ライク・ツー | …………。 遅ぇな。いつまで待たせる気だ? |
---|---|
ジョージ | 腹減ったぁ……。もう1時間くらい経ったか? |
ライク・ツー | やっぱり、歓迎されてるってわけじゃなさそうだな。 はぁ……面倒なことになりそうな予感がしやがる。 |
ジョージ | ライク・ツーは後ろ向きだな~。 お茶会の準備に時間がかかってるだけだって! ……たぶん。 |
ライク・ツー | お前は前向きすぎるだろ……。 |
ライク・ツー | ……つーか、シャルルヴィルって、 お前のこと妙に気に入ってないか? 何か心当たりでもあんのかよ。 |
ジョージ | ん? ……ああ、オレらって、 アメリカ独立戦争での戦友だからな! |
主人公 | 【シャルルヴィルはフランスの銃なのに?】 【フランスがアメリカを支援したんだっけ】 |
ジョージ | フランスはアメリカを支援してたから、 アメリカ軍側には、 シャルルヴィルがたくさん渡ったんだぜ。 |
ジョージ | シャルルもオレも、自由のために立ち上がった アメリカの人たちの相棒として戦ったんだ。 |
ジョージ | それに……シャルルは、 王室にいたブラウン・ベスと仲が良かったから。 |
ライク・ツー | は……? ブラウン・ベスなら、今も王室にいるだろ? |
ジョージ | ……あ、うん。そうそう。HAHAHA☆ |
使用人 | ……失礼いたします。 皆様、大変お待たせいたしました。 |
使用人 | 茶会の準備が整いましたので、 シャルルヴィル様のお部屋へご案内いたします。 |
ライク・ツー | はぁ、ようやくか。 |
ジョージ | 行こうぜ、〇〇! |
ジョージ | よっ、シャルルヴィル! 元気にしてたか? |
---|---|
シャルルヴィル | Bonjour、〇〇、ジョージ! ライク・ツーくんまで来てくれるとはびっくりだなぁ。 |
シャルルヴィル | また皆に会えて嬉しいよ! |
ライク・ツー | ……なんだ、普通に元気そうじゃねぇか。 |
ジョージ | なぁ、おまえ、大丈夫か? スパイみたいな方法で手紙寄越すからびっくりしたぞ! |
シャルルヴィル | あはは、驚いてくれた? ちょっとしたサプライズだよ! |
シャルルヴィル | この間のことでロジェ様の機嫌を損ねちゃったから、 なるべくこっそり呼びたくてね。 |
シャルルヴィル | でも、そのうちロジェ様の怒りも収まるだろうし、 全然心配いらないよ。 |
シャルルヴィル | さぁ、さっそくティータイムにしよう♪ とっておきのスイーツをたくさん用意してあるんだ! |
シャルルヴィル | ん~! やっぱりマカロン最高♪ ほら、〇〇も遠慮なんてしないで、 好きなものをいっぱい食べてね? |
---|---|
主人公 | 【ありがとう】 |
シャルルヴィル | そういえば、噂で聞いたよ? 士官学校は、どんどん貴銃士が増えてるんだってね。 |
ライク・ツー | ……まぁな。 毎日嫌になるくらい賑やかで騒がしい。 |
ジョージ | だな! シャスポーとグラースはほぼ毎日コントしてるし、 エンフィールドとスナイダーも、改造の話で賑やかだ! |
ライク・ツー | あれをコントって言うのも、 賑やかの一言で片付けるのも違う気がするけどな……・。 |
シャルルヴィル | あははっ。ほんとに楽しそうだね。 |
シャルルヴィル | ……ボクにもさ、スプリングフィールドっていう 弟分がいるんだ。 |
シャルルヴィル | ボクをモデルに作られた、 アメリカ初の国産マスケット銃でね。 |
シャルルヴィル | いつか君たちのところに スフィーが召銃される日が来るのかな。 そうしたら会いたいな~、なんて。 |
ライク・ツー | ……なぁ。お前、本当に茶会のためだけに、 わざわざこいつらを呼んだのか? |
シャルルヴィル | えっ……? |
ライク・ツー | レザール家を使ってまで手紙を届けさせたのは、 大事な用件があったからじゃないのかよ。 |
