瓜二つの貴銃士2人が、静かににらみ合う。
異様な雰囲気の中で、マークスは、
自分が連れてきた方のグラースに詰め寄った。
マークス | あんたのことはわかってる。 あんたは、ロシニョル家じゃなくて、 レザール家の貴銃士なんだろ。 |
---|---|
グラース(?) | …………。 |
グラース(?) | チッ……ああ、そうだよ。 僕はテオドール・ド・レザールに召銃された シャスポーだ。 |
シャスポー | カトリーヌは部屋からあまり出られないし、 手紙のやり取りすら継母に監視されてる。 グラースも、現代銃だから気楽に外を出歩けない。 |
シャスポー | だから僕が、彼女専用の郵便配達人をしてたのさ。 こうやって、グラースのふりをしてね。 |
シャスポー | ……さ、認めてやったんだから、これで満足だろ? 僕は、カトリーヌに手紙を届けに行かないと。 いい加減解放してくれないかな。 |
マークス | いや、まだだ。 |
マークス | ……あんたは、偽物だろう? |
シャスポー(?) | …………。 どういうことかな。 |
主人公 | 【あなたは、シャスポーじゃない】 【本当の名前は、グラースでは?】 |
シャスポー(?) | ……変なことを言わないでくれるかな。 僕はシャスポー。誉れ高き古銃の貴銃士だよ。 |
マークス | あんたがいくらそう言ったところで、信じられないな。 俺たちが言っていることが事実だということは、 あんたのマスターの傷が証明している。 |
マークス | 俺たちが知る限りでも2度、 グラースは絶対非道を使っている。 |
マークス | なのに……グラースのマスターであるはずの カトリーヌの薔薇の傷は、 パーティーの夜以降、あまり悪化していない。 |
マークス | その代わり、急激の薔薇の傷が悪化した人間がいる。 ……あんたのマスター、テオドールだ。 |
シャスポー(?) | …………。 |
マークス | 考えうる中で、1番論理的な答えは…… あんたこそが現代銃の貴銃士グラースだということだ。 |
マークス | そうだろ? グラース。 |
グラース | …………。 |
マークス | ふん。さすがにここまで言えば、 反論の言葉も出てこねぇみたいだな。 |
マークス | それで、もう1つ疑問なんだが……。 あんたは何者なんだ? カトリーヌの貴銃士。 |
グラース(?) | …………。 |
マークス | あんたも同じくグラースである可能性も考えた。 だが、あんたら2人は、見た目はよく似てるけど、 性格はかなり違う。正反対なくらいだ。 |
マークス | 個体ごとに多少の差はあったとしても、 まったく同じモデルの軍用銃なのに、 共通する芯の部分もないくらいに差が出るものか? |
マークス | ……あんた、本当は、シャスポーだろ。 |
グラース(?) | …………。 |
小さくため息を付いた彼は、
やがて、ゆっくりと頷いた。
シャスポー | ……君たちの言う通りだ。 僕の本当の名は、シャスポー。古銃の貴銃士だよ。 |
---|---|
主人公 | 【なぜこんなことに?】 【どうして2人が入れ替わってる?】 |
マークス | あんたらは、召銃パーティーってので、 大勢の人間の前で呼び覚まされたはずだろ? |
マークス | なのになんで、シャスポーがグラース、 グラースがシャスポーだって認識されてるんだ。 |
シャスポー | ……大勢の前で召銃されたからこそ、だよ。 |
シャスポー | あの日……僕がシャスポーだと名乗るより先に、 そいつがシャスポーを名乗った。 そして僕のことを、グラースだと言ったんだ。 |
シャスポー | だから、僕がグラースで、 そいつがシャスポーになった。 |
マークス | は……? 意味がわからない。 |
マークス | グラース、あんたはなんで偽の名前を名乗ったんだ? それに、大勢いたのになんで誰も気づかない……? |
マークス | いや、そもそも……シャスポー、 あんたが訂正すればよかっただけの話じゃないのか? |
