近くにいた兵士にドライゼの執務室の場所を聞き、
〇〇とライク・ツーは、
その部屋へと向かった。
ライク・ツー | ……いいか、作戦通りにいくぞ。 ここでは、変に人情に訴えたところで無駄だ。 それどころか、生ぬるいと反感を買うだけだろう。 |
---|---|
ライク・ツー | マスター……あのおっさんを蔑ろにするあいつらに、 お前は腹が立つかもしれねぇけど、こらえろ。 淡々と、理詰めで説得するんだ。 |
主人公 | 【淡々と、理詰めで……わかった】 【忠告ありがとう】 |
ライク・ツー | よし、覚悟は決まったみたいだな。 んじゃ、いくか。 |
──コンコン
ドライゼ | ……誰だ。 |
---|---|
主人公 | 【〇〇とライク・ツーです!】 |
ドライゼ | ……入れ。 |
2人が室内に入ると、
そこにはドライゼだけでなく、エルメもいた。
彼は満足気に微笑んで、ドライゼの方を見る。
エルメ | ふふっ、俺の読みが当たったみたいだ。 ね、ドライゼ? |
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ドライゼ | …………。 |
ライク・ツー | 読み……? |
エルメ | ちょうど、明日の出立までに、 君たちが話をしに来るんじゃないかって言ってたところなんだ。 ついでに、用件も当ててみせようか。 |
エルメ | 『ドイツ支部に協力したい。 士官学校に連絡するから、口添えを頼みたい』 ……どう? |
主人公 | 【……その通りです】 【ここに残り、協力します】 |
エルメ | さっき、マスターの話をした時の君たちと言ったら、 とても怖い顔をしていたよ。 |
エルメ | それだけ、大事なんでしょう? 『ダンローおじさん』が。 |
主人公 | 【大事です】 【もちろんです】 |
エルメ | 臆面もなく自らの感情を優先する。 実に率直で──甘い。 |
ライク・ツー | 馬鹿にしてるのか? |
エルメ | ある意味では。 軍人として非情になれないのは欠点だ。 |
エルメ | けれど、ある意味、尊敬もしているよ。 よくそれで軍人が務まるものだとね。 |
エルメ | ……まぁ、 その純粋さがいつまで保つのか、興味もあるけど。 |
ライク・ツー | いい加減にしろ。 〇〇は俺のマスターだ。 見下されるのは、腹が立つ。 |
エルメ | ごめん、ごめん。ちょっと無駄話が過ぎたね。 だから、そんな怖い顔をしないで。 |
ライク・ツー | …………。 今日見た限りでも、ドイツ支部は強兵揃いだと感じた。 反乱軍だけが相手なら、ここまで苦戦してねぇはずだ。 |
ドライゼ | ……ああ。 実際、連中が蜂起した当初は、 すぐに鎮圧できるだろうと思われていた。 |
ライク・ツー | だが、アウトレイジャーまで出てくると話が変わる。 ……当然だ。いくら兵たちが強くても、 生身の人間じゃ、勝ち目は乏しい。 |
ライク・ツー | 今朝はニュルンベルクの拠点も奪われたって言うし、 俺たちが助っ人として加わるのは、 願ってもない話なんじゃないのか? |
主人公 | 【アウトレイジャー討伐を手伝いたい】 【おじさんの代わりに戦いたい】 |
エルメ | マスターの代わりに……ね。 |
エルメ | ……でも、一時的に君たちが手伝ってくれても、 やがてマスターは薔薇の傷にのまれてしまうよ? |
ライク・ツー | おあいにくさまだったな。 絶対高貴を使えば、薔薇の傷は治せるんだ。 |
エルメ | へぇ? |
ドライゼ | …………。 |
ライク・ツー | 士官学校から、絶対高貴を使えるヤツを呼ぶ。 そいつがユリシーズの傷を癒やす。 |
エルメ | つまり、その貴銃士が来るまでの、 時間稼ぎを君たちがする……と? |
主人公 | 【その通り】 【戦力に加えてほしい】 |
エルメ | ……本当に甘い。 |
ライク・ツー | 悪いか。 |
エルメ | 悪くはないよ。 貴銃士になっていろんな人間や貴銃士を見てきたけれど、 君たちはその中でも特別義理堅いとも言える。 |
