フランス編:第16話~第20話

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第16話:籠の中の小夜啼鳥1

──フランス内、某所にて。

ジョージ…………。
ジョージ……んん……。
ジョージあれ……ここは……?
ジョージうわっ、なんだよこれ!
なんで手枷なんか……!
ジョージうぅ……頭痛いし、ぼんやりする……。
なんかヘンだ、オレ……。
ジョージっていうか、なんでこんなとこにいるんだ……?
オレはさっきまで、
レザール家のパーティーにいたはずで……。

従者──ジョージ様。
ジョージうわっ、びっくりした!
従者これは、驚かせてしまい申し訳ありません。
お疲れのようでしたので、
お飲み物をお持ちしたのですが……。

ジョージあれを飲んだあと、
会場に戻ろうとしたらめまいがして……。

ジョージ(なんだ、これ……。
目がかすむし、身体に、力が……)
従者このドリンクは、我が主が用意した特別なもの……。
会場のどこにも、置いておりませんよ。
ジョージおま、え……何、を……。
従者……おやすみなさいませ、ジョージ様。

ジョージくっそー……
あの時あいつに何か盛られたのか……!
ジョージ待てよ……オレってどれくらい寝てたんだ?
あれから数時間なのか、何日も経ってるのか……
〇〇とマークスは無事なのか……?
ジョージっていうか、オレの銃はどこだ……?
オレが元気……じゃないけど一応無事ってことは、
壊されたりとかはしてないみたいだけど……。
ジョージうう……頭が痛ぇ……。
ジョージ(……! 誰か来る)
見張り役の男…………。
見張り役の男まだ眠っている……か。
薬は十分すぎるほど効いたようだな。
見張り役の男……報告を入れておくか。
ジョージ(今のが、オレを捕まえた犯人なのか……?
でも、報告って言ってたな)
ジョージ(あいつを倒しても、他に敵がいるかも……
状況を把握するまで、下手に動けない、けど……)
ジョージ(頭の奥がぼんやりして……また、眠気が……)
ジョージ逃げ、ないと……。
〇〇……。
ジョージ…………。

マークス……あのエラメルっておっさん、
変だけど、悪い奴ではなさそうだった。
タバティエールははっ、面と向かって変態呼ばわりされても怒らないくらい、
おおらかで懐の深い人だよ。
タバティエールしかし、〇〇ちゃん。
マークスくんがいつもあんな調子だと、
君はヒヤヒヤするんじゃないか?
主人公【そうですね……】
【慣れてきました】
タバティエールははっ、そうだろうな。
タバティエール……あ。
マークスどうしたんだ、タバティエール。
外に何かあるのか?
タバティエール……向こうに見えるあの大きな屋敷が、
ロシニョル家だ。
タバティエール……昨日はあんなことになっちまって……
カトリーヌちゃんは大丈夫かねぇ。
それに……あいつも……。
マークスあいつって、グラースのことか?
アウトレイジャーと戦った時は、
やたら生き生きしてたぞ。
マークスそういやあいつ……
自分のマスターのことを気にかけてる様子だったのに、
全然ためらわずに絶対非道を使ってたな……。
マークスおかげで俺たちは助かったけど……
よくわかんねー奴だ。
タバティエール…………。
タバティエールあいつは──複雑な立場だからな。
普段はあれで、色々と……抑圧して過ごしてるんだよ。
主人公【あなたは、グラースを止めに入っていた】
【グラースのこと、本当は気にかけてる?】
タバティエール……あいつは、悪い奴じゃないんだよ。
ロシニョル家の立場が良くなれば、
きっと2人も穏やかに過ごせるはずなんだ。
タバティエールだから、その助けになってやりたいんだが……
レザール家にいる俺に、できることは何もない。
タバティエールただ、コトを穏便に済ませられるように、
遠くからこっそりフォローしたり……そのくらいさ。
主人公【……自分も力になれるかな】
【ロシニョル家に行って、カトリーヌさんと話そう】
マークスマスターがその気なら、俺も同じだ。
マークスおい、ロシニョル家の前で降ろしてくれ。
運転手承知しました。
タバティエールあ……おい!
今朝、関わるなと言ったばかりなのにな。
ふぅ……君たちには意味のない忠告だったか。
マークスあんたはどうする?
一緒に来るか。
タバティエール俺はやめとくよ。
俺はレザール家の貴銃士だから、ロシニョル家に顔を出すと、
余計な波風を立てちまうし──
タバティエールそれに……あいつには嫌われてるんでね。
タバティエールそういうわけで、俺は先にレザールの屋敷へ戻るよ。
お2人さんはゆっくり、カトリーヌちゃんの
お見舞いでもしてくるといい。
タバティエールだが、あまり目立つことはするな。
君たちを心配する俺の気持ちも、わかってくれよ。
マークス……わかった。