シャスポー | そんなに単純な話じゃない。 |
シャスポー | 君たちは、召銃パーティーについて どこまで知ってるんだ? |
マークス | 確か……リリエンフェルトが主催したんだったよな。 レザールとロシニョルも貴銃士を呼び覚まして、 フランスを盛り上げようとかなんとかで。 |
シャスポー | そう、それが表向きの理由。 |
シャスポー | だけど、本当は……毒マカロン事件の手打ちとして 提案されたものだったらしい。 |
シャスポー | 名士たちの前で二家が競うように召銃し、 レザールの1人勝ちにすることで、 溜飲を下げてはどうか、ってね。 |
シャスポー | ロシニョル侯爵は、毒なんて盛っていないって ずっと否定し続けていたけれど、 社交界でそれを信じる人はほとんどいなかった。 |
シャスポー | レザール侯爵の怒りが少しでも静まれば、 ロシニョル家に対する風当たりも多少は弱まって、 針のむしろのような状態から解放されるかもしれない。 |
シャスポー | だから……ロシニョル家は、その提案を呑んだ。 |
シャスポー | そして、年代物の古銃に見える、 精巧なレプリカを用意したんだ。 ……間違っても、何も召銃しないようにね。 |
マークス | レプリカだと……? でも、あんたは本物だろ? 模造品なんかじゃないはずだ。 |
シャスポー | ああ。僕はまぎれもなく、本物のシャスポー銃だよ。 戦場でも使われた、フランス生まれの名銃だ。 |
シャスポー | だから、なおさらわからないんだ。 なぜ、レプリカしかないはずのロシニョル家の側に、 本物の古銃である僕が混ざっていたのか。 |
グラース | 僕が召銃されたことも、謎の1つだな。 |
グラース | ……古銃だけを用意するはずが、 なんで現代銃の僕が混ざってたんだか。 |
グラース | レザール家がわざわざグラース銃…… 現代銃を準備するだなんて、絶対にあり得ない。 お前らにもわかるだろ? フランスを見てたらさ。 |
マークス | ……ああ。 |
シャスポー | 召銃パーティーには、不可解なことが多い。 だけど、僕たちがあの場で召銃されたことは、 変えようのない事実なんだ……。 |
──リリエンフェルト家、
召銃パーティーの会場にて。
司会者 | 皆様、お待たせいたしました。 テオドール様およびカトリーヌ様、 両名のご準備が整ったようです。 |
---|---|
司会者 | それでは、まずは1挺目──……! |
テオドールとカトリーヌの両名は、
同時にゆっくりと銃へ手を伸ばすが、何も変化はない。
男性1 | 1挺目はハズレか。 まぁ、貴銃士に目覚める銃は稀だそうだからな。 |
---|
その後も何も起こらないまま、
2人が4挺目へ触れた時だった。
テオドール | ……っ!! |
---|---|
男性2 | この光は……! |
女性1 | まさか、本当に貴銃士様が……!? |
会場がどよめきに包まれる中、
まばゆい光とともに、薔薇の花びらの幻影が舞う。
その中から、人影が現れた。
??? | ……よう、俺を呼んだかい? |
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テオドール | 君は……。 |
タバティエール | 俺は、タバティエール。 フランス生まれの後装式ライフルさ。 |
タバティエール | 薬室の形が嗅ぎ煙草入れに似てるからこんな名前なんだ。 前線向きじゃねぇが、後方支援なら任せてくれ。 よろしく頼むぜ、マスター。 |
女性2 | まぁ……! 奇跡だわ……! |
男性1 | 召銃の瞬間をこの目で見られるとは! ああ、寿命が伸びそうな気分だ……! |
男性2 | しかし、カトリーヌ嬢の方はまだ0か。 ……無理もないことかもしれんが。 |
カトリーヌ | …………。 |
司会 | テオドール様がめでたく貴銃士を呼び覚まされました! しかし、古銃はまだまだございます。 次へと参りましょう! |
