第1話:突然の再会

──とある休日。
4人の貴銃士が、買い物のため街に出ていた。

シャスポーメモにあるものは全部買えたな。
ジョージYeah!
っていうか、シャスポーと買い物ってなんだか新鮮だなー!
おまえ、何か欲しいものがあったのか?
シャスポーああ。
ガラスにも使える画材がお目当てでね。
さっき寄った文具屋で見つけて購入済みだよ。
十手ほほう……硝子に何か絵を描くのかい?
シャスポーそう、いつもはキャンバスに描いているんだけど、
〇〇を描くなら
ステンドグラスみたいな仕上がりにするのもいいかと思って。
ライク・ツーうわ……〇〇を崇める協会でも作る気かよ……。
ジョージWow! マークスが毎日来てくれそうだな☆
シャスポーちょっ……違う、そういうことじゃない!
せっかく〇〇にあげるなら、
いろんなテイストのものがあった方がいいかと思って──……
ライク・ツーはいはい。
シャスポー真面目に聞け!
???…………。
???……ライたん?
ライク・ツー(……え?)

ライク・ツーは、背後からかけられた声に反応し、立ち止まる。

ライク・ツー(……この声、呼び方……
まさか……)
ライク・ツー(……いや、待て。
ありえねぇよ、“あいつ”がこんなとこにいるなんて……
だって、いろいろ調べたけど、所在不明ってことしか……)
ライク・ツー(わからねぇけど……冷静になれ……!
変に反応して、今、こいつらの前で疑われるわけには……)
背後から呼びかける声おおーい? ライたぁーん?
もしもーし、ライたんってば~!
十手む……? 俺たちに何か御用かな。
ジョージライたんって……もしかしてライク・ツーのこと?
ライク・ツー…………。
派手な男ああ~っ、やっぱりライたんじゃん!
お・ひ・さ★
会いたかったよぉ~ん!!
ライク・ツー…………ッ!
ライク・ツー(お兄──)
シャスポー……知り合いか?
ライク・ツー……!
いや……俺は、知らねぇ……。
誰だ、お前。初対面で変な呼び方すんな。
派手な男がぁーん! ちょちょちょ、それはショックすぎるんだけど!?
おいらのこと覚えてないとか、冗談きついっしょライたぁん……。
派手な男っていうか、イメチェンしたんだ?
バッサリいったねぇ!
フゥ! ショートのライたんもナイスゥ!
シャスポー妙な奴だな……。
なんなんだ、君は。
ラブ・ワンえ、おいら? おいらはラブ・ワン。
UL85A1の貴銃士って言った方がいいかな?
UL85A2──ライたんの……
ラブ・ワンお兄ちゃんだよーん★
3人えっ!
ライク・ツー………………。
ジョージえええーっ!
お兄ちゃんだったのか!
ジョージNice to meet you!
オレたちみんな、ライク・ツーの仲間だぜ☆
ジョージ兄ちゃんに会えてよかったな、ライク・ツー!
仲良さそうに、ライたんって呼んでくれてるし☆
スターサングラスもNice!
ラブ・ワンみんな、ライたんを大事にしてくれてありがとね~!
ライたんの友達はおいらの友達ってコトで、
おいらとも仲良くしてくれるかな~?
十手ああ、もちろんだとも!
弟としてのライク・ツー君について、色々聞かせてほしいな。
ラブ・ワンオッケ~イ★
みんなは士官学校にいるんだっけ?
今度おいらも遊びに行っていい?
ジョージおう!
シャスポー勝手に返事をしていいのか?
ジョージだって、ライク・ツーの兄ちゃんなら大歓迎だろ?
〇〇だって会いたがるはずだし!
シャスポーそうかもしれないけど……。
君のマスターは、連合軍の所属なのか?
それとも、イギリス政府関係者あたりか?
ラブ・ワン残念、どっちも不正解★
おいらはぁ……
ラブ・ワントルレ・シャフのラブ・ワンだよーん。
ライク・ツー&シャスポー……は?
ジョージ&十手え……?
ラブ・ワンあれ? みんな、石になっちゃった!
カチンコチン★ フゥ~!!
シャスポーど、どういうことだ……トルレ・シャフって──
ライク・ツー…………はは。
おかしいだろ、こいつ。
関わるだけ無駄だし、さっさと帰るぞ。
十手だ、だが、ライク・ツー君のお兄さんだと──
ライク・ツーUL85A1持ってるだけの不審者だろ、どう見ても。
あれが俺の兄銃なわけねぇっつーの。
貴銃士のフリしてるただのイカレ野郎だよ。
シャスポー確かに、君とは見た目も性格も似ていないが……
トルレ・シャフを名乗ってるのに放置でいいのか?
ライク・ツー実害出てねぇのに、虚言癖の不審者を相手にするほど
俺らも軍も暇じゃない。
ライク・ツーほら、行くぞ。
シャスポーあ、ああ……?
十手&ジョージ…………。

