ドイツ編Ⅰ:第12話~第16話

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第12話:彼らの方程式1

近くにいた兵士にドライゼの執務室の場所を聞き、
〇〇とライク・ツーは、
その部屋へと向かった。

ライク・ツー……いいか、作戦通りにいくぞ。
ここでは、変に人情に訴えたところで無駄だ。
それどころか、生ぬるいと反感を買うだけだろう。
ライク・ツーマスター……あのおっさんを蔑ろにするあいつらに、
お前は腹が立つかもしれねぇけど、こらえろ。
淡々と、理詰めで説得するんだ。
主人公【淡々と、理詰めで……わかった】
【忠告ありがとう】
ライク・ツーよし、覚悟は決まったみたいだな。
んじゃ、いくか。

──コンコン

ドライゼ……誰だ。
主人公【〇〇とライク・ツーです!】
ドライゼ……入れ。

2人が室内に入ると、
そこにはドライゼだけでなく、エルメもいた。
彼は満足気に微笑んで、ドライゼの方を見る。

エルメふふっ、俺の読みが当たったみたいだ。
ね、ドライゼ?
ドライゼ…………。
ライク・ツー読み……?
エルメちょうど、明日の出立までに、
君たちが話をしに来るんじゃないかって言ってたところなんだ。
ついでに、用件も当ててみせようか。
エルメ『ドイツ支部に協力したい。
士官学校に連絡するから、口添えを頼みたい』
……どう?
主人公【……その通りです】
【ここに残り、協力します】
エルメさっき、マスターの話をした時の君たちと言ったら、
とても怖い顔をしていたよ。
エルメそれだけ、大事なんでしょう?
『ダンローおじさん』が。
主人公【大事です】
【もちろんです】
エルメ臆面もなく自らの感情を優先する。
実に率直で──甘い。
ライク・ツー馬鹿にしてるのか?
エルメある意味では。
軍人として非情になれないのは欠点だ。
エルメけれど、ある意味、尊敬もしているよ。
よくそれで軍人が務まるものだとね。
エルメ……まぁ、
その純粋さがいつまで保つのか、興味もあるけど。
ライク・ツーいい加減にしろ。
〇〇は俺のマスターだ。
見下されるのは、腹が立つ。
エルメごめん、ごめん。ちょっと無駄話が過ぎたね。
だから、そんな怖い顔をしないで。
ライク・ツー…………。
今日見た限りでも、ドイツ支部は強兵揃いだと感じた。
反乱軍だけが相手なら、ここまで苦戦してねぇはずだ。
ドライゼ……ああ。
実際、連中が蜂起した当初は、
すぐに鎮圧できるだろうと思われていた。
ライク・ツーだが、アウトレイジャーまで出てくると話が変わる。
……当然だ。いくら兵たちが強くても、
生身の人間じゃ、勝ち目は乏しい。
ライク・ツー今朝はニュルンベルクの拠点も奪われたって言うし、
俺たちが助っ人として加わるのは、
願ってもない話なんじゃないのか?
主人公【アウトレイジャー討伐を手伝いたい】
【おじさんの代わりに戦いたい】
エルメマスターの代わりに……ね。
エルメ……でも、一時的に君たちが手伝ってくれても、
やがてマスターは薔薇の傷にのまれてしまうよ?
ライク・ツーおあいにくさまだったな。
絶対高貴を使えば、薔薇の傷は治せるんだ。
エルメへぇ?
ドライゼ…………。
ライク・ツー士官学校から、絶対高貴を使えるヤツを呼ぶ。
そいつがユリシーズの傷を癒やす。
エルメつまり、その貴銃士が来るまでの、
時間稼ぎを君たちがする……と?
主人公【その通り】
【戦力に加えてほしい】
エルメ……本当に甘い。
ライク・ツー悪いか。
エルメ悪くはないよ。
貴銃士になっていろんな人間や貴銃士を見てきたけれど、
君たちはその中でも特別義理堅いとも言える。
エルメ人でも見殺しにできない甘さは、
本人を滅ぼす可能性はあっても、味方にするには心強い。
ライク・ツーマスターを失うつもりはねぇ。
俺がいる限り、〇〇を、破滅なんてさせねぇよ。
エルメそうであることを祈っているよ。
エルメそれじゃあ、君たちにも手伝ってもらおうか。
ねぇ、ドライゼ?
ドライゼ……不要だ。
ライク・ツー……!

