メインストーリーⅣ:第13話~第17話

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第13話:争いのない世界

司祭そういえば……先日、あなたのご両親のことを耳にしました。
さぞつらく寂しい思いをされたことでしょう……。
司祭あなたもこの村の子供であったなら、
寂しさや悲しみも長くは続かなかったかもしれません。
司祭どの子供も皆が平等に、
大人たちの愛のもと育っているのですから。
主人公【(そう……なんだろうか?)】
【(本当に……?)】

しかし──と、〇〇は首を横に振る。
これがこの村の常識で、小さい頃からそういう文化・環境に
身を置いていたなら、サムの反応も不自然ではないかもしれない。

トバイアス司祭様、食料を1人分、お戻ししますね。
司祭トバイアス……ええ、受け取りましょう。
フィリップのことは……残念でした。
司祭18歳になったばかりでしたね……。
しかし彼は今、安らぎの国にいるはずです。
トバイアスはい……。
十手……ちょっと待ってくれ。
食料を戻すってのは、どういうことだい?
トバイアスこの村で、食料は貴重です。
一度教会に持ち寄り、家族の人数に合わせて平等に分配します。
我が家は……1人減ってしまったので。
トバイアス司祭様にお願いして、
また分配してもらうのです。
十手そ……そこまでする必要はあるのかな……
いや、部外者の俺が口を出すことでもないと思うんだが……。
トバイアス……日没前に、土砂がさらに崩れる傾向があったので、
二次災害を防ぐために、
捜索は打ち切りにすることを村の皆で決めました。
トバイアスフィリップが帰ってくることはありません……。
ですから、食料は然るべきところへ──
フィリップが食べるはずだった、パン……。
トバイアス……フィリップ……。

穏やかに話していたトバイアスだったが、
突然、ぽろぽろと涙をこぼし始める。

トバイアス……あれ……なんで、私は泣いて……?
司祭……トバイアス。大丈夫ですよ。
奥の部屋で少し休んで、共に祈りましょう。
フィリップが天の国で休めるよう……。
司祭安心してください。
今、貴方の魂は暗闇の中にいますが、
私がきちんと光まで導きますから。

司祭にそっと背中を押され、トバイアスは歩きだす。
2人は教会の奥に繋がる扉へと入っていった。

カトラリーなんでもなにも……
自分の息子が死んじゃって泣くのは当たり前じゃん。
なに、あの人……?
タバティエールああ……。
十手分かち合う、か……決まりと言ったって、
無理にする必要はないと思うんだが……。
確かに、この村の食糧事情は厳しいものがあるしなぁ。
ゴースト俺たちは、村人じゃない……から、
あんまり余計なこと……言えないよな。
十手ああ……。
ロッシ我々の価値基準で介入するのは、文化の否定にもつながる……。
賢明な判断だと思うよ。

〇〇たちは、
複雑な気持ちを抱えながら、借り家へと帰った。


───翌日から、アウトレイジャー捜索と復興活動がはじまった。

ロッシ私とタバティエール、十手の3人は村に残って、
治療と炊き出し、家屋の修繕をするよ。
ロッシ君たちは、何かあったらすぐに村へ戻るように。
戦闘の音が聞こえたら、私たちもすぐに向かうよ。
主人公【イエッサー!】
カトラリー今日こそ任務が終わるといいよね。
それじゃ、行こっか。

カトラリー……ねぇ、ちょっと気になってるんだけどさ。
やっぱり、あの村って変じゃない?
マークスそうだな……だが、妙な匂いはしない。
ゴースト全部鼻が基準な……のか……。
主人公【いろんな文化の地域があるから】
【一概に変とは言えないよ】
カトラリーそれはそうなんだけど……。
でも、なんか不気味なんだ。
カトラリー無理に感情を押さえつけて、変に笑ってさ。
ゾワッてするっていうか……ああもう、上手く言えないけど!
カトラリー大体、あんなごはんで我慢できてることも異常だよ。
ゴースト結局そこ、なのか……。
マークスああ……マスターのカレーが食べたい。
カトラリーもう、真面目に聞きなよ!
ゴーストやかまし……。

───ガサッ!

