メインストーリーⅣ:第7話~第12話

コメント(0)

第7話:分かち合い

司祭まずは教会の中をご案内しましょう。

司祭に連れられて教会の中を進んでいくと、
男女と子供の家族らしき2組が目に入る。

十手あの人たちは……?
司祭彼らの家は、先日の嵐で屋根が大きく壊れてしまいまして。
修理が終わるまで、教会を仮住まいとしているのです。
十手それは大変だな……。
俺たちも任務の合間に何かできることがあれば手伝うよ。
司祭素晴らしいお申し出に感謝します……!
皆、きっと喜ぶことでしょう。
村人1司祭さまー! 食事を持ってきましたよ。
村人2あれ、お客人ですか?
司祭ええ、彼らはこの村を脅威から守るために、
連合軍が派遣してくれた方々ですよ。
村人2それじゃあ、森をうろついてるおっかない連中を
とっ捕まえてくれるんですね!
いやあ、ありがたい!
村人1人数は、1、2、3、4……7人で合ってます?
追加で持ってきます。
ロッシ……本当にいいのかな。
皆さんの分が減ってしまっては申し訳ないが……。
村人2はは、大丈夫ですよ。
皆の分から少しずつ分ければいいだけですし、
兵士さんたちは私たちのために来てくださったんだから当然です。
村人1待っててくださいね、すぐに持ってくるので!
カトラリー……嫌な顔ひとつしないんだね、あの人たち。
司祭分かち合うのは、プラトー村では当然のことですからね。
皆さんもこの村までの道のりでおわかりになったでしょう。
車は通れず、麓からは健脚でも3時間はかかる……。
司祭食べ物も道具も、簡単には手に入りません。
だから我々は一つの共同体として、皆で支え合うのです。
それがルール……というより、暮らしの知恵なのですよ。
ロッシ素晴らしい秩序の境地ですね。
世界中がこの村のようであれば……と願ってしまいます。

〇〇は、先日のカウンセリングで
ロッシが話していたことを思い出した。


ロッシ連合軍と、トルレ・シャフをはじめとする親世界帝派、
その他の勢力の衝突は今でも続いている。
そして、これからも犠牲は出続ける……。
ロッシ争いのない世界を──これは、多くの人の願いであるはずなのに、
なかなかどうして遠い目標だ。

司祭ええ……そうですね。
ただ、世界規模となるとそう簡単にはいかないのでしょう。
ですが、希望は捨ててはなりません。
ロッシ希望を捨ててはお終いですからね。
短い間ですが、プラトー村で学ばせていただきます。
タバティエール…………。
村人1お待たせしました! 皆さんの食事ですよ。
村人2温かいうちに召し上がれ。
主人公【ありがとうございます】
【いただきます】

村人たちから渡されたのは、ドロッとした薄茶色のペーストと、
野菜と肉らしきものが少し入ったスープだった。

カトラリー……なんだろ、これ……。
つぶつぶがあるから穀類? ってことはリゾットなのかな……。
にしては、茶色いしお米の形が消えてるけど……。
十手おお、粥や雑炊みたいな感じかな。
出汁の味が染みた米ってのは美味いもんさ。
いただこう!
十手…………んん……?

リゾットらしきものを一口食べた十手は、怪訝な顔で固まった。

カトラリーどうしたの。意外と美味しいの? これ。
じゃあ僕も──
カトラリー──んん? ……んんん……?
何これ、味がほとんどしないんだけど……。

〇〇も一口食べてみる。
リゾットもスープも薄い塩味があるのみで、
士官学校の食事と比べるとかなり味気ない。

マークス味付けを忘れたのか……?
タバティエールいや……。

タバティエールの視線の先では、
避難中の2世帯が、平然と食事を口に運んでいた。

ゴースト……昔、塩は貴重なもんだった……って聞いたことがある。
この村でも、そうなんじゃないか……?
ロッシ……そんなに大変な状況なのに、
私たちの分まで用意してくれたんだね。

7人は言葉少なに夕食を終え、
村民のところへ食器を返しに行こうと外に出る。

タバティエールお、雨は止んだみたいだな。
カトラリーねぇ、任務って明日くらいで終わりでいいよね?
来る途中に倒したやつで全部かもしれないし、
明日見回って他にいなさそうならおしまいでしょ?
ロッシうーん……アウトレイジャーの正確な出没数が不明だから、
まだなんとも言えないかな。
明日村の人たちから話を聞いて、目撃情報があるあたりを──
村人3──大変だ!
マディじいさんが襲われた!! 誰か来てくれ!!
一同……!
主人公【行かないと!】
【急ごう!】
タバティエールすまん、食器を頼む!
村人1あ、ああ……!

