駆け落ちの決行から数日──。
一行はパリを遠く離れ、国境へ向かって密かに進んでいた。
テオドール | カトリーヌ、大丈夫か? |
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カトリーヌ | え、ええ……、 だ、いじょう、ぶ……っ。 |
テオドール | ……っ、危ない! |
倒れそうになるカトリーヌを、
間一髪でテオドールが抱きとめる。
テオドール | まずい……薔薇の傷が悪化している……! |
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マークス | 薔薇の傷が? でも、あんたの貴銃士はシャスポーで、 絶対非道は使えないから、 傷はそんなに悪化しないんじゃないのか……? |
主人公 | 【傷への抵抗力が弱まってる……?】 【カトリーヌさんの生命力と関係してるのかも】 |
マークス | そうか……こいつの場合は、 もともと身体が弱いし毒で死にかけたから、 薔薇の傷が悪化しやすい、のか……? |
タバティエール | とにかく、どこかで休んだほうがいい。 |
カトリーヌ | いいえ! この傷は……休んでも、よくならない。 時間を無駄にしてしまうだけだわ。 わたくしは大丈夫だから……行きましょう。 |
カトリーヌ | 少しでも早くフランスを出ないと。 国内にいる限り、追っ手からは逃れられない……。 |
テオドール | しかし……! |
タバティエール | 俺が絶対高貴になれれば……って、 嘆いてる時間ももったいないな。 |
タバティエール | カトリーヌちゃんの言う通りだ。 少しでも早く、遠くに逃げることを優先して── |
マークス | ──静かに。誰か来る! |
マークスの言葉に一同は顔を強張らせ、
物陰に隠れて様子を窺う。
??? | ……うーむ……やはり、郊外は酷い有様だな。 〇〇君たちは大丈夫だろうか……。 |
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主人公 | 【あれは……】 【ラッセル教官!?】 |
マークス | おい、ラッセル! あんた、なんでこんなところにいるんだ? |
ラッセル | 〇〇君にマークス……!? 君たちの方こそ、どうしたんだ? |
ラッセル | 軍はいないし、任務……という感じではなさそうだな。 それに、そちらの方たちは? |
テオドール | 私たちは……。 |
タバティエール | こちらは、とある商家の若夫婦だが、 お忍び旅行なもんで、名前は伏せさせていただきたい。 俺はお供の使用人さ。 |
タバティエール | 奥様が体調を崩されたところを、 お2人に助けていただいた……って、ところでして。 |
タバティエール | なっ? |
主人公 | 【そんなところです!】 |
ラッセル | なるほど。 |
マークス | んで、あんたの方はどうしたんだ? |
ラッセル | 任務が長引いているみたいだから、 様子が気になって来てみたんだ。 何か問題でもあったのかい? |
マークス | 問題しかねぇよ……! |
マークス | フランスに来て早々、 ジョージの野郎が極秘任務だとかでいなくなって、 マスターの傷を治せずにいるんだ。 |
マークス | もういい加減限界だ。 士官学校から連合軍に抗議して、 あいつをさっさと戻してくれ。 |
ラッセル | おい、待ってくれ。 ……極秘任務? 一体なんなんだ、それは。 |
ラッセル | 君たちに何か任務を割り振りたい時には、 必ず士官学校を通すことになっている。 極秘の任務だろうと、例外はない。 |
ラッセル | 理事長と共同審議官、私の3人を通し、 そこから君たちに指令を出すことになるんだが…… ジョージに極秘の任務だなんて、初耳だぞ……! |
マークス | はぁ……!? それじゃあ、ジョージは……? |
主人公 | 【あの手紙は偽物だった……?】 【何かに巻き込まれてる……?】 |
タバティエール | ……! |
マークス | だが、シャルルヴィルが調べても、 怪しい奴はいなかったと言っていたぞ。 |
マークス | あいつの調べが間違ってたのか、 フランスの連中とは別口で捕まったりしてるのか……。 |
ラッセル | とにかく、まずいことになったな……。 近くの連合軍施設から士官学校と軍の上層部に連絡して、 ジョージの捜索隊と応援を要請しよう。 |
マークス | 頼むぞ。あいつがいないと、マスターが── |
