イギリス編:第31話~第36話

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第31話:欺きの枷1

マークスあいつ? 偽物?
それは一体、どういう──
エンフィールドう、ぐ……うぁあああああ……っ!
主人公【エンフィールド!?】
【落ち着いて!】
マークス様子が変だ。
下がれ、マスター!
ジョージお、おい!
エンフィールド!
エンフィールド全部、ぜんぶ、間違ってる……。
僕が絶対高貴になれないのも、
こんなことになったのも、全部、ゼンブ──
エンフィールド間違イ、ダ──……!
主人公【あの姿は……!?】
【止めないと!】
マークス落ち着け、エンフィールド!
エンフィールド間違っタ、世界な、ら……
ゼンブ壊レテシマエ──!!
エンフィールドオァアアアアア……ッ!!
ジョージエンフィールドっ!!
エンフィールド壊ス……殺ス……!
マークスマスター! 危ないっ!!
ジョージ大丈夫か!?
主人公【大丈夫!】
【それよりエンフィールドを!】
ジョージエンフィールド! 目を覚ませ!
マークスこのままじゃ危なすぎる。
足を撃って動きを止めよう。
エンフィールドウウウ……!
ジョージ避けたっ!?
マークスチッ……理性はなんもねえみたいだが、
戦闘能力は上がってるのかもしれねぇ。
マークスあれじゃまるで……
アウトレイジャー、みたいだ。
マークスクソッ、次こそ当てる──!
スナイダー……待て。

振り返ると、スナイダーが椅子から立ち上がっていた。
枷で拘束されていたはずの手足は、
いつの間にか自由になっている。

マークスはっ!? なんで、あんた……。
スナイダーフン……堕ちたか。
予想外だが、これはこれでいい。

スナイダーは外れた枷を蹴り飛ばすと、
己の本体であるスナイダー銃を構えた。

ジョージえ、いつの間に外れたんだ!?
スナイダーずっと前からだ。
嵌めたふりをしていただけで。
ジョージ……へっ!? どういうことだよ!?
スナイダーおい、おまえら……手を出すなよ。
こいつは俺の兄、俺の獲物だ。
マークス何言ってんだ! アウトレイジャー相手に、
絶対高貴にもなれない古銃がどう戦うんだよ!
スナイダーくだらん。
絶対高貴になれずとも、やりようはある。
スナイダー…………。
スナイダー──絶対非道。
マークス&ジョージなっ……!?
スナイダーさぁ、殺り合おうか。
“お兄ちゃん”?

第32話:欺きの枷2

エンフィールドクッ……。
スナイダーハッ、堕ちてもその程度なのか?
だとしたら、拍子抜けだな──!
ジョージオレは、夢でも見ているのか……?
マークス夢じゃねぇ、けど、信じらんねぇ……。
なんであいつ、絶対非道を使ってんだ……?
スナイダーさて。
そろそろ、終わりにしようか。
エンフィールドグウッ……。
スナイダーどうだ、エンフィールド。
その身をもって、絶対非道の力を味わった感想は。
エンフィールド壊ス……全テ、ヲ……壊ス……──
スナイダー……はぁ。まともに会話もできないか。
多少は楽しめるかと思ったが、
下らん傀儡に成り下がったな。
スナイダーこれでは喧嘩するにしてもつまらん。
……その口、きけぬようにしてやろう。
エンフィールドグアァ……ッ!

銃床でしたたかに殴りつけられて、
エンフィールドは床へ倒れ込み、動かなくなった。

スナイダー…………。
スナイダーさて、と……。
そこのおまえ、マスターだろう?
こいつを直せないか?

第33話:兄弟銃の秘密

マークス&ジョージ…………。
主人公【…………】
スナイダーなんだ。おまえらもまともに喋れなくなったのか?
マークスい、いや、話せる。
話せるが、理解が追いつかない……。
スナイダーならば、もう1度言ってやろう。
おまえ……〇〇だったか。
エンフィールドを元に戻せ。
スナイダー戦うなら、まともな状態の方が楽しめそうだからな。
ジョージだ、駄目だ……意味がわからない……。
マークス……同感だ。
主人公【どうしてこんなことに……?】
【経緯を詳しく知りたい】
スナイダー語るには少し長い話だが……まぁいいだろう。
おまえらがこの城に来る、少し前のことだ。

