司祭 | まずは教会の中をご案内しましょう。 |
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司祭に連れられて教会の中を進んでいくと、
男女と子供の家族らしき2組が目に入る。
十手 | あの人たちは……? |
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司祭 | 彼らの家は、先日の嵐で屋根が大きく壊れてしまいまして。 修理が終わるまで、教会を仮住まいとしているのです。 |
十手 | それは大変だな……。 俺たちも任務の合間に何かできることがあれば手伝うよ。 |
司祭 | 素晴らしいお申し出に感謝します……! 皆、きっと喜ぶことでしょう。 |
村人1 | 司祭さまー! 食事を持ってきましたよ。 |
村人2 | あれ、お客人ですか? |
司祭 | ええ、彼らはこの村を脅威から守るために、 連合軍が派遣してくれた方々ですよ。 |
村人2 | それじゃあ、森をうろついてるおっかない連中を とっ捕まえてくれるんですね! いやあ、ありがたい! |
村人1 | 人数は、1、2、3、4……7人で合ってます? 追加で持ってきます。 |
ロッシ | ……本当にいいのかな。 皆さんの分が減ってしまっては申し訳ないが……。 |
村人2 | はは、大丈夫ですよ。 皆の分から少しずつ分ければいいだけですし、 兵士さんたちは私たちのために来てくださったんだから当然です。 |
村人1 | 待っててくださいね、すぐに持ってくるので! |
カトラリー | ……嫌な顔ひとつしないんだね、あの人たち。 |
司祭 | 分かち合うのは、プラトー村では当然のことですからね。 皆さんもこの村までの道のりでおわかりになったでしょう。 車は通れず、麓からは健脚でも3時間はかかる……。 |
司祭 | 食べ物も道具も、簡単には手に入りません。 だから我々は一つの共同体として、皆で支え合うのです。 それがルール……というより、暮らしの知恵なのですよ。 |
ロッシ | 素晴らしい秩序の境地ですね。 世界中がこの村のようであれば……と願ってしまいます。 |
〇〇は、先日のカウンセリングで
ロッシが話していたことを思い出した。
ロッシ | 連合軍と、トルレ・シャフをはじめとする親世界帝派、 その他の勢力の衝突は今でも続いている。 そして、これからも犠牲は出続ける……。 |
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ロッシ | 争いのない世界を──これは、多くの人の願いであるはずなのに、 なかなかどうして遠い目標だ。 |
司祭 | ええ……そうですね。 ただ、世界規模となるとそう簡単にはいかないのでしょう。 ですが、希望は捨ててはなりません。 |
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ロッシ | 希望を捨ててはお終いですからね。 短い間ですが、プラトー村で学ばせていただきます。 |
タバティエール | …………。 |
村人1 | お待たせしました! 皆さんの食事ですよ。 |
村人2 | 温かいうちに召し上がれ。 |
主人公 | 【ありがとうございます】 【いただきます】 |
村人たちから渡されたのは、ドロッとした薄茶色のペーストと、
野菜と肉らしきものが少し入ったスープだった。
カトラリー | ……なんだろ、これ……。 つぶつぶがあるから穀類? ってことはリゾットなのかな……。 にしては、茶色いしお米の形が消えてるけど……。 |
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十手 | おお、粥や雑炊みたいな感じかな。 出汁の味が染みた米ってのは美味いもんさ。 いただこう! |
十手 | …………んん……? |
リゾットらしきものを一口食べた十手は、怪訝な顔で固まった。
カトラリー | どうしたの。意外と美味しいの? これ。 じゃあ僕も── |
