──フランス内、某所にて。
ジョージ | …………。 |
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ジョージ | ……んん……。 |
ジョージ | あれ……ここは……? |
ジョージ | うわっ、なんだよこれ! なんで手枷なんか……! |
ジョージ | うぅ……頭痛いし、ぼんやりする……。 なんかヘンだ、オレ……。 |
ジョージ | っていうか、なんでこんなとこにいるんだ……? オレはさっきまで、 レザール家のパーティーにいたはずで……。 |
従者 | ──ジョージ様。 |
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ジョージ | うわっ、びっくりした! |
従者 | これは、驚かせてしまい申し訳ありません。 お疲れのようでしたので、 お飲み物をお持ちしたのですが……。 |
ジョージ | あれを飲んだあと、 会場に戻ろうとしたらめまいがして……。 |
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ジョージ | (なんだ、これ……。 目がかすむし、身体に、力が……) |
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従者 | このドリンクは、我が主が用意した特別なもの……。 会場のどこにも、置いておりませんよ。 |
ジョージ | おま、え……何、を……。 |
従者 | ……おやすみなさいませ、ジョージ様。 |
ジョージ | くっそー…… あの時あいつに何か盛られたのか……! |
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ジョージ | 待てよ……オレってどれくらい寝てたんだ? あれから数時間なのか、何日も経ってるのか…… 〇〇とマークスは無事なのか……? |
ジョージ | っていうか、オレの銃はどこだ……? オレが元気……じゃないけど一応無事ってことは、 壊されたりとかはしてないみたいだけど……。 |
ジョージ | うう……頭が痛ぇ……。 |
ジョージ | (……! 誰か来る) |
見張り役の男 | …………。 |
見張り役の男 | まだ眠っている……か。 薬は十分すぎるほど効いたようだな。 |
見張り役の男 | ……報告を入れておくか。 |
ジョージ | (今のが、オレを捕まえた犯人なのか……? でも、報告って言ってたな) |
ジョージ | (あいつを倒しても、他に敵がいるかも…… 状況を把握するまで、下手に動けない、けど……) |
ジョージ | (頭の奥がぼんやりして……また、眠気が……) |
ジョージ | 逃げ、ないと……。 〇〇……。 |
ジョージ | …………。 |
マークス | ……あのエラメルっておっさん、 変だけど、悪い奴ではなさそうだった。 |
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タバティエール | ははっ、面と向かって変態呼ばわりされても怒らないくらい、 おおらかで懐の深い人だよ。 |
タバティエール | しかし、〇〇ちゃん。 マークスくんがいつもあんな調子だと、 君はヒヤヒヤするんじゃないか? |
主人公 | 【そうですね……】 【慣れてきました】 |
タバティエール | ははっ、そうだろうな。 |
タバティエール | ……あ。 |
マークス | どうしたんだ、タバティエール。 外に何かあるのか? |
タバティエール | ……向こうに見えるあの大きな屋敷が、 ロシニョル家だ。 |
タバティエール | ……昨日はあんなことになっちまって…… カトリーヌちゃんは大丈夫かねぇ。 それに……あいつも……。 |
マークス | あいつって、グラースのことか? アウトレイジャーと戦った時は、 やたら生き生きしてたぞ。 |
マークス | そういやあいつ…… 自分のマスターのことを気にかけてる様子だったのに、 全然ためらわずに絶対非道を使ってたな……。 |
マークス | おかげで俺たちは助かったけど…… よくわかんねー奴だ。 |
タバティエール | …………。 |
タバティエール | あいつは──複雑な立場だからな。 普段はあれで、色々と……抑圧して過ごしてるんだよ。 |