シャルルヴィル | ……っ、それは……。 |
シャルルヴィル | …………。 |
シャルルヴィル | 実は……その……。 君たちに伝えたいことっていうか、 謝りたいことがあってね。 |
シャルルヴィル | ……ボク、本当は、絶対高貴になれないんだ。 |
ライク・ツー | はぁっ!? |
主人公 | 【え……!?】 |
シャルルヴィル | いや、ほんと、騙しててごめんね。 絶対高貴の光で人々を癒やしてるってのも、 ぜーんぶウソ! |
シャルルヴィル | いつまで経ってもボクが絶対高貴に目覚めないから、 ロジェ様が痺れを切らしちゃってね。 |
シャルルヴィル | 光とか、微かに温かい風を吹かせたりとか…… そういう演出をするから、 絶対高貴になれるフリをしろって言われてたんだ。 |
ジョージ | …………。 |
シャルルヴィル | ……人って、不思議なものでね。 奇跡を目の当たりにした!って思い込みで、 本当にちょっと具合がよくなったりして。 |
ライク・ツー | はぁ……マジかよ。 んじゃあ、こいつの薔薇の傷を治さなかったのは……。 |
シャルルヴィル | ……そう。癒やしの順番待ちで、っていうのはウソ。 本当は治さなかったんじゃなくて、治せなかった。 |
シャルルヴィル | 力になれなくて、ごめんね。 |
シャルルヴィル | できることなら、助けたかった。 だけどボク、どう頑張っても絶対高貴になれなくて。 |
シャルルヴィル | それで……ずっと、みんなのことを騙してた。 本当に、ごめんなさい。 |
主人公 | 【謝らないでほしい】 【本当のことを言ってくれてありがとう】 |
シャルルヴィル | ……ありがとう、〇〇。 |
シャルルヴィル | いきなり変な話しちゃってごめんね! ほら、どんどん食べて。 |
ジョージ | んん! マジで美味いな、これ! |
シャルルヴィル | 気に入ってもらえたならよかった。 余った分はお土産に包むから、ぜひ持って帰ってね。 |
シャルルヴィル | ……今日は、来てくれてありがとう。 |
---|---|
主人公 | 【またね】 【元気でね】 |
シャルルヴィル | ……っ、うん。 ありがとう、〇〇。 |
ライク・ツー | 菓子……悪くなかった。 じゃあな。 |
ジョージ | じゃあな、シャルル! |
シャルルヴィル | うん……。 バイバイ、ライク・ツーくん。ジョージ。 |
シャルルヴィル | …………。 |
シャルルヴィル | ……さようなら、みんな。 |
シャルルヴィル | ……さようなら、ベスくん。 |
──ブラウン・ベスとの最悪な出会いのあと、
ボクたちは何度か、パーティーや晩餐会で
顔を合わせることがあった。
だけど相変わらず、お互いの印象は悪いまま。
打ち解けられる日が来るなんて、思っていなかった。
ロジェ | 私は陛下との階段に参加してくる。 お前は近くで大人しくしているように。 |
---|---|
シャルルヴィル | はい、ロジェ様。 |
シャルルヴィル | ……はぁ。気持ち悪い。 外の風にでも当たってこようかな……。 |
──パリ、ポリ……
シャルルヴィル | ……んん? 何、この音。 向こうから聞こえてくるような……。 |
---|---|
ブラウン・ベス | …………。 |
シャルルヴィル | (……ブラウン・ベス! が、なんで生の人参をポリポリ食べてるの!?) |
シャルルヴィル | な、何してるの……? |
ブラウン・ベス | 見ればわかるだろ。人参を食べてる。 |
シャルルヴィル | いや、なんで……? |
ブラウン・ベス | ちょっと腹が減ったから。 ……おまえも食うか? |
シャルルヴィル | ええっ!? いらないけど……。 |
ブラウン・ベス | そうか。 |
──パリ、ポリ……
シャルルヴィル | …………。 |
---|---|
ブラウン・ベス | …………。 |