エンフィールド今日こそ絶対高貴になってみせるぞ!
誇り高い貴銃士となって、
英国とマスターに貢献しないと……!
スナイダー……おまえは、口を開けば『絶対高貴』ばかりだな。
エンフィールド当たり前だろ? 貴銃士が目指すべきものだからね。
マスターも、僕たちが高貴なる力に
目覚めることを待ち望んでいるはずだよ。
スナイダー……マスターか。
今回ので3人目になるな。
前の奴らはどうしたんだか。
エンフィールド……僕、思うんだ。
もしかしたら、前のマスターたちは……。
スナイダー力を奪われたか……消されたか。
どちらにせよ、俺たちにはもう関係のないことだ。
エンフィールドそうとは言い切れないよ。
僕たちが絶対高貴になれないせいだとしたら、
責任は僕たちにあるわけで……。
エンフィールド……なぁ、スナイダー。
早く、絶対高貴になろう。
スナイダー……なれるものならな。
エンフィールドもう、スナイダー! まだ僕が話している途中だろ!
スナイダーその話はもう散々聞いた。
絶対高貴になればいいんだろ?
エンフィールドああ。わかってるならいい。
しっかり鍛錬するんだよ、スナイダー!

スナイダー……絶対高貴、か。
スナイダーエンフィールドもマスターも
絶対高貴に目覚めろとうるさいが、
そんなにいいものなのか……?
スナイダー強大な力なら、とっとと手に入れたいものだ。
……戦えばおのずと目覚めるのか?

エンフィールド遅かったね。
どこに行ってたんだい?
スナイダー森を歩いてきただけだ。
エンフィールド森? 散歩するなら庭園があるじゃないか。
エンフィールド……って、この硝煙の匂い!
スナイダー!
まさか、勝手に戦ってきたんじゃないだろうね!
スナイダー…………。
エンフィールドあっ、こら! スナイダー!

アウトレイジャー殺ス……!
スナイダーはぁ、はぁ……くそっ!
なぜこれだけ戦っても目覚めない!
???おーおー、絶対高貴にもなれねぇ古銃が
必死に頑張っちゃって笑えるなぁ!
スナイダーなんだ、おまえは。
???──絶対非道。
アウトレイジャーグアアァア……!
スナイダーアウトレイジャーが消えていく……。
今の力は、一体……?
???準備運動はこんなモンかねぇ。んじゃ、あばよ。
スナイダー待て!
???は? なに。俺、忙しいんだけど。
スナイダー教えろ。
今の力はなんだ。
???おいおい、なんだお前?
俺、今コーフンしちゃってんだよ?
知りたいなら痛い目見る覚悟はできてんだろうなァ!

第34話:未知との邂逅1

スナイダーはぁっ、はぁっ……!
???くくっ、ブハハハっ!
古銃のくせになかなか粘るじゃねぇか。
???……面白ぇ。
おい、高貴でも非道でもどっちでもいいが、
お前が強くなったらまた遊んでやるよ。じゃあな。
スナイダー……チッ……!

スナイダー…………。
エンフィールドあっ、その格好……また勝手に戦っただろう!
服がボロボロじゃないか!
エンフィールドそんなんじゃ、絶対高貴には目覚められないよ!
スナイダー……騒々しい。
エンフィールドあっ、スナイダー!
君はまたそうやって、話の途中でっ!
スナイダー……どんなものかもわからない絶対高貴を
このまま闇雲に追い求めたところで、
本当に目覚められるとは思えん。
スナイダー絶対高貴が駄目なら、あいつが使っていた力……
──絶対非道を手に入れればいいんじゃないか?

アウトレイジャー殺……ス!!
スナイダークッ……!
スナイダー俺は、あの力が欲しい。
???──絶対非道。
アウトレイジャーグアアァア……!
スナイダー現代の戦場に立ってもなお、
歯向かうもの全てを薙ぎ払うに能(あた)う、
圧倒的な力──
スナイダー絶対非道、が!
スナイダー…………!
スナイダーこれは、あいつが使っていたのと同じ……。
スナイダー──心銃!
アウトレイジャーグアアアア……!!
スナイダーふ、ははは……! 手に入れたぞ……!
スナイダー絶対高貴に代わる力を──!

エンフィールドはぁ……どうしたら絶対高貴になれるんだ。
もっと、鍛錬を……!
スナイダー……おい、エンフィールド。
スナイダーまだ絶対高貴にこだわっているのか。
そんなものより、おまえもこの力を使えばいい。
スナイダー──絶対非道。
エンフィールドなっ……! その力は……!?
スナイダー絶対非道だ。どうだ?
この力があれば、絶対高貴になれなくても──
エンフィールドなんて、禍々しい……!
スナイダーなに?
エンフィールド君は、一体どこで何をしたんだい?
絶対高貴に目覚めることを放棄して、
そんな力を手に入れてくるなんて……!
エンフィールドそれは、誇り高き僕ら貴銃士が使うべき力じゃない!
そんなものを使うのは、金輪際やめるんだ!
スナイダー何を寝ぼけたことを言っている。
絶対高貴だろうが絶対非道だろうが、
強大な力であることは変わらないだろう。
エンフィールド大違いだよ!!!
エンフィールド何度言ったらわかるんだい!?
僕らは偉大なる大英帝国の銃!
エンフィールド革命戦争の貴銃士のように、輝かしい光をもって
悩める人々の希望となる必要があるんだ!
なんでそのことが理解できないんだよ、君は!!
エンフィールドああ、弟が絶対非道なんて誤った力に
手を伸ばしたと知られたら、なんと言われるか……!
エンフィールドだめだ……駄目だ駄目だ駄目だ!!
絶対に許さない!!
スナイダー…………。
エンフィールド聞け、スナイダー!
そんな力はすぐに手放すんだ。
今なら、きっと間に合う!
スナイダー──黙れ。
エンフィールドぐっ……。
エンフィールド……スナイ、ダー……。
スナイダーおまえにも、わからせてやる。
力こそが全てなんだとな。