一同……!
アウトレイジャー……破壊……スル……。
ゴーストほら……あんたがやかましいからお出まし、だ……。
カトラリーえっ……こいつら、大声で寄ってくるワケ!?
っていうか、そんなに騒がしくしてないし……。
マークスやっと出会えたな。
おい、やるぞ!
ゴーストおー……。

第14話:予定外の来訪者

マークス──討伐完了。
これで最後のアウトレイジャーだといいんだが。
主人公【お疲れ様】
【一旦村に戻ろうか】
ゴーストああ……。

村に戻ると、教会の前に村人が列を作っていた。

タバティエールおう、〇〇ちゃんたちか。
今ちょうど炊き出しが始まったところだよ。
手伝いの村人家が無事な人はこっちです!
配給箱を持って並んでくださいねー!
カトラリー配給箱?
タバティエールなんでも、週に2回か3回食料をみんなに分配しているらしいぜ。
今日は、ミルクにチーズ、野菜と卵の日なんだと。
カトラリーへぇ、結構充実してるね。
麓に行けるようになったからかな。
マークスそういや、炊き出しってのは?
タバティエール家が全壊した人も結構いるだろ?
料理ができないだろうから、その人たちに食事を作ったんだ。
タバティエール皆の分も作らせてもらったから、食べてくれよ。
マークス&カトラリーよし……!
やった……!
トバイアス……すみません、大人2人、子供2人分をお願いします。
とてもいい香りで、家族皆お腹がすいてしまって。
十手……!
ああ、すぐに準備するよ。
カトラリー(あの人って、昨日の……)

トバイアスフィリップが帰ってくることはありません……。
ですから、食料は然るべきところへ──
フィリップが食べるはずだった、パン……。
トバイアス……フィリップ……。

カトラリー(あんなに悲しそうだったのに……
4人で“家族皆”って、あんなにあっさり……)
カトラリー…………。
カトラリー(やっぱり変な村だよ、ここ……。
ああもう、早く帰りたい……)

カトラリーは、賑わう教会から離れていく。
村の入口あたりでしゃがみ込んでいると、
近づいてくる足音が聞こえた。

カトラリー何……? またアウトレイジャーとか勘弁なんだけど……!
???ああ、ここだ……プラトー村……!
カトラリー……?

現れたのは、あまり身ぎれいとは言えない男性だった。
白いシャツは汚れてまだらに茶色くなっており、
リュックや靴などもほつれが目立つ。

カトラリー……あんた、この村の人?
男性ああ……いや、ああ、そうなんだが……。
カトラリーどっちなのかはっきりしなよ。
男性この村の出身だが、戻ってくるのは数年ぶりなんだ。
お前もプラトー村の子供か?
にしちゃあ毛色が違うが。
カトラリー僕は仕事で来ただけ!
村の人なら……ほら、教会の前にいるよ。
男性そうか、ありがとう。

教会の方へと視線を向けた男性は、 ある人物を見て大きく目を見開く。

男性あ……おふくろ……。
……おふくろ!

駆け出した男性は、おばあさんの前で足を止めた。

老婆なんだい……?
男性その声……ちょっとしわがれたけど、やっぱりおふくろだ!
男性ずっと帰らなくてごめんよ、おふくろ……やっと会えた……!
老婆…………。
老婆……失礼だけど、どちら様かねぇ?
あたしの子供は、娘が1人なんだけれど。
男性え……、は……?
アンディ何言っているんだよ、おふくろ。違うだろ!?
俺は1人息子だったじゃないか。
アンディだよ……! 俺がわからないのか……!?
老婆人違いだよ。
ほら、向こうにいるのが娘と婿だ。
孫が2人……かわいいだろう?
アンディたちの悪い冗談はやめてくれよ……。
俺はちゃんとおふくろの言う通り軍に入って───
いや、途中で脱走しちまったけど……。
アンディ徴兵には逆らうなっておふくろにケツ叩かれて……
世界帝軍に従軍して、けど脱走して……。
村の皆を巻き込みたくなくて、ずっと帰れなかった。
アンディ革命戦争が終わってからも、あちこち放浪して……
やっと、決心がついて戻ってきたんだよ。
老婆は、はぁ……。
アンディ遅くなってごめん……。
死んだもんだって思っても仕方ない。
だけど、俺のこと知らないふりなんかやめてくれよ……!
老婆……参ったねぇ……。知らないふりも何も、
あたしは本当にあんたのことを知らないんだよ……。
村人なんの騒ぎだ……?
おい、あんた、婆ちゃんになんの用だ?
アンディ俺は、この人の息子で……!
司祭ふむ……記憶違いか、世界帝軍にいた時のショックで、
自分を守るために思い込みを作ったのでしょうか ……。
司祭とにかく長旅で疲れたでしょう。
どなたかは存じませんが、どうぞ休んでいってください。
皆さん、彼を教会へ。
アンディ嫌だ、おふくろ……おふくろ……!