主人公 | 【マークス?】 【どうした?】 |
マークス | この匂い……来る! |
アウトレイジャー | ウ、ウゥ……。 |
ラッセル | アウトレイジャー……! |
マークス | おい、ラッセル! あんたはさっさと行け。 そして、早くジョージを見つけてくれ! |
ラッセル | あ、ああ! 2人とも、十分に気を付けてくれ! |
主人公 | 【了解!】 【教官もお気をつけて!】 |
ラッセル | 頼んだぞ、〇〇君! |
アウトレイジャー | 殺、ス……。 |
マークス | ……チッ、こんな時にまで湧いてきやがって……! マスター、戦闘を開始する! |
マークス | どうにか、絶対非道は使わずに切り抜ける……っ! |
カトリーヌ | こ、これが、アウトレイジャー……。 〇〇さんたちは、 いつもこんな恐ろしいものと戦っているの……? |
テオドール | カトリーヌ、ここは危険だ。 彼らの邪魔にならないよう、下がっていよう。 |
タバティエール | マスター、カトリーヌちゃん、俺の後ろに。 ……あいつらから2人を任された以上、 きっちり守らないとな。 |
マークス | ……っぐ! |
マークスは、絶対非道を使わずに対処しようとするが、
通常の攻撃があまり効かないアウトレイジャーと、
1発1発精密な狙撃をする彼は、相性が悪い。
放った弾は急所を撃ち抜くが、動きを止められず、
じわじわと追い詰められていく。
主人公 | 【マークス!】 【治療しないと!】 |
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マークス | これくらい、平気、だ……。 |
アウトレイジャー | グァッ……! |
マークス | ……っ!? |
タバティエール | おお、俺も案外まだ使えるもんだな。 |
マークス | タバティエール……! |
タバティエール | 大した戦力にはなれないが、俺も援護するぜ。 |
マークス | よし……やるぞ! |
マークス | くそっ……まだ、だ……! |
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主人公 | 【……絶対非道を使おう】 |
マークス | そんなの、ダメだ……! |
マークス | 絶対非道を使ったらマスターが……。 ジョージが戻るのかも、 いつになるのかもわからないんだぞ! |
主人公 | 【このままだと皆危ない】 【まだ耐えられる】 |
マークス | ……了解した、マスター。 ごめん……! |
マークス | ──絶対非道! |
アウトレイジャーたち | ギャァァ……! |
マークス | ……や、ったか。う、……っ。 |
タバティエール | おい、大丈夫か! マークスくんの出血がひどい…… 〇〇ちゃんの傷も……。 |
タバティエール | 2人とも、楽な体勢になって、ゆっくり息をするんだ。 |
マークス | あ、ああ……。 |
タバティエール | 君たちがいてくれて、本当に助かったよ。 ……なのに、俺は何もできない。 敵を倒すことも、マスターたちの傷を癒すことも……。 |
マークス | あんたのおかげ、で……ちょっとは、助かった。 |
タバティエール | そうかい。……ありがとな。 傷を見せてくれ。止血をしよう。 |
テオドール | 包帯と薬を持ってきている。 これを使ってくれ。私も手伝おう。 |
タバティエール | こっちは俺がやるから、 マスターはカトリーヌちゃんを見てやってくれ。 |
タバティエール | マスターの方の包帯替えは、あとで俺が── |
不意に、タバティエールが表情を厳しくして、
荒廃した道の先を見つめる。
その視線の先に車が現れ、こちらへ近づいてきた。
カトリーヌ | そんな……ああ…… 追っ手が来てしまったというの……? |
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テオドール | くっ……。 |
男 | ……ごきげんよう、皆様。 |
マークス | 誰、だ……! マスターに……近づくな……っ! |
リリエンフェルトの使者 | どうぞ銃を下ろしてくださいませ。 私はリリエンフェルト家からの使いの者でございます。 |
テオドール | リリエンフェルト家だと……? |
リリエンフェルトの使者 | さようでございます。 テオドール・ド・レザール様、 ならびにカトリーヌ・ド・ロシニョル様。 |
リリエンフェルトの使者 | ──お2人を、保護させていただきます。 |