第13話:彼らの方程式2

ドライゼ……不要だ。
ライク・ツー……!
ドライゼ我が軍に、絶対高貴は必要ない。
そして、お前たちの力も。
ライク・ツー……!? 意味がわからねぇ。
じゃあお前らは、これから先も無駄に
マスターを使い潰しながら戦うのかよ……!
ドライゼそれが最善だとは思っていない。
だが、一時も気を抜くことができないこの戦場で、
部外者であるお前たちを加えることはリスクを伴う。
ドライゼお前たち2人だけならまだいいが、
絶対高貴を使う貴銃士は、
ドイツ支部にとって未知の存在だ。
ドライゼそのような異分子を加え、ドイツ支部における
マスターの在り方が大きく変われば、
兵たちの間にも少なからず揺らぎが生まれる。
エルメ確かに……その可能性は十二分にあるね。
今は、ユリシーズ少佐の存在も相まって、
一刻も早く反乱を鎮めようと、士気が高まっている。
エルメけれど……マスターの傷を適宜治せて、
特に命の危険もなく戦えるとなると、
当然、気が緩む者も出てくるだろう。
エルメそれに、今まで戦死していったマスターは
一体何だったのかっていう、怨嗟の声も……ね。
ドライゼ……一進一退の今の戦況では、
ほんの小さな動揺すらも、命取りになりかねん。
ドライゼ前線の拠点をあずかる身として、
私はそのような危険を冒すことはできない。
主人公【でも、このままでは膠着状態が続くのでは?】
【勝利のために、攻めの一手も必要かと……】
エルメふふ……君、ドライゼ相手に怯まずに
そこまで意見を言えるなんて、肝が据わってるよ。
エルメ君たちみたいな異分子を加えることで、
どう転ぶか……俺としては興味があるね。
ドライゼ……エルメ。お前の個人的興味は、
優先されるべきものではない。
エルメもちろん、それはわかってるよ。
でも、彼らを戦力として加えることに、
俺は特別司令官補佐として賛成する。
エルメライク・ツーの絶対非道は、我が軍の戦力になる。
そうだろう?
ドライゼ……そうだな。それは認める。
エルメ絶対高貴になれる貴銃士についても……
何も、馬鹿正直に存在を公表する必要はない。
内密に派遣してもらうのはアリなんじゃないかな。
エルメそして、ユリシーズ少佐たちマスターの傷が
悪化しすぎないようにコントロールして……
兵たちの士気を高いまま維持する。
エルメ彼の死によって士気と闘志はより高まるだろうけど、
同時に、兵たちの冷静さも奪いかねない。
そうなると、無謀な行動に出る者もいるかもね。
エルメ俺としては、今の状況をより長く保つほうが……
つまり、ユリシーズ少佐を長持ちさせることが、
この戦いの勝利のために最善だと思ってるよ。
主人公【(“長持ち”って、物みたいに……)】
【(ここでは、マスターは駒でしかない……)】
ライク・ツー……おい、〇〇。
主人公【大丈夫】
【忠告は忘れてない】
ライク・ツーならいい。
ライク・ツー……んで、どうする?
このまま先の見えない戦いを続けるか、
それとも、ここらで少しやり方を変えてみるか。
ドライゼ……先ほどのお前たちの戦いぶりは、悪くなかった。
無駄のない動きで、アウトレイジャーを殲滅していたな。
ライク・ツーへぇ。そりゃどうも。
ドライゼまずは、お前たち2人を我が軍に一時的に加える。
……絶対高貴になれる貴銃士というのは、
すぐに派遣できるものなのか?
ライク・ツー……緊急だしな、補習は後回しにできるだろ。
エルメ……? どこか故障しているなら、
補修を優先させた方がいいんじゃないかい?
ライク・ツーあー、そっちの補修じゃなくて、勉強の方だ。
許可さえ下りれば、1~2日で合流できると思うぜ。
ドライゼ……よし、いいだろう。
連合軍の上層部には、私から掛け合っておく。
お前たちは士官学校に連絡するように。
主人公【わかりました】
【イエッサー!】
ドライゼ返事は、『Jawohl』だ。
エルメ一時的とはいえドイツ支部に加わるからには、
こちらのやり方に沿ってもらわないとね。
主人公【ヤヴォール!】
ドライゼお前たちの活躍に期待している。