主人公 | 【あなたは、グラースを止めに入っていた】 【グラースのこと、本当は気にかけてる?】 |
タバティエール | ……あいつは、悪い奴じゃないんだよ。 ロシニョル家の立場が良くなれば、 きっと2人も穏やかに過ごせるはずなんだ。 |
タバティエール | だから、その助けになってやりたいんだが…… レザール家にいる俺に、できることは何もない。 |
タバティエール | ただ、コトを穏便に済ませられるように、 遠くからこっそりフォローしたり……そのくらいさ。 |
主人公 | 【……自分も力になれるかな】 【ロシニョル家に行って、カトリーヌさんと話そう】 |
マークス | マスターがその気なら、俺も同じだ。 |
マークス | おい、ロシニョル家の前で降ろしてくれ。 |
運転手 | 承知しました。 |
タバティエール | あ……おい! 今朝、関わるなと言ったばかりなのにな。 ふぅ……君たちには意味のない忠告だったか。 |
マークス | あんたはどうする? 一緒に来るか。 |
タバティエール | 俺はやめとくよ。 俺はレザール家の貴銃士だから、ロシニョル家に顔を出すと、 余計な波風を立てちまうし── |
タバティエール | それに……あいつには嫌われてるんでね。 |
タバティエール | そういうわけで、俺は先にレザールの屋敷へ戻るよ。 お2人さんはゆっくり、カトリーヌちゃんの お見舞いでもしてくるといい。 |
タバティエール | だが、あまり目立つことはするな。 君たちを心配する俺の気持ちも、わかってくれよ。 |
マークス | ……わかった。 |
ロシニョル家使用人 | あなた様方は…… フィルクレヴァートからいらしたお客人ですね。 |
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ロシニョル家使用人 | レザール家に滞在中だと伺っておりますが、 当家にどのようなご用件でしょうか。 |
主人公 | 【お見舞いに来ました】 【カトリーヌさんに会わせていただけますか?】 |
ロシニョル家使用人 | カトリーヌお嬢様に……? |
マークス | ああ。見舞いも兼ねているが、 連合軍の任務について、伝達と相談もある。 |
マークス | 今後のアウトレイジャー対応に関して、 グラースとそのマスターと話しておきたい。 |
ロシニョル家使用人 | そういうことでしたら……承知いたしました。 |
ロシニョル家使用人 | カトリーヌ様のお部屋までご案内いたします。 こちらへどうぞ。 |
ロシニョル家使用人 | こちらのお部屋でございます。 |
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マークス | おい、いるか? 邪魔するぞ。 |
カトリーヌの部屋は、侯爵邸の一部屋にしては、
随分と質素なところだった。
やはりあまり体調は良くないようだが、
彼女のそばに使用人の姿はなく、
ただグラースだけが付き添っている。
カトリーヌ | ……あら? あなた方は、昨日の……。 |
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グラース | 君たちが来るなんて話は聞いていないが……なんの用だ? レザール家の使いじゃないだろうな? |
マークス | 違う。あんたらの様子を見ておきたかっただけだ。 |
主人公 | 【体調は大丈夫ですか?】 【傷は悪化していませんか?】 |
カトリーヌ | お気遣い痛み入ります。 ジョージさんのおかげでしょうか…… 傷の痛みが和らいで、体調もずっとよくなりました。 |
カトリーヌ | 彼にお礼を申し上げたいのですが…… 今日はいらっしゃらないのですね。 |
マークス | あいつなら、急用でしばらくフランスを出たが、 近いうちに戻るはずだ。 |
カトリーヌ | まぁ、そうだったのですね。 では、お戻りになられましたら、改めてお礼を……。 |
カトリーヌ | ……っ、……けほっ! |
グラース | マスター、大丈夫!? |
カトリーヌ | ええ……。 少し咳が出ただけだから、大丈夫よ。 |
カトリーヌ | お2人とも、申し訳ありません。 お客様を、こんな状態でお迎えするなんて……。 |
主人公 | 【気にしないでください】 【早めにお暇します】 |