シャルルヴィル | えっと……その……やっぱり、もらってもいい? |
ブラウン・ベス | おう。 |
──パリ、ポリ……
──パリ、ポリ……
シャルルヴィル | (無言が辛くて食べ始めたけど、 何この状況……!) |
---|---|
ブラウン・ベス | ……なぁ、シャルルヴィル。 |
シャルルヴィル | へっ、何? |
ブラウン・ベス | おまえ、絶対高貴になる時は、 どんなことを考えてるんだ? |
シャルルヴィル | えっ……と……。 |
シャルルヴィル | (そんなこと聞かれたって、 ボク、絶対高貴になれないし……) |
シャルルヴィル | (でも、ロジェ様から“怪しまれないようにしろ” ってキツく言われてるから……) |
シャルルヴィル | ……言葉にするのは、ちょっと難しいかなぁ? そう言う君こそ、、どんなことを考えてるの? |
ブラウン・ベス | ……よく、わからない。 |
シャルルヴィル | ええっ、君って絶対高貴になれるのに、 わからないなんてことある? |
ブラウン・ベス | ……っ、それは……! |
ブラウン・ベスの顔色が、サッと変わった。
それを見て、“もしかしたら”という思いがよぎる。
シャルルヴィル | ……ねぇ、まさかとは思うけどさ。 君も……絶対高貴、なれないの? |
---|---|
ブラウン・ベス | 君“も”って……それじゃあ、おまえもなのか? |
シャルルヴィル | えっ、ってことは、本当に!? |
ブラウン・ベス&シャルルヴィル | ……! |
ブラウン・ベス | はぁ……まさか俺たちどっちも、 本当は絶対高貴になれてないとはな。 |
シャルルヴィル | ねぇ、君はどうして、 絶対高貴になれるフリをしてるの? |
ブラウン・ベス | フリっていうか……俺の場合は、誤解だな。 |
ブラウン・ベス | 革命戦争の時の貴銃士の戦いをその目で見た奴なんて、 実際にはほとんどいないだろ? |
ブラウン・ベス | みんながみんな、噂の又聞きみたいな状況で 「貴銃士は絶対高貴という力で戦うらしい」って ぼんやりした話が広まってる状態だった。 |
ブラウン・ベス | それが……いつのまにか 「貴銃士とは、よくわからないが絶対高貴らしい」 っていう話に変わっていったみたいなんだ。 |
ブラウン・ベス | で、戴冠式の時、女王陛下のそばにいる俺の姿を見て 「確かに、絶対的な高貴さを放っている!」って 皆がささやきあって……。 |
ブラウン・ベス | いつの間にか、 「ブラウン・ベスは絶対高貴な貴銃士だ」って 言われるようになっちまった。 |
ブラウン・ベス | 王室側としても、良い方向の誤解だから、 特別否定する必要もないだろうってスタンスで……。 |
シャルルヴィル | そ、そうなんだ……。 |
ブラウン・ベス | おまえはなんで、 絶対高貴になれることになってんだ? |
シャルルヴィル | ボクのマスター……ロジェ様が、 イギリスのブラウン・ベスは絶対高貴に目覚めてるのに お前はなんでなれないんだーって言って……。 |
シャルルヴィル | みんなの期待をこれ以上裏切るわけにもいかなくて、 絶対高貴になれるフリをすることになっちゃったんだ。 |
シャルルヴィル | ……最初に君に会った時、 正直、すごく焦ってたし、憎たらしかった。 |
シャルルヴィル | ボクは絶対高貴になれないのに、どうして……って。 |
ブラウン・ベス | ……おいおい、そんなところまで一緒かよ。 |
ブラウン・ベス | 「フランスのシャルルヴィルは絶対高貴になれる」 って聞いて……俺も焦ってたし、ムカついてた。 なんでこんなヘラヘラした奴が……って。 |
シャルルヴィル | えっ! じゃあボクたち……。 |
ブラウン・ベス | 嘘の情報を信じて、勝手に誤解して、 お互いにピリピリしてたってわけだな。 |
シャルルヴィル | ……ふふっ! |
ブラウン・ベス | く……っ、あははは! |