第14話:罰

ライク・ツーんで、具体的には、俺たちはどう動けばいいんだ?
独立して遊撃とか?
ドライゼいや。円滑な任務遂行のために、
エルメの隊に加わってもらおう。
任務中は、エルメの指示に従うように。
ドライゼ……言っておくが、規律を乱す者に用はない。
たとえお前たちに実力があったとしても、
軍全体にとってマイナスになるならば不要だ。
主人公【ヤヴォール!】
ドライゼよろしい。
……エルメ、頼むぞ。
エルメOK、任されたよ。
エルメそれじゃあ、〇〇、ライク・ツー、
早速だけど、もう少ししたら会議があるから──
ジーグブルート──おい、ドライゼ!
俺の戦果は見たんだろうな。ああ?
ドライゼ……貴様は、入室する時に許可を取るという
簡単なこともできんのか。ジーグブルート。
ジーグブルートつーか、今日は何日だ?
新しい奴に聞くのを忘れてたんだが……
俺が銃に戻ってから、どれくらい経った?
エルメおはよう、ジグ。まだ当日中だよ。
君が銃に戻ってから、4時間ってところかな。
ジーグブルート4時間だと?
ったく、何を悠長にしてんだか……。
ジーグブルート……まあいい。
俺は今回の戦闘で、アウトレイジャーを8体倒した。
ジーグブルートあの野郎が死ななけりゃ、
9体──いや、10体はいけてたな。はははっ!
ジーグブルートなあ、なかなかいい仕事をしただろう?
あのクソマスターが死ななきゃもっと──
ドライゼ…………。

ゆったりと立ち上がったドライゼは、
ジーグブルートの方へと歩み寄る。
そして──。

ジーグブルートぐっ……!