ジョージ | ──くそっ! だめだ……! |
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ジョージ | (何しても、ビクともしねぇ…… っていうか、力が入らないんだ……!) |
ジョージ | う……また、めまいが……。 |
ジョージ | (あれからもう、何日経ったんだ……? ……〇〇が心配だ…… 傷が悪化してなけりゃいいんだけど……) |
ジョージ | (っていうか、〇〇たちは、 別の場所で捕まってたりとか、しないよな……?) |
ジョージ | 〇〇、マークス……。 無事でいてくれ、よ……。 |
リリエンフェルトの使者に「保護」された一同は、
手当てを受けたあと、それぞれの屋敷へと戻された。
ロシニョル侯爵 | カトリーヌ……! |
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カトリーヌ | お父様……どうして、こちらに……? |
ロシニョル侯爵 | 知らせを聞いて、急いで戻ったのだ。 ああ……こんなに傷が悪化して……。 |
カトリーヌ | …………。 |
ロシニョル侯爵 | お前をゆっくり休ませてやりたいんだが、 1つだけ聞かせてくれ。 |
ロシニョル侯爵 | カトリーヌ。お前が見つかった時、 レザールの倅と一緒にいたそうだが…… 奴に攫われたのか? |
カトリーヌ | ち、違います……! テオは、そんなことをする人じゃ……! |
ロシニョル侯爵 | 「テオ」だと……? ああ、やはり……本当だったのか……。 |
ロシニョル侯爵 | カトリーヌ……。 お前は、あの男と駆け落ちしようとしたんだな。 よりによって、レザール家の人間と……! |
カトリーヌ | お父様……。 |
ロシニョル侯爵 | …………。 |
ロシニョル侯爵 | とにかく、今はゆっくり休みなさい。 私も、少し1人になりたい。 今後のことを考えねば……。 |
カトリーヌ | …………。 |
カトリーヌ | ……うっ、うう……っ。 |
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シャスポー | マスター……。 |
カトリーヌ | ああ、どうして、こんな……。 |
カトリーヌ | どうして、何もかもうまくいかないの……。 わたくし、信じてたの。 お母様が亡くなって、辛いことがたくさんでも……。 |
カトリーヌ | いつか、幸せに…… テオと一緒にいられる日が来るって信じてたの……。 だから、どんなに辛くても耐えられたのに……っ! |
カトリーヌ | ああ……もう、おしまいなんだわ。 |
カトリーヌ | あんな機会は、もう2度と訪れない……! 監視も付けられるでしょうし、こんな身体じゃ、 逃げ延びるまでの厳しい道のりを耐えられない……! |
カトリーヌ | 2人で幸せになれるだなんて…… 春に降る雪よりも儚い夢だったんだわ……。 |
シャスポー | ……っ! |
シャスポー | (マスターは、身体は弱いけど、気丈な人だ。 これまでどんなに辛くても、僕の前ですら、 泣いたり怒ったりする姿を見せなかった……) |
シャスポー | (その彼女が、こんなに……。 そして、僕はまた、何もできていない……) |
シャスポー | ……っ! くそ、くそ、くそっ! |
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シャスポー | 僕が……僕がついて行っていれば。 |
シャスポー | 絶対高貴にはなれなくても、 マスターを逃がしてあげられたかもしれない……。 |
シャスポー | 僕のせいだ……僕がついていかなかったから、 こんなことに……! |
シャスポー | もう誰も、何も、信じない! |
シャスポー | 僕が……、僕が、僕が、僕ガ……! この僕ガ……! この手でッ! |
シャスポー | マスターを……カトリーヌを、 コノ鳥籠から解き放ってあげるんだ……ッ! |
シャスポー | ふふっ……はハはは……! |
シャスポー | はははッ……アハハハハハハハッ!! |
──ロシニョル家の客室にて。
主人公 | 【傷は痛まない?】 【気分はどう?】 |
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マークス | ああ……大丈夫だ。 少し体が重いけど、大したことはない。 |