グラース | ほら、マスター、無理して喋らないで。 まずは水を飲んでから、ゆっくり話そう。 |
カトリーヌ | そうね……。 いつもありがとう。助かるわ。 |
マークス | …………。 |
グラース | ……なんだい? 僕の顔が何か? |
マークス | いや……あんたが世話をしてるんだなと思って。 |
グラース | 当然だ。信用できない奴らに、 マスターを任せられるはずないだろう。 |
マークス | 信用できない? |
グラース | ……君たちには関係のない話だよ。 |
グラース | それで、用件はなんなんだい? 様子を見に来たとか言っていたけど、 まさか手ぶらでお見舞いに来たわけじゃないよね? |
カトリーヌ | まぁ……お客様に失礼よ。 こうして来ていただけただけでも、 わたくしは十分嬉しいのだから。 |
グラース | ……君は、優しすぎるよ。 |
グラース | マスターは見ての通り、あまり体調がよくないんだ。 ほら、用件があるなら早く伝えて、 マスターを早く休ませてくれ。 |
マークス | なら、端的に聞く。 グラース、あんたはあとどれくらい戦える? |
グラース | は……? |
マークス | フランスにいる貴銃士で、 アウトレイジャーとまともに戦えるのは あんただけなんだろ? |
マークス | ジョージが戻るまで、 俺はむやみやたらと絶対非道を使うわけにはいかない。 マスターの負担が大きすぎるからな。 |
マークス | あんたの方も、それは同じだろうが…… 昨日みたいに、少しは手を貸してくれ。 |
グラース | 昨日……。 |
グラース | ……わかった。 でも、マスターは元々身体が弱いから、 あまり負担はかけられない。 |
グラース | 絶対に応援に行けるとは限らないけど、 今の話は覚えておくことにするよ。 |
マークス | 頼んだぞ。 |
主人公 | 【では、我々はこれで……】 【お大事に】 |
カトリーヌ | 〇〇さん、マークスさん、 ありがとうございました。 |
マークス | ……なぁ、マスター。 マスターは、グラースについてどう思う? |
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マークス | 俺は…… やっぱり、なんだかよくわかんねー奴だと思った。 |
マークス | あいつは、自分のマスターのことを大事にしてる。 昨日のパーティーでも、さっきの様子でもそうだ。 |
マークス | マスターに負担がかかるようなことはしたくないと、 俺と同じようなことを思ってる。 |
マークス | それなのに……昨日の夜、 アウトレイジャー討伐に来たあいつは全然違った。 |
グラース | おーおー、どっから湧いてきたんだか。 アウトレイジャーどもがわんさかいて楽しめそうだな。 |
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グラース | んじゃ、さっさとやっちまおうぜ。 |
マークス | あの時のあいつは、マスターの傷が広がることなんて、 全然考えてないみたいだった……。 |
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マークス | あいつ、現代銃ってだけでひでぇ扱いだから、 むしゃくしゃしてたまに戦いたくなってるのか……? |
主人公 | 【そうかもしれない】 【フランスでの現代銃の扱いは酷いから】 |
マークス | そうだな。 俺がグラースと同じ立場だったら…… マスターの悪口を言う奴を全員、撃ち抜いてるもんな。 |
??? | ……わ……いつ……のね…… |
??? | …………なの……昨日……わ…… ……しょう…………リーヌ様…… |
マークス | ……ん? あの花壇、しゃべってる……? |
メイド1 | ねぇ、お嬢様のご様子はどうだった? |
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メイド2 | あまりよくなさそうね……。 グラース様も気が気ではないみたいで、 近づくな、とお叱りを受けてしまったわ。 |
メイド1 | 悲しいけれど……無理もないわ。 これまでのお嬢様への仕打ちを考えれば、 この屋敷の人間なんて信じられないのでしょう。 |
