『兄貴』の称号を賭けて、いざ尋常に『兄貴力勝負』!
譲れない思いを胸に挑む熱い戦いは、新たな友情をも生む──。
勝負に勝ったことよりも嬉しいのは、少し不本意でも呼ばれた『兄貴』の一言。
俺のかつての選択が、あいつを苦しめたことはわかってるんだ。
過去はどうにもできないが……これからの行動で、少しでも挽回して、変えていけたらいい。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
ライク・ツー | (いい天気だな。 トレーニング終わったら街に出て買い物でもするか) |
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中庭を歩いていたライク・ツーは、
向こうから上半身裸のペンシルヴァニアが来ることに気づいて
足を止めた。
ライク・ツー | おい! |
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ペンシルヴァニア | ん? どうした、ライク・ツー。 |
ライク・ツー | どうしたって……お前の方がどうしたんだよ。 せめてシャツ1枚くらい着ろ! ビーチでもねぇのに上半身裸でウロウロすんな! |
ペンシルヴァニア | 俺も、うろつくつもりはなかったんだが……。 俺の服を見ていないか? |
ライク・ツー | はぁ? 見てねぇけど、なんでだよ。 |
ペンシルヴァニア | そうか……。 今日は暑いから、上を脱いで枝にかけて、 木陰で昼寝をしていたんだ。 |
ペンシルヴァニア | それで……起きたら服がなくなっていた。 風向き的にこっちかと思って探していたんだ。 |
ライク・ツー | そういうことか……ったく。 お前1人でうろついてたら不審者だし、 一緒に探してやるよ。 |
ペンシルヴァニア | 本当か? ……ありがとう、助かる。 |
ライク・ツー | つーかさ……。 |
ライク・ツー | お前、結構ガッチリしてんだな。 トレーニングルームでは見かけねぇけど、 どんなトレーニングしてるんだ? |
ペンシルヴァニア | ん……? 特に鍛えてはいない。 ただ……森にはよく行っているから、 それがトレーニングになっているのかもしれないな。 |
ライク・ツー | 嘘だろ!? 森歩きしてるだけでそんな身体ができるわけねぇ……! 森で何してんだよ!? |
ペンシルヴァニア | 気の赴くままに過ごしているだけで、 特別なことは何もしていないと思うが……。 気になるなら、あとで一緒に行ってみるか? |
ライク・ツー | おう、行く! 連れて行ってくれ。 |
風で飛ばされたのち、生徒が職員室へ届けていた
ペンシルヴァニアの服を回収したあと、
2人は揃って森へと向かった。
ペンシルヴァニア | あそこに木の実があるな……。 少し待っていてくれ、採ってくる。 |
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ペンシルヴァニア | よっ、と……。 |
ライク・ツー | 速っ……! |
ライク・ツー | (ロープのぼりみてぇにスルスル行くな……。 バランス感覚がいいっつーか、全身の連動がすげぇ上手いのか。 握力、腕力、脚力も相当ありそうだな) |
ライク・ツー | (ここに来るまでの山道でも足取りが軽くて、 平地歩いてるみてぇだったし……体幹もかなり強いと見た) |
ライク・ツー | (確かに、本人には特別なことしてるつもりはなさそうだけど。 トレーニングルームのきっちりした道具だけじゃなくて、 その場のランダムアイテムで臨機応変トレってのもありだな) |
ペンシルヴァニアの動きを感心しつつ見ていたライク・ツー。
そこへ、大きな羽虫が飛んでくる。
ライク・ツー | うわっ! 虫! |
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ペンシルヴァニア | ……! ライク・ツー、そっちは駄目だ! |
ライク・ツー | え!? おわっ……! |
ペンシルヴァニアの制止は間に合わず、
草むらで見えづらくなっていた斜面で足を滑らせ、
ライク・ツーは滑り落ちてしまった。
ライク・ツー | ……ってて……。 |
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ペンシルヴァニア | 大丈夫か!? |
ライク・ツー | ああ、受け身は取ったから大したことねぇ。 |
立ち上がるライク・ツーだが、
立つ際に眉間に少し皺が寄る。
ペンシルヴァニア | ……足を痛めたのか? 見せてくれ。 |