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カトラリー | ──んん? ……んんん……? 何これ、味がほとんどしないんだけど……。 |
〇〇も一口食べてみる。
リゾットもスープも薄い塩味があるのみで、
士官学校の食事と比べるとかなり味気ない。
マークス | 味付けを忘れたのか……? |
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タバティエール | いや……。 |
タバティエールの視線の先では、
避難中の2世帯が、平然と食事を口に運んでいた。
ゴースト | ……昔、塩は貴重なもんだった……って聞いたことがある。 この村でも、そうなんじゃないか……? |
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ロッシ | ……そんなに大変な状況なのに、 私たちの分まで用意してくれたんだね。 |
7人は言葉少なに夕食を終え、
村民のところへ食器を返しに行こうと外に出る。
タバティエール | お、雨は止んだみたいだな。 |
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カトラリー | ねぇ、任務って明日くらいで終わりでいいよね? 来る途中に倒したやつで全部かもしれないし、 明日見回って他にいなさそうならおしまいでしょ? |
ロッシ | うーん……アウトレイジャーの正確な出没数が不明だから、 まだなんとも言えないかな。 明日村の人たちから話を聞いて、目撃情報があるあたりを── |
村人3 | ──大変だ! マディじいさんが襲われた!! 誰か来てくれ!! |
一同 | ……! |
主人公 | 【行かないと!】 【急ごう!】 |
タバティエール | すまん、食器を頼む! |
村人1 | あ、ああ……! |
村人の案内で一行が向かった先には、
肩のあたりを怪我してうずくまる老人の姿があった。
全身が土と落ち葉まみれで、擦り傷なども多くある。
村人3 | 雨が上がったから木の実を取りに出たら、 銃を持った連中に襲われたんだ……! |
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村人3 | 必死に逃げたけど、じいさんが撃たれて 斜面を転がり落ちて…… でも、そのおかげでなんとか逃げ切れて……。 |
ロッシ | 私は応急処置をする……! 君たちは、周囲に連中がいないか見てきてくれ。 発見次第討伐。十分に気をつけること、いいね。 |
主人公 | 【はい!】 【イエッサー!】 |
タバティエール | 待て、こっちにも護衛がいた方がいい。 俺でよければここに残るよ。 |
十手 | たしかにそうだ……! 頼んだよ、タバティエール君。 |
マークス | マスター、こっちだ! |
斜面を上り、ぬかるんだ地面に残された
アウトレイジャーのものらしき足跡をたどる。
しかし、再び──今度は土砂降りの雨が振り始める。
大雨の中夜の森を歩くのは危険なため、
5人は追跡を断念し、プラトー村へ戻ることになった。
──その日の夜。
ヴィヴィアン | …………。 |
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主人公 | 【ヴィヴィアン!!】 【早く逃げて!!】 |
ヴィヴィアン | ……えっ、〇〇……? なんでこんなところに── |
──パァンッ!!
ヴィヴィアン | うっ……! |
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ラッセル | ……っ、しまった、通信機が……! |
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ラッセル | 私のことは気にせず、先に出ていてくれ! |
主人公 | 【駄目です!】 【行ったら、ラッセル教官は──!】 |
──ドゴォン!!