タバティエール | ……? なんだ、これ。 |
テオドール | 説明はあとでする。 この会が終わるまで、少し待っていてくれ。 |
タバティエール | ……へいへい。 |
その後も2人は、次々に銃へ触れていくが、
タバティエール以降、貴銃士になる銃はない。
司会者 | ついに、残るは1挺となりました。 皆様、どうか最後の瞬間までお見届けください! |
---|---|
テオドール&カトリーヌ | …………。 |
2人がそれぞれ、最後の銃に触れる。
その瞬間、たちまち眩い光が溢れ出し、会場を包んだ。
テオドール | なっ……!? |
---|---|
カトリーヌ | そんな、どうして……! |
??? | …………。 |
??? | …………。 |
男性1 | おお……! 両家とも召銃したぞ! |
女性1 | 銃も見た目もそっくりな貴銃士様方ですわね! 一体どの銃の貴銃士様なのでしょう……? |
男性2 | フランスでボルトアクション式の古銃というと…… シャスポー様ではないか? |
男性3 | というと、どちらもシャスポー様なのかね!? |
女性2 | しかし、よく似ているとはいえ 別の貴銃士様のように見えますわ。 シャスポー様に似ている銃はありますの? |
男性2 | モデルになったのはドライゼ銃だが、 今回集められたのはフランスの古銃だけのはず……。 |
男性3 | ……っ、まさか……! シャスポー銃を金属薬莢に対応するよう改造した、 現代銃のグラース銃が混ざっていたのではないか!? |
女性1 | 現代銃ですって!? 恐ろしい……! |
男性1 | 確かに、シャスポー銃とグラース銃の差は 素人には判別がつかないからな……。 |
男性3 | で、一体どちらがシャスポー様で、 どちらが現代銃なんだ!? |
シャスポー | 僕は、シャ── |
グラース | Bonjour、皆さん。僕はシャスポー。 フランスが生んだ、古銃の傑作です。 |
シャスポー | は……? 君、一体何を── |
グラース | そして、向こうにいるのがグラース。 僕をもとにして作られた──現代銃です。 |
女性2 | きゃあっ! 現代銃だなんて、おぞましい! |
男性1 | グラース銃を混ぜるだなんて、 ロシニョル家は一体何を考えているんだ!? |
シャスポー | ち、違う、僕は──! |
戸惑い、否定しようとするシャスポーの声は、
悲鳴にも似た声が次々と上がり混乱する会場の中で、
誰にも届くことなく消えていく。
そんな中、ロシニョル侯爵が
シャスポーとカトリーヌへと近づいた。
ロシニョル侯爵 | 静かに。小声で話すんだ……。 |
---|---|
カトリーヌ | お父様……! わ、わたくし……一体どうしてこんなことに……! わたくしが触れたのは、すべてレプリカのはずです! |
ロシニョル侯爵 | 私にも、何が起きているのかわからない。 当家が用意したのは、すべて間違いなくレプリカだ。 本物の銃を混ぜるなど……! |
ロシニョル侯爵 | それに、君は……。 君こそが、シャスポーなのでは? |
シャスポー | ああ、その通りだよ。 僕はシャスポー銃、あいつは弟のグラースさ。 |
シャスポー | この騒ぎはなんなんだい? 皆は一体、何を揉めている? 古銃だとか、現代銃だとか……。 |
ロシニョル侯爵 | …………。 |
シャスポー | とにかく、早く訂正してもらえないかな。 偽りの名前で認識されるなんて、 僕はそんなのごめんだよ。 |
ロシニョル侯爵 | ……すまないが、それはできない。 |
シャスポー | えっ……? |
カトリーヌ | お父様……? |
ロシニョル侯爵 | シャスポー君、カトリーヌ、本当にすまない。 ただ、事が起きてしまった以上、 グラースが言った嘘をそのまま通すのが最善だ。 |
シャスポー | なんだって!? |
ロシニョル侯爵 | 本来この場で、カトリーヌは貴銃士を呼び覚ませず、 レザール家の倅に花を持たせることで、 先日の件を水に流すはずだった……。 |