村人の案内で一行が向かった先には、
肩のあたりを怪我してうずくまる老人の姿があった。
全身が土と落ち葉まみれで、擦り傷なども多くある。

村人3雨が上がったから木の実を取りに出たら、
銃を持った連中に襲われたんだ……!
村人3必死に逃げたけど、じいさんが撃たれて
斜面を転がり落ちて……
でも、そのおかげでなんとか逃げ切れて……。
ロッシ私は応急処置をする……!
君たちは、周囲に連中がいないか見てきてくれ。
発見次第討伐。十分に気をつけること、いいね。
主人公【はい!】
【イエッサー!】
タバティエール待て、こっちにも護衛がいた方がいい。
俺でよければここに残るよ。
十手たしかにそうだ……!
頼んだよ、タバティエール君。
マークスマスター、こっちだ!

斜面を上り、ぬかるんだ地面に残された
アウトレイジャーのものらしき足跡をたどる。

しかし、再び──今度は土砂降りの雨が振り始める。
大雨の中夜の森を歩くのは危険なため、
5人は追跡を断念し、プラトー村へ戻ることになった。

第8話:怪しい動き

──その日の夜。

ヴィヴィアン…………。
主人公【ヴィヴィアン!!】
【早く逃げて!!】
ヴィヴィアン……えっ、〇〇……?
なんでこんなところに──

──パァンッ!!

ヴィヴィアンうっ……!

ラッセル……っ、しまった、通信機が……!
ラッセル私のことは気にせず、先に出ていてくれ!
主人公【駄目です!】
【行ったら、ラッセル教官は──!】

──ドゴォン!!

主人公【(嫌だ……!)】
【(どうして、何も変えられない……!?)】
???──君、〇〇君。

十手〇〇君、起きてくれ。
主人公【十手……?】
【一体何が……?】
十手ひどくうなされていて……心配で起こしてしまったんだ。
大丈夫かい?
十手…………。
……よかったら、少し外に出ようか。
みんなを起こさないように、そーっとね。

〇〇は、十手と共に教会を出る。
街灯の灯りがないため、周囲は真っ暗だ。

十手……おお、こいつはすごい!
〇〇君、上を見てごらん。

十手が指差す通りに見上げると、
そこには空いっぱいに無数の星が輝いていた。

主人公【……綺麗】
【本当にすごいね……】
十手ここは標高が高いから、
フィルクレヴァートよりも星が近くに見えるね。
主人公【ペンシルヴァニアがいたら喜びそう】
【十手は星が好き?】
十手……今頃、士官学校にいる皆はどうしてるんだろうな。
もしかしたら誰かも、こうして空を見上げているかもしれないね。

2人はしばらく無言で星空を見ていた。
〇〇は、士官学校に残してきた貴銃士を想う。

主人公【ライク・ツーは大丈夫かな】
十手……出発前に声をかけたけど、
ちゃんと話せなかったしなぁ……。

──久々の任務参加が決まり、
〇〇と十手はライク・ツーの部屋を訪れた。

十手ライク・ツー君、起きているかい?
十手任務の要請があって……俺としては、
ライク・ツー君も一緒だと心強いんだが──
十手……ライク・ツー君?