主人公 | 【(嫌だ……!)】 【(どうして、何も変えられない……!?)】 |
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??? | ──君、〇〇君。 |
十手 | 〇〇君、起きてくれ。 |
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主人公 | 【十手……?】 【一体何が……?】 |
十手 | ひどくうなされていて……心配で起こしてしまったんだ。 大丈夫かい? |
十手 | …………。 ……よかったら、少し外に出ようか。 みんなを起こさないように、そーっとね。 |
〇〇は、十手と共に教会を出る。
街灯の灯りがないため、周囲は真っ暗だ。
十手 | ……おお、こいつはすごい! 〇〇君、上を見てごらん。 |
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十手が指差す通りに見上げると、
そこには空いっぱいに無数の星が輝いていた。
主人公 | 【……綺麗】 【本当にすごいね……】 |
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十手 | ここは標高が高いから、 フィルクレヴァートよりも星が近くに見えるね。 |
主人公 | 【ペンシルヴァニアがいたら喜びそう】 【十手は星が好き?】 |
十手 | ……今頃、士官学校にいる皆はどうしてるんだろうな。 もしかしたら誰かも、こうして空を見上げているかもしれないね。 |
2人はしばらく無言で星空を見ていた。
〇〇は、士官学校に残してきた貴銃士を想う。
主人公 | 【ライク・ツーは大丈夫かな】 |
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十手 | ……出発前に声をかけたけど、 ちゃんと話せなかったしなぁ……。 |
──久々の任務参加が決まり、
〇〇と十手はライク・ツーの部屋を訪れた。
十手 | ライク・ツー君、起きているかい? |
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十手 | 任務の要請があって……俺としては、 ライク・ツー君も一緒だと心強いんだが── |
十手 | ……ライク・ツー君? |
少しドアを開けて室内を見ると、
毛布が人型に膨らんでいるのがわかる。
ライク・ツー | …………。 |
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主人公 | 【寝てるみたい】 |
カトラリー | ねぇ、〇〇、十手! もうすぐ迎えの車来るってさ! |
十手 | 了解だ、カトラリー君! |
十手 | ……行かないと、だな。 |
ドアが閉まり、2人の足音が遠ざかる。
ライク・ツー | …………。 ……はぁ……。 |
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十手 | ラブ・ワン君のことがつらくないはずがない……。 普段気丈な彼が、ここまで参ってしまっていて、 とても心配だよ……。 |
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十手 | でも、確かに〇〇君の願いは届いていた。 だから……彼ならきっと大丈夫なはずだ。 |
──最初は嘘でも、今から本当にすればいい。
ヴィヴィアンの遺志を〇〇とともについでほしい。
その願いを聞いて、たしかにライク・ツーは頷いていた。
ライク・ツー | ……嘘を、本当に……。 |
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ライク・ツー | ……わかった。それなら── |
主人公 | 【そう自分も信じてる】 【時間はかかるかもしれないけど】 |
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十手 | ああ……そうだね。 |
その時──かすかな足音に気づき、
十手は〇〇を引っ張って教会の陰へ身を隠す。
十手 | まさか、村にアウトレイジャーが……!? |