マークス | それより、マスターの傷が……。 ジョージが、早く見つかるといいんだが。 |
マークス | もう少し回復したら、俺もラッセルと協力して、 ジョージを探しに行く。絶対見つけるから…… マスター、信じて待っていてくれ。 |
主人公 | 【頼もしいよ】 【信じてるよ】 |
マークス | ……ありがとう。 |
マークス | マスター、水でも飲むか? 外でもらってく── |
??? | ──きゃあああああっ!!! |
マークス | ……っ!? |
主人公 | 【カトリーヌさんの声だ!】 |
マークス | 何かあったのか……!? |
主人公 | 【行こう!】 |
マークス | マスター、俺に掴まってくれ! |
──レザール家にて。
レザール侯爵 | テオドール! |
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レザール侯爵 | お前……何をしていた! |
シャルルヴィル | わっ! まあまあ、侯爵、落ち着いて。 テオドールさんにも言い分があるだろうし、 冷静に話を── |
レザール侯爵 | ……シャルルヴィル殿。 仲裁のお申し出には感謝しますが、 これは当家の問題です。 |
レザール侯爵 | リリエンフェルト家の貴銃士である 貴方の手を煩わせることではありません。 |
グラース | ……ふん。お前は何をしていたんだ、タバティエール。 僕がついて行っていれば、 こんなことにはならなかったぞ。 |
タバティエール | 手厳しいな……。 あの状況じゃ、どうしようもなかったんだがねぇ。 |
タバティエール | 確かに、俺が絶対高貴になれてりゃ、 話は全然違ってたかもしれないが……。 |
レザール侯爵 | テオドール、答えるんだ。 ロシニョル家の娘を連れて、国境付近で何をしていた! |
レザール侯爵 | まさかとは思うが、あの娘と……! |
テオドール | ──父上、お話があります。 それに、ロシニョル家とも話をしたい。 |
テオドール | 今すぐに、です。 |
テオドール | 私はこれからロシニョル家に向かいます。 ロシニョル侯爵とも話をつけたいので、 父上……あなたにも来ていただきたい。 |
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レザール侯爵 | ロシニョルと話だと? その前に私と話だ! |
テオドール | いいえ。 ロシニョル侯爵とカトリーヌがいなければ、 私は何も話すつもりはありません! |
レザール侯爵 | お前……! |
シャルルヴィル | 侯爵、彼の意思は固そうですよ。 |
シャルルヴィル | このままだと平行線になりそうだし…… その……僕がリリエンフェルトの名代として立ち会うから、 話に乗ってあげたらどうです? |
テオドール | 父上、お願いします。 |
レザール侯爵 | …………。 ロシニョル家に行ってやる。 |
レザール侯爵 | 話を聞いて、また馬鹿げたことを言うようであれば…… 即刻……お前とは縁を切る! |
テオドール | ……それで結構です。 |
グラース | はぁ……ったく、こんな雨のなか面倒くせぇなぁ…… ──ん? |
---|---|
タバティエール | なんだ、やけに騒がしいが……。 |
市民 | きゃあぁっ! |
市民 | 逃げろ、急げ! |
レザール侯爵 | 何の騒ぎだ、これは……!? |
タバティエール | まさか、アウトレイジャーか!? |
継母 | ひ、ひぃ……っ! |
連れ子 | た、助けてくれぇぇえ! |
グラース | あ? あれってロシニョル家の夫人じゃねぇか。 アウトレイジャーは…… |
グラース | ──ッ!! |
タバティエール | ……おいおい、嘘だろ……。 |
シャスポー | ……解放ス、ル……! |
シャスポー | ……ウゥ、僕ガ……全テ……ッ! |
シャルルヴィル | そんな……っ! |
シャルルヴィル | シャスポーまで……、嘘だ……。 |
シャルルヴィル | なんで……どうして……! |
---|
レザール侯爵 | ど、どうなっているんだ、これは……! |
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グラース | ふぅん……。 |
シャスポー | レザール……グラース……! |
シャスポー | ……殺、ス……! |
タバティエール | なっ……シャスポー、しっかりしろ! 俺たちは敵じゃない! |
──パァンッ!