少しドアを開けて室内を見ると、
毛布が人型に膨らんでいるのがわかる。

ライク・ツー…………。
主人公【寝てるみたい】
カトラリーねぇ、〇〇、十手!
もうすぐ迎えの車来るってさ!
十手了解だ、カトラリー君!
十手……行かないと、だな。

ドアが閉まり、2人の足音が遠ざかる。

ライク・ツー…………。
……はぁ……。

十手ラブ・ワン君のことがつらくないはずがない……。
普段気丈な彼が、ここまで参ってしまっていて、
とても心配だよ……。
十手でも、確かに〇〇君の願いは届いていた。
だから……彼ならきっと大丈夫なはずだ。

──最初は嘘でも、今から本当にすればいい。
ヴィヴィアンの遺志を〇〇とともについでほしい。
その願いを聞いて、たしかにライク・ツーは頷いていた。

ライク・ツー……嘘を、本当に……。
ライク・ツー……わかった。それなら──

主人公【そう自分も信じてる】
【時間はかかるかもしれないけど】
十手ああ……そうだね。

その時──かすかな足音に気づき、
十手は〇〇を引っ張って教会の陰へ身を隠す。

十手まさか、村にアウトレイジャーが……!?

2人は暗闇に目を凝らして、銃を手に持つ。
やや足早に教会へ近づいてくる足音。
やがて、足音の主の姿が、月明かりのもと明らかになる。

ロッシ…………。
主人公【(フェデリコ先生……?)】

手に大きめの紙袋を持ったロッシが、
足音を忍ばせて教会へと入っていった。

第9話:素材の味

十手こんな時間にどこに行っていたんだろう……?
主人公【治療じゃないのかな】
【遅くまで患者さんを診てたのかも】
十手いや……〇〇君が寝ている間に、
フェデリコ先生は帰ってきていたよ。
十手怪我をした人も状態は安定したから大丈夫だと話していた。
だから違うと思うんだが……。
十手……もしかすると、何か夜食でももらったのかな?
ほら、紙袋を持っていたし。
十手それか、俺たちみたいに少し外の空気を吸いに出たとかね。
主人公【そうかも】
【眠れなかったのかもしれない】
十手ふぁあ……っと、失礼。
俺たちもそろそろ寝ようか。
雨は上がったし、明日は日が出たら討伐に出られそうだ。
十手みんなを起こさないように、抜き足、差し足、忍び足……
そーっと戻ろう。

──翌日。
日の出とともに起きた一行は、軍の携帯食で朝食を摂ったあと、
アウトレイジャー討伐に出発した。

カトラリーはぁ……雨のせいで地面ぐちゃぐちゃだし、
足跡も消えちゃってるよね、これ。
マークスこういう時は、
ケンタッキーとペンシルヴァニアが役に立つんだが……。
マークス……ハッ! いや、マスター!
俺だって役に立つぞ!? 俺の方がもっと役に立つ!
タバティエール頼もしいねぇ。
しっかし、こんだけの山の中を手がかりなしで探すのは、
ちと骨が折れそうだ。
タバティエールアウトレイジャーの行動原理がわかってりゃあ、
おびき寄せるとかもできそうなんだがなぁ。
十手おお、たしかにそうだね。
もしくは、向こうが避けてくれる音か何かがあるといいんだが。
ほら、熊鈴みたいに!
ロッシふふ、そのあたりもカサリステの研究対象のはずだよ。
とはいえ今は、例の結晶についての解明が優先だから、
アウトレイジャー研究は止まり気味かもしれないけれど。
タバティエールへぇ。研究することが多くてなかなか大変そうだな。

───ぐぅ。

カトラリー……! い、今のはその……。
主人公【昼休憩にしようか】
【自分もお腹が空いたかも】
マークスお……ちょうど向こうに座れそうな岩もある。
あそこで昼飯だな。