メイド2 | でも、私たちくらい信用してくださっていいと思わない? 私たち、元はカトリーヌお嬢様付きのメイドなのに。 ああ……心配だわ。 |
主人公 | 【あの……今の話は?】 【詳しく聞かせてもらえませんか?】 |
メイドたち | きゃあっ! |
花壇の影に隠れて話していたのは、
ロシニョル家の屋敷のメイドたちだった。
メイド1 | あっ、あなた方は……! フィルクレヴァート士官学校からいらした方ですわね。 私たちからお話できることなど、ありませんわっ。 |
---|---|
メイド2 | お帰りでしたら、門までご案内します。 私たちの無駄話のことなど、お忘れくださいませっ。 |
マークス | チッ…… 丁寧なのに腹が立つ言い方しやがって……。 |
メイド1&メイド2 | ひっ……! |
マークス | あのな、マスターは敵じゃない。 あんたらのおじょーさまの力になろうとしてんだ。 何か知ってることがあるなら話せ。 |
主人公 | 【この家でも、彼女の立場は悪いんですか?】 【ここで一体何が起きているんですか?】 |
メイドたち | …………。 |
沈黙する彼女たちからは、忠誠心の高さが窺えた。
だからこそ、2人の説得を試みる。
“あなた方は、カトリーヌさんを本当に心配している。
我々も彼女たちの状況が気がかりだ。
思いは同じ──どうか話を聞かせてほしい”と。
メイド1 | ……この方たちなら、信用できるかもしれないわ。 |
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メイド2 | ちょっと……! |
メイド1 | あの……昨日の夜会で倒れたお嬢様の介抱に、 皆様が手を貸してくださったという噂を耳にしました。 それは、本当でしょうか? |
マークス | ああ、そうだ。 ……率先して助けに行った本人は、しばらく不在だが。 |
メイド1 | そうですか……。 お嬢様を助けてくださり、ありがとうございました。 |
メイド2 | あ、その……私からも! カトリーヌ様のこと、ありがとうございます。 |
メイド1 | お役に立てるかはわかりませんが…… 私たちが知っていることをお話しましょう。 |
メイドたちは声を潜めつつ、
カトリーヌが置かれている厳しい状況について、
〇〇たちに語ってくれた。
カトリーヌは、侯爵と最初に夫人の間に生まれた娘で、
心優しく、使用人たちからも好かれていた。
だが──母親が亡くなったあと、
彼女を取り巻く状況は悪化していく。
侯爵はしばらくして、後妻と連れ子2人を迎え入れた。
その後、事業の立て直しに奔走することになり、
本邸であるこの屋敷から離れることが増え──
侯爵不在の間、夫人として継母が
屋敷を取り仕切るようになると、
カトリーヌへの冷遇が始まったのだという。
メイド2 | 私たち、元はお嬢様付きのメイドだったんです。 でも今は、お嬢様には使用人が付けられていません。 奥様に、配置換えをされてしまったんです。 |
---|---|
メイド1 | 使用人の中には、奥様に抗議をした者もいましたが…… 彼らは難癖をつけられて、 屋敷を追い出されてしまいました。 |
メイド1 | そうこうしているうちに、 お嬢様は日陰の質素な部屋へと追いやられ、 お医者様なども遠ざけられ……。 |
メイド2 | おまけに、奥様は社交界でのロシニョル家の不遇を嫌い、 昨日のようなパーティーには決して顔を出さず、 つらい役目をお嬢様に押し付けているのです。 |
メイド1 | もともと身体が弱かったお嬢様は、 心労も重なって、さらに体調を崩されていきました。 |
マークス | それで……あんたらは何をしてるんだ? |
メイド2 | 私たちも、悔しくて悔しくて仕方がないのですが、 表立って動けば、他の者と同じように解雇されます。 |
メイド2 | なので、息を潜め…… 陰から少しでもお嬢さまを見守る道を選んだのです。 |
メイド1 | とはいえ、新たに雇われた使用人には 奥様の息がかかっておりますから、下手に動けず、 あまりお力になれていないのが現状なのですが……。 |
マークス | タバティエールと似たような感じか。 つーか、侯爵は何してんだ? 何も知らないのか? |
メイド1 | それが……奥様が、旦那様の付き人に、 自分の手の者を潜り込ませているようなんです。 |
