大晦日の士官学校で開かれたのは、ジョージとカールの厄除け開運堂!
ジョージの温かな絶対高貴が呼び覚ますのは懐かしき記憶。
彼らとまた会える日を願い、小さき皇帝は今年も前進を続ける。
彼らの絶対高貴はどんなふうだろうね。
レオはジョージと似た温かなもの、マルガリータはパーティーのように華やかとか。
答え合わせをするのが楽しみだ。
主人公名:〇〇
主人公の一人称:自分
12月のはじめ頃──
フランスのフォンテロープ宮殿横の離れにて晩餐会が催された。
各国の貴銃士も招待され、オーストリアからはカール、
ベルギーからはカトラリーが代表として参加していた。
豪華な晩餐が終わり、団らんの時間となる。
カール | うっ……、くっ……。 |
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カトラリー | ね、ねぇ……大丈夫? 無理したら身体に悪いよ……。 |
シャルルヴィル | やあ、カールさん、カトラリーくん。 食事は楽しめた? |
シャルルヴィル | ──って、どうしたの!? 具合が悪そうだよ!? |
カール | いや……違うのだ、シャルルヴィル。 コースのメイン料理の牛ヒレ肉のパイ包み焼きが、 あまりに美味しかったから……。 |
シャルルヴィル | 美味しかったから……? |
カトラリー | それで、おかわりをしたいのを我慢してるんだよ。 |
シャルルヴィル | んん? ってことは、つまり……。 我慢のしすぎで具合が悪くなっちゃったんだ!? |
カール | うぅっ……僕は、おかわりをしたら10皿は止まらないだろう。 そんな不躾な行いをここでしでかすわけにはいかないからねー。 |
シャルルヴィル | そんな! 言ってくれれば、10皿でも100皿でも用意するのに。 今から頼んで── |
カール | いや、いいんだシャルルヴィル。 |
シャルルヴィル | でも……。 |
カール | いいんだ。 それよりも、君にずっと重要な頼みがある。 |
シャルルヴィル | え……? |
カール | 僕はこのフォンテロープ宮殿に来たのは初めてだ。 ずっと来たいと思っていた。 なぜなら……ここには例の銃があるだろう? |
シャルルヴィル | ……! |
2人はシャルルヴィルの案内で、
『ナポレオンの間』と呼ばれる一室にやってきた。
ガラスケースの中には、ナポレオンとその副官ラップの愛銃、
制作者の名からレジスタンスではニコラとノエルを名乗っていた
二丁拳銃が保管されている。
カール | おお……ナポレオン、ラップ、ニコラ、ノエル……。 10年ぶりだな……。 |
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カトラリー | これが、革命戦争の……。 すっごい……キレイ……! |
シャルルヴィル | この4挺はもともとはフランスの軍事博物館にあったんだけど、 革命戦争でレジスタンスによって回収されて、 貴銃士として目覚めたんだって。 |
シャルルヴィル | 革命戦争後は、彼らを讃えるためには ナポレオンが暮らしたこの宮殿が相応しいってことで、 ここに飾られることになったんだ。 |
カール | うむ。貴銃士ナポレオンは自身が大好きであったし…… ラップもなんだかんだで彼を尊重し、 双子は彼に強く憧れていた。皆、喜んでいると思うよー。 |
シャルルヴィル | 自身が大好き……? ナポレオンさんはどういう貴銃士だったんですか? |
カール | 彼は実に面白い貴銃士でね。 ある意味最も破天荒な貴銃士と言えるだろう。 なにせ、自分を本物のナポレオンだと思いこんでいたのだから。 |
カトラリー | ええ……!? そんな……誰か突っ込むでしょ? 貴銃士であって、ナポレオン本人じゃないって。 |
カール | それは副官のラップが、 本人の耳に入る前に発言者の口を塞いでいたように思うよ。 |
カトラリー | なにそれ……こわっ! |
シャルルヴィル | じゃあナポレオンそのものって感じだったんですか? それはちょっと恐いなぁ。 |
カール | 恐い? なぜかね? |
シャルルヴィル | ナポレオンさんって人──いや、銃遣いがすごく荒いんです。 ナポレオン戦争中は、もうずっと戦い通しだったし……! レジスタンスのシャルルヴィルに対してはどんな態度でしたか? |
カール | ああ……そういえば、 シャルルヴィルはよく頼まれごとをしていたね。 |
シャルルヴィル | やっぱり!! |
カール | だけど── |
カール | おや、ナポレオン。洒落たデザートを持っているね。 その薔薇は……食べられるのかい? |
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ナポレオン | そうとも! シャルルヴィルが薔薇の砂糖菓子を作ってくれたのだ。 実に美しいだろう? |
カール | へぇー。器用なものだね。 |
ナポレオン | そうとも、そうとも! シャルルは手先が器用で、気も利く洗練された貴銃士だ。 |
ナポレオン | それもそのはず。彼は我らがフランスを支えた優雅で気高い銃だ。 品があり立ち居振る舞いが美しく……ああ、シャルルヴィルよ。 先ほども言ったが、君ほど素晴らしい貴銃士は珍しいぞ! |