エルメ | 人でも見殺しにできない甘さは、 本人を滅ぼす可能性はあっても、味方にするには心強い。 |
ライク・ツー | マスターを失うつもりはねぇ。 俺がいる限り、〇〇を、破滅なんてさせねぇよ。 |
エルメ | そうであることを祈っているよ。 |
エルメ | それじゃあ、君たちにも手伝ってもらおうか。 ねぇ、ドライゼ? |
ドライゼ | ……不要だ。 |
ライク・ツー | ……! |
ドライゼ | ……不要だ。 |
---|---|
ライク・ツー | ……! |
ドライゼ | 我が軍に、絶対高貴は必要ない。 そして、お前たちの力も。 |
ライク・ツー | ……!? 意味がわからねぇ。 じゃあお前らは、これから先も無駄に マスターを使い潰しながら戦うのかよ……! |
ドライゼ | それが最善だとは思っていない。 だが、一時も気を抜くことができないこの戦場で、 部外者であるお前たちを加えることはリスクを伴う。 |
ドライゼ | お前たち2人だけならまだいいが、 絶対高貴を使う貴銃士は、 ドイツ支部にとって未知の存在だ。 |
ドライゼ | そのような異分子を加え、ドイツ支部における マスターの在り方が大きく変われば、 兵たちの間にも少なからず揺らぎが生まれる。 |
エルメ | 確かに……その可能性は十二分にあるね。 今は、ユリシーズ少佐の存在も相まって、 一刻も早く反乱を鎮めようと、士気が高まっている。 |
エルメ | けれど……マスターの傷を適宜治せて、 特に命の危険もなく戦えるとなると、 当然、気が緩む者も出てくるだろう。 |
エルメ | それに、今まで戦死していったマスターは 一体何だったのかっていう、怨嗟の声も……ね。 |
ドライゼ | ……一進一退の今の戦況では、 ほんの小さな動揺すらも、命取りになりかねん。 |
ドライゼ | 前線の拠点をあずかる身として、 私はそのような危険を冒すことはできない。 |
主人公 | 【でも、このままでは膠着状態が続くのでは?】 【勝利のために、攻めの一手も必要かと……】 |
エルメ | ふふ……君、ドライゼ相手に怯まずに そこまで意見を言えるなんて、肝が据わってるよ。 |
エルメ | 君たちみたいな異分子を加えることで、 どう転ぶか……俺としては興味があるね。 |
ドライゼ | ……エルメ。お前の個人的興味は、 優先されるべきものではない。 |
エルメ | もちろん、それはわかってるよ。 でも、彼らを戦力として加えることに、 俺は特別司令官補佐として賛成する。 |
エルメ | ライク・ツーの絶対非道は、我が軍の戦力になる。 そうだろう? |
ドライゼ | ……そうだな。それは認める。 |
エルメ | 絶対高貴になれる貴銃士についても…… 何も、馬鹿正直に存在を公表する必要はない。 内密に派遣してもらうのはアリなんじゃないかな。 |
エルメ | そして、ユリシーズ少佐たちマスターの傷が 悪化しすぎないようにコントロールして…… 兵たちの士気を高いまま維持する。 |
エルメ | 彼の死によって士気と闘志はより高まるだろうけど、 同時に、兵たちの冷静さも奪いかねない。 そうなると、無謀な行動に出る者もいるかもね。 |
エルメ | 俺としては、今の状況をより長く保つほうが…… つまり、ユリシーズ少佐を長持ちさせることが、 この戦いの勝利のために最善だと思ってるよ。 |
主人公 | 【(“長持ち”って、物みたいに……)】 【(ここでは、マスターは駒でしかない……)】 |
ライク・ツー | ……おい、〇〇。 |
主人公 | 【大丈夫】 【忠告は忘れてない】 |
ライク・ツー | ならいい。 |
ライク・ツー | ……んで、どうする? このまま先の見えない戦いを続けるか、 それとも、ここらで少しやり方を変えてみるか。 |
ドライゼ | ……先ほどのお前たちの戦いぶりは、悪くなかった。 無駄のない動きで、アウトレイジャーを殲滅していたな。 |
ライク・ツー | へぇ。そりゃどうも。 |