メイド1 | 旦那様にお嬢様の窮状を訴えようとした者は、 直接会おうとしても阻まれ、 手紙を出しても旦那様の目に入らぬように排除され── |
メイド1 | 果ては、そのことが奥様の耳に入り、 やはり職を追われてしまいました。 |
メイド2 | 旦那様は、最初の奥様の忘れ形見である カトリーヌ様を大切に思われています。 現状を知れば、きっと正してくださるはずなのに……。 |
マークス | 侯爵ってのは、そんなに忙しいもんなのか。 |
メイド1 | 以前はここまで多忙ではなかったのですが、 あの災害で、かなり大きな被害がありましたから。 現場の方々と一丸になっておられます。 |
メイド2 | ロシニョル家存続のため、事業を盤石にしようと、 奔走されていらっしゃるのです。 |
メイド2 | なにしろ…… 他家からの助けは、もう望めませんので……。 |
マークス | 助けが望めないってのは…… あれか、毒マカロンのせいだな? そもそも、事件を起こさなければよかったのに。 |
メイド1 | ……っ、あれはきっと、何かの罠です! 旦那様があのような卑劣な行為をするはずありません! |
マークス | ……! わ、悪かった。 |
カトリーヌが置かれている状況はよくわかった。
頼みの綱の侯爵が不在で、社交界でも家でも冷遇され、
生来の病弱さに、薔薇の傷の負担まで加わっている。
グラースが彼女をかなり心配し、
周囲を警戒しているのにも納得がいく。
メイド1 | こんな状況なので、 グラース様がお嬢様のそばにいてくださるのは せめてもの救いなのですが……。 |
---|---|
メイド2 | お嬢様が召銃パーティーで呼び覚ましたのが グラース様ではければ……と思うと、複雑ですわ。 |
主人公 | 【召銃パーティー?】 【さっきも聞いたワードだ……】 |
メイド1 | ちょっと、あなた! |
メイド2 | ……あっ! |
マークス | おい、なんなんだ、召銃パーティーって。 今更隠す必要があることか? |
メイドたち | …………。 |
メイド1 | そうですね……この際、すべてお話しましょう。 |
メイド1 | 召銃パーティーというのは、 リリエンフェルト家が主催した、 貴銃士を召銃する催しです。 |
メイド1 | ロシニョルとレザール両家が、 社交界の皆様の前で貴銃士を呼び覚まし、 フランスを盛り立てるという催しだったのですが……。 |
メイド2 | ここで、予期せぬ出来事が起きたのです。 |
マークス | ん……? |
メイド2 | ……フランスはこういうところですから、 召銃に使用する銃も、すべて古銃のはずでした。 |
メイド2 | それなのに……なぜかカトリーヌ様の方に、 現代銃であるグラース銃が混ざっていて、 よりによって彼が貴銃士となり……! |
メイド1 | きっと誰かが、カトリーヌ様を陥れるために 現代銃を混ぜておいたのですわっ。 |
メイド2 | やったのは、レザール家に決まっています。 だって、私──見たんです! |
マークス | 何を? |
メイド2 | 召銃パーティーの前夜遅く── 私が窓の戸締まりをしておりましたら、 外の方で音がしたのです。 |
---|---|
メイド2 | 何かしら?と思って目を凝らすと── 黒いマントに身を包んだ何者かが、 屋敷の裏庭の方から忍び出てきて……! |
??? | …………。 |
メイド2 | その人が明かりの下を通った時に見えた横顔は、 紛れもなく、レザール家のテオドール様! 彼でしたわ! |
メイド2 | 召銃パーティーで使用する銃は、各家で保管されていました。 きっとあの時テオドール様が、持ってきた現代銃を、 ロシニョル家が用意した古銃とすり替えたに違いないのですっ! |
メイド1 | ああ……私たち、話し過ぎたわね。 明日の朝、セーヌ川に浮かんでる…… なんてことにならなきゃいいんだけど。 |
メイド2 | でも、これ以上お嬢様の境遇を見ていられないわ。 覚悟を決めましょう……っ! |
主人公 | 【話してくださってありがとうございます】 【こちらも何かわかったらお知らせします】 |
メイド1 | ええ…… お2人も、どうぞ十分にお気をつけて。 |
メイド2 | 煌びやかさの裏には、 深く濃い闇が潜んでいるものですわ。 では……私たちはこれで。 |
マークス | はぁ……人間ってのは面倒くさいな。 いや、マスターは面倒くさくないが。 |