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ライク・ツー | だから大したことねぇって。 ちょっと捻っただけで……。 |
ペンシルヴァニア | いや……もう、少し赤くなっている。 熱も持っているし、これから腫れてきそうだ。 |
ペンシルヴァニア | 急いで寮に戻ろう。 ……ほら。 |
背中を向けてしゃがむペンシルヴァニア。
ライク・ツーは一度は平気だと断ったものの、
ズキズキ痛む足と譲らないペンシルヴァニアを前に折れた。
ライク・ツー | (……前にお兄ちゃんが、 こうやって背負ってくれたことがあったっけ……) |
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ラブ・ワン | ……ごめん、ライたん。 |
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ライク・ツー | ……何が。 |
ラブ・ワン | おいらがジャムったせいで、 ライたんに怪我させちゃったからさ……。 |
ライク・ツー | ……別に。 僕も……ちょっと、不注意だったし。 |
ライク・ツー | (あれくらい僕なら無傷で対処できたはずなのに…… こんな怪我して、おんぶで運ばれて…… お兄ちゃんに、心配かけて……情けな) |
ライク・ツー | (はぁ……帰ったらもっと鍛えなきゃ) |
ライク・ツー | (ハハ……ペンシルヴァニアみたいに、 森でも危なげなく動けるように鍛えねぇとな) |
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ペンシルヴァニア | 本当に医務室でいいのか? |
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ライク・ツー | ああ。これくらいで〇〇の治療はいらない。 |
ペンシルヴァニア | そうか……だが、ちゃんと湿布を貼ってもらって、 冷やしたりするんだぞ。 |
ライク・ツー | わかってる。 ……その、ありがとな。 |
ライク・ツー | また今度……一緒に森、行ってもいいか? |
ペンシルヴァニア | ……! |
ペンシルヴァニア | ああ、もちろんだ。 |
──オープンデー当日。
ケンタッキーは裁縫部の自分のシフトを終え、
〇〇のクラスを訪れた。
ケンタッキー | ここか、マスターの『軍隊喫茶』……! |
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ペンシルヴァニア | ……ここだな、〇〇のクラスは。 |
ケンタッキー&ペンシルヴァニア | ……! |
ケンタッキー | ペンシルヴァニア……! |
ペンシルヴァニア | ……ケンタッキー、偶然だな。 |
ケンタッキー | お前、美術部はどうした! |
ペンシルヴァニア | 俺は当番を交代して休憩中だ。 ケンタッキーこそ、出ていていいのか? |
ケンタッキー | 俺はお前みたいな無責任野郎じゃねぇからな! ほっぽり出して抜けてきたわけじゃねぇよ。 |
マークス | ……おい、お前ら。 マスターの店の前で騒ぐな! 迷惑をかけるなら、お前ら2人とも退場だ。 |
主人公 | 【来てくれてありがとう】 【入るならどうぞ!】 |
ケンタッキー | はいっす! んじゃ、失礼しまーっす! |
ケンタッキー | ……おい、ペンシルヴァニア。 店の中にいる間は休戦だ。いいな? |
ペンシルヴァニア | ああ……元々、勝負と別の場所で争う気はない。 〇〇の喫茶店を満喫しよう。 |
主人公 | 【上官3名ご来店!】 【全員敬礼!】 |
スタッフの生徒たち | イエッサー! |
3人 | ……っ!? |
生徒1 | サー、お席はこちらです! 自分がご案内いたしますッ! |
ケンタッキー | お、おう……。サンキュ……。 |
マークス | 街のカフェとは随分雰囲気が違うな。 動きが常に、訓練中の奴らみたいだ。 |
ペンシルヴァニア | ふむ……メニューも変わっているな。 飲み物の横に『小銃』『大砲』『戦車』と書いてあるが…… これはどういうことなんだ……? |
ケンタッキー | 見せてみろ。 うーん……値段が上がっていってるから、サイズか? 小銃がS、大砲がL、戦車がXLみたいな。 |
マークス | なるほど……そうみたいだ。 『士官候補生のリスペクトたっぷりチョコバー』 なんてのもあるぞ。 |
マークス | カレーがないのは残念だが……。 他は……『エリート士官に捧ぐ紅茶』も気になる。 俺はこの紅茶とサンドイッチにするぞ。 |
ケンタッキー | マスター、注文いいっすか……!? 俺は、カフェラテの戦車級で! |