ロシニョル侯爵 | それが、カトリーヌが英雄シャスポーを召銃し、 テオドールがグラースを召銃したとなると……。 |
カトリーヌ | ……! また、ロシニョル家の仕業だと、 身に覚えのない中傷を受けることになる……。 |
ロシニョル侯爵 | その通りだ。こちらの貴銃士がシャスポーだと 明らかにすれば、人々からの尊敬は集められるだろう。 |
ロシニョル侯爵 | だが、この場を取り持ったリリエンフェルト家の 面目は丸潰れになる上、レザール家はロシニョル家が 仕組んだと言いふらすに違いない。 |
ロシニョル侯爵 | そうなれば、ロシニョル家の立場は、 これまで以上に悪化する……。 フランスに居場所がなくなる可能性すらある。 |
ロシニョル侯爵 | だが、ここで君がグラースだということで通せば、 リリエンフェルト家とレザール家に対し、 ロシニョル家の潔白を暗に示すことになる。 |
ロシニョル侯爵 | レザール家も、禍根は残るとはいえ、 あまり強く出ることはできなくなるはずだ。 |
カトリーヌ | …………。 |
カトリーヌ | ……シャスポー。 あなたに、酷いお願いをします。 |
カトリーヌ | どうか、“グラース”として振る舞ってください……。 |
シャスポー | マスター……。 |
シャスポー | あの時は、断片にしか状況がわからなかったけど、 他でもないマスターの切実な願いを無視できなかった。 だから、あの場での訂正はやめることにしたんだ。 |
---|---|
シャスポー | ロシニョル家とレザール家の事情を知ってからは、 侯爵の言葉の意味がよくわかったから、 なおさら否定する気はなくなったよ。 |
シャスポー | ……不本意ではあったけどね。 |
グラース | へぇ。目覚めたばかりとはいえ、 やけにしおらしいと思ったら、そういうことだったのか。 |
グラース | ま、おかげで僕は助かったけどな。 |
主人公 | 【シャスポーの事情はわかったけど……】 【グラースの行動の理由がわからない】 |
マークス | ……グラース。あんたはなんで、シャスポーを名乗った? 自分を示す名前を、なぜそんなに簡単に捨て去れる? 誇りはないのかよ。 |
グラース | 誇り……ねぇ。 僕はちっぽけな誇りよりも、 この時代のフランスでの栄誉を選んだのさ。 |
グラース | 目覚めてすぐ、パーティーにいた連中の様子を見て、 僕は悟ったよ。 |
グラース | 「現代銃は、まったくもって歓迎されていない。 栄誉を手に入れられるのは、古銃のシャスポーだ」ってね。 |
グラース | だから僕は、「シャスポー」という名前を奪った。 それだけのことだ。 |
グラース | とっさの判断だったけど、結局のところ、 僕のおかげですべてうまくいっただろ? |
グラース | もしもあの場で僕がグラースだと正直に言っていたら、 レザール家だけでなく、仲裁をふいにされた リリエンフェルト家も激怒したはずだ。 |
グラース | 最悪の場合、フランス政府に働きかけて、 ロシニョル家の侯爵家の地位を剥奪したかもしれねぇ。 |
グラース | だけど、僕の機転によって なんとかレザール家の面目は保たれて、 ロシニョル家は弁明の機会を得られた……。 |
グラース | そして僕は、グラース銃としての強さと、 古銃のシャスポー銃としての名声、 両方を手に入れたわけ。ああ、めでたしめでたし。 |
シャスポー | シャスポー銃の名声……だと? 僕に、本当の意味で名声があるとでも思っているのか? |
グラース | はぁ? 当然だろ。 古銃をやたらとありがたがっているフランスで、 革命戦争でも活躍したシャスポー銃だぞ。 |
グラース | 名声以外に何があるって言うんだよ。 |
シャスポー | 君ってヤツは、本当に……。 |
シャスポー | 現代銃──…… グラースだと勘違いされて人々に忌避されても、 心のどこかで安堵した僕の気持ちが、君にわかるか? |