マークス | おい、あんたの相手はこっちだ! |
---|---|
シャスポー | ……敵……消ス……。 |
マークス | ……っく! |
タバティエール | マークスくん! |
タバティエール | どういうことなんだ!? なんでシャスポーがアウトレイジャーに……! |
マークス | 知らねぇよ! シャスポーの様子が突然おかしくなって! 逃げた夫人と連れ子を追ってここまで来ちまったんだ! |
グラース | へぇ。アウトレイジャーには 考える脳もないと思っていたが、あいつは違うんだな。 ちゃんと殺る相手を選んでやがる。 |
タバティエール | そんなこと言ってる場合じゃないだろう! どうするんだ! あいつはシャスポーなんだぞ!? |
マークス | これ以上絶対非道を使えば、マスターが危ない…… だからって1発で終わらせようとすれば、 あいつを破壊しちまう! |
マークス | 手加減できる余裕はねぇんだ。 くそっ、何か方法はねぇのか……! |
マークス | あんたらも貴銃士だろ! 突っ立ってないで、なんとかしろよ! |
シャルルヴィル | ……ないよ……。 |
タバティエール | ……!? |
シャルルヴィル | ああなった以上……どうにもできない……。 |
シャルルヴィル | なにも、できないんだ……。 |
タバティエール | くそっ……! なんで絶対高貴になれない……? 俺は一体なんのために貴銃士になったんだ……! |
グラース | …………。 |
カトリーヌ | ……や、めて……。シャス、ポー……! |
ロシニョル侯爵 | カトリーヌ! 近づくな! |
テオドール | カトリーヌ……! どうしてここに! |
カトリーヌ | シャスポーを……やめさせて……! あの子は、あんなことしないわ……! |
テオドール | いけない! 危険だ! |
シャスポー | …………。 |
シャスポー | ウ、ウゥ……ッ! マスター、ガ……! |
シャスポー | 殺ス……壊ス……! 全部、ゼンブ……破壊スル……! |
市民1 | お、おい。 なんの騒ぎだよ、これは……! |
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市民2 | あれ、ロシニョル家のグラースじゃないか? |
市民3 | 様子がおかしいぞ……! |
エラメル大佐 | ここは危険だ! 退避しなさい! |
エラメル大佐 | 総員、市民の誘導を! |
兵士たち | はっ! |
シャスポー | ウウウゥゥ……! |
エラメル大佐 | ううむ……多くの市民が逃げ惑う中で アウトレイジャーと衝突すれば、多大な犠牲が出てしまう……。 |
主人公 | 【シャスポーに誰も殺させません!】 【自分たちでなんとかします!】 |
マークス | マスター……! だが、これ以上絶対非道を使えば、マスターが危ない! |
シャスポー | ウァァァァ……! |
市民3 | うわぁぁぁっ!! |
グラース | ……ッ! あの、馬鹿野郎……。 |
グラース | ……おい、マスター! 悪いが、ちょっと無茶させてもらうぞ。 |
テオドール | 構わない! カトリーヌのためならば、この命、惜しくなどない! |
ロシニョル侯爵 | ……っ! |
レザール侯爵 | テオドール、お前……。 |
グラース | ──絶対非道! |
テオドール | ぐ……ッ! |
市民1 | なんだ、あの力は……!? |
市民2 | あれはシャスポー様じゃないか? あんな、禍々しい……! |
市民3 | ……聞いたことがあるぞ。 現代銃の貴銃士は、絶対高貴ではなく、 何か恐ろしい力を使うって……。 |
市民1 | それじゃあ……彼は、現代銃!? まさか…… 彼はシャスポー銃じゃなくて、グラース銃、だったのか!? |
グラース | うぉおおぉっ! |
シャスポー | ガッ……! |
グラース | ──何してんだ、てめぇ!! |
グラース | どこ見て、何を殺そうとしてんだ! ふざけんな! よく見ろよ! |