目にも留まらぬ速さで振るわれたドライゼの拳は、
常人では揺るがすことすら難しそうな
ジーグブルートの身体を、数メートル吹き飛ばした。

ジーグブルートて、てめぇ……何しやがる……!
ドライゼ……貴様は、命令違反が
自分の仕事だとでも思っているのか?
ジーグブルートああ?
俺はきっちりアウトレイジャーを仕留めただろうが!
ドライゼ貴様の行いについて、
エルメや各隊の者から報告が上がっている。
ドライゼ貴様は、エルメの静止を無視して絶対非道を使い……
その結果、戦場の只中で銃に戻るという愚を犯したとな。
ジーグブルートそれがなんだ。目の前に敵がいるのに、
マスターが死にかけだから攻撃の手を緩めろってか?
ジーグブルートそれで、他の奴らにみすみす手柄を譲れって?
……ハッ、冗談じゃねぇ。
ジーグブルートマスターなんて消耗品だろ!
俺の力のために尽くして死ぬ! それがマスターだ!
ドライゼ…………。
エルメふぅ……。まったく、懲りないお馬鹿さんだね。
ジグ、ドライゼ特別司令官に
ごめんなさいしなきゃダメでしょ。
ジーグブルートはぁ? なんで俺が謝るんだよ。
手を出してきたのはドライゼだろ。
ドライゼ……貴様の命令違反は、今回で19回目。
これは、到底看過できるものではない。
ドライゼ命令と軍規を遵守しない兵士は我が軍には不要だ。
ドライゼこれ以上勝手な振る舞いを重ねるのであれば、
次に銃に戻った時には二度と召銃せず、
貴様を放棄するよう進言することも考える。
ジーグブルートんだとォ……俺はドイツ支部の役に立ってる!
絶対非道になれる貴銃士なんて貴重だぜ?
ドライゼそうだな。
幸か不幸か、貴様は貴銃士だ。
ドライゼ貴様が貴銃士でなければ、
即刻不名誉除隊にしているところだ。
ドライゼ不出来であれど、その身が貴銃士であることに
せいぜい感謝することだな。
ジーグブルートおい、てめぇ……
俺を、『不出来』っつったか……?
エルメ……ジグ。
ジーグブルートふざけんなよ! 俺はそんなんじゃねぇ!
どんな環境でも使える、タフで最高の成功作だ!
ジーグブルートこの俺に不出来だと……!?
てめぇにだけは言われたくねぇんだよ!
ジーグブルート歴史と伝統だけが取り柄で、
機能については古くさくて使えねぇ、その上、
絶対高貴にもなれねぇ『でくのぼう』のくせによォ!
ドライゼ…………。
ジーグブルートどうした、だんまりか?
はははっ、図星ってことかよ。
傑作だな。ははッ、はははははっ!!!
ドライゼ……っ!

???はははっ、あははははーッ!

ドライゼ……黙れ。その声で、笑うな……!
ジーグブルートちっ……そう何度も食らうかよ──!

ドライゼが繰り出した最初の一撃を止めた
ジーグブルートだったが、矢継ぎ早の攻撃に押され、
やがてまともに拳を食らう。

ジーグブルートぐぁっ……!
ドライゼ…………。

ドライゼはジーグブルートを殴り続ける。
何度も、何度も、繰り返し。

ライク・ツーお、おい……!
エルメ……ドライゼ。

見かねてライク・ツーとエルメが声を上げるが、
耳に入っていないのか、振り下ろす拳は止まらない。

ジーグブルートぐっ、う……っ、クソが……ッ!

ジーグブルートも負けじと殴り返すが、
マウントを取られている以上、、圧倒的に劣勢だ。

ライク・ツーおい、止めなくていいのか?
エルメ普段は、感情的に殴ることはないんだけどね。
……けど、思いのほか、
こういうところもあるみたいだ。ふふっ。
主人公【止めないと!】
ジーグブルートぐはッ! ぐ……ッ!
ドライゼ…………。
ライク・ツーこりゃ、止めても無駄だな。
完全にイッちまってる。
エルメまあ、ここは俺に任せてよ。

 

第15話:血に汚れた手袋

微笑んだエルメは、ドライゼのそばへと足を進める。

エルメ──ドライゼ。
手袋に血がついているよ。
ドライゼ……!

無表情で拳を振るい続けていたドライゼだったが、
その一言でピタリと動きを止める。

そして、エルメの言う通り
己の手に血がついていることを確認すると、
顔をしかめて手袋を脱ぎ捨てた。

ドライゼ……チッ。
ドライゼそれは、始末しておけ。
エルメそれっていうのは、ジグ? それとも手袋?
ドライゼ…………。
エルメふふ、ごめん。少しからかっただけだよ。
手袋は処分、ジグは退室。
それでいいかな?
ドライゼ……ああ。
エルメほら、ジグ。早く部屋に戻りなさい。
それから、兵士に清掃道具を持ってくるように伝えて。
ジーグブルートクソッ……。