 

第35話:未知との邂逅2

エンフィールド…………。
……っ。
エンフィールドん……。
ここは……?
エンフィールドうっ……頭が……!
エンフィールド(そ、そうだ。
たしか、いきなり殴られて──)
エンフィールドなんだ、これ……!?
エンフィールド(動けない……!
椅子に縛りつけられてる!?)
エンフィールド(ここはどこだ? どうやって抜け出せばいい?
何か使えそうなものは……!)
エンフィールド(あ、あそこにテーブルが……)
エンフィールド……っ!
エンフィールド(あれは……!
僕の本体──エンフィールド銃。
それと……工具箱……)
エンフィールドまさか……!
スナイダーほう、目が覚めたのか。
エンフィールド……っ、スナイダー!
エンフィールドどういうつもりだ! すぐに縄を解いて──
スナイダーちょうどいい。
これからおまえを改造してやろうと思っていたんだ。
おまえも、自分が変わる様を見ておきたいだろう?
エンフィールドや、やめろ……!
それだけは……っ、改造だけは嫌だ……っ!
スナイダー騒がしいな。
……まったく。泣き言ばかりほざく口なら、
塞いでおけばよかったか。
スナイダーさて、と……。
エンフィールドやめるんだ、スナイダー!
い、嫌だ、やめてくれ──!
エンフィールド──うわぁぁあぁぁぁっ!!!
スナイダーうっ……!
エンフィールドやめろ、スナイダー!
スナイダー俺の邪魔をするな!
おまえには言ってもわからんのだろう?
なら、改造してその身に知らしめるしかない。
スナイダーなれもしない絶対高貴にしがみつかず、
絶大な絶対非道の力を使うべきだとな……!
エンフィールドい、嫌だ!
そうだ……僕を君に改造したら、
君は僕の弟じゃなくなる!
エンフィールドスナイダー、君は大切な弟なんだ!
僕はそんなこと嫌だよ!
スナイダー……!
スナイダーぐっ……!
エンフィールドごめん、スナイダー……。
スナイダーく、そ……──

スナイダーん……ここは──。
エンフィールドああ、起きた?
スナイダーエンフィールド……。
エンフィールドほら、食事を持ってきたよ。
お腹が空いただろう?
スナイダーいらん。
……どういうつもりだ?
エンフィールド……もうこれ以上、君を野放しにはしておけない。
絶対非道を使い、僕を改造しようとして……。
エンフィールドだから君にはしばらく、ここで頭を冷やしてもらうよ。
もう二度とあんなことはしないと、
心から誓えるようになるまで……ね。
スナイダー…………。
エンフィールド絶対非道は封印して、使えなくするんだ。
ここで静かに、絶対高貴になる方法について、
考えを巡らせるといいよ。
スナイダー……断る。
エンフィールドスナイダー!
スナイダーせっかくの力を使わない手はないだろう。
エンフィールドはぁ……。
やっぱり、ここで反省してもらうしかないな。
エンフィールド食事は僕が運ぶから安心して。
マスターたちには、君は寝込んでるって言っておくよ。
スナイダー…………。
エンフィールドああ、安心してくれ。
いつまでも君を閉じ込めておくつもりはないよ。
エンフィールドあまり長い期間君がいないと、
流石にバレてしまうからね。
君が心を入れ替えたら出してあげる。
エンフィールド僕は、なるべく優しい兄でいたいんだよ。
だから、君には僕の言うことに
ちゃんと従ってほしいんだ……。わかるね。
エンフィールド……じゃあ、僕はもう行くよ。
スナイダー…………。
スナイダー……チッ。
スナイダー……くそっ、忌々しい鎖だ。
絶対非道を使ってみるか……?
スナイダーだが、絶対非道では足ごと吹き飛びそうだな。
それは最終手段にしておくか。

──ガシャ! ガシャン!