グラース | そんなもん、わかるわけないだろ。 あんな扱いを受けて、なんでホッとできるんだよ。 |
シャスポー | ……僕が忌避される理由が、 「現代銃だから」という、ただ1点だけだからだ。 |
シャスポー | そこには、僕が何者であるとか、 僕がかつて何をしたかとか、 そういうことは一切関係ない。 |
シャスポー | フランスを守るために生まれたはずの僕が、 おびただしい数のパリの人々を惨殺した── あの忌まわしい悪夢を……ッ! |
シャスポー | 自分の名前とともに、 思い出さずに済むんだからな……! |
シャスポー | グラースと呼ばれ、忌み嫌われることすら…… シャスポーとしてあの罪と向き合うより、 僕にとっては、ずっとずっと楽な道だった。 |
マークス | ……惨殺? 罪……? 何の話をしている? |
グラース | ──「血の一週間」。 |
マークス | なんだ、それは。 |
シャスポー | …………。 |
グラース | ずっと昔、シャスポー銃が現役で使われてた頃のことだ。 普仏戦争での敗戦に端を発して、フランス人同士で、 血で血を洗うような争いをする羽目になったのさ。 |
グラース | その騒乱で使われたのが、こいつ、シャスポー銃。 そりゃあもう、酷い有様だったらしいぜ。 |
グラース | 男も女も、老人も、子供も関係ナシ。 おびただしい死体が転がって、セーヌ河の水が、 血で染まるほどだったってさ。 |
シャスポー | ……ッ。僕、僕は……っうぅ──! |
グラース | ハッ。くだらねぇ! 歴史を引きずってなんになるっていうんだよ! |
グラース | お前が惨めったらしく思う歴史なんか、 僕にはどうだっていい。 |
グラース | 確かに命を奪った手段は銃だが、 銃が勝手に人を撃つか? 撃たないだろ。 「人間が」「銃を使って」殺したんだ。 |
グラース | 人間の勝手のことを申し訳なく思うなんて、 まったく……バカなんじゃないか。 |
シャスポー | 黙れ! 何も知らないくせにッ! |
シャスポー | ……僕は、覚えてる。 銃の身だったけれど……文字通り、染みついてるんだ。 |
シャスポー | 人々が流した血が……あの悲鳴が……! この銃に……っ!! |
シャスポーは、震える手で自分の銃を握りしめる。
その銃床には、わずかに血の跡のような
汚れが染み付いていた。
グラース | ハッ、くだらねぇ。 |
---|---|
シャスポー | ……貴様!! |
激昂したシャスポーが、グラースの胸倉を掴む。
グラース | ……ッに、すんだ!! 離せよ!! |
---|---|
マークス | やめろ、落ち着け! |
グラース | チッ……この型落ち風情が……! |
シャスポー | それ以上口を利いてみろ! 僕のすべてを賭してお前を破壊してやる!! |
マークスに引き離されてもなお、
シャスポーとグラースは一触即発の雰囲気で、
睨み合いを続けた。
グラース | ……もう帰っていいか? 僕は忙しいんだ。 こんなところで無為な時間を使いたくねぇ。 |
---|---|
主人公 | 【黒幕は誰?】 【テオドールが仕組んだのでは?】 |
グラース | さぁね。僕はこの真相を追求する気はないからな。 現状で満足してるんだ。 |
シャスポー | ……色々考えたけれど、 納得のいく答えは見つかっていない。 |
シャスポー | レザール家が黒幕なら、ロシニョル家のテーブルに 現代銃を仕込めばよかったんだ。 |
シャスポー | カトリーヌが現代銃を召銃すれば、 よりロシニョル家の権威が失墜する原因に なるだろうからね。 |
シャスポー | だけど……実際にあったのはその逆の、古銃だ。 ロシニョル家の方に本物の古銃を混ぜても、 レザール家にメリットはない……。 |
主人公 | 【誰か、得をした人間は?】 【2家以外の策略なのでは?】 |
グラース | さぁ……心当たりはないな。 レザール家に恨みがあるのはロシニョル家くらいだ。 |