ライク・ツーはさっさと立ち去ってしまう。
十手とジョージは、笑顔のまま手を振る自称ラブ・ワンと、
ライク・ツーの背中を交互に見つめる。

ラブ・ワンまったね~★

ジョージライク・ツーが兄ちゃんと会えたかと思ったのになぁ……。
十手悪い御仁には見えなかったが……うーん、
悪気はなくとも善人とは限らないということだろうか。
たちの悪い冗談は感心しないよ……。
ライク・ツー…………。
ライク・ツー(……どうして、あんな……。
あいつは、本当に俺の……?
それとも……)

第2話:報告書

ラッセル〇〇君、報告書の作成ご苦労だったね。
早速確認を始めたんだが……
なんというか、驚くべき内容だらけだな。
ラッセル特に、オーストリアでの報告は示唆に富んでいる。
毒物らしきものを投与された囚人の例から窺える
薔薇の傷と生命力の関係性……。
ラッセルいや、最も重要なのは間違いなく──
アリノミウム結晶が2種類存在するという説だな。
人工のものと、そうでないもの──本物がある、か……。
ラッセルカール閣下曰く、人工結晶によってマスターとなった者に
召銃された貴銃士は、絶対高貴に目覚めることができないとか。
ラッセルレジスタンスのマスター、ヨナス氏、数多の死刑囚、
そして〇〇君と、様々なマスターに召銃された
カール閣下の言だ。信憑性は高いと考えるべきだろうな……。
恭遠実際に、〇〇君が召銃した直後、
カールは再び絶対高貴の力に目覚めています。
恭遠他にも似たような例はありますし、
貴銃士自身の資質や心持ちのみではどうしようもない差異が、
マスター後からの根源である結晶にあると考えるべきでしょう。
ラッセルええ……。
もう1つ気になるのは、ロジェ・ド・リリエンフェルト氏や、
オットーヨナス氏に現れたという精神異常です。
恭遠幻聴や幻覚、被害妄想や攻撃性……。
それも、かなり激しい症状のようですね。
恭遠ジョージがリリエンフェルト氏の薔薇の傷を治療したところ、
憑き物が取れたかのように以前の穏やかな彼に戻ったという
シャルルヴィルの証言もあります。
恭遠なんらかの病気ではありえない治り方ですから……
やはり、薔薇の傷の影響によるものと考えるべきでしょうね。
ラッセル……〇〇君。
君にはそういった兆候はまったくないのかい?
主人公【ありません】
【平気です】
ラッセルふむ……。
となるとやはり、君が触れた結晶は『本物』だったということか。
ラッセル…………。
ラッセルしかしなぜ、人工結晶なんてものが流通しているのか……。
この報告を見る限り、人工結晶を使ってマスターとなるメリットは
まったくないように思えるのだが……うーむ……。
恭遠……革命戦争時代に得た情報のままであれば、ですが。
真のアリノミウム結晶は、非常に危険な代物です。
ラッセル……? どういうことでしょうか。
恭遠レジスタンスの諜報員などが得た情報によると、
アリノミウム結晶に触れた人間はことごとく、
全身から血を吹き出して絶命する……ということでした。
マークス……っ、なんだって!?
ラッセルし、しかし……!
〇〇君はこうして無事ですし、
レジスタンスのマスターが触れたのも真の結晶ではないのですか?
恭遠ええ。
結晶に触れても生き残ることができた、稀有な人物──
それこそが、真の意味でのマスターなのかもしれません。
恭遠実際に確かめる術などなかったので、
どこまでが事実なのかは今でも不明ですが……。
恭遠当時得た情報が正しいとすれば……
〇〇君が無事だったのは、奇跡のようなものです。