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2人は暗闇に目を凝らして、銃を手に持つ。
やや足早に教会へ近づいてくる足音。
やがて、足音の主の姿が、月明かりのもと明らかになる。
ロッシ | …………。 |
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主人公 | 【(フェデリコ先生……?)】 |
手に大きめの紙袋を持ったロッシが、
足音を忍ばせて教会へと入っていった。
十手 | こんな時間にどこに行っていたんだろう……? |
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主人公 | 【治療じゃないのかな】 【遅くまで患者さんを診てたのかも】 |
十手 | いや……〇〇君が寝ている間に、 フェデリコ先生は帰ってきていたよ。 |
十手 | 怪我をした人も状態は安定したから大丈夫だと話していた。 だから違うと思うんだが……。 |
十手 | ……もしかすると、何か夜食でももらったのかな? ほら、紙袋を持っていたし。 |
十手 | それか、俺たちみたいに少し外の空気を吸いに出たとかね。 |
主人公 | 【そうかも】 【眠れなかったのかもしれない】 |
十手 | ふぁあ……っと、失礼。 俺たちもそろそろ寝ようか。 雨は上がったし、明日は日が出たら討伐に出られそうだ。 |
十手 | みんなを起こさないように、抜き足、差し足、忍び足…… そーっと戻ろう。 |
──翌日。
日の出とともに起きた一行は、軍の携帯食で朝食を摂ったあと、
アウトレイジャー討伐に出発した。
カトラリー | はぁ……雨のせいで地面ぐちゃぐちゃだし、 足跡も消えちゃってるよね、これ。 |
---|---|
マークス | こういう時は、 ケンタッキーとペンシルヴァニアが役に立つんだが……。 |
マークス | ……ハッ! いや、マスター! 俺だって役に立つぞ!? 俺の方がもっと役に立つ! |
タバティエール | 頼もしいねぇ。 しっかし、こんだけの山の中を手がかりなしで探すのは、 ちと骨が折れそうだ。 |
タバティエール | アウトレイジャーの行動原理がわかってりゃあ、 おびき寄せるとかもできそうなんだがなぁ。 |
十手 | おお、たしかにそうだね。 もしくは、向こうが避けてくれる音か何かがあるといいんだが。 ほら、熊鈴みたいに! |
ロッシ | ふふ、そのあたりもカサリステの研究対象のはずだよ。 とはいえ今は、例の結晶についての解明が優先だから、 アウトレイジャー研究は止まり気味かもしれないけれど。 |
タバティエール | へぇ。研究することが多くてなかなか大変そうだな。 |
───ぐぅ。
カトラリー | ……! い、今のはその……。 |
---|---|
主人公 | 【昼休憩にしようか】 【自分もお腹が空いたかも】 |
マークス | お……ちょうど向こうに座れそうな岩もある。 あそこで昼飯だな。 |
早朝から出発する一行のために、
村人が昼食を持たせてくれた。
思い思いの場所に座った7人は、
昼食の包みを開く。
タバティエール | サンドイッチと……豆のペーストみたいだな。 |
---|---|
カトラリー | もう腹ペコ……。 見た目的に、昨日の晩ごはんよりは期待できそうだね。 |
カトラリーは笑顔でサンドイッチを口にするが……
そのまま、ぎくりと固まる。
カトラリー | え……僕が食べてるの、サンドイッチで合ってるよね……? |
---|---|
マークス | ……食べられなくはない、が……美味くはない……。 |
マークスは、微妙な顔でもそもそと咀嚼する。
サンドイッチは硬くてごわっとした味気ないパンと、
わずかな葉物野菜、薄切りされた塩漬け肉でできていた。
肉の塩分以外に味はほとんど感じられない。
カトラリー | ……パンってもっと、小麦の旨味みたいなものない? 何をどうしたらこんな感じのパンになるのか逆に気になるよ……。 |
---|---|
タバティエール | バターやらミルクが不足してるんじゃないかねぇ。 肉も貴重だろうに入れてくれてるんだ。 |
タバティエール | 黒胡椒ならあるから、ちょっとかけてみるか。 |
ゴースト | 俺も……もらっていい、か……? |
カトラリー | 僕も……。 はぁ……フランス料理が恋しいよ……。 |
カトラリー | あー、もう! さっさとアウトレイジャー見つけて倒して帰りたい! |