早朝から出発する一行のために、
村人が昼食を持たせてくれた。

思い思いの場所に座った7人は、
昼食の包みを開く。

タバティエールサンドイッチと……豆のペーストみたいだな。
カトラリーもう腹ペコ……。
見た目的に、昨日の晩ごはんよりは期待できそうだね。

カトラリーは笑顔でサンドイッチを口にするが……
そのまま、ぎくりと固まる。

カトラリーえ……僕が食べてるの、サンドイッチで合ってるよね……?
マークス……食べられなくはない、が……美味くはない……。

マークスは、微妙な顔でもそもそと咀嚼する。

サンドイッチは硬くてごわっとした味気ないパンと、
わずかな葉物野菜、薄切りされた塩漬け肉でできていた。
肉の塩分以外に味はほとんど感じられない。

カトラリー……パンってもっと、小麦の旨味みたいなものない?
何をどうしたらこんな感じのパンになるのか逆に気になるよ……。
タバティエールバターやらミルクが不足してるんじゃないかねぇ。
肉も貴重だろうに入れてくれてるんだ。
タバティエール黒胡椒ならあるから、ちょっとかけてみるか。
ゴースト俺も……もらっていい、か……?
カトラリー僕も……。
はぁ……フランス料理が恋しいよ……。
カトラリーあー、もう!
さっさとアウトレイジャー見つけて倒して帰りたい!
マークス同意だ。
マスターが倒れる前に、少しでも早く任務を終わらせる!
主人公【倒れたりしないよ】
→タバティエール「たしかに……主食と野菜とタンパク質、
食事の大事な要素は揃ってるよな。」

【栄養はちゃんと摂れてると思う】

→ロッシ「エネルギーはちゃんと摂取できているからね。
かと言って、無理はいけないが。」
カトラリー……っていうか、あの村の人たちって、
よくこの食事で耐えられるよね……。
もしかして、ちゃんと味があるものを食べたことがないとか?
カトラリーだから、これを当たり前だと思って食べてるのかも……。
それか、諦めちゃって我慢してるとか……。
タバティエール……アウトレイジャーを探しつつ、
食料があったら持って帰るか。
お礼になるかはわからねぇが、俺が料理するよ。
ゴーストタバティエールの、料理……。
え……いいと、思う。
十手うん、タバティエール君が作るものは、
なんでも美味いからね!
食料も、俺たちがもらった分くらいはお返ししたいよ。
主人公【そうだね】
【討伐も食料調達も頑張ろう!】
マークスああ!

その後も一行は夕方まで山中を歩き回ったが、
アウトレイジャーが現れることはなく、
木の実や山鳥などを持って村へ戻ることとなった。

第10話:新しい拠点

タバティエール手がかりナシとはなぁ……。
長期戦になりそうか?
カトラリーっていうか、この任務ってそんなに長い想定じゃなかったよね。
あと1体くらいなら近くの支部でどうにかできないの?
ロッシ実際のところあと何体いるかわからないから、なんとも。
任務はこれまでの実績から推測で1〜3日で見積もられていたね。
ロッシとはいえ、これは復帰戦みたいなものだ。
〇〇君に無理はさせたくないし、カトラリー君の
言う通り、残りは近くの支部に任せることもできる。
主人公【まだ複数体残っていた場合危険です】
【貴銃士がいないと犠牲が出る可能性が……】
カトラリー……この山の中だと確かに、
僕らみたいに少人数じゃないと動きづらいよね。
十手親切にしてくれた村の人はもちろん、
連合軍の皆にも犠牲にはなってほしくないね。
マークスマスターはどうしたい?
俺はマスターの決定に従う。
主人公【引き続き任務に当たりたい】
【最後までやり遂げないと】
マークスああ、了解した、マスター!
ゴーストま……その方が皆安全だろう、な……。
カトラリー……僕も、それで別にいいけど……。
帰ったら、一緒に美味しいもの食べてよね。

───プラトー村に戻った〇〇たちは、
今日は“武装襲撃犯”が見つからなかったこと、
引き続き任務にあたることなどを村人に伝えた。

村人1この小さな村のために……ありがたいことです。
村人2けど……あなたは学生さんなんでしょう?
山奥で危険な任務につくなんて……
ご家族は心配されていないかしら。
主人公【……家族は他界しているので】
村人1……! そうだったんですか……。
村人2でも、あなたにはたくさんの人がついていますからね。
そちらのお仲間の方々はもちろん、我々村人も、
あなたの味方ですよ……!
ロッシ───〇〇君。士官学校と連絡が取れたよ。
ひとまずあと3日は任務続行できる。
それ以上はまた相談することになった。
主人公【わかりました】
【ありがとうございます】
司祭ああ、皆さんお帰りでしたか。
お話は少し聞こえました。
もうしばらく滞在してくださるのですね。
司祭屋根の修理と並行して、空き家の掃除と修繕も進めていまして、
今日どちらも人が住める状態に仕上がったんです。
よろしければそちらをお使いになりませんか?
司祭教会は石造りですし大きいもので、
夜になると冷えが厳しいでしょう?
そちらの方がよく休めるのではないかと……。
十手へぇ、家まで借してもらって……いいのかい?
司祭ええ、もちろん。皆さんにはこれくらいさせていただかないと。
ロッシでは……ありがたく、滞在中の拠点とします。
村人1じゃあ、私が案内しますね。
村人2食事は今日の当番の者が届けに行きますよ。