ガスマスクの男殺スッ!
主人公【……っ!】

マークスマスター……。
マスターが結晶に打ち勝てていなかったら、今頃……。
主人公【マークスが助けてくれたから今がある】
【マークスがいなければどのみち駄目だった】
マークスマスター……!
ラッセルそうなると気になるのは、フランスとオーストリアで現れたという
謎の貴銃士のことですね。
ラッセル彼もまた絶対高貴を使えた……ということは、仮説通りの場合、
彼のマスターも真の結晶でマスターになった人物ですから。
恭遠…………。
……そうですね。
ラッセル〇〇君。
謎の貴銃士の動向については、今後も注意してくれ。
主人公【イエッサー!】
ラッセルああ……謎といえば、透明な結晶の問題もあったね。
高価で貴重なはずのアリノミウム結晶を浪費してまで、
トルレ・シャフが得ようとしていた可能性もあると……。
ラッセル……ん? 『透明な結晶についての特別報告事項』?
ラッセルこ、これは……私の読み間違えか……?

報告書の最後のページを見たラッセルは、目をこする。

恭遠えーっと……?
『ヴァイスブルク宮殿の地下室で発見したという
2つの透明な結晶を持って、貴銃士カールが来校』
恭遠『1つはカールが持ち帰り、
もう1つは〇〇候補生が預かっていたが、
提出前にアクシデントにより損壊』……?
ラッセル……そ、損壊……。
主人公【すみません!!!】
【ごめんなさい!!!】
ラッセルど、どういうことなんだ、〇〇君!
これは大変な事態だぞ……!
ドライゼ……失礼する。
恭遠ドライゼ?
ドライゼ申し訳ない!!!!
ドライゼ透明な結晶の破損は、俺のせいなのだ……!

第3話:砕けた結晶

恭遠何があったのか聞かせてくれ……。
ドライゼ無論だ。
ドライゼあの日──マスターは、カール閣下より透明な結晶を預かった。
しかし既に遅い時間だったため報告書とまとめて
翌日に提出しようと、寮の自室で一時保管していたそうだ。
ドライゼそこへ俺が、ドイツ行きのスケジュールについて
話をしに行ったのだが……。
主人公【自分がうっかり結晶を落として……】
ドライゼそれを……俺が踏んでしまったのだ。
ドライゼ俺の不注意が招いた事態であり、
マスターの責ではない!
ドライゼ貴重なサンプルを破壊してしまい……本当に申し訳ないッ!
恭遠頭を上げてくれ、ドライゼ。
起きてしまったことはどうしようもない。
恭遠それに、砕けただけで、破片は残っているんだろう?
ドライゼそれが……その場で消滅してしまった。
恭遠&ラッセル消滅!?
ラッセルき……消えた? 結晶が消えるというのは……?
カサリステからそういった報告は上がっていないが……?
恭遠……確か、アリノミウム結晶で薔薇の傷跡を得る際、
結晶は砕け、蒸発するように消えるという話が
あったように思います。
ラッセルなるほど……すでに、例の透明な結晶にはアリノミウム結晶との
類似点があると判明していますが……
そういうことでしょうか……。
ラッセルあの結晶が一体なんなのか、何かしらの作用を持つものなのか
その一切が現時点では不明だが……。
ラッセル特に、マスターである君が触れた場合には、
特殊な反応を起こす可能性も考えられる。
今後、透明な結晶の取り扱いには、十分に注意するように。
主人公【イエッサー】
【重々に気をつけます】
恭遠今のところ、アリノミウム結晶とは違って
素手で触れても問題は起きていないということだったが……
念のため、直接触れないようにした方がいいかもしれないな。
マークスわかった。
マスターが危なくないように、俺が代わりに持つ!
恭遠いや、貴銃士だからといって、
触れて悪影響がないとは言い切れない。
君たちも、〇〇君と同様に気をつけてくれよ。
ドライゼ承知した。
他の貴銃士にも伝えておこう。では。
恭遠…………。
ラッセル……恭遠審議官? 何か気になることが……?
恭遠いえ……人工結晶の出どころや、
透明な結晶は一体なんなのかを考えていました。
恭遠革命戦争時代……
世界帝軍は、アリノミウム結晶を大々的に捜索し、
極秘で研究を行っているようでした。
恭遠世界帝軍が保持していた大量殺戮兵器ミルラには、
アリノミウム元素が利用されていたので、
研究はミルラ関連だと思っていたのですが……。
主人公【ミルラ……。】