取り乱している様子の旅人を数人の村人が囲み、
無理やり教会へ連れて行く。


トバイアス……すみません、大人2人、子供2人分をお願いします。
とてもいい香りで、家族皆お腹がすいてしまって。

カトラリー(泣いてたトバイアスって人は、もうケロッとしてるけど……
そういえば、あの人も教会の奥の方に案内されてたっけ)
カトラリー……教会で、何するつもりなんだろう……?

カトラリーはそっと、あとを追うことにした。

第15話:カトラリーの異常

十手ふぅ、さすがに少しくたびれたね。
少しでも村の人たちの役に立てていればいいんだが……。
ゴーストアウトレイジャーも倒したし……役には立ってる、だろ。
俺の存在感も増し増しでマシになったはず……。
十手ははは! 増し増しでマシになるのか。
ゴースト君って洒落の才能があるねぇ!
タバティエールは、ははは……。
ロッシアウトレイジャーは今朝討伐したもので最後かもしれないね。
そろそろ戻れそうだとカサリステに連絡をしておこうか。
カトラリー…………。
十手わっ! カトラリー君、いつの間に帰ってきてたんだい?
十手あれ、そのサンドイッチは?
カトラリーこれ、村の人が分けてくれたんだ。
栄養を摂れる日々の食事に感謝だよね。
マークス……?
あんた、味がないと文句を言っていただろう。
カトラリー味が気に入らないなんて……馬鹿の言うことでしょ。
限られた食べ物を皆で分かち合って、
日々の暮らしのために必要なものを摂取すること。
カトラリーそういうことの方が、味よりもずっと大事なのに。
タバティエール……カトラリーくん、どうしちまったんだ?
頭でもぶつけたのか……?
マークスあんたが味のことをどうでもよさそうにするなんて、
明らかにおかしいぞ……。
マークスハッ……! おい、全員動くな。
足下にネジが落ちてないか探せ。
ゴーストは……?
マークスこういうやつのことを、「頭のネジが外れた」と言うんだろう。
こいつもどこかのパーツを落としたのかもしれないぞ。
主人公【故障……異常と同じなら……】
【もしかして……】

〇〇はカトラリーに近づき、手をかざす。

カトラリー何? 今食べてるんだけど。
マークスマスター、銃本体のパーツの抜けなら、
治療では治らないと思うが……。
カトラリー…………。
カトラリー……う……口の中がペチャッてする……!
やっぱりこのサンドイッチまずいっ!!
ああもう、水っ! タバティエールが作ったスープもちょうだい!
十手……いつものカトラリー君だ……。
タバティエール〇〇ちゃんの治療が効いた……?
何があったんだ、カトラリーくん。
カトラリーえっと……あれ?
僕、何してたんだっけ。
サンドイッチ食べてたのもよくわからないし……。
主人公【この様子……あの時と似てる】
【何があったか思い出せる?】
カトラリーうーん……なんか、ちょっとぼやっとしてるけど、
なんとか……?
十手……なあ、〇〇君。
カトラリー君のこれは……。
タバティエールとにかく、順を追って思い出してみてくれ。
カトラリーえっと……この村出身だっていう男の人が来て、
だけどその人の母親は、そいつを知らないっていうんだ。
でも、僕にはそんなふうには見えなくて……。
カトラリーそうこうしてるうちに、司祭と村人が来て、
その人を教会に連れて行ったんだ。
僕、トバイアスって人のことも気になったからついて行って───。