ドライゼ | まずは、お前たち2人を我が軍に一時的に加える。 ……絶対高貴になれる貴銃士というのは、 すぐに派遣できるものなのか? |
ライク・ツー | ……緊急だしな、補習は後回しにできるだろ。 |
エルメ | ……? どこか故障しているなら、 補修を優先させた方がいいんじゃないかい? |
ライク・ツー | あー、そっちの補修じゃなくて、勉強の方だ。 許可さえ下りれば、1~2日で合流できると思うぜ。 |
ドライゼ | ……よし、いいだろう。 連合軍の上層部には、私から掛け合っておく。 お前たちは士官学校に連絡するように。 |
主人公 | 【わかりました】 【イエッサー!】 |
ドライゼ | 返事は、『Jawohl』だ。 |
エルメ | 一時的とはいえドイツ支部に加わるからには、 こちらのやり方に沿ってもらわないとね。 |
主人公 | 【ヤヴォール!】 |
ドライゼ | お前たちの活躍に期待している。 |
ライク・ツー | んで、具体的には、俺たちはどう動けばいいんだ? 独立して遊撃とか? |
---|---|
ドライゼ | いや。円滑な任務遂行のために、 エルメの隊に加わってもらおう。 任務中は、エルメの指示に従うように。 |
ドライゼ | ……言っておくが、規律を乱す者に用はない。 たとえお前たちに実力があったとしても、 軍全体にとってマイナスになるならば不要だ。 |
主人公 | 【ヤヴォール!】 |
ドライゼ | よろしい。 ……エルメ、頼むぞ。 |
エルメ | OK、任されたよ。 |
エルメ | それじゃあ、〇〇、ライク・ツー、 早速だけど、もう少ししたら会議があるから── |
ジーグブルート | ──おい、ドライゼ! 俺の戦果は見たんだろうな。ああ? |
ドライゼ | ……貴様は、入室する時に許可を取るという 簡単なこともできんのか。ジーグブルート。 |
ジーグブルート | つーか、今日は何日だ? 新しい奴に聞くのを忘れてたんだが…… 俺が銃に戻ってから、どれくらい経った? |
エルメ | おはよう、ジグ。まだ当日中だよ。 君が銃に戻ってから、4時間ってところかな。 |
ジーグブルート | 4時間だと? ったく、何を悠長にしてんだか……。 |
ジーグブルート | ……まあいい。 俺は今回の戦闘で、アウトレイジャーを8体倒した。 |
ジーグブルート | あの野郎が死ななけりゃ、 9体──いや、10体はいけてたな。はははっ! |
ジーグブルート | なあ、なかなかいい仕事をしただろう? あのクソマスターが死ななきゃもっと── |
ドライゼ | …………。 |
ゆったりと立ち上がったドライゼは、
ジーグブルートの方へと歩み寄る。
そして──。
ジーグブルート | ぐっ……! |
---|
目にも留まらぬ速さで振るわれたドライゼの拳は、
常人では揺るがすことすら難しそうな
ジーグブルートの身体を、数メートル吹き飛ばした。
ジーグブルート | て、てめぇ……何しやがる……! |
---|---|
ドライゼ | ……貴様は、命令違反が 自分の仕事だとでも思っているのか? |
ジーグブルート | ああ? 俺はきっちりアウトレイジャーを仕留めただろうが! |
ドライゼ | 貴様の行いについて、 エルメや各隊の者から報告が上がっている。 |
ドライゼ | 貴様は、エルメの静止を無視して絶対非道を使い…… その結果、戦場の只中で銃に戻るという愚を犯したとな。 |
ジーグブルート | それがなんだ。目の前に敵がいるのに、 マスターが死にかけだから攻撃の手を緩めろってか? |
ジーグブルート | それで、他の奴らにみすみす手柄を譲れって? ……ハッ、冗談じゃねぇ。 |
ジーグブルート | マスターなんて消耗品だろ! 俺の力のために尽くして死ぬ! それがマスターだ! |
ドライゼ | …………。 |
エルメ | ふぅ……。まったく、懲りないお馬鹿さんだね。 ジグ、ドライゼ特別司令官に ごめんなさいしなきゃダメでしょ。 |
ジーグブルート | はぁ? なんで俺が謝るんだよ。 手を出してきたのはドライゼだろ。 |