大量殺戮兵器、ミルラ。
世界帝支配時代を生きた者なら
誰もがその名を知っている、おぞましい兵器。

その正体は、アリノミウム元素を利用して開発された新型爆弾だ。

広範囲・高威力の攻撃力を誇るが、
旧来の核爆弾とは異なり
投下地域が放射線によって汚染されることはない。

そのため、投下後速やかに現地支配が可能だったことから……
旧世界帝によって、反逆国家やレジスタンスに対する粛清のために
積極的に使用された。

ミルラが透過された後、数時間に渡ってみられる
特徴的な赤いオーロラは……
世界帝支配時代の人々にとって、恐怖の象徴だった。

恭遠……もちろん、それも研究目的の1つではあったでしょうが。
今現在、人工と思しきアリノミウム結晶が出回っていることから、
もしかすると、目的は「それだけ」ではなかったのではないかと。
ラッセルと、すると……世界帝府は、その頃から
人工の結晶を作ろうとしていたということですか!?
恭遠わかりません。人工結晶の製造が目的だったわけではなく、
軍事研究の副産物として生まれた可能性もありますしね。
恭遠世界帝府とはまったく無関係で、
リスクを抑えてマスターになれるように作られたもの……
という線もあります。
ラッセルうーむ……今はまだわからないことが多すぎますね。
ラッセルトルレ・シャフ構成員の中には、
ミルラを復活させようと目論む過激派もいるとか……。
ラッセル透明な結晶も、アリノミウム結晶となんらかの関係がある以上、
トルレ・シャフの手に渡らせるのは危険でしょう。
恭遠ええ。オーストリアでのトルレ・シャフの動きから考えて、
透明な結晶に関してなんらかの実験を行っていたか、
あるいは結晶を収集していたと考えられます。
恭遠あの結晶について我々が知らない情報を、
トルレ・シャフが既に得ている可能性は高い……。
動向を注視すべきですね。
ラッセルそういうわけで……〇〇君。
引き続き、透明な結晶が発生する状況の報告と結晶の回収を頼む。
主人公【イエッサー!】

第4話:白い光

マークスんー……。……はぁ。
主人公【お疲れ様】
【少し疲れた?】
マークスいや、マスターの方が疲れただろう。
俺はついていっただけで……
だが、わからないことが増えて大変だとは思う……。
マークスアリノミウム結晶に、人工結晶に、透明な結晶……結晶だらけだ。
透明な結晶のことはほとんど何もわかっていないし、
トルレ・シャフが何をしてぇのかもよくわからない。
主人公【透明な結晶……】
【…………】
マークスマスター?
何か気になることがあるのか?
マークス的がなんなのかよくわからなくて、
あまり力になれないかもしれないが……
いや、どうにかしてマスターを助けたい。
マークス俺に話してみてくれ。