十手おお……質素だけど、広さは十分かな。
7人で過ごすにも支障なさそうだ!
カトラリーボロボロで窮屈なのも覚悟してたけど……
意外とちゃんとしたとこだね。
まぁ……これならゆっくり眠れそう。
ロッシしかし、夜間に全員揃って就寝というのも避けたいな。
いつまたアウトレイジャーが現れるかわからないし、
交代で見張りを立てようか。
ロッシ君たちには戦闘に備えてできるだけ体力を残してほしいし、
最初は私が起きているよ。
十手……いいのかい?
昨日も治療やらなんやらで疲れたんじゃ……。
ロッシはは、これでも私は元軍医だ。
体力ならちゃんとまだあるから気にしないでくれ。
タバティエールそういうことなら……頼んだぜ。
けど、無理はしないでくれよ。

───翌朝。

カトラリーうわ、すごい雨……。
ロッシこの天候で山中を歩き回るのは危険だね。
村の人も今日は外に出ないだろうし、
プラトー村の護衛役に徹するのがよさそうだ。
ロッシ皆、村の周囲に異変がないか、
気をつけて見ていてくれ。
私はちょっと、経過観察に行ってくるよ。
十手マディさんのところだね。
よかったら、俺も行っていいかな。
何か手伝えることがあればやりたいんだ。
主人公【自分もお見舞いに行っていいですか?】
マークスマスターが行くなら俺も行くぞ。

マディおお、先生! 皆さん!
ロッシよかった、顔色はずいぶん良くなりましたね。
痛みはどうですか?
マディだいぶ引いてきたよ。
痛み止めがちゃんと効いて、飲んでいればなんともないさ。
ロッシよかった。しかし、無理をして動いてはいけませんよ。
さて、包帯の交換をしましょうか。
マディお願いします。
……お前たち、じいちゃんはちょっと先生のお世話になるから、
しばらく向こうの部屋で遊んでいなさい。
子供たちはーい!

子供たちが、新しそうなぬいぐるみを持って駆けていく。

十手かわいいぬいぐるみだね。
その熊さんで遊ぶのかい?
子供1うん!
妖精さんにもらったの!
十手妖精さん……?

ロッシが治療をしている間、
〇〇たちは子供たちと遊んだり、
家事の手伝いをしたりして過ごした。

マークス……マスター、ちょっといいか?

マークスに呼ばれて、〇〇は家の外に出た。

 

第11話:疑惑の真相

マークスに呼ばれて、〇〇は家の外に出た。

マークス……マスター、あいつは怪しいぞ。
主人公【あいつって?】
【怪しいとは?】
マークス白衣のやつ……フェデリコだ。
マークス昨夜、あいつが見張りをすると言っていただろう?
だが、あいつだけだと不十分かもしれないから、
俺も起きて警戒してたんだ。
マークスそうしたら、あいつ……夜中に家から出て行った。
マスターを残していくことはできないから、
追跡はしなかったが……。
マークス今朝も眠そうにしていたし、顔色が悪かった。
夜中にこそこそと、何かやってたのは間違いない。
主人公【そういえば……】
【一昨日の夜も……】

〇〇は、村に来た初日のことを思い出す。
ロッシが紙袋を手に、深夜にそっと戻ってきた様子を、
十手と共に目撃したのだとマークスに伝えた。

マークス……! マスターも見たのか。
クソ……なんでその時俺は起きなかったんだ……!?
主人公【それより、何をしてたんだろう】
【紙袋の中身が気になる】
マークスもしかしたら、だが……。
あいつも、セント・ディース基地やエヴァンズみたいに、
トルレ・シャフに操られてるんじゃないか?
マークス……マスター。
あいつのことは信用しない方がいい。
あいつと2人きりになるな。
マークスあ……だけど、カウンセリングってやつがあるのか。
断るためにも、信用できねぇって証拠を見つけたい。
マークス今晩も妙な動きをするなら、徹底的に問い詰めてやる。
いいな、マスター。