ドライゼ | ……貴様の命令違反は、今回で19回目。 これは、到底看過できるものではない。 |
ドライゼ | 命令と軍規を遵守しない兵士は我が軍には不要だ。 |
ドライゼ | これ以上勝手な振る舞いを重ねるのであれば、 次に銃に戻った時には二度と召銃せず、 貴様を放棄するよう進言することも考える。 |
ジーグブルート | んだとォ……俺はドイツ支部の役に立ってる! 絶対非道になれる貴銃士なんて貴重だぜ? |
ドライゼ | そうだな。 幸か不幸か、貴様は貴銃士だ。 |
ドライゼ | 貴様が貴銃士でなければ、 即刻不名誉除隊にしているところだ。 |
ドライゼ | 不出来であれど、その身が貴銃士であることに せいぜい感謝することだな。 |
ジーグブルート | おい、てめぇ…… 俺を、『不出来』っつったか……? |
エルメ | ……ジグ。 |
ジーグブルート | ふざけんなよ! 俺はそんなんじゃねぇ! どんな環境でも使える、タフで最高の成功作だ! |
ジーグブルート | この俺に不出来だと……!? てめぇにだけは言われたくねぇんだよ! |
ジーグブルート | 歴史と伝統だけが取り柄で、 機能については古くさくて使えねぇ、その上、 絶対高貴にもなれねぇ『でくのぼう』のくせによォ! |
ドライゼ | …………。 |
ジーグブルート | どうした、だんまりか? はははっ、図星ってことかよ。 傑作だな。ははッ、はははははっ!!! |
ドライゼ | ……っ! |
??? | はははっ、あははははーッ! |
---|
ドライゼ | ……黙れ。その声で、笑うな……! |
---|---|
ジーグブルート | ちっ……そう何度も食らうかよ──! |
ドライゼが繰り出した最初の一撃を止めた
ジーグブルートだったが、矢継ぎ早の攻撃に押され、
やがてまともに拳を食らう。
ジーグブルート | ぐぁっ……! |
---|---|
ドライゼ | …………。 |
ドライゼはジーグブルートを殴り続ける。
何度も、何度も、繰り返し。
ライク・ツー | お、おい……! |
---|---|
エルメ | ……ドライゼ。 |
見かねてライク・ツーとエルメが声を上げるが、
耳に入っていないのか、振り下ろす拳は止まらない。
ジーグブルート | ぐっ、う……っ、クソが……ッ! |
---|
ジーグブルートも負けじと殴り返すが、
マウントを取られている以上、、圧倒的に劣勢だ。
ライク・ツー | おい、止めなくていいのか? |
---|---|
エルメ | 普段は、感情的に殴ることはないんだけどね。 ……けど、思いのほか、 こういうところもあるみたいだ。ふふっ。 |
主人公 | 【止めないと!】 |
ジーグブルート | ぐはッ! ぐ……ッ! |
ドライゼ | …………。 |
ライク・ツー | こりゃ、止めても無駄だな。 完全にイッちまってる。 |
エルメ | まあ、ここは俺に任せてよ。 |
微笑んだエルメは、ドライゼのそばへと足を進める。
エルメ | ──ドライゼ。 手袋に血がついているよ。 |
---|---|
ドライゼ | ……! |
無表情で拳を振るい続けていたドライゼだったが、
その一言でピタリと動きを止める。
そして、エルメの言う通り
己の手に血がついていることを確認すると、
顔をしかめて手袋を脱ぎ捨てた。
ドライゼ | ……チッ。 |
---|---|
ドライゼ | それは、始末しておけ。 |
エルメ | それっていうのは、ジグ? それとも手袋? |
ドライゼ | …………。 |
エルメ | ふふ、ごめん。少しからかっただけだよ。 手袋は処分、ジグは退室。 それでいいかな? |
ドライゼ | ……ああ。 |
エルメ | ほら、ジグ。早く部屋に戻りなさい。 それから、兵士に清掃道具を持ってくるように伝えて。 |
ジーグブルート | クソッ……。 |
ジーグブルートが退出すると、
室内は重い沈黙に包まれた。
ライク・ツー | (ドライゼの奴…… 堅物だが、冷静でまあまあ話は通じると思ってたけど、 認識を改めるべきか……?) |