マークスに促されて、〇〇は
結晶が砕けた時の話を始めた。


カールから預かった透明な結晶を翌朝まで寮の自室で
一時保管することにし、レポートを作成していたところ──
〇〇はいつの間にか机でうたた寝をしていた。

ヴィヴィアン〇〇……?
ど、うして、ここに……。
ヴィヴィアンお願、い……
たすけ、て……。
主人公【ヴィヴィアン!!】
【嫌だ、行かないで!!】

倒れたヴィヴィアンへ、
〇〇は叫びながら手を伸ばす。

主人公【……!】
【夢、か……】

重い身体を机から起こした〇〇は、
カールから預かった結晶を引き出しから取り出した。

主人公【この結晶は一体なんなんだろう】
【トルレ・シャフはこれを集めている……?】

各地で起きた様々な出来事。
“鞭”やスケレットとの邂逅もあったオーストリアでは、
トルレ・シャフがこの透明な結晶を集めている可能性も見えた。

主人公【ヴィヴィアンはどこで本物の結晶を……?】
【ヴィヴィアンの死の真相は……】
ドライゼマスター、夜分にすまない。
少しいいだろうか。
主人公【どうぞ】
ドライゼ俺とエルメのドイツ行きスケジュールについてなのだが……。
ドライゼ…………。

ドライゼが、〇〇の手元をじっと見つめた。
視線の先には、〇〇が握っている結晶がある。
次の瞬間──……

主人公【……!?】
【結晶が、光った?】

一瞬、結晶が白い光を発したように見えた。
しかし、まばたきをする間にその光は消え、
〇〇は目の錯覚だろうかと首をかしげる。

ドライゼ……マスター。
ドライゼヴィヴィアン・リントンロッジの件を教えてくれ。
主人公【どうしてヴィヴィアンのことを?】
【ドイツ行きについての話は……?】
ドライゼいいから、教えてくれ! 知らなければならないのだ。
あの日ヴィヴィアン・リントンロッジに何が起きたのかを……!

ドライゼは、〇〇の肩を掴んで、
真剣な表情で詰め寄ってくる。
驚いた〇〇の手から、結晶が転げ落ちた。

ドライゼマスター、教えてくれ!

また一歩詰め寄ったドライゼ。
その大きな足が──……落ちた結晶を、思い切り踏んづけた。

主人公【ああーっ!!!】
ドライゼむ……?
主人公【ドライゼ、足を上げて!!】
【結晶が……!!】
ドライゼぬっ!?

ドライゼが飛び退くが、踏みつけられた結晶は粉々に砕け、
蒸発するように空気中に消え去った。

主人公【(あれ、なんだか色が違った……?)】
【(結晶が黄色っぽく見えたような)】
ドライゼなっ……今のは、一体……!?
主人公【カサリステが研究対象にしてる結晶だよ】
【謎だけど重要そうな結晶だったんだ】
ドライゼど、どう詫びればいいのか……!
とにかく、このことであなたが咎められないよう、
コペール中将やブルースマイル曹長には俺から話をする。
ドライゼ本当にすまなかった……!
ドライゼドイツ行きについてはまた改めて話そう。
この件で予定を変更する必要があるかもしれないしな……。

部屋を出ていこうとしたドライゼを、
〇〇は慌てて呼び止める。

主人公【ヴィヴィアンの話は?】
【ヴィヴィアンについて知りたかったのでは?】
ドライゼ……? ヴィヴィアン……?
ドライゼああ、そういえば……?
しかし、彼女に何があったのかは、報告書を読んで把握している。
改めてあなたに聞き、辛い記憶を呼び覚ます必要はないだろう。
ドライゼでは……俺は失礼する。
おやすみ、マスター。

マークス……よくわからないな。
ドライゼはどこか故障していたのか?
マークス知りたいと言ったり、
聞かなくてもいいと言ったり、意味がわからないな。
それに、結晶が光った……? あの透明な石は光るものなのか。
主人公【寝ぼけていたのかも】
【気のせいかもしれない】
マークスいや……マスターが言うんだから、
見間違いじゃないと俺は思う。
ラッセル──君! 〇〇君!
ラッセル実は、君に会いたいという人が来校された。
……一緒に来てくれ。