第17話:籠の中の小夜啼鳥2

ロシニョル家使用人あなた様方は……
フィルクレヴァートからいらしたお客人ですね。
ロシニョル家使用人レザール家に滞在中だと伺っておりますが、
当家にどのようなご用件でしょうか。
主人公【お見舞いに来ました】
【カトリーヌさんに会わせていただけますか?】
ロシニョル家使用人カトリーヌお嬢様に……?
マークスああ。見舞いも兼ねているが、
連合軍の任務について、伝達と相談もある。
マークス今後のアウトレイジャー対応に関して、
グラースとそのマスターと話しておきたい。
ロシニョル家使用人そういうことでしたら……承知いたしました。
ロシニョル家使用人カトリーヌ様のお部屋までご案内いたします。
こちらへどうぞ。

ロシニョル家使用人こちらのお部屋でございます。
マークスおい、いるか?
邪魔するぞ。

カトリーヌの部屋は、侯爵邸の一部屋にしては、
随分と質素なところだった。

やはりあまり体調は良くないようだが、
彼女のそばに使用人の姿はなく、
ただグラースだけが付き添っている。

カトリーヌ……あら? あなた方は、昨日の……。
グラース君たちが来るなんて話は聞いていないが……なんの用だ?
レザール家の使いじゃないだろうな?
マークス違う。あんたらの様子を見ておきたかっただけだ。
主人公【体調は大丈夫ですか?】
【傷は悪化していませんか?】
カトリーヌお気遣い痛み入ります。
ジョージさんのおかげでしょうか……
傷の痛みが和らいで、体調もずっとよくなりました。
カトリーヌ彼にお礼を申し上げたいのですが……
今日はいらっしゃらないのですね。
マークスあいつなら、急用でしばらくフランスを出たが、
近いうちに戻るはずだ。
カトリーヌまぁ、そうだったのですね。
では、お戻りになられましたら、改めてお礼を……。
カトリーヌ……っ、……けほっ!
グラースマスター、大丈夫!?
カトリーヌええ……。
少し咳が出ただけだから、大丈夫よ。
カトリーヌお2人とも、申し訳ありません。
お客様を、こんな状態でお迎えするなんて……。
主人公【気にしないでください】
【早めにお暇します】
グラースほら、マスター、無理して喋らないで。
まずは水を飲んでから、ゆっくり話そう。
カトリーヌそうね……。
いつもありがとう。助かるわ。
マークス…………。
グラース……なんだい? 僕の顔が何か?
マークスいや……あんたが世話をしてるんだなと思って。
グラース当然だ。信用できない奴らに、
マスターを任せられるはずないだろう。
マークス信用できない?
グラース……君たちには関係のない話だよ。
グラースそれで、用件はなんなんだい?
様子を見に来たとか言っていたけど、
まさか手ぶらでお見舞いに来たわけじゃないよね?
カトリーヌまぁ……お客様に失礼よ。
こうして来ていただけただけでも、
わたくしは十分嬉しいのだから。
グラース……君は、優しすぎるよ。
グラースマスターは見ての通り、あまり体調がよくないんだ。
ほら、用件があるなら早く伝えて、
マスターを早く休ませてくれ。
マークスなら、端的に聞く。
グラース、あんたはあとどれくらい戦える?
グラースは……?
マークスフランスにいる貴銃士で、
アウトレイジャーとまともに戦えるのは
あんただけなんだろ?
マークスジョージが戻るまで、
俺はむやみやたらと絶対非道を使うわけにはいかない。
マスターの負担が大きすぎるからな。
マークスあんたの方も、それは同じだろうが……
昨日みたいに、少しは手を貸してくれ。
グラース昨日……。
グラース……わかった。
でも、マスターは元々身体が弱いから、
あまり負担はかけられない。
グラース絶対に応援に行けるとは限らないけど、
今の話は覚えておくことにするよ。
マークス頼んだぞ。
主人公【では、我々はこれで……】
【お大事に】
カトリーヌ〇〇さん、マークスさん、
ありがとうございました。