夜にどこかへ消えているロッシ。
見つからないアウトレイジャー、基地での惨劇。
いろいろなものがよぎり、〇〇はゆっくりと頷いた。


──その夜。
眠ったふりをしていたあると貴銃士たちの耳に、
かすかな物音が届く。

目を開けて様子を窺うと──
ロッシが紙袋を手に、借り家を出ようとしていた。

マークスおい、待て。
ロッシ……っ! すまない、起こしてしまったか。
マークスもともと起きてた。
てめぇの怪しい動きを確認するためにな。
カトラリーあんた……夜な夜な出歩いてるんでしょ。
何してるわけ?
タバティエール悪いが……袋の中身を検めさせてもらうぜ。
ロッシあ……っ! ま、待ってくれ……!
ゴースト見られたらまずいも……ものでも、入ってるのか?
マークスタバティエール、中身はなんだ。

ロッシを拘束したマークスに尋ねられ、
タバティエールは紙袋を開く。
その目が見開かれた。

カトラリー何が入ってるの? まさか……危ないもの?
タバティエール……いや、たぶん違う。
ぬいぐるみ、だ……。

タバティエールが紙袋から出したのは、
作り途中のぬいぐるみだった。

マークスおい、そいつの中に何が入ってる。
爆薬か? トルレ・シャフとの通信機か?
ロッシ綿しか入っていない……!
それと、ぬいぐるみじゃなくて『あみぐるみ』だ。
カトラリーいや、その違いはどうでもいいんだけど……。

タバティエールは、袋の中身をテーブルに並べてみる。
うさぎ、熊、カエルなどの可愛らしいあみぐるみが
次々と出てきた。

十手ん……?
このあみぐるみ……なんだか見覚えが……。

十手かわいいぬいぐるみだね。
その熊さんで遊ぶのかい?
子供1うん!
妖精さんにもらったの!

十手これは、子供たちが持っていたのと同じ……?
もしかして……フェデリコ先生が作ったのかい……!?
ロッシ…………。
……実は……。
マークス理解が追いつかない……どういうことだ?
ロッシその……私は、子供好きでね。
喜ぶ姿が見たくて、趣味の編み物で、
あみぐるみを作るようになったんだ。
ロッシこの村の人たちにはお世話になっているし、
娯楽の少ないところだから、子供たちに新しいおもちゃをと……。
ロッシ気分転換にもなるから、毛糸と綿は持ち歩いていてね。
夜にこっそり編んで、できるだけ多くの子に渡したかったんだ。
カトラリーなんでこっそりやるわけ?
普通に渡せばいいじゃん。
ロッシいや……直接渡すのはどうも恥ずかしいだろう?
私のようなおじさんが作ったと知ったら、
がっかりしてしまう子もいるかもしれないし……。
一同…………。
マークス……こいつ、もしかしていい奴なのか……?
主人公【疑ってすみませんでしたっ!】
ロッシいやいや……怪しい動きになってしまっていたのは確かだ。
それに、エヴァンズ教官の例もあるから、
きちんと警戒するのはむしろいいことだよ。
ロッシ君たちにも夜更かしをさせてしまってすまないね。
明日に備えて、もう休もう。

第12話:村を襲う悲劇

──滞在4日目。
〇〇たちは朝からアウトレイジャーを捜索していた。

マークス……だめだ。なんの匂いもしない。
ゴーストそもそも……アウトレイジャーが匂いでわかる、のか……?
十手いやあ、マークス君の鼻は本当にすごいんだ。

その時──異様な空気の震えを感じて、一行は立ち止まる。
ゴゴゴ……と地鳴りのような音が響き、
地面が小刻みに揺れた。

十手……!? 地震か……!?
いや、音の割には揺れが小さすぎる……?
タバティエール悲鳴……村の方からだ!
主人公【急いで戻ろう!】
カトラリーうん!

