第18話:暴露

ライク・ツー(……確かに、あんなに強力に洗脳じみたことができるなら、
なんだって思うがままだ)
ライク・ツー(けど……このやり方じゃあ、
あくまで“そう思わせてる”だけだ。
そんなのは……意味がねぇ。俺のやり方じゃない)
ラッセル──イギリス支部に連絡が取れた。
ダンジネスで待機していた隊が向かっているそうだ。
ラッセル動ける兵士には、外で集合するよう伝えてある。
残念ながら、生存者は十数名のようだが……。
ラッセル私たちも外に出て、負傷者の応急手当をしよう。
エヴァンズ教官は──。
エヴァンズん……、んん?
私は……。
エヴァンズ……っ、なぜだ、なぜだ……っ!
私の傷がぁ……!!
恭遠エヴァンズ教官……!?
エヴァンズ私の薔薇の傷が……マスターの証が、なぜないのだっ!?
ライク・ツー……は……?

彼が左手を上に重ねていたので気がつかなかったが、
エヴァンズの右手に刻まれていたはずの薔薇の傷跡が、
確かになくなっていた。

ジョージあ……まさか……。
十手エヴァンズ教官を止めようと、
俺たちが絶対高貴を使った時に、消えてしまった……?
ラブ・ワン…………。
ファルと、いうことは……ラブ・ワンさん。
あなた……なぜ、消えてないんです?
全員……!!
シャルルヴィルえ……ええっ?
エヴァンズ教官は本当のマスターじゃない……?
いや、でも、絶対高貴で治ったならちゃんとした薔薇の傷だよね。
シャルルヴィル薔薇の傷は本物だったけど、
ラブ・ワンさんのマスターじゃなかった、ってこと……?
エヴァンズそんな……まさか!
私は確かにお前を召銃したはずで……!
エヴァンズ……はず、で……?
……なぜ、だ……思い……出せない……?
ラブ・ワンあは★ バレちった。

呆然としたために、
貴銃士たちや〇〇の反応がわずかに遅れた。

マークス……っ、マスター!!

その一瞬の隙に、ラブ・ワンは〇〇を拘束し、
銃口を向ける。

マークスマスター!!
マークスてめぇ……マスターを離せ!
ラブ・ワンえ〜〜、やだよぉ。
だって離したら、おいらの話聞く前にバーン! でしょ?
エヴァンズお前は、何を……。
私の……私の貴銃士が……。
ラブ・ワンざぁんねん。
おいら、エヴァちんの貴銃士じゃないんだよね〜。
ラッセル……!?
一体どういうことなんだ……!?
話なら聞くから、俺の生徒に手を出さないでくれ……!
ジョージおまえの本当のマスターは誰なんだ!
なんでこんなことすんだよ!
ラブ・ワン最初に言ったじゃーん?
おいら、トルレ・シャフのラブ・ワンだって。
ラブ・ワンあれ、マジなの。
連合軍ジョークとか嘘ついててごめんね、エヴリバディ!
ラブ・ワン改めて紹介しまーす★
エヴァちんは、おいらを召銃したって、
あの結晶のせいで思い込んでるだけの哀れなオジサン!
エヴァンズそ、そんな……そんな……っ!
ラブ・ワンんで、おいらはぁ……
ラブ・ワン元世界帝軍の特別幹部アーンド、
現トルレ・シャフの貴銃士★
ライク・ツーお前……っ!
ラブ・ワン……ね、ライたん。
俺が前に言ったことの意味、
スマートなライたんならもうわかってるよね。
ラブ・ワン完全結晶の力、すごくない?
あれがあったら、ぜーんぶ思うがままなんだよ。
人間も──貴銃士も、世界も!
ラブ・ワンこれでライたんの願いも叶うんじゃないかな〜。
だから、俺と一緒に行こうよ。
ライク・ツー……バッカじゃねーの。
俺はトルレ・シャフなんかに興味ねぇ。
俺にはここで、やるべきことがあんだよ。
ラブ・ワンええ〜! 信じらんないなぁ〜。
だって……ライたん、嘘ばっかりなんだもん。
ライク・ツー……!
ラブ・ワン中途半端でぇ、嘘つきなライたん。
やるべきことがあるって言うけど、
みんなは知ってるわけ? 知らないよねぇ〜!
ライク・ツー……やめろ。
ラブ・ワン……お前こそやめろよ。
ライク・ツー……っ!
ラブ・ワン一番重要なところを隠しといて、
「ここでやるべきことがある」とか冗談キッツいよ?
ライク・ツー隠してることなんて──。
ラブ・ワンふぅーん。
俺、ムカムカして指滑っちゃいそ〜。

ラブ・ワンは、〇〇に突きつけた銃の
引き金に触れた指を滑らせる。

マークスマスター!!