---|---|
エルメ | ……ふふ……。 |
伝令兵 | ──ドライゼ特別司令官、ご在室でしょうか!? 緊急の報告に上がりました! |
ドライゼ | 入れ。 |
伝令兵 | 失礼いたします。 シュトゥットガルト西南西のヴァイセン広場に、 アウトレイジャーが複数体出現いたしました! |
伝令兵 | 付近にいた兵士たちで応戦していますが、 討伐には至らず、既に負傷者も出ております。 至急応援をお願いいたします! |
ドライゼ | 報告ご苦労。すぐに向かう。 |
エルメ | それじゃあ、〇〇、ライク・ツー、 行くよ。 |
主人公 | 【ヤヴォール!】 |
エルメ | うん、上出来。 |
ドイツ支部兵士1 | 撃て! ひるむな、撃て! |
---|---|
アウトレイジャー1 | …………。 |
ドイツ支部兵士2 | ちっ! まるで効いてない……! |
ドイツ支部兵士1 | 落ち着け! ここを死守するぞ。 応援が来るまで、持ちこたえるんだ! |
ドイツ支部兵士2 | あ、ああ……! |
アウトレイジャー1 | 殺、ス……。 |
ドイツ支部兵士1 | くっ……! |
??? | 絶対非道……! |
アウトレイジャー1 | ガァァッ……! |
ドイツ支部兵士たち | ……! |
エルメ | 悪いね、遅くなって。 |
ドイツ支部兵士2 | 特別司令官補佐! |
エルメ | アウトレイジャーは俺たちに任せて、 君たちは援護に回って。 |
ドイツ支部兵士たち | Jawohl! |
ジーグブルート | アウトレイジャーどもはどこだよ。 まさか、さっきの1匹だけじゃないだろうな? |
エルメ | ……ジグ。 さっき叱られたばかりでしょう? |
エルメ | また勝手をするようなら、ドライゼの沙汰より先に、 俺が君をただの鉄に戻してあげるからね。 |
ジーグブルート | チッ……うるせぇな、わかってる。 けど──。 |
アウトレイジャー2 | 死ネ……。 |
アウトレイジャー3 | 殺ス……。 |
ジーグブルート | 絶対非道なしでこいつらを倒すなんて悠長なことしてると、 余計に死人が出るぜ? |
エルメ | ジグはお馬鹿さんだね。 0か100でしか考えられないのかな。 |
ジーグブルート | ああ? |
エルメ | 俺は、絶対非道を使わないなんて言ってないよ。 マスターを浪費したり銃に戻ったりしないように、 考えて使えって言ってるんだ。 |
エルメ | 今回は、俺とジグと、ライク・ツー、 それぞれマスターが違う、3人の貴銃士がいる。 |
エルメ | ジグが1人で暴れるんじゃなくて、 3人が均等に力を使えば、誰かが死ぬことはない。 |
ジーグブルート | 手柄を譲れってのかよ? そんなの御免だな。 こいつらはぜーんぶまとめて、俺の獲物だ! |
ジーグブルート | 絶対非道……! |
エルメ | まったく……。 |
ライク・ツー | おい、俺たちも行くぞ! |
ドライゼ | ……数が多いな。 |
---|---|
ライク・ツー | おい、このままじゃマスターが無駄に消耗する! ちょこまか動き回る奴らを1体1体倒すとか、 効率最悪すぎんだろ! |
ライク・ツー | そこらでぼーっとしてる兵士ども! お前らの中は飾りか? 倒せなくていいから、 アウトレイジャーを攻撃してこっちに追い込め! |
ジーグブルート | はぁ? 勝手なこと言ってんじゃなぇ。 ぽっと出の奴が、俺を差し置いて討伐数稼ごうってか? |
ドイツ支部兵士1 | で、では……。 |
ドイツ支部兵士2 | ドライゼ特別司令官……? |
兵士たちは戸惑ったように、
ライク・ツーとドライゼの間で視線をさまよわせる。
ドライゼ | おい、勝手に指示を出すな。 お前に指揮権はない。 |
---|---|
ライク・ツー | ……! |
ドライゼ | ライク・ツー、お前は絶対非道になって遊撃しろ。 その機に乗じて、一気に勝負をつける。 |
ライク・ツー | バカを言うな。 無駄撃ちしろっていうのか? |