カトラリーは、司祭と村人、半ば拘束された男性を追って、
教会の中へと忍び込んだ。
彼らは教会の奥へと進んでいく。

カトラリー(教会の奥にこんなとこがあったんだ……。
ちょっと怖い……。何か怪しいことしてるのかな……)

やがて司祭たちは、奥の部屋に入る。
カトラリーはドアの隙間から室内を覗いた。

男性おい、なんなんだよ!
おふくろとちゃんと話をさせてくれ!
司祭心を鎮めて……光があなたを導いてくれますから。

司祭が小箱を開けると、ビロード地のクッションに、
紫がかった光を放つ石が置かれていた。

カトラリー(あれって……!?)
カトラリー……?
あ……れ……僕……?

カトラリーそこから先は、曖昧にしか記憶がなくて……。
ロッシ……やはり……セント・ディース基地事件で使われた結晶と
類似のもののようだな……。
ロッシしかし、なぜこんな山奥の小さな村にあんなものが……!?
ゴースト……この村そのものが、トルレ・シャフのアジト……
だったりして。
十手ええっ……?
でも、村の人たちはとてもそんなふうには……。
タバティエールああ。村人がトルレ・シャフの構成員だとは思えない……。
ただ、完全結晶だったか。島で錯乱した兵士たちのように、
その力で支配されてるとしたら……?
カトラリー……僕たちが感じてた違和感の正体って、それだよ、きっと!
この村ってちょっとヘンで……なんか気味が悪いじゃん。
カトラリーみんな感情がないっていうか……、
村の人たちそれぞれの、個人の意思がない気がするんだ。
タバティエール個人の意思、か……。
言われてみれば確かにそうだ。
この村じゃあ、いつだって個よりも全体が優先されてた。
タバティエールそれは理想のひとつの形かもしれねぇが……
人ってのは、そういうもんかねぇ。
ゴースト……俺たちの周りじゃ、そうじゃなかったな……。
主人公【教会に行こう】
【真実を確かめよう】
ロッシカトラリー君、その部屋まで案内できるかい。
カトラリーうん、どこだったかちゃんと覚えてる。
ロッシこの村で何が起きているのか……。
我々で突き止めなくてはならない。
……行こう。

 

第16話:導きの光

───〇〇たちは教会に忍び込み、
カトラリーの先導で奥の部屋を目指した。

カトラリーこっちだよ。
カトラリーほら……あの部屋。
ロッシ行こう。そーっとね。

7人は足音を忍ばせて部屋に近づく。
すると───閉ざされていた扉が急に開いた。

十手えっ!?
司祭───お待ちしていましたよ。

司祭の手には、蓋が開いた小箱がある。
そこに収められているのは───紫を帯びた結晶だ。

主人公【光を見たらだめだ!】
【目を閉じて!】

〇〇が叫ぶのと同時に───
一瞬、結晶が光を放った。

司祭ふ……崇高なる理想の賛同者となれ……!
ロッシう……っ。
十手……っく!
司祭さあ、理想の世界を実現しましょう。
人々は協力し、支え合い、分かち合う。
慈愛に満ちた、争いのない平和な世界を……!
ロッシああ……素晴らしい。
争いがなくなれば……悲しみも消える。
傷つき壊れてしまう人もいなくなる……。
ロッシそれこそが、私の求めた理想の世界……。
叶うはずなどないと思っていたけれど、
それは間違いだったのですね……。
マークス…………。
マークス……なあ、マスター……。
争いがなくなれば、マスターが傷つくこともなくなる……。
十手ああ……そうだ、その通りだね。
主人公【みんな……?】

どこかぼんやりとした目で、次々に賛同の言葉を告げる6人。
〇〇の目の奥でも紫の光の残像が瞬き、
強い頭痛に襲われる───


???───争いのない世界。
穏やかな人々が助け合い、分かち合う理想の世界……
それは、素晴らしいだろう?
???───悲しむ人も苦しむ人もいない、平等で平穏な世界。
お前も、実現したいと思うだろう……?
主人公【争いのない世界……】
【平穏な世界……】