マークス……なぁ、マスター。
マスターは、グラースについてどう思う?
マークス俺は……
やっぱり、なんだかよくわかんねー奴だと思った。
マークスあいつは、自分のマスターのことを大事にしてる。
昨日のパーティーでも、さっきの様子でもそうだ。
マークスマスターに負担がかかるようなことはしたくないと、
俺と同じようなことを思ってる。
マークスそれなのに……昨日の夜、
アウトレイジャー討伐に来たあいつは全然違った。

グラースおーおー、どっから湧いてきたんだか。
アウトレイジャーどもがわんさかいて楽しめそうだな。
グラースんじゃ、さっさとやっちまおうぜ。

マークスあの時のあいつは、マスターの傷が広がることなんて、
全然考えてないみたいだった……。
マークスあいつ、現代銃ってだけでひでぇ扱いだから、
むしゃくしゃしてたまに戦いたくなってるのか……?
主人公【そうかもしれない】
【フランスでの現代銃の扱いは酷いから】
マークスそうだな。
俺がグラースと同じ立場だったら……
マスターの悪口を言う奴を全員、撃ち抜いてるもんな。
???……わ……いつ……のね……
???…………なの……昨日……わ……
……しょう…………リーヌ様……
マークス……ん?
あの花壇、しゃべってる……?

第18話:花壇の噂話1

メイド1ねぇ、お嬢様のご様子はどうだった?
メイド2あまりよくなさそうね……。
グラース様も気が気ではないみたいで、
近づくな、とお叱りを受けてしまったわ。
メイド1悲しいけれど……無理もないわ。
これまでのお嬢様への仕打ちを考えれば、
この屋敷の人間なんて信じられないのでしょう。
メイド2でも、私たちくらい信用してくださっていいと思わない?
私たち、元はカトリーヌお嬢様付きのメイドなのに。
ああ……心配だわ。
主人公【あの……今の話は?】
【詳しく聞かせてもらえませんか?】
メイドたちきゃあっ!

花壇の影に隠れて話していたのは、
ロシニョル家の屋敷のメイドたちだった。

メイド1あっ、あなた方は……!
フィルクレヴァート士官学校からいらした方ですわね。
私たちからお話できることなど、ありませんわっ。
メイド2お帰りでしたら、門までご案内します。
私たちの無駄話のことなど、お忘れくださいませっ。
マークスチッ……
丁寧なのに腹が立つ言い方しやがって……。
メイド1&メイド2ひっ……!
マークスあのな、マスターは敵じゃない。
あんたらのおじょーさまの力になろうとしてんだ。
何か知ってることがあるなら話せ。
主人公【この家でも、彼女の立場は悪いんですか?】
【ここで一体何が起きているんですか?】
メイドたち…………。

沈黙する彼女たちからは、忠誠心の高さが窺えた。
だからこそ、2人の説得を試みる。

“あなた方は、カトリーヌさんを本当に心配している。
我々も彼女たちの状況が気がかりだ。
思いは同じ──どうか話を聞かせてほしい”と。

メイド1……この方たちなら、信用できるかもしれないわ。
メイド2ちょっと……!
メイド1あの……昨日の夜会で倒れたお嬢様の介抱に、
皆様が手を貸してくださったという噂を耳にしました。
それは、本当でしょうか?
マークスああ、そうだ。
……率先して助けに行った本人は、しばらく不在だが。
メイド1そうですか……。
お嬢様を助けてくださり、ありがとうございました。
メイド2あ、その……私からも!
カトリーヌ様のこと、ありがとうございます。
メイド1お役に立てるかはわかりませんが……
私たちが知っていることをお話しましょう。