マークス | 同意だ。 マスターが倒れる前に、少しでも早く任務を終わらせる! |
主人公 | 【倒れたりしないよ】 →タバティエール「たしかに……主食と野菜とタンパク質、 食事の大事な要素は揃ってるよな。」 【栄養はちゃんと摂れてると思う】 →ロッシ「エネルギーはちゃんと摂取できているからね。 かと言って、無理はいけないが。」 |
カトラリー | ……っていうか、あの村の人たちって、 よくこの食事で耐えられるよね……。 もしかして、ちゃんと味があるものを食べたことがないとか? |
カトラリー | だから、これを当たり前だと思って食べてるのかも……。 それか、諦めちゃって我慢してるとか……。 |
タバティエール | ……アウトレイジャーを探しつつ、 食料があったら持って帰るか。 お礼になるかはわからねぇが、俺が料理するよ。 |
ゴースト | タバティエールの、料理……。 え……いいと、思う。 |
十手 | うん、タバティエール君が作るものは、 なんでも美味いからね! 食料も、俺たちがもらった分くらいはお返ししたいよ。 |
主人公 | 【そうだね】 【討伐も食料調達も頑張ろう!】 |
マークス | ああ! |
その後も一行は夕方まで山中を歩き回ったが、
アウトレイジャーが現れることはなく、
木の実や山鳥などを持って村へ戻ることとなった。
タバティエール | 手がかりナシとはなぁ……。 長期戦になりそうか? |
---|---|
カトラリー | っていうか、この任務ってそんなに長い想定じゃなかったよね。 あと1体くらいなら近くの支部でどうにかできないの? |
ロッシ | 実際のところあと何体いるかわからないから、なんとも。 任務はこれまでの実績から推測で1〜3日で見積もられていたね。 |
ロッシ | とはいえ、これは復帰戦みたいなものだ。 〇〇君に無理はさせたくないし、カトラリー君の 言う通り、残りは近くの支部に任せることもできる。 |
主人公 | 【まだ複数体残っていた場合危険です】 【貴銃士がいないと犠牲が出る可能性が……】 |
カトラリー | ……この山の中だと確かに、 僕らみたいに少人数じゃないと動きづらいよね。 |
十手 | 親切にしてくれた村の人はもちろん、 連合軍の皆にも犠牲にはなってほしくないね。 |
マークス | マスターはどうしたい? 俺はマスターの決定に従う。 |
主人公 | 【引き続き任務に当たりたい】 【最後までやり遂げないと】 |
マークス | ああ、了解した、マスター! |
ゴースト | ま……その方が皆安全だろう、な……。 |
カトラリー | ……僕も、それで別にいいけど……。 帰ったら、一緒に美味しいもの食べてよね。 |
───プラトー村に戻った〇〇たちは、
今日は“武装襲撃犯”が見つからなかったこと、
引き続き任務にあたることなどを村人に伝えた。
村人1 | この小さな村のために……ありがたいことです。 |
---|---|
村人2 | けど……あなたは学生さんなんでしょう? 山奥で危険な任務につくなんて…… ご家族は心配されていないかしら。 |
主人公 | 【……家族は他界しているので】 |
村人1 | ……! そうだったんですか……。 |
村人2 | でも、あなたにはたくさんの人がついていますからね。 そちらのお仲間の方々はもちろん、我々村人も、 あなたの味方ですよ……! |
ロッシ | ───〇〇君。士官学校と連絡が取れたよ。 ひとまずあと3日は任務続行できる。 それ以上はまた相談することになった。 |
主人公 | 【わかりました】 【ありがとうございます】 |
司祭 | ああ、皆さんお帰りでしたか。 お話は少し聞こえました。 もうしばらく滞在してくださるのですね。 |
司祭 | 屋根の修理と並行して、空き家の掃除と修繕も進めていまして、 今日どちらも人が住める状態に仕上がったんです。 よろしければそちらをお使いになりませんか? |
司祭 | 教会は石造りですし大きいもので、 夜になると冷えが厳しいでしょう? そちらの方がよく休めるのではないかと……。 |
十手 | へぇ、家まで借してもらって……いいのかい? |
司祭 | ええ、もちろん。皆さんにはこれくらいさせていただかないと。 |
ロッシ | では……ありがたく、滞在中の拠点とします。 |
村人1 | じゃあ、私が案内しますね。 |