マークスはラブ・ワンに狙いを定めるが、
〇〇を盾にされては手が出せない。

ライク・ツー……ッ、やめろよ、そいつは関係ねぇだろ!
ラブ・ワンはい、またウソ〜! ライたんの隠し事は、
〇〇ちんにも関係大アリでしょ。
ライク・ツー……てめぇの望みはなんなんだよ。
ラブ・ワン俺は、ライたんとちゃんと会話がしたいだけ。
嘘も隠し事もなしの、本気の会話ね。
ラブ・ワン……ねぇ、ライたんの望みはなんなの?
なんのためにそっちにいるの?
ライたんは──
ライク・ツー……黙れ。
わかった、わかったから……!!
ライク・ツーその先は……自分で言う。
俺は……。
ライク・ツー…………っ。
ライク・ツー……俺は、世界帝軍にいたライク・ツーだ。

第19話:最後に願うこと

ライク・ツー……俺は、世界帝軍にいたライク・ツーだ。
一同……!!
マークス……やっぱり、お前は……俺たちを、騙して……!
ライク・ツー俺の望みは……名誉挽回。

ラッセルライク・ツー、君にも聞いておきたい。
君にとって一番大事なものはなんだい?
〇〇君ではなさそうだが……。
ライク・ツー…………。
…………め一よばんかい?

主人公【(……そうだった)】
【(……そんな話をしていた)】
ライク・ツーかつては世界最高の権力者で──今は、世紀の大罪人。
そんな世界帝の貴銃士として頑張った「お仕事」は、
今となっては「犯罪」だ。
ライク・ツーおまけに土壇場で世界帝を裏切って、レジスタンス側についた。
どっちつかずで最低最悪の卑怯者。
それが、俺が作っちまったライク・ツーのイメージだ。
ライク・ツーそうなったのは、俺が悪いから言い訳はしねぇ。
派手好きで、負け犬も貧乏も嫌い。
求められるがままに働いて、充実感もあった。
ライク・ツーけど、世界帝が負けそうになったら真っ先にビビって、
兄貴も俺も壊されてゴミにされるのが嫌で、
さっさとあの人を見限った。
ライク・ツーぜーんぶ、場当たり的な判断だ。
嫌なもんから逃げてただけ。
ライク・ツーだから……もしやり直せるなら、
今度はよく考えて、自分で判断して、ちゃんと道を選んで……
いいライク・ツーになろうと思った。
ライク・ツー俺が泥まみれにしたライク・ツーの名前と名誉を、
俺自身の力で綺麗に……挽回してやる。
ライク・ツーそのためには、トルレ・シャフの打倒……
奴らの裏にいそうな、世界帝の排除が一番だって考えた。
ジョージ……ライク・ツー……。
ライク・ツー……〇〇。
お前に召銃された時に雑魚だって煽ったのは、
お前がヴィヴィアン想いだってわかってたからだ。
ライク・ツーただの銃に戻ってた間のことも……
断片的にぼんやりだけど、覚えてたから。
ライク・ツーお前と対等な協力者になるために、
嘘の目的を設定した。

ライク・ツー俺はあいつを殺したやつを、この手でぶっ殺す。
ライク・ツーそして、あいつが成し遂げようとしていたことを、
この手で代わりに成し遂げてやる。絶対にな。
ライク・ツーよし、そう決めた。
いま決めた。