 

第5話:来訪者

シャスポーなあ。君の兄は本当にあんな感じの貴銃士なのか?
ライク・ツー知らねぇよ。貴銃士の姿で会ったことなんてないのに。
あの不審者のシュミだっただけじゃねーの?
シャスポーあまりいいセンスとは言えないね。
まあ……貴銃士を騙るような奴だから当然か。
ライク・ツー…………。
ライク・ツー(あれは一体何者だった?
……間違いなく、UL85A1の貴銃士ではあった。
俺が見間違えるはずはない……。)
ライク・ツー(「輸送中に奪われた本物」の個体?
……それとも、別の個体?
別の個体なら、どういう意図をもって俺の前に現れた……?)
ライク・ツー(あの時、どうしておくのが正解だった……?)
十手おや? ラッセル教官と〇〇君だ。
ジョージなーんかマジメな顔してるし、任務かな?
ラッセル……!
君たち、戻ったのか。
主人公【ライク・ツーも来た方がいいのでは?】
ライク・ツーん? 任務か? それなら行くけど。
ラッセルいや、任務ではなくて……
実は、ヴィヴィアン君の父君が来校しているんだ。
ライク・ツーはぁ!?
ライク・ツー(次から次へと……なんなんだよ、今日は)
ライク・ツーそれで、俺も来いってか……。
けど、リントンロッジ家には俺のこと、どう伝えてあるんだよ。
お前宛の遺言の内容を、あっちはどこまで知ってる?
ラッセルヴィヴィアン君が亡くなった経緯や、ライク・ツーについては、
機密情報にあたるため、リントンロッジ夫妻に開示していない。
ラッセル生前の彼女の意向で、校内墓地に埋葬することになった……
と伝えてあるだけだ。
ライク・ツーだったら、俺が行くのはおかしくないか。
ライク・ツー俺に関係ある話だったらあとで教えろ。
それでいいだろ?
主人公【……そうだね】
【そうするよ】
ラッセルでは……〇〇君、行こうか。

ラッセルお待たせしました。ヴィヴィアンさんのクラスの
担当教官を務めていました、ラッセル・ブルースマイルです。
こちらは、〇〇候補生です。
デレクああ、君が娘の親友だった〇〇君か……。
娘からの手紙でよく名前を見ていましたよ。
デレク……君に娘のことで質問したい。
答えてくれるかい?
主人公【もちろんです】
【自分に答えられることでしたら】
デレクありがとう。
……私は昔、軍にいてね。UL85A2を愛用していたんだ。
あれは、いいアサルトライフルだ。
デレクだから、フィルクレヴァートに入学する娘にも同じ銃を持たせた。
……娘は銃について何か話していたか?
何か気がついたこと、印象に残っていることはあるだろうか?
主人公【(ヴィヴィアンではなく、銃のことを?)】
【(どうしてそんなことを聞くんだろう?)】
ラッセル〇〇君?

〇〇は不思議に思いながらも、
ヴィヴィアンが銃について話していた内容を思い出す。

主人公【UL85A2は苦手だと……】
【あまり好きではないと……】

〇〇は、ヴィヴィアンの言葉が気になっていた。
苦手だと言っていたUL85A2を、
なぜ自分と一緒に埋葬してほしいと遺言に残したのかも。

デレク……やはり……?
デレクそれで、そのUL85A2は今どこに?
返還された遺品の中になかったからには、
士官学校にあるのでは?

答えていいのかわからず、
〇〇はラッセルへと視線を向ける。

ラッセルUL85A2については、彼女の遺言に従い、
彼女とともに校内墓地に埋葬しています。
デレク墓か!
デレクそうか……ヴィヴィアン、お前というやつは……!

デレクは立ち上がると、足早に応接室から出て行った。

ラッセルあっ……!
ど、どこへ? お待ちください!