村人2 | 食事は今日の当番の者が届けに行きますよ。 |
十手 | おお……質素だけど、広さは十分かな。 7人で過ごすにも支障なさそうだ! |
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カトラリー | ボロボロで窮屈なのも覚悟してたけど…… 意外とちゃんとしたとこだね。 まぁ……これならゆっくり眠れそう。 |
ロッシ | しかし、夜間に全員揃って就寝というのも避けたいな。 いつまたアウトレイジャーが現れるかわからないし、 交代で見張りを立てようか。 |
ロッシ | 君たちには戦闘に備えてできるだけ体力を残してほしいし、 最初は私が起きているよ。 |
十手 | ……いいのかい? 昨日も治療やらなんやらで疲れたんじゃ……。 |
ロッシ | はは、これでも私は元軍医だ。 体力ならちゃんとまだあるから気にしないでくれ。 |
タバティエール | そういうことなら……頼んだぜ。 けど、無理はしないでくれよ。 |
───翌朝。
カトラリー | うわ、すごい雨……。 |
---|---|
ロッシ | この天候で山中を歩き回るのは危険だね。 村の人も今日は外に出ないだろうし、 プラトー村の護衛役に徹するのがよさそうだ。 |
ロッシ | 皆、村の周囲に異変がないか、 気をつけて見ていてくれ。 私はちょっと、経過観察に行ってくるよ。 |
十手 | マディさんのところだね。 よかったら、俺も行っていいかな。 何か手伝えることがあればやりたいんだ。 |
主人公 | 【自分もお見舞いに行っていいですか?】 |
マークス | マスターが行くなら俺も行くぞ。 |
マディ | おお、先生! 皆さん! |
---|---|
ロッシ | よかった、顔色はずいぶん良くなりましたね。 痛みはどうですか? |
マディ | だいぶ引いてきたよ。 痛み止めがちゃんと効いて、飲んでいればなんともないさ。 |
ロッシ | よかった。しかし、無理をして動いてはいけませんよ。 さて、包帯の交換をしましょうか。 |
マディ | お願いします。 ……お前たち、じいちゃんはちょっと先生のお世話になるから、 しばらく向こうの部屋で遊んでいなさい。 |
子供たち | はーい! |
子供たちが、新しそうなぬいぐるみを持って駆けていく。
十手 | かわいいぬいぐるみだね。 その熊さんで遊ぶのかい? |
---|---|
子供1 | うん! 妖精さんにもらったの! |
十手 | 妖精さん……? |
ロッシが治療をしている間、
〇〇たちは子供たちと遊んだり、
家事の手伝いをしたりして過ごした。
マークス | ……マスター、ちょっといいか? |
---|
マークスに呼ばれて、〇〇は家の外に出た。
マークスに呼ばれて、〇〇は家の外に出た。
マークス | ……マスター、あいつは怪しいぞ。 |
---|---|
主人公 | 【あいつって?】 【怪しいとは?】 |
マークス | 白衣のやつ……フェデリコだ。 |
マークス | 昨夜、あいつが見張りをすると言っていただろう? だが、あいつだけだと不十分かもしれないから、 俺も起きて警戒してたんだ。 |
マークス | そうしたら、あいつ……夜中に家から出て行った。 マスターを残していくことはできないから、 追跡はしなかったが……。 |
マークス | 今朝も眠そうにしていたし、顔色が悪かった。 夜中にこそこそと、何かやってたのは間違いない。 |
主人公 | 【そういえば……】 【一昨日の夜も……】 |
〇〇は、村に来た初日のことを思い出す。
ロッシが紙袋を手に、深夜にそっと戻ってきた様子を、
十手と共に目撃したのだとマークスに伝えた。
マークス | ……! マスターも見たのか。 クソ……なんでその時俺は起きなかったんだ……!? |
---|---|
主人公 | 【それより、何をしてたんだろう】 【紙袋の中身が気になる】 |
マークス | もしかしたら、だが……。 あいつも、セント・ディース基地やエヴァンズみたいに、 トルレ・シャフに操られてるんじゃないか? |
マークス | ……マスター。 あいつのことは信用しない方がいい。 あいつと2人きりになるな。 |
マークス | あ……だけど、カウンセリングってやつがあるのか。 断るためにも、信用できねぇって証拠を見つけたい。 |