シャスポー | ロシニョル家を恨んでるのも、レザール家くらいだよ。 |
マークス | だが、誰か仕組んだ人間がいるはずだ。 シャスポーあんた、このままでいいのか? |
マークス | 古銃として、あんたのマスターと 平穏にやっていけた方がいいだろう? |
主人公 | 【歪みを正そう】 【一緒に解決しよう】 |
シャスポー | …………。 |
グラース | ははっ、冗談はよせよ。 |
グラース | 僕の嘘がバレたら、名声がパァだ。 現代銃ってだけでも散々なのに、 これまで騙してたのかって、罵られるだろ。 |
グラース | そんなの、まっぴら御免だね。 |
マークス | グラース、てめぇは黙ってろ。 |
シャスポー | …………僕も、断る。 |
マークス | ッ、はぁ!? |
マークス | なんでだよ。 あんたがシャスポーだってわかれば、 あんたのマスターの境遇だってマシになるだろ!? |
シャスポー | 君の考えは、短絡的だよ。 僕が古銃、シャスポーだって明らかにすれば、 僕自身への対応は、180度変わるだろう。 |
シャスポー | 高貴な古銃の貴銃士様、ってね。 これまでのことは都合よく忘れて、 ちやほやし始めるに決まってる。 |
シャスポー | ……けど、マスターは? |
シャスポー | 怒ったレザール家とリリエンフェルト家が、 召銃パーティーの裏の意図を明らかにすれば、 ロシニョル家はおしまいだ。 |
シャスポー | レザール家から受けた恩を、 毒入りのマカロンという仇で返し── |
シャスポー | さらには、公爵家が仲裁に入ったのに、 それすらも台無しにした究極の恩知らず。 そう言われることになるだろう。 |
シャスポー | せっかく立て直しが進んでる事業も 悪評でダメになるかもしれないし、 マスターは今以上に辛い立場に置かれる。 |
シャスポー | 今だって、酷いものだけど……。 それでも、まだマシなんだ。 |
シャスポー | 君が、カトリーヌや僕のことを思ってくれるなら、 そっとしておいてくれ。 |
主人公 | 【そんな……】 【シャスポーは、本当にそれでいいの?】 |
シャスポー | ……仕方ないんだ。 現状が最善ではないけれど、これ以上どうしようもない。 現状維持が、一番なんだ……。 |
マークス | なんだよ、それ……。 |
〇〇とマークスが2人のもとを
去ったあと──。
グラース | はぁ、やっと無駄な時間が終わった。 僕も帰る。じゃあな、“グラース”。 |
---|---|
シャスポー | …………。 |
グラース | ……あ、そういえば。 |
グラース | 歪みを正す──って、テオも言ってたかもしんねぇな。 |
シャスポー | ……なんだと? どういうことだ。 |
グラース | さぁな。僕は何も知らねぇよ。 本人に聞けば? Au revoir! |
シャスポー | ……!? |
マークス | マスター、これからどうする? |
---|---|
マークス | 2人とも入れ替わりをやめる気はなさそうだし、 シャスポーの話を聞いてたら、 そうするしかないんだってのもわかった。 |
マークス | でも……なんだか、すっげーモヤモヤする。 |
主人公 | 【1つ、考えがある】 【……行こう】 |
マークス | どういうことだ、マスター? |
マークス | ……よくわからないが、 とりあえず俺は、マスターについていく! |
リリエンフェルト家使用人 | 〇〇様とマークス様ですね。 こちらでしばらくお待ちください。 |
---|---|
マークス | 一体どこにいくのかと思ったら、 リリエンフェルト家だったのか。 |
主人公 | 【リリエンフェルト家の力を借りたい】 【シャルルヴィルを頼ってみようかと……】 |
マークス | そうか……フランスでの出来事だし、 リリエンフェルトに頼るのが一番かもしれないな。 |
マークス | 入れ替わりをどうしようもできなくても、 フランスでの現代銃の扱いがマシになれば、 あいつらだって少しは助かるだろう。 |