グラース | 今お前が撃とうとしたのは、フランスの市民だ! パリジャン、パリジェンヌだ! |
グラース | お前、血の一週間の記憶をあんだけ引きずって、 ぐだぐだうじうじしてたじゃねぇか! ただの銃だったころの出来事をよ! |
グラース | なのにそれを、お前自身が繰り返すのか!? 貴銃士になったお前の手で、 あの歴史を再現するってのか!? |
グラース | ……それで、いいのかよ! |
シャスポー | …………血、ノ……。 |
カトリーヌ | ……ぅっ。 シャスポー……おねがい、やめて……。 |
主人公 | 【シャスポーは、フランスを守る銃だ!】 |
主人公 | 【目を覚まして、シャスポー!】 |
シャスポー | ……僕ハ……フランスを、守る……。 |
シャスポー | そうだ、僕は、二度とあんなことは── |
タバティエール | シャスポー……! |
シャスポー | うう……グ、ァア……ッ! |
グラース | くそっ、また呑まれやがった……! |
シャスポー | グ……アァァッ!!! |
マークス | とりあえず、押さえ込むしかねぇ……! おい、手を貸せ! |
グラース | ああ! |
マークスとグラースが2人がかりで
シャスポーを必死に押さえ込む。
しかし、アウトレイジャー化した
シャスポーの力はすさまじい。
マークス | このままじゃ駄目だ! 正気に戻れないなら、もう……。 |
---|---|
グラース | こいつを壊せっていうのか!? |
マークス | 他にどうしようもないだろ! こいつを──虐殺者にするよりは、 マシなんじゃないのか! |
グラース | それは……ッ! |
シャスポーとマークスとグラース……
3人を固唾を呑んで見守る中、
不意に、暗闇の中から1人の人物が現れる。
??? | …………。 |
---|---|
テオドール | な、何者だ!? カトリーヌに寄るな! |
??? | ……ダイジョウブ。 |
カトリーヌ | ……っ、あ……。 |
テオドール | ……!? この光は……ッ! |
テオドール | これは……! 彼女の薔薇の傷が、癒されている! |
テオドール | あなたは、貴銃士……!? |
やがて、カトリーヌの手に刻まれていた薔薇の傷は、
完全に治り、跡形もなく消える。
それと同時に、
シャスポーの身体は柔らかな光に包まれていった。
シャスポー | ……あ、れ……僕は……。 |
---|---|
グラース | シャスポー! |
シャスポー | 僕は、何を……! ……この状況は、…………。 |
シャスポー | ねぇ…… 僕はまた、パリの人たちを殺して……? |
グラース | そんなこと、させるかよ。 |
シャスポー | え……? |
主人公 | 【ちょっと暴れただけ】 【誰も殺してなんかいない】 |
シャスポー | 本当に……? ……本当だね……? |
シャスポー | ああ、よかった……。 |
シャスポー | 僕の、愛する、パリ……を……。 |
穏やかな安堵の笑みを浮かべたシャスポーの姿が、
細かな光の粒子になり、徐々に輪郭をなくしていく。
そして、彼がいなくなったあとには、
1挺のシャスポー銃が残った。
??? | …………。 |
---|
傷が消えたカトリーヌのそばに、透明な結晶が落ちている。
それを拾い上げたフードの貴銃士は、
再び闇の中へ消えようとした。
マークス | お、おい! |
---|---|
マークス | 誰だか知らないが、絶対高貴になれるんだろ!? マスターを助けてくれ……頼む……! あ、その、傷は完全には消さないでほしいんだが……。 |
??? | ……わかったワ。 |
久々に感じる絶対高貴のぬくもりに包まれ、
〇〇を蝕んでいた苦痛が瞬く間に引いていく。
マークス | マスター! よかった……傷がよくなったな……! |
---|---|
??? | …………。 |
主人公 | 【……待ってください!】 【あなたは一体……?】 |
??? | …………。 |
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