ラッセルと〇〇は、
デレクを追いかけて応接室を出る。
すると、廊下にはライク・ツーが立っていた。

ラッセルライク・ツー……。
ライク・ツーちょっと気になって来ただけだ。
つーか、さっき出ていったおっさんが?
ラッセルああ。ヴィヴィアン君の父君のデレク氏だ。
彼はどっちに?
ライク・ツー血相変えてあっちに行ったぜ。
デレク墓か!

やや血走った目を見開いていたデレクを思い出し、
〇〇は不安に駆られる。

主人公【まさか……?】
【校内墓地に行かないと……!】
ライク・ツーは……?
おい待て、〇〇!

〇〇たち3人が校内墓地へ走っていくと、
その一角──まだ新しい墓碑の前に、デレクが佇んでいた。
彼は、どこから持ち出したのか、シャベルを手にしている。

ライク・ツーおいおい、嘘だろ……!
ラッセルリントンロッジさん、一体何を……!?

デレクは、ヴィヴィアンが眠っている場所に、
ザクッとシャベルを突き立てた。

ラッセル……っ!!

第6話:墓荒らし

ライク・ツー……おいおい、正気かよ……!
ラッセルリントンロッジさん!
何をしているんです!?
主人公【やめてください!】

ラッセルと〇〇がデレクの腕を掴むが、
彼は強い力で2人を振り払った。

デレク止めるな!!
デレクここを掘ったら、UL85A2があるのだろう!?
ならば、娘も私のことを許すはずだ!
デレクあの銃は、葬り去られるべきものではないのだ……!
すぐに掘り起こさねば……っ!!

目を血走らせ、再びシャベルを手にするデレク。
まともではない彼の様子に慄きながら、
なんとか暴挙を止めようと、〇〇は叫んだ。

主人公【掘っても無駄だ!】
【銃はそこにはない!】
デレクなんだと……? どういうことだね!?
ラッセル……!
ラッセル銃、ですから……。
安全上の都合で、遺言通りの処理はできませんでした。
デレクでは、UL85A2はどこに──……

デレクの視線がライク・ツーに向けられ、
ピタリと止まった。

デレクその銃は、UL85A2……?
お姿はまるで違うが……いや、髪の色は変わっていない……。
デレクあっ……あなたこそが、ライク・ツー様ですね!

デレクは、ライク・ツーの前に跪いた。

ライク・ツーは……?
確かに、俺はUL85A2、ライク・ツーだけど。
デレク私のことを覚えていらっしゃるでしょうか。
陥落したイレーネ城から、あなた様をお救いしたのですが……!
主人公【イレーネ城……?】
【お救い……?】
デレク私はしがない末端の兵士でした。
しかしあの戦いを生き延び、銃に戻られたあなた様を見つけ、
レジスタンスどもが城を占拠する前に密かに持ち出したのです。
デレク私ごときがライク・ツー様を手にするなど、
おこがましいとは思いましたが、
あのままでは賊共に破壊されると思い……。
デレクいつか時が満ち、偉大なる世界帝の世が戻るまで、
あなた様をお守りすると誓ったのです。
デレク……まさか、献上の機会を前にして、
娘からの妨害は入るとは夢にも思わず……
誠に申し訳ありません。

突然始まったデレクの演説じみた言葉に、
3人は呆然として固まる。

ライク・ツーお前……さっきから何、わけわかんねぇこと言ってんだ……?
デレクああ、恐れる必要などありません、ライク・ツー様。
デレク世界帝の復権を掲げるトルレ・シャフが勢力を増し、
私は時が近づいていることを感じて
彼らにコンタクトを取りました。
デレク世界帝軍の貴銃士であったライク・ツー様を、
世界帝復活の旗印として召銃していただくために……!
デレクしかし──献上したUL85A2が、
まったくの別個体であると判明したのです。
デレクそんなことはありえない……。
私が持ち出したのは、間違いなくライク・ツー様です。
何が起きたのかと考え……私は娘のことを思い出しました。