メイドたちは声を潜めつつ、
カトリーヌが置かれている厳しい状況について、
〇〇たちに語ってくれた。


カトリーヌは、侯爵と最初に夫人の間に生まれた娘で、
心優しく、使用人たちからも好かれていた。

だが──母親が亡くなったあと、
彼女を取り巻く状況は悪化していく。

侯爵はしばらくして、後妻と連れ子2人を迎え入れた。
その後、事業の立て直しに奔走することになり、
本邸であるこの屋敷から離れることが増え──

侯爵不在の間、夫人として継母が
屋敷を取り仕切るようになると、
カトリーヌへの冷遇が始まったのだという。

メイド2私たち、元はお嬢様付きのメイドだったんです。
でも今は、お嬢様には使用人が付けられていません。
奥様に、配置換えをされてしまったんです。
メイド1使用人の中には、奥様に抗議をした者もいましたが……
彼らは難癖をつけられて、
屋敷を追い出されてしまいました。
メイド1そうこうしているうちに、
お嬢様は日陰の質素な部屋へと追いやられ、
お医者様なども遠ざけられ……。
メイド2おまけに、奥様は社交界でのロシニョル家の不遇を嫌い、
昨日のようなパーティーには決して顔を出さず、
つらい役目をお嬢様に押し付けているのです。
メイド1もともと身体が弱かったお嬢様は、
心労も重なって、さらに体調を崩されていきました。
マークスそれで……あんたらは何をしてるんだ?
メイド2私たちも、悔しくて悔しくて仕方がないのですが、
表立って動けば、他の者と同じように解雇されます。
メイド2なので、息を潜め……
陰から少しでもお嬢さまを見守る道を選んだのです。
メイド1とはいえ、新たに雇われた使用人には
奥様の息がかかっておりますから、下手に動けず、
あまりお力になれていないのが現状なのですが……。
マークスタバティエールと似たような感じか。
つーか、侯爵は何してんだ? 何も知らないのか?
メイド1それが……奥様が、旦那様の付き人に、
自分の手の者を潜り込ませているようなんです。
メイド1旦那様にお嬢様の窮状を訴えようとした者は、
直接会おうとしても阻まれ、
手紙を出しても旦那様の目に入らぬように排除され──
メイド1果ては、そのことが奥様の耳に入り、
やはり職を追われてしまいました。
メイド2旦那様は、最初の奥様の忘れ形見である
カトリーヌ様を大切に思われています。
現状を知れば、きっと正してくださるはずなのに……。
マークス侯爵ってのは、そんなに忙しいもんなのか。
メイド1以前はここまで多忙ではなかったのですが、
あの災害で、かなり大きな被害がありましたから。
現場の方々と一丸になっておられます。
メイド2ロシニョル家存続のため、事業を盤石にしようと、
奔走されていらっしゃるのです。
メイド2なにしろ……
他家からの助けは、もう望めませんので……。
マークス助けが望めないってのは……
あれか、毒マカロンのせいだな?
そもそも、事件を起こさなければよかったのに。
メイド1……っ、あれはきっと、何かの罠です!
旦那様があのような卑劣な行為をするはずありません!
マークス……! わ、悪かった。

カトリーヌが置かれている状況はよくわかった。
頼みの綱の侯爵が不在で、社交界でも家でも冷遇され、
生来の病弱さに、薔薇の傷の負担まで加わっている。

グラースが彼女をかなり心配し、
周囲を警戒しているのにも納得がいく。

メイド1こんな状況なので、
グラース様がお嬢様のそばにいてくださるのは
せめてもの救いなのですが……。
メイド2お嬢様が召銃パーティーで呼び覚ましたのが
グラース様ではければ……と思うと、複雑ですわ。
主人公【召銃パーティー?】
【さっきも聞いたワードだ……】
メイド1ちょっと、あなた!
メイド2……あっ!
マークスおい、なんなんだ、召銃パーティーって。
今更隠す必要があることか?
メイドたち…………。
メイド1そうですね……この際、すべてお話しましょう。
メイド1召銃パーティーというのは、
リリエンフェルト家が主催した、
貴銃士を召銃する催しです。
メイド1ロシニョルとレザール両家が、
社交界の皆様の前で貴銃士を呼び覚まし、
フランスを盛り立てるという催しだったのですが……。
メイド2ここで、予期せぬ出来事が起きたのです。
マークスん……?
メイド2……フランスはこういうところですから、
召銃に使用する銃も、すべて古銃のはずでした。
メイド2それなのに……なぜかカトリーヌ様の方に、
現代銃であるグラース銃が混ざっていて、
よりによって彼が貴銃士となり……!
メイド1きっと誰かが、カトリーヌ様を陥れるために
現代銃を混ぜておいたのですわっ。
メイド2やったのは、レザール家に決まっています。
だって、私──見たんです!
マークス何を?