ペンシルヴァニア | 俺は……アメリカンコーヒーの大砲にしよう。 それと、チョコバーも。 |
主人公 | 【イエッサー!】 【少々お待ちを!】 |
マークス | そんな……マスター、俺は相棒だ! 敬礼なんてしないでくれ! |
ケンタッキー | ッス、マジ恐れ多いんで……! |
注文からしばらく……
トレーを持った生徒たちがきっちり並び、
行進するように一糸乱れぬ動きでやってくる。
生徒1 | 全隊~、止まれ! 着盆! |
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スタッフの生徒たち | ハッ! |
主人公 | 【お待たせしました!】 【どうぞ召し上がれ!】 |
ケンタッキー | それじゃ、さっそく……! んん~、疲れた身体に染みるぅ……! |
ペンシルヴァニア | おお……このチョコバー、ナッツも入っているのか。 食感が良くていいな。 |
マークス | マスターがミルクと砂糖を入れてくれた紅茶……! 最高だ……! |
3人は、軍隊喫茶を大いに楽しんだのだった。
士官学校のオープンデーが無事終わってから数日──。
談話室の前を通りかかった〇〇は、
中から賑やかな声が聞こえることが気になり中へ入ってみた。
主人公 | 【楽しそうだね】 【みんな、どうしたの?】 |
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ペンシルヴァニア | ああ……ちょうど〇〇の話をしていたところだ。 |
ペンシルヴァニア | 〇〇が貴銃士を兄弟とするなら、 誰を選ぶだろうか……と。 |
マークス | マスター、教えてくれ! 俺を選んでくれるよな……!? |
ケンタッキー | マスターと兄弟……恐れ多いっすけど、 でも、兄ちゃんって呼ばれたいジレンマ……! |
エルメ | 俺は兄銃だし、ドイツで特別司令官補佐の役職もある。 頼りがいとしては十分だと思うんだけど…… 〇〇、どうかな? |
ジーグブルート | おい〇〇、 こいつは服従しねぇと鞭でぶん殴ってくる野郎だぞ。 |
エルメ | ちょっと、ジグ。 〇〇を叩く理由なんてないじゃないか。 変なことを言わないでくれるかな。 |
ジーグブルート | チッ。 |
シャスポー | ねぇ、〇〇…… 僕のことも考えてくれたら嬉しいな。 |
シャスポー | 立ち居振る舞いはきちんとしている方だし、 僕なら一緒に公の場に出ても恥ずかしくないでしょう? 兄の栄誉を僕にくれてもいいって、思ってくれるかな。 |
グラース | お前より高性能な僕のほうが兄に向いてるだろ? おい、〇〇。兄は僕にしておけ。 |
シャスポー | なんだと? 君みたいな粗野なのが〇〇の兄を名乗るなんて、 僕は絶対に許さないぞ! |
タバティエール | おいおい、もしもの話でムキになるなって。 落ち着いてて動じない奴の方が兄向きだぜ? |
シャスポー&グラース | くっ……。 |
ジョージ | はーい! 〇〇! オレも兄ちゃんに立候補するぜ☆ |
ペンシルヴァニア | ……兄の方が人気みたいだな。 弟になりたいという奴はいないのか? |
カール | それなら僕は弟希望にしておこうかなー。 |
ライク・ツー | あんた、この中で1番ジジイだろ……。 |
カトラリー | えーっと……僕も、弟かなぁ……。 あんまり兄貴ってガラじゃないし。 |
エンフィールド | 僕も……普段は兄の立場にいますから、 弟として〇〇さんのお世話をする、 というのも新鮮でよさそうですね! |
マークス | 俺はマスターの相棒だから……。 兄か弟というより双子か……!? だが、双子にも兄と弟がいるし……難しいな……。 |
ライク・ツー | そういや、ペンシルヴァニアはどっちがいいんだ? やっぱり兄か? |
ペンシルヴァニア | 俺は……〇〇が好きな方でいいぞ。 |
主人公 | 【やっぱりお兄ちゃんかな】 →ペンシルヴァニア「そうか……。 〇〇が兄と呼んでくれるなら、 俺も全力で兄として振る舞おう。」 【弟かな】 →ペンシルヴァニア「弟か……。 〇〇はしっかりしているからな。 俺が弟というのもわかる気がする……。」 |
ケンタッキー | おい、何ちゃっかりマスターに選んでもらってんだよ! マスター! 俺もどっちか決めてもらいたいっす! |
マークス | おい待て、相棒の俺が次だ!! |
ペンシルヴァニア | はは……! 〇〇にはたくさんの兄弟ができそうだな。 |
主人公 | 【大家族みたいでいいね】 【賑やかで楽しいよ】 |
ペンシルヴァニア | ああ……本当だな。 |
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