ライク・ツーヴィヴィアンのことは、本当の目的じゃなかった。
お前に取り入るために、利用したんだ。
ライク・ツー……今まで騙してて、悪かったな。〇〇。
主人公【ライク・ツー……】
【…………】
マークスてめぇ……何が悪かっただ。
マスターの想いを利用して……裏切って……!
絶対に、絶対に、許せねぇ……!!
ライク・ツー……ラブ・ワン。そいつを離してくれ。
ライク・ツートルレ・シャフに行くつもりがねぇのは、俺の本心だ。
こいつらに全部ぶちまけて、もう計画はパーだし、
ここに残るつもりもねぇ。
ライク・ツーははっ……所詮、負け犬は負け犬以上にはなれねぇんだな。
名誉挽回も、もうおしまいだ。
ライク・ツーけど……それでも、トルレ・シャフにはつかない。
ラブ・ワンそれ、トルレ・シャフには
勝つ見込みがないって思ってるってこと?
もうぜーんぶ諦めちゃってどうでもいいってこと?
ライク・ツー……どっちも違う。
ライク・ツーヴィヴィアンは……世界帝を憎んでた。
だから、父親がトルレ・シャフに俺を献上しないように、
危険をおかしてすり替えて……俺は、士官学校に持ち込まれた。
ライク・ツー俺がもう一度貴銃士として目覚めて……
おまけに、名誉挽回まで狙える立ち位置につけたのは、
あいつの意志が、〇〇と引き合わせたからだ。
ライク・ツー名誉挽回が駄目だとしても、
せめて、ヴィヴィアンと〇〇……
最後の持ち主たちの願いも、進む道も、邪魔したくねぇ。
ライク・ツーだから、俺はそっちには行かない。
マークス…………。
ライク・ツー……〇〇、俺を銃に戻せ。
主人公【……!】
ライク・ツーぜーんぶわかっただろ? 俺はここまでだ。
銃に戻って今度こそ遺言通りに墓に埋められるか、
分解してどっかに厳重に封印するか……。
ライク・ツー使える状態だと悪用されかねないし、
壊しちまうのが一番いいかもな。
ライク・ツーはは……ゴミになるのが数年遅れただけで、
俺の運命ってやつは結局同じとこに着地すんのか。
主人公【壊す、だなんて……】
【……嫌だ】
ライク・ツーなんだよ。ためらう理由がどこにある?
俺は存在しない方がいい個体だ。
後々の火種にならねぇように消すのが合理的だろ。
ジョージ……やめろよ……やめてくれよ、ライク・ツー。
十手ライク・ツー君……!
スプリングフィールド&シャルルヴィル…………。
ライク・ツーラブ・ワン。わかっただろ、望みはゼロだって。
……〇〇を離せ。
離してくれ……頼む。
マークスライク・ツー……。
ライク・ツー俺の、最後の願いだ。
……お願い、お兄ちゃん。
ラブ・ワン…………。
ラブ・ワン…………。
ラブ・ワン……わかったよ、OKOK!
ライク・ツー え……?

ラブ・ワンは笑顔になり、
あっさりと〇〇を解放した。

マークスマスター!
大丈夫か? 強く掴まれたりしてないか? 痛むところはないか?
主人公【大丈夫】
【なんともないよ】
ジョージ〇〇……! よかった……!
マークスラブ・ワン。覚悟はできてんだろうな?

第20話:消失と真実

銃を構えるマークスを、〇〇は慌てて止めた。

マークスマスター、止めないでくれ!
あいつはマスターを撃とうとしたんだ。俺が始末する!!
主人公【ラブ・ワンに撃つ気はなかったはず】
【ラブ・ワンはライク・ツーを試してただけ】
マークスえっ……?
ラブ・ワンアウチ!
参っちゃうな〜、〇〇ちん。
おいらに人質にされながら、そんなこと思ってたわけ?
ラブ・ワンお見通しではずかしい〜。
でも、おかげでライたんの気持ちがよくわかったから、
許しちゃうよん★