 

第19話:花壇の噂話2

メイド2召銃パーティーの前夜遅く──
私が窓の戸締まりをしておりましたら、
外の方で音がしたのです。
メイド2何かしら?と思って目を凝らすと──
黒いマントに身を包んだ何者かが、
屋敷の裏庭の方から忍び出てきて……!
???…………。
メイド2その人が明かりの下を通った時に見えた横顔は、
紛れもなく、レザール家のテオドール様!
彼でしたわ!
メイド2召銃パーティーで使用する銃は、各家で保管されていました。
きっとあの時テオドール様が、持ってきた現代銃を、
ロシニョル家が用意した古銃とすり替えたに違いないのですっ!
メイド1ああ……私たち、話し過ぎたわね。
明日の朝、セーヌ川に浮かんでる……
なんてことにならなきゃいいんだけど。
メイド2でも、これ以上お嬢様の境遇を見ていられないわ。
覚悟を決めましょう……っ!
主人公【話してくださってありがとうございます】
【こちらも何かわかったらお知らせします】
メイド1ええ……
お2人も、どうぞ十分にお気をつけて。
メイド2煌びやかさの裏には、
深く濃い闇が潜んでいるものですわ。
では……私たちはこれで。
マークスはぁ……人間ってのは面倒くさいな。
いや、マスターは面倒くさくないが。
マークスそれより、マスター。
本当にいいのか?
マークスロシニョルとレザールの問題に介入すると、
面倒事や危険に巻き込まれるかもしれないんだぞ?
主人公【慎重に動こう】
【マークスがいるから大丈夫】
マークスああ、そうだな。
もし何かあっても、俺がマスターを守る。
マークスしかし、タバティエールの言葉も
どこまで信じていいのかわからないな。
マークスあいつは、あの仏頂面男のことを
「悪い奴じゃない」と言っていたが……
さっきの話だと、胡散臭い動きをしてたんだろ?
マークスあの男はマスターに対して失礼だし、
俺はやっぱり信用できない。
主人公【夜中に何をしていたんだろう……】
【彼の考えが読めない】
マークス1回脅してみるか?
連合軍兵士──失礼いたします!
連合軍兵士郊外にアウトレイジャーが現れました!
現場に急行願います!
マークスチッ、昨日の今日でまたかよ……!

第20話:パリジャンの思惑

マークス絶対非道……!
アウトレイジャーたちグォァァ……!
兵士アウトレイジャーの全滅を確認!
指揮官周囲に敵影がないか、引き続き注意せよ!
兵士たちはっ!
マークスマスターっ、薔薇の傷は……!?
マークスくそっ、悪化してる……。
俺のせいだ……本当に、ごめん。
マークスジョージが戻るまで、
絶対非道はできるだけ使わないって決めたのに……!
主人公【マークスは悪くない】
【この状況じゃ仕方ない】
マークスマスター……。
早く戻って、傷の手当をしよう。
マークス治らなくても、少しでも楽に──
シャスポーやあ、〇〇さん。
マークスシャスポーか……。
絶対高貴にもなれない奴が、戦いが終わったあとで
のこのこやって来て、なんの用だよ。
シャスポー……うるさいな。君には話しかけてないよ。
シャスポー〇〇さん、君ってすごいね。
傷が痛むだろうに、ぐずるマークスくんに、
絶対非道を使うようはっきり言う胆力──
マークス…………。
シャスポーただ指示をするだけではなく、
自らも銃を手に戦う姿……。
ふふっ、とても素敵だったよ。
シャスポーはっきり言って、僕、君に興味があるんだ。
もっと親しく、楽しく話してみたい……
そう思ってるんだよ。
マークス嘘を並べ立てても、マスターには響かないぞ。
シャスポー……嘘だって?
マークスあんたは、嘘をついてる。
嘘の匂いがぷんぷんするんだ。俺にはわかる。
シャスポー──はぁ。無粋な奴だな。
シャスポー僕がこれから〇〇さんを
ディナーにお誘いしようってのに、
邪魔しないでおくれよ、番犬くん。
シャスポーねぇ、〇〇さん?
パリの中心部に、とっておきのレストランがあるんだ。
シャスポー席はもう予約してあるよ。
パリの夜景が一望できる、最高の場所をね♥
シャスポー僕と2人きりで、素敵な夜を過ごそう。
ほら、おいで。
主人公【疲れてるので……】
【結構です】
シャスポー……遠慮しないで。
確かに僕は社交界の花形、人気の的だけど、
あなたは僕にふさわしい人だから。
主人公【遠慮していません】
【ですから、結構です】
シャスポーなっ……!?
この僕の誘いを断るって言うの? 本気で?
マークスマスターははっきり、行かないと言っただろう。
早く帰ってマスターの手当をして休みたいんだ。
あんたの方こそ、邪魔をするな。
シャスポー……嘘だろ、信じられない……。
女でも男でも、
この僕に誘われて喜ばない人はいなかったのに……。
マークス……聞いてないな、こいつ。
シャスポーふふ、あははっ……いいね。
僕、そういう小鳥は嫌いじゃないよ。
シャスポー〇〇さん、
今日は疲れてるところに声を掛けてしまってごめんね。
シャスポー機会を改めるから……
今度は、お茶くらい一緒にしよう。ね?
それじゃ、Au revoir♪
マークス……なんだったんだ、あいつ。
マークス戦えないくせに態度はやたらでかいし、
アウトレイジャー討伐で疲れてるマスターを
のんきにメシに誘うとか、どういう頭してんだ?
マークスはぁ……早く士官学校に戻りてぇ……。

