】
シャスポー……マスター!

駆け出したシャスポーは、
少女を庇うように前に立つ。

シャスポー(僕にできることはなんだってやってやる!
絶対高貴が使えなくても、皆を守るためにできることを──
ただの銃弾でも、多少の足止めにはなるはず!)
シャスポー僕の前で、誰も傷つけさせたりしない……!
シャスポー……! この力は、まさか……!?
シャスポー絶対高貴……!
アウトレイジャー……グゥ……ッ!?

眩い光に戦いたように、アウトレイジャーの動きが止まる。

シャスポー考えなくてもわかる。
僕がすべきことは、ここにある……!
この心から……力が溢れ出てくるから。
シャスポー……心銃!
アウトレイジャーグァァ……!!
少女ママー!

心銃によってアウトレイジャーは消滅し、
シャスポーが救った少女は、母親にぎゅっと抱きしめられる。

少女の母親貴銃士様……!
本当に……ありがとうございました……っ!
シャスポーお礼なんて……その子が無事でよかったよ。

少し離れたところから見守っていた人々が、
シャスポーへ大きな拍手と歓声を送った。

タバティエール……やったな、シャスポー。
シャスポーああ……。なんとかなって、本当によかった。
連合軍フランス支部兵士このたびはアウトレイジャー討伐へのご協力、
誠にありがとうございました!
連合軍フランス支部兵士被害状況と周辺の警戒についてですが──……。
タバティエールああ、それなら──……。

タバティエールが今後の動きについて兵士と話している間、
〇〇は戦闘中に軽い怪我をした
シャスポーの治療を行う。

主人公【おめでとう】
【シャスポーが皆を救った】
シャスポーそんな……結果だけ見れば僕が今回の功労者みたいだけど、
僕も、救われた側だよ。
シャスポー絶対高貴に目覚められて……
僕も、救われた。
シャスポー〇〇……君のおかげだ。
主人公【自分の?】
シャスポーうん。迷っていた僕の背中を、君の声が押してくれた。
君がいたから、僕は勇敢に戦えた。
臆病な自分と決別できたんだ。
シャスポー〇〇が、また僕を救ってくれたね。
君は……僕の救世主みたいだ。
シャスポーねぇ……〇〇。
僕の誓いを受け取ってくれる?
主人公【それがシャスポーの願いなら】
【謹んで受け取るよ】
シャスポーありがとう。
……〇〇……親愛なる僕のマスター。

シャスポーは膝をついて、
うやうやしく〇〇の手を取る。

シャスポーあなたに、永遠の忠誠を。

薔薇の傷が刻まれた手の甲に、
シャスポーの唇がそっと触れたのだった。

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