ジーグブルートが退出すると、
室内は重い沈黙に包まれた。

ライク・ツー(ドライゼの奴……
堅物だが、冷静でまあまあ話は通じると思ってたけど、
認識を改めるべきか……?)
エルメ……ふふ……。
伝令兵──ドライゼ特別司令官、ご在室でしょうか!?
緊急の報告に上がりました!
ドライゼ入れ。
伝令兵失礼いたします。
シュトゥットガルト西南西のヴァイセン広場に、
アウトレイジャーが複数体出現いたしました!
伝令兵付近にいた兵士たちで応戦していますが、
討伐には至らず、既に負傷者も出ております。
至急応援をお願いいたします!
ドライゼ報告ご苦労。すぐに向かう。
エルメそれじゃあ、〇〇、ライク・ツー、
行くよ。
主人公【ヤヴォール!】
エルメうん、上出来。

ドイツ支部兵士1撃て! ひるむな、撃て!
アウトレイジャー1…………。
ドイツ支部兵士2ちっ! まるで効いてない……!
ドイツ支部兵士1落ち着け! ここを死守するぞ。
応援が来るまで、持ちこたえるんだ!
ドイツ支部兵士2あ、ああ……!
アウトレイジャー1殺、ス……。
ドイツ支部兵士1くっ……!
???絶対非道……!
アウトレイジャー1ガァァッ……!
ドイツ支部兵士たち……!
エルメ悪いね、遅くなって。
ドイツ支部兵士2特別司令官補佐!
エルメアウトレイジャーは俺たちに任せて、
君たちは援護に回って。
ドイツ支部兵士たちJawohl!
ジーグブルートアウトレイジャーどもはどこだよ。
まさか、さっきの1匹だけじゃないだろうな?
エルメ……ジグ。
さっき叱られたばかりでしょう?
エルメまた勝手をするようなら、ドライゼの沙汰より先に、
俺が君をただの鉄に戻してあげるからね。
ジーグブルートチッ……うるせぇな、わかってる。
けど──。
アウトレイジャー2死ネ……。
アウトレイジャー3殺ス……。
ジーグブルート絶対非道なしでこいつらを倒すなんて悠長なことしてると、
余計に死人が出るぜ?
エルメジグはお馬鹿さんだね。
0か100でしか考えられないのかな。
ジーグブルートああ?
エルメ俺は、絶対非道を使わないなんて言ってないよ。
マスターを浪費したり銃に戻ったりしないように、
考えて使えって言ってるんだ。
エルメ今回は、俺とジグと、ライク・ツー、
それぞれマスターが違う、3人の貴銃士がいる。
エルメジグが1人で暴れるんじゃなくて、
3人が均等に力を使えば、誰かが死ぬことはない。
ジーグブルート手柄を譲れってのかよ? そんなの御免だな。
こいつらはぜーんぶまとめて、俺の獲物だ!
ジーグブルート絶対非道……!
エルメまったく……。
ライク・ツーおい、俺たちも行くぞ!

第16話:重い引き金

ドライゼ……数が多いな。
ライク・ツーおい、このままじゃマスターが無駄に消耗する!
ちょこまか動き回る奴らを1体1体倒すとか、
効率最悪すぎんだろ!
ライク・ツーそこらでぼーっとしてる兵士ども!
お前らの中は飾りか? 倒せなくていいから、
アウトレイジャーを攻撃してこっちに追い込め!
ジーグブルートはぁ? 勝手なこと言ってんじゃなぇ。
ぽっと出の奴が、俺を差し置いて討伐数稼ごうってか?
ドイツ支部兵士1で、では……。
ドイツ支部兵士2ドライゼ特別司令官……?