スナイダー……ん? 外れたぞ。
スナイダーなんだ。よく見れば随分古い枷だな。
かなり腐食している。道理で脆い。
スナイダーさて……これからどうするか。
スナイダーこのまま逃げ出してもいいが……
この状況は使えそうだな。
スナイダーしばらくは、おとなしく従っているフリをしておくか。

第36話:決裂の記憶

スナイダー……そうして、エンフィールドに
監禁される日々が始まったというわけだ。
スナイダーもっとも、あいつが不用意だったせいで、
実際のところ俺は自由だったんだが。
マークスマジかよ……。
スナイダー今さら嘘を吐く必要はない。
ジョージでも、さっき、2週間は閉じ込められてるって……。
スナイダーああ、それは嘘だ。
マークスつまり、あんたは自由にこの部屋を出入りできたと?
スナイダーそうだ。
マークスなるほどな……それで夜中に城内をふらついて、
幽霊の噂が立ったってわけか。
スナイダー別に、うろついていたのは城内だけじゃない。
身体も鈍るし、絶対非道の力もある。
憂さ晴らしにアウトレイジャーを倒しにも行った。
スナイダー森でおまえたちのことを見かけたこともあったな。
主人公【あのときの貴銃士!?】
【あれはスナイダー!?】
マークスカサリステかどこかから
派遣された貴銃士だと思っていたが……
まさかあんただったとはな。
ジョージじゃあ、もしかしてあの時、
オレが感じた気配も……?
エンフィールドがオレたちと一緒にいたのも見てた?
スナイダーああ、エンフィールドが癇癪を起こした時のことか。
それも見ていた。
……今さら気づいたのか?
マークス気づくわけねーだろ。
古銃が絶対非道になるなんて、思いもしなかった。
マークス……つーかあんた、俺らが来なくても逃げられただろ。
なんで大人しく監禁されてるフリしてたんだよ。
スナイダー1つは……今のイギリスとマスターのために
戦ってやるのが癪だったからだ。
ジョージは?
スナイダーエンフィールドはマスターを大事に思っているようだが
俺は奴に対して特に思い入れはない。
絶対高貴になりたかったのも、自分のためだ。
スナイダーそもそも、貴銃士を象徴として
飾り物にしようという考えが気に食わん。
スナイダーそれに疑問を持たないエンフィールドもな。
マークスまあ、頷ける部分もあるな……。
俺たちは銃で、飾りじゃない。
ジョージ…………。
マークスんで? さっき“1つは”って言ってたけど、
他にも理由があるのか?
スナイダーああ。エンフィールドに少し仕返しがしたかった。
スナイダーたまたま枷が壊れていたから未遂に終わったが、
こんなところに監禁されて大人しく引き下がれるか。
だから、監禁されているフリをして機会を窺っていた。
主人公【ここに導いた理由は?】
【なぜ助けを求めた?】
スナイダー……エンフィールドは、
ブラウン・ベスにご執心のようだったからな。
スナイダー中身は違うが、おまえ──
ジョージにも心酔していたから
使えると思って近づいた。
スナイダーエンフィールドは、俺がどうこうするより、
おまえに失望された方が堪えるだろうからなぁ。
スナイダー優等生の皮をかぶった兄が弟を監禁していると知らせ、
敬愛する師匠とやらに軽蔑されれば、
ちょうどいい仕置きになるだろう?
ジョージオレを利用したってことか……。
スナイダーああ。途中まではうまくいったが、
エンフィールドがああなるのは予想外だったな。
マークスはぁ……むちゃくちゃ過ぎるだろ……。
主人公【巻き込み事故だ……】
【つまり、兄弟喧嘩だった?】
スナイダーそうとも言える。
そもそもの原因は、頑ななエンフィールドにあるから、
文句ならあいつに言うことだな。
ジョージ……あのさ。
こんな回りくどい実力行使しなくても、
話し合ったらよかったんじゃないか?
マークスそうだな。スナイダーもエンフィールドも
貴銃士になってて、喋れるようになったんだ。
話をすればよかった。
スナイダー……話しても無駄だ。
あいつは絶対非道の力を、
全否定していたんだからな。
ジョージそりゃ、同じ古銃の弟が絶対非道になったら、
エンフィールドもびっくりするって。
マークスっていうか、そもそもなろうとして、
古銃が絶対非道になれるもんなのか?
あんた、一体どうなってんだよ。
スナイダー知らん。使おうとしたら使えた。
主人公【過渡期の銃だから?】
【古銃と現代銃の狭間だから?】
マークスそれって、どういうことだ?
スナイダー原理はどうでもいいだろう。
絶対高貴は使えんようだから、絶対非道とやらを
試してみたらできた。事実はそれだけだ。
ジョージなんか信じらんねぇけど……。
この目で見たし、信じるしかねーよなぁ……。

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