ブラウン・ベス | バカみたいだな、俺たち! |
シャルルヴィル | あはは、本当に! |
シャルルヴィル | ……はー。 こんなに大笑いしたの、初めてだよ。 |
ブラウン・ベス | 俺もだ。 |
シャルルヴィル | ……あのさ。 今はボクたち2人とも、絶対高貴になれないけど。 いつかは、きっと── |
ブラウン・ベス | ああ。絶対高貴になろうぜ。 |
シャルルヴィル | ちょ、ボクのセリフ取らないでよ! |
ブラウン・ベス | ふん。おまえがさっさと言わないのが悪い。 |
シャルルヴィル | ベスくんって意地悪だよね……! |
ブラウン・ベス | はぁ? なんだその呼び方は、気持ち悪いな。 |
シャルルヴィル | いいじゃん! 可愛いし呼びやすいでしょ、ベスくん。 |
ブラウン・ベス | 俺は認めないからなっ! |
シャルルヴィル | あはは、じゃあ勝手に呼ばせてもらうから。 ……これからよろしくね。 |
ブラウン・ベス | ……ああ。こっちこそ。 |
──ベスくんは、
ボクの初めての友達で、同志だった。
同じ秘密を共有している仲間がいる。
そう思うだけで、ボクは気が楽になって、
頑張ることができたんだ。
シャルルヴィル | …………。 |
---|---|
シャルルヴィル | ……ベスくん。 ボク、もう疲れちゃったよ。 |
シャルルヴィル | やっぱりボクは絶対高貴になれないし、 君も……もう、いなくなっちゃった。 |
シャルルヴィル | だから……もういいよね。 |
シャルルヴィル | ボク……、楽になりたいんだ。 |
ジョージ | ……あーっ!!! |
---|---|
ライク・ツー | ……っ、うるせぇ! いきなりでかい声出すなよ。 |
主人公 | 【どうしたの?】 |
ジョージ | お土産のお菓子持ってくるの忘れちまった! オレ、ちょっと取りに行ってくる! |
──コンコン
ジョージ | おーい、シャルル! いるか? 悪い、お菓子忘れちまってさ! |
---|---|
シャルルヴィル | ……! ジョージ……! |
シャルルヴィル | ど、どうしたの? |
ジョージ | 言ったろ、忘れてたお菓子取りに来たって。 どれもすっげー美味かったから、 土産に持って帰らねぇと! |
シャルルヴィル | あ、ああ……そうだったね。 |
シャルルヴィル | ……はい、これ。 お土産なんだから、 途中でジョージが食べちゃ駄目だよ? |
ジョージ | わかってるって! んじゃ── |
シャルルヴィル | ……あ、待って! |
ジョージ | ん? どうした、シャルル。 |
シャルルヴィル | あのね……。 これ、ジョージが持っててくれないかな? |
ジョージ | なんだ、これ? |
シャルルヴィル | 羅針盤だよ。 ……もう、壊れちゃって動かないけど。 |
ジョージ | 羅針盤……。 |
ジョージ | ……? どっかで見たことあるような……? |
ジョージ | でも、これはシャルルの物だろ? 自分で持ってなくていいのかよ。 |
シャルルヴィル | うん、いいんだ。 ボクにはもう、必要のないものだから。 ジョージに持っていてもらいたいんだ。 |
ジョージ | わかった。 そういうことなら、受け取っとく。 |
ジョージ | 羅針盤かぁ。 ガラスは割れちまってるけど、格好いいな! |
シャルルヴィル | ふふっ。 ……そういうところは、変わらないんだね。 |
ジョージ | ん? なんか言った? |
シャルルヴィル | ううん。引き止めちゃってごめんね。 今日はロシニョル家に泊まるんだったっけ。 |
ジョージ | おう! |
シャルルヴィル | イギリスまで気をつけて帰ってね。 ……本当に、会えてよかった。 |
ジョージ | オレも! 元気そうな顔見れてよかったよ。 また会おうな! |
シャルルヴィル | …………。 |
ライク・ツー | ジョージの野郎、おっせーな。 また茶でも飲んでるんじゃないだろうな……? |