〇〇たちが駆けつけると、
プラトー村の様子が一変していた。

村を囲むようにそびえる山の斜面。
その一部が大きく崩れ、流れ出した大量の土砂が、
斜面に近い家を飲み込んでしまっている。

十手土砂崩れか……!
村人1皆さん……!
大変なんです、家の中にはまだ人がいたはずで───!
ロッシなんだって!?

村人に案内されて、7人は土砂崩れの現場へと駆ける。

村人2 誰か! こっちにも手を貸してくれ!!
遊んでいた子供たちが埋もれたのを見たんだ!!
カトラリー……! 僕らはこっちの人を手伝うよ!
十手そうだな、手分けしよう!
フェデリコ先生は、全体の指揮と治療をお頼みする!
タバティエール怪我人の治療は先生の担当だからな。
大事な手を怪我しないようにしててくれよ!
ロッシああ……皆、気をつけてくれ!

〇〇、マークス、タバティエール、
カトラリー、十手、ゴーストの二手に分かれて救助を手伝う。

水を吸ってずっしりと重い土砂を掘り起こし、
瓦礫を取り除いていくと、かすかにすすり泣く声が聞こえてきた。

子供うぅ……! 痛いよぉ……。
マークスいたぞ!
おい、しっかりしろ!
タバティエール意識はある! けど、出血してるな。
フェデリコ先生!
ロッシああ、診せてくれ!
ロッシ木の枝で足を怪我したんだね。
スペースは……チェストと柱が土砂との壁になってくれたのか。
圧迫はされていないからショックの危険は低い……よし。
ロッシ担架、包帯、毛布の準備を!
お湯も沸かしてくれ。
皆は彼を慎重に引っ張り出してほしい!
主人公【イエッサー!】

救出された子供は、足に怪我を負ったものの、
幸いにして命に別状はなかった。

他の人の救助を手伝おうと立ち上がった3人は──
地面に並べられた数人を見て、硬直する。

──日が暮れるまで続いた捜索では9人が生還したが、
死者4人、行方不明者7人という大きな災害になった……。


司祭天の国へ召された同胞に、皆で黙祷を捧げましょう。
カトラリー…………。
カトラリー……あの子たち、これからどうするんだろう。

カトラリーの視線の先には、救助された人たちの姿がある。
うち3人は子供だ。

〇〇たちが救助した子供は両親ときょうだいの
4人家族だったそうだが、残る3人はまだ見つかっていなかった。

カトラリーたちが救助したのは、
遊んでいた3人のきょうだいのうち2人で、
1人はまだ見つかっていない。

タバティエール教会でしばらく過ごすことになるんじゃないかねぇ。
特に、子供1人の子は……。
司祭……サム、こちらへ。
サムはい……。

1人ぼっちになった男の子が、司祭に呼ばれる。
司祭のそばには、夫婦らしき男女の姿があった。

司祭サム、君はベンジャミン家に行くのですよ。
彼らが君の新しい家族となってくれます。
ベンジャミン氏サム。今日はつらい日になってしまったね……。
でも、これからは私たちがいる。
私たちが、君のパパとママになるからね。
サムうん!

サムは、ベンジャミン夫妻と手をつないで教会を出ていった。
〇〇はなんとも言えない違和感を覚えて、
その後ろ姿を目で追ってしまう。

───サムは気丈な子なのかもしれない。
しかし、それにしたってあっさりしすぎているのではないか。

司祭……おや? どうされました。
カトラリーどう、って……。
あんな子供が、両親が死んだってのに、泣きもせずに……。
司祭この村では、大人皆が親のようなもので、
子供は皆の子のようなものなのですよ。
協力して村全体で子供を育てますからね。
司祭それに……残念ながら、親や子を亡くすことは、
頻繁ではないとはいえ、ままあることです。
山仕事や狩り、病気や今回のような災害……原因は様々です。
司祭山間の小さな村ですから、
救助や治療が間に合わないこともあります。
そんな環境でも暮らしていくための手段でもあるのです。
司祭親きょうだいを亡くすのはつらいことですが……
村にはたくさんの“親”、たくさんの“きょうだい”がいます。
だから、孤独になることはありません。

コメントを書き込む


Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

まだコメントがありません。

×