マークス | それより、マスター。 本当にいいのか? |
マークス | ロシニョルとレザールの問題に介入すると、 面倒事や危険に巻き込まれるかもしれないんだぞ? |
主人公 | 【慎重に動こう】 【マークスがいるから大丈夫】 |
マークス | ああ、そうだな。 もし何かあっても、俺がマスターを守る。 |
マークス | しかし、タバティエールの言葉も どこまで信じていいのかわからないな。 |
マークス | あいつは、あの仏頂面男のことを 「悪い奴じゃない」と言っていたが…… さっきの話だと、胡散臭い動きをしてたんだろ? |
マークス | あの男はマスターに対して失礼だし、 俺はやっぱり信用できない。 |
主人公 | 【夜中に何をしていたんだろう……】 【彼の考えが読めない】 |
マークス | 1回脅してみるか? |
連合軍兵士 | ──失礼いたします! |
連合軍兵士 | 郊外にアウトレイジャーが現れました! 現場に急行願います! |
マークス | チッ、昨日の今日でまたかよ……! |
マークス | 絶対非道……! |
---|---|
アウトレイジャーたち | グォァァ……! |
兵士 | アウトレイジャーの全滅を確認! |
指揮官 | 周囲に敵影がないか、引き続き注意せよ! |
兵士たち | はっ! |
マークス | マスターっ、薔薇の傷は……!? |
マークス | くそっ、悪化してる……。 俺のせいだ……本当に、ごめん。 |
マークス | ジョージが戻るまで、 絶対非道はできるだけ使わないって決めたのに……! |
主人公 | 【マークスは悪くない】 【この状況じゃ仕方ない】 |
マークス | マスター……。 早く戻って、傷の手当をしよう。 |
マークス | 治らなくても、少しでも楽に── |
シャスポー | やあ、〇〇さん。 |
マークス | シャスポーか……。 絶対高貴にもなれない奴が、戦いが終わったあとで のこのこやって来て、なんの用だよ。 |
シャスポー | ……うるさいな。君には話しかけてないよ。 |
シャスポー | 〇〇さん、君ってすごいね。 傷が痛むだろうに、ぐずるマークスくんに、 絶対非道を使うようはっきり言う胆力── |
マークス | …………。 |
シャスポー | ただ指示をするだけではなく、 自らも銃を手に戦う姿……。 ふふっ、とても素敵だったよ。 |
シャスポー | はっきり言って、僕、君に興味があるんだ。 もっと親しく、楽しく話してみたい…… そう思ってるんだよ。 |
マークス | 嘘を並べ立てても、マスターには響かないぞ。 |
シャスポー | ……嘘だって? |
マークス | あんたは、嘘をついてる。 嘘の匂いがぷんぷんするんだ。俺にはわかる。 |
シャスポー | ──はぁ。無粋な奴だな。 |
シャスポー | 僕がこれから〇〇さんを ディナーにお誘いしようってのに、 邪魔しないでおくれよ、番犬くん。 |
シャスポー | ねぇ、〇〇さん? パリの中心部に、とっておきのレストランがあるんだ。 |
シャスポー | 席はもう予約してあるよ。 パリの夜景が一望できる、最高の場所をね♥ |
シャスポー | 僕と2人きりで、素敵な夜を過ごそう。 ほら、おいで。 |
主人公 | 【疲れてるので……】 【結構です】 |
シャスポー | ……遠慮しないで。 確かに僕は社交界の花形、人気の的だけど、 あなたは僕にふさわしい人だから。 |
主人公 | 【遠慮していません】 【ですから、結構です】 |
シャスポー | なっ……!? この僕の誘いを断るって言うの? 本気で? |
マークス | マスターははっきり、行かないと言っただろう。 早く帰ってマスターの手当をして休みたいんだ。 あんたの方こそ、邪魔をするな。 |
シャスポー | ……嘘だろ、信じられない……。 女でも男でも、 この僕に誘われて喜ばない人はいなかったのに……。 |
マークス | ……聞いてないな、こいつ。 |
シャスポー | ふふ、あははっ……いいね。 僕、そういう小鳥は嫌いじゃないよ。 |
シャスポー | 〇〇さん、 今日は疲れてるところに声を掛けてしまってごめんね。 |
シャスポー | 機会を改めるから…… 今度は、お茶くらい一緒にしよう。ね? それじゃ、Au revoir♪ |
マークス | ……なんだったんだ、あいつ。 |