---|---|
ライク・ツー | また雨が降り出しそうだってのに……。 |
ジョージ | ……悪い、遅くなった! |
ライク・ツー | ったく、本当にな。 ほら、さっさとロシニョル家に行くぞ。 |
ジョージ | …………。 |
ライク・ツー | どうした。まだなんか忘れ物かよ。 |
ジョージ | いや……。 |
ライク・ツー | なんだよ、調理狂うな。 シャルルヴィルが気になるのか? |
ジョージ | まぁ、な……。 なんか、ちょっと引っかかってて……。 |
主人公 | 【戻った時、何かあった?】 【話してみてほしい】 |
ジョージ | 具体的にどこが、ってのは上手く言えないんだけど、 シャルルの様子が、なんか変だった気がするんだ。 |
ジョージ | 手紙を見た時、オレ…… 直感的に、「シャルルに会わねぇと!」って思った。 |
ジョージ | でも、フツーに元気だったし…… だけど、なーんか引っかかってモヤモヤする……。 |
ライク・ツー | 俺はあいつのことよく知らねぇけど、 絶対高貴になれないことぶっちゃけたりしてたし、 色々吹っ切れて性格変わったのかと思ったな。 |
ジョージ | あー……確かに、それはあるなぁ。 |
主人公 | 【明日、また会いに来よう】 【明日、本人に聞いてみよう】 |
ジョージ | それもそうだな! |
ジョージ | 明日の出発前に会ってみて、 まだ変なカンジがしたら、 大丈夫かこっそり聞いてみるよ。 |
ジョージ | ……うおっ、雨降ってきた! 急いでロシニョル家行こうぜ! |
ライク・ツー | 47……48……49……、50! ふぅ、いい感じに腹筋に効いてるな。 |
---|---|
ジョージ | おまえってホントにトレーニング好きだよなぁ、 |
ライク・ツー | 甘いもの散々食ったんだから、 いつも以上にトレーニングしないと、 身体の感覚が変わっちまうだろ。 |
ジョージ | そういうもんかぁ? |
ジョージ | っていうか、あんだけ食ったのに腹減ってきたな! 今日の晩飯なんだろな~。 |
ジョージ | ナントカカントカのスープのなんたら添えとか、 ほにゃららのナントカ包みとか、 洒落てて美味いもんがいろいろ出るんだろうな! |
ジョージ | オレ、前にフランス来た時は ほとんど豪華な料理食べてないから、 すっげー楽しみ! |
ライク・ツー | あー……そういえば、そういう話してたな。 |
──ガタン!
??? | お待…………、…………様! |
---|---|
ライク・ツー | ……なんか騒がしいな。 |
主人公 | 【どうしたんだろう?】 【様子を見てみよう】 |
ロシニョル家使用人 | ロジェ・ド・リリエンフェルト様! 当家のお客人に手荒な真似をされては困ります! |
ロジェ | ええい、どけ! あいつらが関わっているに違いないんだっ! |
ジョージ | あいつって……シャルルのマスターだよな? |
ロジェ | ……! そこにいたか! |
〇〇たちをギロリと睨んだロジェは、
10人ほどの私兵を引き連れていて、
一気に緊迫した空気が漂った。
ライク・ツー | ……これは、随分と穏やかじゃないな。 俺たちになんの用だ。 |
---|---|
ライク・ツー | 変な真似をしようってんなら…… 護衛としてきた以上、俺が相手になるけど? |
ロジェの私兵 | ……っ! |
ロジェ | 妙な真似をしたのはお前たちの方だろう。 シャルルヴィルを一体どこへやった!? |
ジョージ | へ? シャルル、どっか行っちまったのか? |
ロジェ | とぼけるな! お前たちが茶会とやらから帰ったあとすぐに、 シャルルヴィルが屋敷から消えた。 |
ロジェ | 突然の訪問に、突然の失踪。 これが無関係だと言うのか!? |
ライク・ツー | 過保護だな。別にガキじゃねーんだから、 1人で散歩に行くくらいするだろ。 |