マークス | 問題は……シャルルヴィルが役に立つかだが。 |
シャルルヴィル | やぁ、お待たせ。 |
シャルルヴィル | 急に2人が来たって聞いてびっくりしたよ。 ふぁぁ……っと、ゴメン。 |
マークス | あんた……もしかして寝てたのか? 昼過ぎだってのに、ずいぶんと呑気なもんだな。 |
シャルルヴィル | ちょっ……違うよ、いつもはちゃんと朝起きてるって。 昨日は夜遅くまで調べものしてて、 朝方にやっと寝たからさぁ……。 |
マークス | どこまで本当なんだか。 あんたのことだ、ふらふら遊んでたんじゃないのか? |
シャルルヴィル | 失礼しちゃうなぁ、もう。 ボクなりに、ジョージの行方について調べてたんだよ? |
シャルルヴィル | ロジェ様が知らないって言うから、 なんだかちょっとだけ、嫌な予感がして……。 |
シャルルヴィル | でも、一番怪しかったフランス国内の名士は、 みんなシロだったんだよね。 |
シャルルヴィル | だから本当に、超!極秘の任務なんだと思う。 それがわかって、やっとゆっくり眠れたんだ。 |
主人公 | 【心配してくれてたんだ……】 【調べてくれてありがとう】 |
シャルルヴィル | どういたしまして。 ま、結局ボクの杞憂だったみたいだけどね。 |
シャルルヴィル | それで、今日はどうしたの? ボクにどんな用事? |
マークス | まずは、一応確認する。 あんたは、シャスポーとグラースの入れ替わりを 知ってるんだよな? |
シャルルヴィル | …………。 |
マークス | ……その顔が答えだな。 |
主人公 | 【リリエンフェルト家の力を借りたい】 【シャスポーたちの立場を回復させたい】 |
シャルルヴィル | 君たちの気持ちは、よくわかるよ。 でも……残念だけど、ボクには何もできない。 |
マークス | 何もできないってことはないだろ。 あんたはフランスで一番くらいに影響がある、 リリエンフェルト家の貴銃士で── |
シャルルヴィル | うん。ボクは、貴銃士。 リリエンフェルト家の当主でも後継ぎでもない。 それが、どういうことかわかる? |
マークス | ……? |
シャルルヴィル | 貴銃士ってのはね、ただのお飾りなんだよ。 象徴であって、権力はないんだ。 |
シャルルヴィル | いくら皆から、貴銃士様ーってちやほやされても、 ボクにリリエンフェルト自体を動かす力はないし、 ロジェ様に口添えはできるけど、指示はできない。 |
シャルルヴィル | ロシニョルとレザールの関係には、 根が深いいろんな問題が絡んでるから、 ロジェ様だって易々とは手を出せないよ。 |
シャルルヴィル | だから……ごめんね。 |
主人公 | 【そんな……】 【見て見ぬふりはできない】 |
シャルルヴィル | これが現実なんだ。 それに、君たちが何かしようとしても無駄だよ。 |
シャルルヴィル | いくら、複数の貴銃士を呼び覚ましてるマスターでも、 君は一介の士官候補生に過ぎない。 |
シャルルヴィル | 連合軍に多額の出資をしてるリリエンフェルト家と君と どちらが有利かは、考えるまでもないよね? |
シャルルヴィル | だから……早めに諦めるのが賢い選択ってものだよ。 |
マークス | ハナから諦めてかかるのが「賢い」だと? 「みっともない」の間違いじゃないのか。 |
シャルルヴィル | ……なんだって? |
マークス | あんたは、何もできない自分に そうやって言い訳してるだけだろ。 |
シャルルヴィル | ……っ! |
シャルルヴィル | ……出て行って。話はもう終わりだよ。 |
主人公 | 【シャルルヴィル……】 【……マークス、行こう】 |
シャルルヴィル | …………。 |
主人公 | 【……お邪魔しました】 |
マークス | マスター……。 |
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