デレクおい、ヴィヴィアン!
これは一体なんだ!!
ヴィヴィアン私のノート……! 勝手に引き出しを漁ったわけ!?
最低……返してよ!!
デレクこんなものは処分だ!
あの偉大なるお方の治世を愚弄する下劣な記事ばかり集めて……
お前はなぜ道を踏み外す!!
ヴィヴィアン偉大? 馬鹿なこと言わないでよ!
世界帝軍が何したか、お父さんだって知ってるでしょ!
虐殺、拷問、重税……何が治世よ、ただの圧政じゃない!
デレクヴィヴィアン、お前……!
世界連合の洗脳教育に染まったか!
我が娘がここまで愚かとは……。
ヴィヴィアン洗脳されてるのはお父さんとお母さんの方でしょ!
世界帝が間違ってないっていうなら……
エマは何か重罪を犯したの!? それを証明できるの!?
ヴィヴィアン世界帝軍は、あの子の親がレジスタンスかもしれないってだけで、
エマまで捕まえて……。
あの子は二度と戻ってこなかった!!
ヴィヴィアン世界帝のどこが偉大なのよ……!
あんなヤツ、差別主義者の殺戮者、殺人鬼よ!!
デレクヴィヴィアン!!

デレクあまり家に寄り付かなかったが、何度かは家に帰ってきていた……
その時にこっそり、あなた様を自分の銃とすり替え、
士官学校へ持ち去っていたのでしょう。そうとしか考えられない!
デレクあの子は、私と妻の忠誠心を理解できないままでしたから。
だからこそ、命を落とすことになったのでしょう。
主人公【……!!】
デレクさあ、ライク・ツー様!
デレクともに参りましょう、トルレ・シャフへ!
哀れなる羊たちを導いてくださいませ。
ラッセルトルレ・シャフ……!

デレクが恭しくライク・ツーの手を取ろうとする。
が、ライク・ツーがその手をはねのけた。

ライク・ツー行くわけねぇだろ。
ライク・ツー……俺はすり替えられてなんかいない。
入学した時から、あいつの……ヴィヴィアンの銃だった。
イレーネ城とやらも知らないな。
ライク・ツーお前の言ってることは、全部妄想だ。
そもそも、お前が城から持ち去ったっていう銃自体、
世界帝軍にいたUL85A2とは違うやつだったんじゃねーの?
デレクそんなはずは……。
ライク・ツーさっさと気づけよ、狂信者。
てめぇのやったことは、全部無駄だったんだってな。
デレクそ、そんな……そんな……。
あ……う……尊きUL85A2はどこに……。

デレクは、幽鬼のようによろよろと歩き始める。
彼の手をラッセルが掴み、拘束した。

ラッセルトルレ・シャフとの関係の自白を聞いた以上、
このままお帰りいただくわけにはいきません。
連合軍で取り調べを受けていただきます。
デレクああ、ライク・ツー様……。

ラッセルがデレクを連れていき、
墓地には〇〇とライク・ツーだけが残された。

ライク・ツーはぁ……最っ悪なおっさんだったな。
そりゃヴィヴィアンも、あんな親父がいるんなら
家なんか帰りたくねーわ。
ライク・ツー……おい、〇〇。
あいつが言ってたこと、全部嘘だからな。
主人公【(何かが、引っかかる……)】
【(ヴィヴィアンが言ってた……)】

ヴィヴィアン私、実は……自分の銃のこと……
このUL85A2のことが、苦手なの。

「このUL85A2」が苦手だと言っていたヴィヴィアン。
なぜ彼女がそう思っていたのか、ずっと謎だった。
そして、苦手だという銃を一緒に埋葬してほしいという遺言も。

しかし……もしも、デレクの言う通りだとしたら、
世界帝の銃だった個体を父親やトルレ・シャフが悪用しないよう、
自分とともに永遠に葬るつもりだったのではないか……。

主人公【(……納得はできてしまう)】
【(辻褄が合ってしまう……)】
ライク・ツー……〇〇……?

コメントを書き込む


Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

まだコメントがありません。

×