その時──ラブ・ワンの身体が、淡く光り始める。

十手なにっ……!?
マークスマ、マスター……! 俺は撃ってないからな!
ラブ・ワンあっはははは!
そんなことわかってるって!
ラブ・ワンこれは……時間切れってことだね。
エヴァンズ……! 私からの力の供給が途絶えたから……?
ラブ・ワンブッブー、エヴァちん不正解!
ラブ・ワン実はさ……俺の本体、トルレ・シャフに握られてんの。
ライク・ツー……っ!
ライク・ツーお前、まさか……。
ラブ・ワンうん、人質っていうか銃質っていうか?
いやぁ、まいっちゃうねぇ。
ラブ・ワンライたんと接触して連れてこいって言われててさ。
逃げたり失敗したり……まあとりあえず、
期限内にクリアできなきゃ、問答無用でゲームオーバー。
ラブ・ワンああ、気にしなくていいからね、ライたん。マジで。
どうせ、俺はあの人よりライたんを優先するってバレてるし、
失敗前提みたいなとこあるミッションだからさ。
ライク・ツーんなこと、一言も……!
ラブ・ワンいや〜、ライたん面倒見いいし?
俺がライたんの気持ちを左右すんのは違うなーっていう、
俺なりのこだわりっていうか。
ラブ・ワン俺は……どのみち終わりが決まってるなら、
最期にライたんの本心を知りたかった。
ラブ・ワンわがままなお兄ちゃんでごめんね、ライたん。
ライたんは諦めないでさ、やっちゃいなよ、名誉挽回。
ライク・ツーめちゃくちゃにしといて……っ、
何馬鹿なこと言ってんだよ……。
ラブ・ワンいや、ほんとゴメンッ!
でも……応援してるよ。
ラブ・ワンおいらは……他のどのUL85A2でもない、
“ライたん”が弟で、本当に楽しかった。
ライク・ツー……っ、待って……!
ラブ・ワンじゃあね。Bye〜★

ラブ・ワンの姿が消える。
持つ人を失った、彼の本体だったものではない銃が、
重い音を立てて床に落ちた。

ライク・ツー…………。

がっくりと膝をついたライク・ツーへ、
マークスが銃口を向ける。

マークス……ライク・ツー。
あんたは本当に負け犬だ。
嘘ついて、騙して、その挙句にすべてを失った。
十手マークス君……!?
マークスおい、立てよ。
俺が正確精密に、心臓撃ち抜いてやる。
ライク・ツー……立つ必要ねーだろ。
さっさと撃てよ、ほら。

目を閉じたライク・ツーは、軽く腕を広げる。

ライク・ツーちゃんと本体も壊せよ。
ライク・ツー…………。
手間かけて悪ィな、マークス。
マークス……ッ。
マークスくそっ、なんで……。

マークスは、かすかに震える指先に舌打ちをこぼした。
しかし、深呼吸をして狙いを定める。

主人公【……待って、マークス】
マークスマスター……?
主人公【……許さない】
ライク・ツー〇〇……わかってる。
許してもらおうなんざ──
主人公【消えるなんて、許さない】
ライク・ツー…………!

 

第21話:それでも

──〇〇の脳裏に、
これまでライク・ツーとともに過ごした時間が次々と蘇る。


ライク・ツー…………。
お前らだけでフラフラ動くよりは、
俺もいた方がまだマシか。
ライク・ツー渋々だからな! 調子に乗んなっての。

ライク・ツーああ。
いや、大したことじゃねぇんだけど……。
お前……足、怪我したんだって?
ライク・ツー大したことないからって甘く見ないで、
ちゃんと痛みも腫れも引いて良くなるまで無理すんなよ。
その方が早く治って、早く訓練に戻れるからな。
ライク・ツートレーニングでなんかわかんねーことあれば、
俺が暇だったら付き合ってやってもいい。

ライク・ツー乗り掛かった舟ってやつ。
俺も乗っかった以上沈没するわけにはいかねぇし、
仕方ねぇからジョージたちが来るまでは手伝ってやる。

ライク・ツー銃だろうが鉄だろうが、俺の在り方は俺が決める。
……その先にどんな未来があろうとも、
自分で決着をつけてやる。

ライク・ツーあのおっさん、
前にも一度手紙を置いていっただろ。
ライク・ツーその顔からして……ちゃんと話せたみたいだな。
よかったじゃん。

主人公【自分はライク・ツーを信じたい】
ライク・ツーこの期に及んで……お前は甘っちょろすぎんだよ。
だから俺みたいなのに騙される。
主人公【すべてが嘘ではなかったはず】
【ライク・ツーの本心にもたくさん触れたはず】