カール | ……なんて。 彼はいつも君のことを褒めていたように思うよー。 |
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シャルルヴィル | ええ……っ! |
カール | (ん……そういえば、あの場にシャルルヴィルもいたはずだ) |
カール | (シャルルヴィルは……ナポレオンの言葉に どういう反応をしていたかな? 思い出せない……) |
シャルルヴィル | ほ、本当ですかぁ? 大袈裟だなぁ。ボクがそんな気高いとか美しいとか……。 |
カトラリー | とか言って、すごく嬉しそうなんだけど。 |
カール | ……! |
シャルルヴィル | ちょ、ちょっとナポレオンさんってば! そんな人前で恥ずかしいじゃないですか。 |
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シャルルヴィル | 気高いとか美しいとか……。 もー、大袈裟ですって! |
カール | そうそう、それだ。 |
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シャルルヴィル | へっ? な、なんですか? |
カール | (同じ照れ方をするんだな) |
年の瀬のこと──
オーストリア出身の3人は、街へ買い物に来ていた。
ローレンツ | カール様。 クリスマスが終わると、街も落ち着いたように見えますね。 なんだか寂しいものです。 |
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カール | うむ。クリスマスの特別感は年に一度だからねー。 |
ベルガー | なー、カイモノって長いのかぁ? 俺、眠ぃんだけど。ふぁ~……。 |
ローレンツ | 買い物は始まったばかりだぞ、モルモット1号。 年末年始は店が閉まるから、 いろいろと買っておかねばならないのだ。 |
カール | そういえば……。ベルガーはこの1年、 そんなに悪いことをしていないのではないか? |
ローレンツ | ……そうですね。春はスプリングフィールドを助けたようですし、 6月はカタツムリと友好を深めました。 秋のブドウ狩りでも比較的行儀よくブドウを食べていました。 |
カール | よし。それでは、1年間の生活態度を評価してご褒美でもやろう。 何か欲しいものはあるかい? |
ベルガー | おぉっ!? 俺、セーセキユーシューかぁ! よっしゃ~! うまいもん食いてえ! うまいもん!! |
カール | いいだろう。それじゃ、まずはお菓子屋さんだねー。 |
ベルガー | ヘンヘヘン♪ フフ~ン♪ |
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ローレンツ | 少々、買いすぎたのではありませんか? ポテトチップスにコーク、 虫歯になりそうなお菓子を……2袋も。 |
カール | まあ、このところあまりおやつを与えていなかったし、 いいのではないかね。 |
ベルガー | そーそー! お前最近ポテチくれねーよな。 地下にいた頃はよぉ、マンガもくれたのに。 金なくなったのか? |
カール | それは君、前は実験体だっただろう。 おやつも漫画も実験の一環だよ。 今はご機嫌取りの必要がないわけだ。 |
ベルガー | あ?? お前、俺のこと好きだからいろいろくれてたんじゃねーのかよ? |
ローレンツ | ……はぁ? モルモット1号、それは……。 カール様が君に好感を抱いていたから お菓子などを与えてくださっていると思っていたのか? |
ベルガー | ウン。 |
ローレンツ | な、なんと図々しい考えを……! |
カール | あはは! 面白いこと言うね。 ベルガー、来年もいい子にしていればまた褒美をやるぞ。 |
ベルガー | ハーイ! ボクちゃんこれからもイイコにシマス! |
街の人たち | あっ! あいつ……! こらー! |
ローレンツ | おや、どうかされましたか? |
街の人1 | この人だわ! 緑のウサギ耳! この間うちの子供を追っかけまわして泣かせたのよ! |
街の人2 | こっちは食い逃げされた! このタダ飯食らいめ、金払えっ! |
ベルガー | あひゃひゃ! んなこともあったっけ? |
ローレンツ | ……モルモット1号ー!!! |
お金を払い十分に謝罪をしたあと、
もちろんおやつを没収されたベルガーは、
士官学校に戻りローレンツからお仕置きを受けることになった。
ベルガー | ひぃっ! あひゃひゃひゃ! ひゃひゃひゃ! くるじい! やめろバカ眼鏡~!! |
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ローレンツ | もう悪いことはしないと誓うか? |
ベルガー | んなこと誓えるかっての……あひゃひゃっ!! |
ローレンツ | ……くすぐりレベル、MAXだ。 |
ベルガー | あぎゃぎゃぎゃ! ひぃ! 誓う! ぢがいまずぅ~! あっひゃひゃひゃひゃ~!! |