ロジェ | 今までシャルルヴィルが 私に黙って姿を消したことなど1度もなかった! |
ロジェ | 今回だって部屋に見張りをつけていたのに── |
主人公 | 【見張り……?】 |
ライク・ツー | ……ふぅん。 軟禁してるかもって話、マジだったってわけか。 |
ロジェ | ……部外者には関係のないことだ。 当家の貴銃士を当家がどう扱おうと、 お前たちにとやかく言われる筋合いはない。 |
ロジェ | それより、早くシャルルヴィルの居場所を吐いてもらおう。 さもないと、こちらにも考えがあるぞ。 |
ライク・ツー | へぇ? どんな考えか、聞かせてもらおうか。 ……俺とやり合う覚悟ができてんならな。 |
一触即発の空気のなか、
駆けてくる足音があった。
カトリーヌ | ロジェ様、お待ちください! |
---|---|
ロジェ | ……カトリーヌ嬢。 |
カトリーヌ | 〇〇さんは、信頼の置ける方です。 何か大きな誤解があるのだと思います。 どうか矛を収めてくださいませんか? |
主人公 | 【シャルルヴィルを探しに行きます!】 【我々にも手伝わせてください!】 |
ロジェ | 殊勝なふりをして、 どさくさに紛れて逃げるつもりではないだろうな。 |
カトリーヌ | ロジェ様! |
ロジェ | …………。 わかりました。カトリーヌ嬢に免じて、 この場は引くことにしましょう。 |
ロジェ | とにかく、 一刻でも早くシャルルヴィルを連れ戻すこと。 |
ロジェ | もしもシャルルヴィルが見つからなかったら…… フィルクレヴァート士官学校には、 当家から正式に厳重抗議を入れさせていただく。 |
主人公 | 【わかりました】 【それで構いません】 |
ロジェ | ……ふん。 |
ライク・ツー | チッ……なんだったんだよ、あいつ。 |
カトリーヌ | まさかロジェ様が、 あのように荒々しく踏み込んでくるなんて……。 一体どうしてしまわれたのでしょう。 |
カトリーヌ | ……いえ、それより、 今はシャルルヴィル様の捜索が優先ですね。 |
カトリーヌ | わたくしたちもお手伝いします。 |
主人公 | 【ありがとうございます!】 |
ジョージ | シャルル……。 一体、どこに行っちまったんだ……? |
主人公 | 【ジョージ、それは?】 【壊れた羅針盤……?】 |
ジョージ | さっき、シャルルに渡されたんだ。 オレに持っててほしい、って……。 |
ブラウン・ベス | …………。 |
---|
ジョージ | ……っ! |
---|---|
ジョージ | そうか、これは……。 あの時“あいつ”が渡した……! |
シャルルヴィル | ……ね、見てよ、ベスくん。 |
---|---|
ブラウン・ベス | だから、その呼び方! 俺は認めないって言ってるだろ。 |
シャルルヴィル | あはは、ごめんごめん。 でもこの呼び方で馴染んじゃってさ。 |
ブラウン・ベス | はぁ……ったく。 んで、何を見ろって? |
シャルルヴィル | ほら、向こうに小さく橋が見えるのわかる? ノルドール橋っていって、 景色がすごくいいところなんだ。 |
ブラウン・ベス | へぇ……。 |
少し目を細めたブラウン・ベスは、
懐から見慣れないものを取り出した。
ブラウン・ベス | ここからだと、南東の方角か。 |
---|---|
シャルルヴィル | ねぇ、この間から気になってたんだけど、 ベスくんが持ってるそれって何? |
ブラウン・ベス | これか? 羅針盤だよ。 城の倉庫で埃かぶってたのを見つけたんだ。 |
シャルルヴィル | らしんばん? それって、貴重なものなの? |
ブラウン・ベス | さぁな。 貴重かどうかは知らねぇけど……格好いいだろ。 |
シャルルヴィル | えっ、そんな理由で持ってきたの? |
ブラウン・ベス | ……? ああ。 |
シャルルヴィル | ……ふふっ、あはははっ! ベスくんって、たまに変なことするよね。 |