兵士たちは戸惑ったように、
ライク・ツーとドライゼの間で視線をさまよわせる。

ドライゼおい、勝手に指示を出すな。
お前に指揮権はない。
ライク・ツー……!
ドライゼライク・ツー、お前は絶対非道になって遊撃しろ。
その機に乗じて、一気に勝負をつける。
ライク・ツーバカを言うな。
無駄撃ちしろっていうのか?
ドライゼなに、〇〇の状態であれば、
数度絶対非道になっても死ぬことはない。
ライク・ツーふざけるな!
銃が持ち主を危険にさらすような真似なんぞできるか。
ライク・ツーお前らにとって、マスターは消耗品かもしれねぇが、
俺は俺の意志で〇〇を選んでるんだ。
ライク・ツーコロコロマスターを変える気はねぇ。
〇〇を無駄に傷つける命令は却下だ!
いいな!
主人公【ライク・ツー……】
【そう思っててくれたんだ……?】
ライク・ツー……っ、なんだよ! こっち見んな!
ドライゼ…………。
ライク・ツーとにかく、
俺は1回しか絶対非道にならないからな。
エルメどうする? ドライゼ。
アウトレイジャーは、まだ5体も残ってるけど。
アウトレイジャーたちウゥ……。殺、ス……。
ドライゼ……いいだろう。
ライク・ツー、お前の案を採用する。
ドライゼ全兵士に告ぐ!
アウトレイジャーを貴銃士部隊の方へと誘導せよ!
ドライゼ隊列は120度ほどの鶴翼陣!
銃火器使用時に仲間に被害が及ばないよう周囲せよ!
兵士たちJawohl!!!

ドライゼの声に応じて、
兵士たちは瞬く間に陣形を整える。
そして、猛攻に転じた。

アウトレイジャー1グ……ッ!
アウトレイジャー2ガァッ……!
ライク・ツーすげぇな……。

通常の攻撃でアウトレイジャーを無力化するのは
至難の業とはいえ、ダメージを受けるごとに、
アウトレイジャーたちは後退していく。

ドライゼアサルトライフルの使用やめ!
グレネードに切り替えて、陣形の角度を絞れ!
兵士たちJawohl!!!
ドライゼライク・ツー。先ほどの言葉が、
ただの大口ではないと証明してみせろ。
ライク・ツーへいへい。
……やるぞ、〇〇。
主人公【頼んだ!】
【お願い!】
ライク・ツー絶対非道……ッ!
アウトレイジャーたちギャァァア……!
ライク・ツーチッ、一体撃ち漏らした……!

ライク・ツーの攻撃を受けたものの、
消滅には至らなかったアウトレイジャーは、
ダメージよろめきながらも包囲網を突破する。

そして……猛然と、ドライゼの方へ走り始めた。

アウトレイジャー3殺ス……、必、ズ……!
ドライゼ…………。

ドライゼは、迫りくるアウトレイジャーに狙いを定め、
銃を構える。一分の隙もない完璧な射撃姿勢だが、
一向に引き金を引く気配がない。

主人公【ドライゼ特別司令官!?】
【アウトレイジャーを止めないと!】
ドライゼくっ……。
ライク・ツー何やってんだよ、早く撃て!
ドライゼ……エルメ。
エルメお望み通りに。
心銃……!
アウトレイジャーグッ……!
ドライゼ…………。

ドライゼの後ろから現れたエルメが
アウトレイジャーにとどめを刺した。

ジーグブルートちっ、俺の出番はなしかよ。
やってらんねぇ。
エルメまあまあ。今回はそれなりに指示を聞けて、
偉かったと思うよ、ジグ。
あくまで、それなりに……だけどね。
ジーグブルートそれなりそれなりうるせぇな……!
ドライゼ……アウトレイジャーの討伐完了。
拠点に帰還する、ぞ……。

ふと、立ち去りかけたドライゼが、
めまいを起こしたように目元を押さえる。

ドライゼ……っ。
主人公【大丈夫ですか?】
【どこか怪我を?】
ドライゼ……気にするな。

〇〇はドライゼの様子に
違和感を覚えるが、無理に引き留めることもできない。
そのまま、去り行く背中を見送ったのだった。

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