マークス | 今晩も妙な動きをするなら、徹底的に問い詰めてやる。 いいな、マスター。 |
夜にどこかへ消えているロッシ。
見つからないアウトレイジャー、基地での惨劇。
いろいろなものがよぎり、〇〇はゆっくりと頷いた。
──その夜。
眠ったふりをしていたあると貴銃士たちの耳に、
かすかな物音が届く。
目を開けて様子を窺うと──
ロッシが紙袋を手に、借り家を出ようとしていた。
マークス | おい、待て。 |
---|---|
ロッシ | ……っ! すまない、起こしてしまったか。 |
マークス | もともと起きてた。 てめぇの怪しい動きを確認するためにな。 |
カトラリー | あんた……夜な夜な出歩いてるんでしょ。 何してるわけ? |
タバティエール | 悪いが……袋の中身を検めさせてもらうぜ。 |
ロッシ | あ……っ! ま、待ってくれ……! |
ゴースト | 見られたらまずいも……ものでも、入ってるのか? |
マークス | タバティエール、中身はなんだ。 |
ロッシを拘束したマークスに尋ねられ、
タバティエールは紙袋を開く。
その目が見開かれた。
カトラリー | 何が入ってるの? まさか……危ないもの? |
---|---|
タバティエール | ……いや、たぶん違う。 ぬいぐるみ、だ……。 |
タバティエールが紙袋から出したのは、
作り途中のぬいぐるみだった。
マークス | おい、そいつの中に何が入ってる。 爆薬か? トルレ・シャフとの通信機か? |
---|---|
ロッシ | 綿しか入っていない……! それと、ぬいぐるみじゃなくて『あみぐるみ』だ。 |
カトラリー | いや、その違いはどうでもいいんだけど……。 |
タバティエールは、袋の中身をテーブルに並べてみる。
うさぎ、熊、カエルなどの可愛らしいあみぐるみが
次々と出てきた。
十手 | ん……? このあみぐるみ……なんだか見覚えが……。 |
---|
十手 | かわいいぬいぐるみだね。 その熊さんで遊ぶのかい? |
---|---|
子供1 | うん! 妖精さんにもらったの! |
十手 | これは、子供たちが持っていたのと同じ……? もしかして……フェデリコ先生が作ったのかい……!? |
---|---|
ロッシ | …………。 ……実は……。 |
マークス | 理解が追いつかない……どういうことだ? |
ロッシ | その……私は、子供好きでね。 喜ぶ姿が見たくて、趣味の編み物で、 あみぐるみを作るようになったんだ。 |
ロッシ | この村の人たちにはお世話になっているし、 娯楽の少ないところだから、子供たちに新しいおもちゃをと……。 |
ロッシ | 気分転換にもなるから、毛糸と綿は持ち歩いていてね。 夜にこっそり編んで、できるだけ多くの子に渡したかったんだ。 |
カトラリー | なんでこっそりやるわけ? 普通に渡せばいいじゃん。 |
ロッシ | いや……直接渡すのはどうも恥ずかしいだろう? 私のようなおじさんが作ったと知ったら、 がっかりしてしまう子もいるかもしれないし……。 |
一同 | …………。 |
マークス | ……こいつ、もしかしていい奴なのか……? |
主人公 | 【疑ってすみませんでしたっ!】 |
ロッシ | いやいや……怪しい動きになってしまっていたのは確かだ。 それに、エヴァンズ教官の例もあるから、 きちんと警戒するのはむしろいいことだよ。 |
ロッシ | 君たちにも夜更かしをさせてしまってすまないね。 明日に備えて、もう休もう。 |
──滞在4日目。
〇〇たちは朝からアウトレイジャーを捜索していた。
マークス | ……だめだ。なんの匂いもしない。 |
---|---|
ゴースト | そもそも……アウトレイジャーが匂いでわかる、のか……? |
十手 | いやあ、マークス君の鼻は本当にすごいんだ。 |
その時──異様な空気の震えを感じて、一行は立ち止まる。
ゴゴゴ……と地鳴りのような音が響き、
地面が小刻みに揺れた。
十手 | ……!? 地震か……!? いや、音の割には揺れが小さすぎる……? |
---|---|
タバティエール | 悲鳴……村の方からだ! |
主人公 | 【急いで戻ろう!】 |
カトラリー | うん! |
〇〇たちが駆けつけると、
プラトー村の様子が一変していた。
村を囲むようにそびえる山の斜面。
その一部が大きく崩れ、流れ出した大量の土砂が、
斜面に近い家を飲み込んでしまっている。