〇〇は、ヴィヴィアンの父親の話を聞いた時、
ライク・ツーに疑心を抱いてしまったことを打ち明けた。

しかし、その後、これまでの出来事を思い返していくうちに、
たとえ彼の話が本当だとしても、〇〇たちと
ライク・ツーが過ごした時間は本物だと思い直し──

本心で話し合えば、いつか必ずわかり合える時が来る。
そう信じると決めたのだと、ライク・ツーに伝えた。

ライク・ツーだから……言ってんだろ。
本物なんかじゃない。最初から全部嘘なんだよ!
主人公【最初は嘘でも、今から本当にすればいい!】
ライク・ツーは……?
嘘を……本当に……って。
主人公【ヴィヴィアンの仇をとろう】
【ヴィヴィアンの無念を晴らそう】
ライク・ツー…………。
主人公【自分と一緒に来て!】
【消えるのは許さない!】
ライク・ツー……嘘を、本当に……。
ライク・ツー……わかった。それなら──

ライク・ツーは大きく息をつくと、視線をどこかへ彷徨わせた。
誰かを探すように──そして、ある1点へと定める。

ファル……?
ラッセルええと……私もまだ混乱しているんだが……。
そろそろ応援が到着する頃だし、一旦外に出よう。
ラッセル ラブ・ワンがあのタイミングで消失したことからして、
この基地内にトルレ・シャフの監視が及んでいる可能性もある。
何か攻撃を仕掛けられては危険だ。
ラッセルラブ・ワンとライク・ツーについては……
士官学校に戻ってから、いろいろなことを検討する必要が──

話しつつ、ラッセルが外へ向かって歩き始めた時だった。

──ドゴォン!!

ラッセルぐっ……!
マークスマスター!!
ライク・ツー〇〇!

十数メートル先で何かが爆発したらしく、
強い衝撃が〇〇たちを襲った。
建物の天井のコンクリートが剥落し、粉塵とともに落ちてくる。

マークス……ッ、マスター、大丈夫か!?
主人公【大丈夫】
【2人が守ってくれたおかげで】
マークス&ライク・ツー……!
マークス&ライク・ツー…………。
ラッセルみんな、早く避難するんだ!
第二、第三の爆発が起きるかもしれない!
ジョージ行くぞっ!!
十手まずい……大きな柱がやられてしまっている……!
早く出ないと崩れるかもしれないぞ……!
シャルルヴィルみんな、走れる!?
エヴァンズ……あ、ああ……。

第22話:刻まれる名前

──一行は、基地の中を全力で走った。
もうすぐ外に出るという時──。

ラッセル……っ、しまった、通信機が……!

ラッセルの胸ポケットから滑り出た通信機は、
階段を転げ落ち、地下へ続く階段の踊り場に落ちる。

ラッセルもっと応援が必要になりそうなのに……!
先に出ていてくれ!
シャルルヴィル気をつけて! ラッセル教官も早くね!

〇〇たちが、一足先に外へ脱出した直後だった。

──ドゴォン!!

一同……!!
マークス……なっ……!

ひときわ大きな爆発音が鳴り響き──
基地の建物は、一気に崩壊し始める。

スプリングフィールドそんなっ……!
十手ラッセル教官は、まだ……!?
ファルええ。まだ出てきていません。
主人公【ラッセル教官!!!】
シャルルヴィルこ……こういう時って、間一髪で脱出できてて……
ほこりまみれになりながら、ね……そう、だよね……?

しかし、ラッセルが出てくることはなかった。
呆然とする一行の前で、断続的に爆発や炎上が続き……
ものの数分で、基地のメイン棟は瓦礫の山と化す。

恭遠ラッセル教官……!
返事をしてください!
声が出せないなら、何か物音を!!
恭遠……ラッセル教官……。

呼びかけに答える声も、音も、なかった。


──────

──数週間後。

──フィルクレヴァート士官学校、
メモリアルウォールにて。

生徒たちが順番に、花を手向ける。
すすり泣きが聞こえる中、貴銃士たちと〇〇も、
重い足取りで進んだ。

十手……悪い夢でも、見ているのだろうか……。

『ヴィヴィアン・リントンロッジ』
その文字は今日、メモリアルウォールの最後の名ではなくなった。

ジョージ『ラッセル・ブルースマイル上級曹長』……。
マークス二階級特進……そんなものに意味があるのか。
恭遠…………。
恭遠さあ……俺たちも、花を手向けよう。
主人公【……どうか、安らかに……】
ライク・ツー…………。

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