──リリエンフェルト家の一室にて。

ロジェ……フルハウス。
紳士おやおや! また負けてしまいましたなぁ。
貴婦人んもう、ロジェ様ったら、本当にお強いわ!
さっきなんて、ストレートフラッシュでしたものね。
紳士1勝できるまで粘りたいところだが……
このままでは素寒貧にされてしまいそうですよ。
シャルルヴィル…………。
シャルルヴィルあの、ロジェ様──
……あっ……。
ロジェおや、どうしたんだい?
我らが麗しき白百合の貴銃士。
シャルルヴィル少し話をしたいのですが……ゲーム中、でしたね。
すみませ──
貴婦人あら、いいんですのよ。
どのみち、ロジェ様には勝てそうにありませんし
このあたりでお暇させていただきますわ。
紳士いやぁ、まったくです。
幸運の女神は、ロジェ殿贔屓が過ぎますなぁ。
ロジェふふ……確かに、女神は私に甘いかもしれませんね。
なにせ、あの名銃シャルルヴィルを、
貴銃士として私の元に目覚めさせてくれたのですから。
貴婦人シャルルヴィル様の存在は、
フランスにとっても幸運ですわね。
シャルルヴィル…………。
シャルルヴィル……ありがとう、素敵なマダム。
フランスの力になれるように、頑張るよ♪

シャルルヴィル……あの……話ですが──

──バシッ!!

おずおずと口を開いたシャルルヴィルの頬を、
ロジェは平手で強く叩いた。

シャルルヴィルうっ……!!
ロジェお前は何をしたかわかっているのか!?
邪魔をしやがって!!
ロジェあの2人はオーストリアの名士だ。
これから2人を勝たせて、いい気分にさせてやり──
ロジェ私の事業で手詰まりになっている
ロッテンドールの土地について、
口利きを頼む手筈だったのに……お前のせいで台無しだ!!
シャルルヴィルごめんなさい……申し訳ありません……!
本当に、ごめんなさい……っ!
ロジェふん……! それで、私の邪魔をしたからには
余程の用事なんだろうな?
シャルルヴィル……あの……。
シャルルヴィルロジェ様は、ジョージについて何かご存知でしょうか。
ロジェジョージというと……当家で保管していた、
あの忌々しい……
ブラウン・ベス・マスケットの貴銃士か。
ロジェ連合軍の任務でフランスに来ていると聞いたが、
それがどうかしたのか?
シャルルヴィルそれが……フランス到着早々、極秘の緊急任務で
呼び出されて、イギリスに戻ったみたいなんです。
シャルルヴィル何があったのか、どんな任務なのか……
ロジェ様なら、何か噂でも耳にしてないかと思って。
ロジェ……私は何も聞いていない。
いくら当家が連合軍の強力なパトロンとはいえ、
他国での任務について詳細を知らせるとも思えん。
ロジェしかし……フランスに派遣した貴銃士を、
任務も終わらぬうちに別の場所へ遣るのなら、
前もって秘密裏に連絡があって然るべきではあるな。
シャルルヴィル…………。
シャルルヴィル(ロジェ様も、何も聞いてない……?
本当に、そんなことってあるのかな)
シャルルヴィル(リリエンフェルト家は、連合軍の重要な資金源。
関係が悪化しないよう、連合軍も対応には慎重で、
だからここには、いろんな情報が集まるのに……)
ロジェ話は終わりか?
明日も“癒し”に行くのだから、早めに休め。
シャルルヴィル……はい、ロジェ様。
本当に、申し訳ありませんでした……。

シャルルヴィル(エラメル大佐も、ロジェ様も、
ジョージが参加してるっていう極秘任務について、
噂すら耳にしてない……)
シャルルヴィル(なんだか変だし、嫌な予感がする。
ジョージは本当に、任務で招集されたの……?)

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