十手 | 土砂崩れか……! |
---|---|
村人1 | 皆さん……! 大変なんです、家の中にはまだ人がいたはずで───! |
ロッシ | なんだって!? |
村人に案内されて、7人は土砂崩れの現場へと駆ける。
村人2 |
誰か! こっちにも手を貸してくれ!! 遊んでいた子供たちが埋もれたのを見たんだ!! |
---|---|
カトラリー | ……! 僕らはこっちの人を手伝うよ! |
十手 | そうだな、手分けしよう! フェデリコ先生は、全体の指揮と治療をお頼みする! |
タバティエール | 怪我人の治療は先生の担当だからな。 大事な手を怪我しないようにしててくれよ! |
ロッシ | ああ……皆、気をつけてくれ! |
〇〇、マークス、タバティエール、
カトラリー、十手、ゴーストの二手に分かれて救助を手伝う。
水を吸ってずっしりと重い土砂を掘り起こし、
瓦礫を取り除いていくと、かすかにすすり泣く声が聞こえてきた。
子供 | うぅ……! 痛いよぉ……。 |
---|---|
マークス | いたぞ! おい、しっかりしろ! |
タバティエール | 意識はある! けど、出血してるな。 フェデリコ先生! |
ロッシ | ああ、診せてくれ! |
ロッシ | 木の枝で足を怪我したんだね。 スペースは……チェストと柱が土砂との壁になってくれたのか。 圧迫はされていないからショックの危険は低い……よし。 |
ロッシ | 担架、包帯、毛布の準備を! お湯も沸かしてくれ。 皆は彼を慎重に引っ張り出してほしい! |
主人公 | 【イエッサー!】 |
救出された子供は、足に怪我を負ったものの、
幸いにして命に別状はなかった。
他の人の救助を手伝おうと立ち上がった3人は──
地面に並べられた数人を見て、硬直する。
──日が暮れるまで続いた捜索では9人が生還したが、
死者4人、行方不明者7人という大きな災害になった……。
司祭 | 天の国へ召された同胞に、皆で黙祷を捧げましょう。 |
---|---|
カトラリー | …………。 |
カトラリー | ……あの子たち、これからどうするんだろう。 |
カトラリーの視線の先には、救助された人たちの姿がある。
うち3人は子供だ。
〇〇たちが救助した子供は両親ときょうだいの
4人家族だったそうだが、残る3人はまだ見つかっていなかった。
カトラリーたちが救助したのは、
遊んでいた3人のきょうだいのうち2人で、
1人はまだ見つかっていない。
タバティエール | 教会でしばらく過ごすことになるんじゃないかねぇ。 特に、子供1人の子は……。 |
---|---|
司祭 | ……サム、こちらへ。 |
サム | はい……。 |
1人ぼっちになった男の子が、司祭に呼ばれる。
司祭のそばには、夫婦らしき男女の姿があった。
司祭 | サム、君はベンジャミン家に行くのですよ。 彼らが君の新しい家族となってくれます。 |
---|---|
ベンジャミン氏 | サム。今日はつらい日になってしまったね……。 でも、これからは私たちがいる。 私たちが、君のパパとママになるからね。 |
サム | うん! |
サムは、ベンジャミン夫妻と手をつないで教会を出ていった。
〇〇はなんとも言えない違和感を覚えて、
その後ろ姿を目で追ってしまう。
───サムは気丈な子なのかもしれない。
しかし、それにしたってあっさりしすぎているのではないか。
司祭 | ……おや? どうされました。 |
---|---|
カトラリー | どう、って……。 あんな子供が、両親が死んだってのに、泣きもせずに……。 |
司祭 | この村では、大人皆が親のようなもので、 子供は皆の子のようなものなのですよ。 協力して村全体で子供を育てますからね。 |
司祭 | それに……残念ながら、親や子を亡くすことは、 頻繁ではないとはいえ、ままあることです。 山仕事や狩り、病気や今回のような災害……原因は様々です。 |
司祭 | 山間の小さな村ですから、 救助や治療が間に合わないこともあります。 そんな環境でも暮らしていくための手段でもあるのです。 |
司祭 | 親きょうだいを亡くすのはつらいことですが…… 村にはたくさんの“親”、たくさんの“きょうだい”がいます。 だから、孤独になることはありません。 |
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