マークス | 戦えないくせに態度はやたらでかいし、 アウトレイジャー討伐で疲れてるマスターを のんきにメシに誘うとか、どういう頭してんだ? |
マークス | はぁ……早く士官学校に戻りてぇ……。 |
──リリエンフェルト家の一室にて。
ロジェ | ……フルハウス。 |
---|---|
紳士 | おやおや! また負けてしまいましたなぁ。 |
貴婦人 | んもう、ロジェ様ったら、本当にお強いわ! さっきなんて、ストレートフラッシュでしたものね。 |
紳士 | 1勝できるまで粘りたいところだが…… このままでは素寒貧にされてしまいそうですよ。 |
シャルルヴィル | …………。 |
シャルルヴィル | あの、ロジェ様── ……あっ……。 |
ロジェ | おや、どうしたんだい? 我らが麗しき白百合の貴銃士。 |
シャルルヴィル | 少し話をしたいのですが……ゲーム中、でしたね。 すみませ── |
貴婦人 | あら、いいんですのよ。 どのみち、ロジェ様には勝てそうにありませんし このあたりでお暇させていただきますわ。 |
紳士 | いやぁ、まったくです。 幸運の女神は、ロジェ殿贔屓が過ぎますなぁ。 |
ロジェ | ふふ……確かに、女神は私に甘いかもしれませんね。 なにせ、あの名銃シャルルヴィルを、 貴銃士として私の元に目覚めさせてくれたのですから。 |
貴婦人 | シャルルヴィル様の存在は、 フランスにとっても幸運ですわね。 |
シャルルヴィル | …………。 |
シャルルヴィル | ……ありがとう、素敵なマダム。 フランスの力になれるように、頑張るよ♪ |
シャルルヴィル | ……あの……話ですが── |
---|
──バシッ!!
おずおずと口を開いたシャルルヴィルの頬を、
ロジェは平手で強く叩いた。
シャルルヴィル | うっ……!! |
---|---|
ロジェ | お前は何をしたかわかっているのか!? 邪魔をしやがって!! |
ロジェ | あの2人はオーストリアの名士だ。 これから2人を勝たせて、いい気分にさせてやり── |
ロジェ | 私の事業で手詰まりになっている ロッテンドールの土地について、 口利きを頼む手筈だったのに……お前のせいで台無しだ!! |
シャルルヴィル | ごめんなさい……申し訳ありません……! 本当に、ごめんなさい……っ! |
ロジェ | ふん……! それで、私の邪魔をしたからには 余程の用事なんだろうな? |
シャルルヴィル | ……あの……。 |
シャルルヴィル | ロジェ様は、ジョージについて何かご存知でしょうか。 |
ロジェ | ジョージというと……当家で保管していた、 あの忌々しい…… ブラウン・ベス・マスケットの貴銃士か。 |
ロジェ | 連合軍の任務でフランスに来ていると聞いたが、 それがどうかしたのか? |
シャルルヴィル | それが……フランス到着早々、極秘の緊急任務で 呼び出されて、イギリスに戻ったみたいなんです。 |
シャルルヴィル | 何があったのか、どんな任務なのか…… ロジェ様なら、何か噂でも耳にしてないかと思って。 |
ロジェ | ……私は何も聞いていない。 いくら当家が連合軍の強力なパトロンとはいえ、 他国での任務について詳細を知らせるとも思えん。 |
ロジェ | しかし……フランスに派遣した貴銃士を、 任務も終わらぬうちに別の場所へ遣るのなら、 前もって秘密裏に連絡があって然るべきではあるな。 |
シャルルヴィル | …………。 |
シャルルヴィル | (ロジェ様も、何も聞いてない……? 本当に、そんなことってあるのかな) |
シャルルヴィル | (リリエンフェルト家は、連合軍の重要な資金源。 関係が悪化しないよう、連合軍も対応には慎重で、 だからここには、いろんな情報が集まるのに……) |
ロジェ | 話は終わりか? 明日も“癒し”に行くのだから、早めに休め。 |
シャルルヴィル | ……はい、ロジェ様。 本当に、申し訳ありませんでした……。 |
シャルルヴィル | (エラメル大佐も、ロジェ様も、 ジョージが参加してるっていう極秘任務について、 噂すら耳にしてない……) |
---|---|
シャルルヴィル | (なんだか変だし、嫌な予感がする。 ジョージは本当に、任務で招集されたの……?) |
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