〇〇の脳裏に、村で見た光景や、
カトラリーから聞いた話が次々と蘇る。
誰もが穏やかに微笑み、すべてを分かち、支え合っていたが───

トバイアス司祭様、食料を1人分、お戻ししますね。
我が家は……1人減ってしまったので。
司祭様にお願いして、また分配してもらうのです。
トバイアスフィリップが帰ってくることはありません……。
ですから、食料は然るべきところへ───
フィリップが食べるはずだった、パン……。
トバイアス……あれ……なんで、私は泣いて……?

アンディずっと帰らなくてごめんよ、おふくろ……やっと会えた……!
老婆……失礼だけど、どちら様かねぇ?
あたしの子供は、娘が1人なんだけれど。
アンディ遅くなってごめん……。
死んだもんだって思っても仕方ない。
だけど、俺のこと知らないふりなんかやめてくれよ……!
老婆……参ったねぇ……。知らないふりも何も、
あたしは本当にあんたのことを知らないんだよ……。

主人公【(ひとりひとりの感情を、殺す世界だ)】
【(これが本当の幸福だとは思わない)】

プラトー村では確かに、争いは起きそうにもない。
しかし、人々は自分の感情を発露することすら不自由になり、
大切な記憶も、想いも、全体のためにないものにされていた。

個々を押し潰し───まるで人形のようにして作られる理想の世界が
理想であるはずはない。平穏で……それ以上に平坦な世界など、
と〇〇は強く拳を握る。

主人公【(───そんな世界は間違ってる!)】

〇〇の意識を侵食しようとしていた囁きが、
少しずつ弱まっていく。

???争い───ない───平、和、な───……。

───ピキッ……パリン!

司祭な……!
完全結晶が……意思の器が自壊した、だと……!?
主人公【あなたの意見には同意できない】
司祭お前……なぜ抗える……!?
導きの光を見たはずのお前が、どうして私に抗うのだ……!?
主人公【人の意思や感情をなくした世界はおかしい!】
【人を人形に変えてできた平和に意味はない!】
主人公【そんなやり方は間違ってる!】
タバティエールん……これは……そうだ、俺たちは光を見て……。
マークス……っ、マスター! もう大丈夫だ、頭のもやもやが取れたから……!

完全結晶が割れてしまった影響なのか、
我に返った貴銃士たちが銃を手に司祭へ迫る。

司祭……貴銃士の小僧に見られた時点で手は打ってある。
こうなったら……お前たちを無事に帰しはしない!
───さあ!

司祭が叫ぶと、部屋の扉が開き、
銃を構えた男たちが飛び込んでくる。

トルレ・シャフ構成員1……貴様らを拘束する。
トルレ・シャフ構成員2命が惜しくば、降伏することだ……。
カトラリーはっ……そっちこそ!
マークスマスター……一気に片付ける!

第17話:生きるということ

トルレ・シャフ構成員たちうぐっ……。

現れたトルレ・シャフ構成員たちは、
正気を取り戻した貴銃士たちによって返り討ちにされ、
きつく拘束される。

十手よぉし、捕縛完了だ。
あとは応援を待って引き渡すとしようか。
カトラリー……! ねぇ、こっちにも同じような小箱があるよ。
もしかして、さっきの石がまだあるってこと……?
ゴーストそれなら……開けたらまずい、んじゃないか……?
タバティエールだな……どういう条件で光るのかわからんが、
箱を開けた瞬間にまたピカッとやられたら大変だ。
主人公【貸して】
【自分がやる】
マークスマスター!? 大丈夫なのか……!?
主人公【みんな、目をつぶっていて】
【いいよと言うまで目を閉じて】

小箱の中には、紫色を帯びた結晶が入っていた。
これまで見聞きしたことから考えて……
先程の結晶と同様、洗脳の力を発揮しているものだろう。

主人公【(研究材料は消えてしまうけど……)】
主人公【(すでに洗脳された人がいるならやるしかない)】

一度目はドライゼが踏んで粉砕した。
つまり───物理的に壊せる。

〇〇は紫色の結晶を、
力いっぱいレンガの壁へと投げつけた。

───パリン!