カール | はぁ、まったく懲りないウサギだ。 |
カール | しかし……ふふっ。 |
カール | 君のトラブルメーカーなところは嫌いじゃないよ、ベルガー。 |
新年のある日──
フリッツ・ザラからヴァイオリン・リサイタルの招待を受け、
カールとローレンツ、〇〇はオーストリアにやってきた。
カール | やあ、フリッツ。1か月ぶりだね。 |
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ザラ | ええ。 カール様も新しい年を迎えられ、より高貴になられたようですね。 輝いていらっしゃいます。 |
ローレンツ | 昨晩、ローストビーフを15皿も召し上がられましたからね……。 |
ザラ | ようこそ、〇〇さん。 イギリスから私のリサイタルにおいでくださり、光栄です。 |
主人公 | 【お久しぶりです】 【楽しみにしています!】 |
ザラ | 〇〇さんにきちんと 私の演奏を披露するのは初めてですね。 楽しいひと時となれば幸いです。 |
ザラ | では、私はリハーサルがあるので、これにて……。 皆様を舞台にてお待ちしております。 |
ローレンツ | カール様、俺も研究室に所用がありまして。 部屋にお茶などが用意されているとのことですので、 カール様はそちらにてお寛ぎください。 |
カール | うむ。行ってきたまえ。 |
主人公 | 【時間ができたね】 【部屋に行こうか?】 |
カール | その前に…… 〇〇に付き合ってもらいたい場所があるのだ。 |
〇〇がカールに案内されたのは、『常春の間』だった。
革命戦争の貴銃士、レオポルトとマルガリータの銃が
飾られている場所だ。
ショーケースの前に立ったカールは、2挺の銃をじっと眺め──
それから、〇〇を振り返る。
カール | 〇〇。今、絶対高貴になってもいいかい? 少しの間だ。 |
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カールが手の甲を示す仕草をする。
〇〇は薔薇の傷の状態を確認して、
大丈夫だと答えた。
カール | うむ、ありがとう。 |
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カール | ……絶対高貴。 |
カールの力強い絶対高貴の光が、2挺の銃に降り注ぐ。
カール | レオ、マルガリータ。新年おめでとう。 |
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カール | 先日、ジョージの絶対高貴を浴びる機会があってな。 それがなかなか面白かったから、 君たちにもおすそわけに来たというわけだ。 |
カール | どうだい、懐かしいかな。 ジョージは、僕の絶対高貴を電気みたいだと言っていたが。 君たちもそう感じるだろうか? |
カール | いつか目覚める時がきたら……感想を教えてくれたまえよ。 |
カール | …………。 |
カール | 〇〇。 手の傷は治りすぎていないかい? |
主人公 | 【問題ない】 【まだまだ平気】 |
カール | この間は、うっかり薔薇の傷を消しかけてすまなかった。 |
カール | 君の傷は本物の結晶でできた希少な傷なんだ。 絶対になくしてはいけない。 その大切さは僕が一番知っている……。 |
カール | この宮殿で苦しみ、陥れられた時、 君がいなければ戻って来られなかった。 |
カール | 今、こうして絶対高貴になれるのも、君のおかげだ。 だからね、僕は君に感謝してもしきれないのさ……。 |
カール | ……おや、普段僕はこんなことを言うかね。 やれやれ……どうにも感傷的になってしまうな。この場所は。 |
主人公 | 【ありがとう】 【大丈夫、わかってるよ】 |
カール | ……うん。 |
カール | ──そこの研究者君、出ておいで。 |
ローレンツ | あっ……す、すみません。 部屋にいらっしゃらなかったので、こちらかと……。 |
カール | いや、済んだところだよ。 さて、少し早いがホールに行ってみるか? |
リサイタルでは、チャイコフスキーを中心に
『ヴァイオリン協奏曲』やベートーヴェンの『春』、
歌劇のポロネーズなど新年に相応しい華やかな曲が演奏される。
観客たちは時が経つのも忘れてうっとりと聞き惚れ、
ザラが深くお辞儀をすると慌てて立ち上がり、
スタンディングオベーションで大歓声を贈った。
ローレンツ | 素晴らしい……表情豊かでキレ味も鋭く……! 痺れた……! 感動だ……! |
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カール | これまでに聞いてきたどの演奏よりも引き込まれたよ。 フリッツ……腕をあげたようだな。 |
主人公 | 【1年の始まりにピッタリだったね】 →カール「ああ、いい年になりそうだね。 ……今年もよろしく頼むよ、〇〇。」 【とても素敵な時間になった】 →カール「ああ。この年も素敵な1年にしようじゃないか。 よろしくな、〇〇!」 |
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