ブラウン・ベス | そうか……? 羅針盤は今でも使える実用的なものだぞ。 |
シャルルヴィル | えっ、そうなの? |
ブラウン・ベス | ああ。……見てみろ。 この針が、いつどこにいても北を指すようになってる。 方位磁針とも呼ぶらしい。 |
ブラウン・ベス | これがあれば、進むべき方角を 正確に知ることができるんだ。 旅に欠かせないアイテムらしい。……すごいだろ? |
シャルルヴィル | へぇ……! 人は、これを持って旅に出るんだね。 |
シャルルヴィル | 旅、かぁ……。 |
ブラウン・ベス | シャルルは、どこか行きたいところでもあるのか? |
シャルルヴィル | ボクは……ここじゃないどこかに行きたい、かな。 |
シャルルヴィル | どこか遠く、うんと遠く…… 名前も聞いたことがなくて、 誰もボクのことなんて知らない場所。 |
シャルルヴィル | 小さな鞄に最低限の荷物だけ入れて、 行き先も目的も決めないで旅に出たいな。 |
シャルルヴィル | 「リリエンフェルト家の貴銃士シャルルヴィル様」 なんかじゃなくて……ただのシャルルヴィルとして。 |
シャルルヴィル | そしたら……自由になれるのかな。 |
ブラウン・ベス | 自由、か……。 |
シャルルヴィル | 不思議だよね。 |
シャルルヴィル | 貴銃士として呼び覚まされて、人の身体を得て。 動いたり、話したり、美味しいお菓子を食べたり。 |
シャルルヴィル | いろんなことができるようになったはずなのに── |
シャルルヴィル | ……ただの銃だったときの方が、 こんなふうに雁字搦めじゃなかった気がするよ。 |
ジョージ | シャルル……。 |
シャルルヴィル | ただの銃には、誰も期待しない。 ただの銃には、救いを求めない。 |
シャルルヴィル | ただの銃には……自分の理想を押しつけない。 |
シャルルヴィル | …………。 |
シャルルヴィル | ……ごめん。 なんか変な話になっちゃったね。 |
シャルルヴィル | 冗談……っていうか、こんなのただの絵空事だよ。 ボクはリリエンフェルト家から離れられないし、 貴銃士シャルルヴィルだから。 |
ブラウン・ベス | …………。 |
ブラウン・ベス | ……なぁ。 これ、おまえにやるよ。 |
シャルルヴィル | えっ!? でもこれ、ベスくんの大切なものでしょ? いつも持ち歩いてて、気に入ってるんじゃ……。 |
ブラウン・ベス | いいよ、やる。 |
ブラウン・ベス | どうしても息が詰まったら、 これでも使ってどっかへ逃げちまえ。 |
ブラウン・ベス | ヘラヘラフランス野郎には、 それくらいがお似合いだ。 |
シャルルヴィル | ヘラヘラフランス野郎って……酷いなぁ、もう。 |
シャルルヴィル | でも……ありがとう。 いつか旅に出る時…… 自由になりたくなった時に、使わせてもらうね。 |
ブラウン・ベス | ……おう。 |
ジョージ | この羅針盤は、やっぱりあの時の……! |
---|---|
ジョージ | でも、じゃあなんであいつは……。 いなくなったってことは、 旅に出たんじゃないのか……? |
シャルルヴィル | うん、いいんだ。 ボクにはもう、必要のないものだから。 ジョージに持っていてもらいたいんだ。 |
---|
ジョージ | 壊れてるからいらない……ってのは、 シャルルの場合違う気がする。 |
---|---|
ジョージ | ……! 必要ないって、まさか……。 |
ジョージ | あいつ、自由になることを諦めちまったんじゃ……。 だとしたら……! |
ジョージ | ……っ! |
主人公 | 【ジョージ!?】 【どうしたの!?】 |
ジョージ | 〇〇、緊急事態だ! 早くシャルルを見つけないと……手遅れになるっ! |
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