ドライゼ | なに、〇〇の状態であれば、 数度絶対非道になっても死ぬことはない。 |
ライク・ツー | ふざけるな! 銃が持ち主を危険にさらすような真似なんぞできるか。 |
ライク・ツー | お前らにとって、マスターは消耗品かもしれねぇが、 俺は俺の意志で〇〇を選んでるんだ。 |
ライク・ツー | コロコロマスターを変える気はねぇ。 〇〇を無駄に傷つける命令は却下だ! いいな! |
主人公 | 【ライク・ツー……】 【そう思っててくれたんだ……?】 |
ライク・ツー | ……っ、なんだよ! こっち見んな! |
ドライゼ | …………。 |
ライク・ツー | とにかく、 俺は1回しか絶対非道にならないからな。 |
エルメ | どうする? ドライゼ。 アウトレイジャーは、まだ5体も残ってるけど。 |
アウトレイジャーたち | ウゥ……。殺、ス……。 |
ドライゼ | ……いいだろう。 ライク・ツー、お前の案を採用する。 |
ドライゼ | 全兵士に告ぐ! アウトレイジャーを貴銃士部隊の方へと誘導せよ! |
ドライゼ | 隊列は120度ほどの鶴翼陣! 銃火器使用時に仲間に被害が及ばないよう周囲せよ! |
兵士たち | Jawohl!!! |
ドライゼの声に応じて、
兵士たちは瞬く間に陣形を整える。
そして、猛攻に転じた。
アウトレイジャー1 | グ……ッ! |
---|---|
アウトレイジャー2 | ガァッ……! |
ライク・ツー | すげぇな……。 |
通常の攻撃でアウトレイジャーを無力化するのは
至難の業とはいえ、ダメージを受けるごとに、
アウトレイジャーたちは後退していく。
ドライゼ | アサルトライフルの使用やめ! グレネードに切り替えて、陣形の角度を絞れ! |
---|---|
兵士たち | Jawohl!!! |
ドライゼ | ライク・ツー。先ほどの言葉が、 ただの大口ではないと証明してみせろ。 |
ライク・ツー | へいへい。 ……やるぞ、〇〇。 |
主人公 | 【頼んだ!】 【お願い!】 |
ライク・ツー | 絶対非道……ッ! |
アウトレイジャーたち | ギャァァア……! |
ライク・ツー | チッ、一体撃ち漏らした……! |
ライク・ツーの攻撃を受けたものの、
消滅には至らなかったアウトレイジャーは、
ダメージよろめきながらも包囲網を突破する。
そして……猛然と、ドライゼの方へ走り始めた。
アウトレイジャー3 | 殺ス……、必、ズ……! |
---|---|
ドライゼ | …………。 |
ドライゼは、迫りくるアウトレイジャーに狙いを定め、
銃を構える。一分の隙もない完璧な射撃姿勢だが、
一向に引き金を引く気配がない。
主人公 | 【ドライゼ特別司令官!?】 【アウトレイジャーを止めないと!】 |
---|---|
ドライゼ | くっ……。 |
ライク・ツー | 何やってんだよ、早く撃て! |
ドライゼ | ……エルメ。 |
エルメ | お望み通りに。 心銃……! |
アウトレイジャー | グッ……! |
ドライゼ | …………。 |
ドライゼの後ろから現れたエルメが
アウトレイジャーにとどめを刺した。
ジーグブルート | ちっ、俺の出番はなしかよ。 やってらんねぇ。 |
---|---|
エルメ | まあまあ。今回はそれなりに指示を聞けて、 偉かったと思うよ、ジグ。 あくまで、それなりに……だけどね。 |
ジーグブルート | それなりそれなりうるせぇな……! |
ドライゼ | ……アウトレイジャーの討伐完了。 拠点に帰還する、ぞ……。 |
ふと、立ち去りかけたドライゼが、
めまいを起こしたように目元を押さえる。
ドライゼ | ……っ。 |
---|---|
主人公 | 【大丈夫ですか?】 【どこか怪我を?】 |
ドライゼ | ……気にするな。 |
〇〇はドライゼの様子に
違和感を覚えるが、無理に引き留めることもできない。
そのまま、去り行く背中を見送ったのだった。
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