老婆あたしは……一体……?
昨日……あの子を見たような気がするけれど……。
サム……パパ……ママ……?
ダン兄ちゃん……う、あ……うわぁぁぁあん!!

トバイアスフィリップ……私の可愛い息子……私は、なぜ、忘れて……。
うっ……あああああっ……!

村人なんだか、長い夢を見ていたような気がする……。
村人の妻私もよ……これは現実、よね……?

村人たちが、少しずつ自我を取り戻していく。
不気味なほどに静かだった村に、悲鳴や困惑の声が響く……。


タバティエールこれで終わったのか……?
ロッシ……うっ……これが、結晶の力……。
臨床心理士として多少の抵抗力はあるかと思っていたが、
これほどまでとは……。情けない……
十手フェデリコ先生、大丈夫かい?
ロッシああ……さっきまでぼんやりしていたけれど、
だいぶ頭がすっきりしてきたよ。
〇〇君のおかげだね……ありがとう。
ロッシ結晶の力があれほどとは……なんと恐ろしいんだ。
ゴースト信じられない、な……。
ロッシ村人も混乱していることだろう……。
場合によっては危険かもしれない。
様子を見に行こう!

村は大騒ぎになっていた。
静まりかえっていたのが嘘のように、
村人たちが戸惑い、悲しみ、喜んでいる。

アンディおふくろ!
よかった、俺のことがわかるんだね……!
老婆もちろんだよ、この馬鹿息子!
10年近くもどこに行ってたんだい……!
ほら……突っ立ってないで、近くで顔を見せておくれ……!

トバイアスフィリップ……!
父さんが絶対に、お前を見つけて家に連れて帰るからな……。
どんなに経っても……っ、どんな姿でも……。
トバイアスの妻ええ、ええ……。 そうよ……っ。

サム父ちゃん……母ちゃん……っ!
うわあぁぁ……っ!! うわああぁぁぁぁん……!!
カトラリー…………。
洗脳は解けた、けど……。

崩れた家の前で泣き崩れる人、
土砂を前に呆然と立ち尽くす人。
涙を流しつつ、行方不明の身内を探そうとする人。

再会に歓喜の涙を流す人もいれば、
大事なものがないと喧嘩をする人、
作られた家族を前に戸惑いを浮かべる人もいる。

カトラリーこれでよかった……のかな……。
前はさ、自分や家族のことよりこの村、みんなのことって感じで
仮面みたいにニコニコしてて不気味だったけど……。
カトラリーそれでも……あんなふうに、
心が壊れそうなくらい悲しんでる人はいなかった、よね……。
もしかしたら、そのままだった方が───
タバティエールいや、それは違うと思うぜ、カトラリーくん。
タバティエール本当は悲しいのに、それを認識できてなかったんだ。
悲しむことすら許されてなかった……
心の平穏が保てたとしても、そんなのはあんまりだ。
カトラリーうん……そうかも……。
大切な人の死を悼む気持ちも奪われてたってことだもんね……。
十手ああ……傷つくことを避けられたとしても、
それは不幸なことのように思えるよ……。

〇〇と貴銃士たちは、
様々な感情であふれる村の様子を見つめる。

タバティエールこの村で暮らしてるのは、“人形”じゃなくて“人間”なんだ。
タバティエール 悲しみ、苦しみ、喜び、幸せ───
穏やかだとは限らねぇが、これが人間の本当の姿だって……
全部あるのが人生なんじゃないかって俺は思うよ。
タバティエール……貴銃士が何言ってんだ、って感じかもしれないけどな。
主人公【そんなことないよ】
【タバティエールの言う通りだと思う】

〇〇の人生にもいろいろなことがあった。
両親、親友、恩師の死───いっそ忘れられたら楽かもしれない。
だが、それらをなかったことにして生きていくのは絶対に嫌だ。

十手全部あるのが人生、か……。
この人たちはこれからまた、自分の人生を歩き始めるんだね。

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