ライク・ツー | 確かに、昨日訓練した奴らは、 ドライゼみたいになりたいって言って、 すっげー慕ってる感じだったな。 |
---|---|
ライク・ツー | 鬼みたいにキッツいトレーニングも、 ドライゼが黙々とやってる姿を見るから、 自分たちもやらねぇとって気合が入るんだと。 |
エルメ | ふふ……そうだね。ドライゼは誰よりも自分に厳しくて、 常に研鑽を重ねているから。 兵たちのいいお手本だよ。 |
エルメ | ……ドライゼは、食にある種の 楽しみを見出したみたいだけど…… 俺はずっと、何を食べてもいまいちピンと来てなかったんだ。 |
エルメ | でも、レバー料理だけは、 不思議と食事の手が進むんだ。 |
エルメ | レバーは鉄分が豊富だからかな? 銃は金属部分が多いから、摂取することが プラスになるって感じられるのかも。 |
主人公 | 【単に、好物なのでは?】 【味が気に入ったのかも】 |
エルメ | ん……? どういうことかな。 |
ライク・ツー | 銃だろうが、今は人に近い肉体を持ってんだ。 味覚もあるし、好き嫌いもあって当然だろ。 |
ライク・ツー | 士官学校にいるジョージって奴は、 ハンバーガーが好きでしょっちゅう食ってるぞ。 |
ライク・ツー | ああいうの見てると、人も貴銃士も あんまり変わらねぇなって思うぜ。 |
エルメ | ……その考えには、同意できないな。 |
エルメ | 人間と貴銃士は違う。 心を持ち行動する人間に対し、銃は鉄の塊に過ぎない。 |
エルメ | そして、貴銃士は人と銃のいずれでもない。 「考える鉄」だ。 |
エルメ | 戦うために生まれた俺たちには、 未来も幸福も必要がない。 本来は、人のように振る舞う必要も、ね。 |
エルメ | 目的を達成するためなら、いかようにも冷徹になり、 感情で揺らぐことなく、ただ敵を正確に撃ち抜く。 |
エルメ | ──それが、俺たちドイツの貴銃士だよ。 |
ライク・ツー | ……考える鉄、か。 |
ライク・ツー | なるほどな。 お前はそう考えてるわけだ。俺とは違うな。 |
ライク・ツー | 銃だろうが鉄だろうが、俺の在り方は俺が決める。 ……その先にどんな未来があろうとも、 自分で決着をつけてやる。 |
ライク・ツー | それが、俺の考えだ。 |
エルメ | ……へぇ。君も、変わったことを言うね。 |
──パァン!
ライク・ツー | ……今のは、銃声!? |
---|---|
エルメ | あっちから聞こえたね。……行こう! |
ドライゼ | ぐっ……! |
---|
銃声が聞こえた方へ
〇〇たち3人が走っていくと、
ドライゼが自身の腕を押さえていた。
その手の隙間から、
ボタボタと血が滴り落ちている。
ライク・ツー | 何があった!? |
---|---|
ドライゼ | 突然銃撃を受けた。 ドイツ支部の軍服を着ていたが、見覚えのない顔だ。 捕虜の軍服を奪った、反乱軍の暗殺部隊だと思われる。 |
兵士1 | 我々護衛を残し、他の兵たちは侵入者を追っています! 必ず捕らえてください……! |
エルメ | 了解。 俺たちで片をつけよう。手伝ってくれるね? |
主人公 | 【Jawohl!】 |
基地内に潜入した暗殺部隊を撃退した後、
ごく少人数での緊急会議が開かれることとなった。
エルメ | 君たちのおかげで、暗殺部隊を早急に一掃できたよ。 ありがとう。 |
---|---|
ライク・ツー | そいつはどーも。 作戦は明日だが……怪我は大丈夫なのか? |
ドライゼ | 既にユリシーズ少佐の力で治癒している。 作戦に支障はない。 |
エルメ | 問題は……。 |
兵士1 | 失礼いたします! |
兵士2 | 暗殺部隊の侵入を手引きした内通者を発見し、 連行しました! |
スパイ | くっ……! |
兵士たちに引きずられるようにして、
ドイツ支部の軍服を纏った1人の兵士が
ドライゼの前に放り出される。
ドライゼは憤怒と失意の表情を浮かべ、
彼を鋭く睨んだ。
ドライゼ | 貴様……なぜ国や仲間を裏切るような真似をした! |
---|---|
ドライゼ | 貴様は国を守ることを誓い、軍に入ったはずだ! それを、なぜ裏切った……! |
スパイ | ……お前の言っていることは、理想に過ぎない! |
スパイ | 本心ではみな、世界帝時代のほうが豊かで いい時代だったと思っている! |
ドライゼ | 世界帝、だと……? |
ライク・ツー | ……親世界帝派の人間か。 |
スパイ | 俺の家族は元々、世界帝軍にいた。 当時は裕福だったが、革命戦争のあと迫害され、 各地を転々として……生活は困窮した。 |
スパイ | 俺は、遠い親戚の名前を借りて、 なんとか軍の仕事にありつくことができたが…… 俺の稼ぎだけでは、ただ生きるだけが精一杯だ! |
スパイ | それでも仕方がないと思って諦めていたが、 アウトレイジャーを……あの強兵を従えたなら、 我々はまた世界を支配できる! |
スパイ | そしてあの時代を、再び取り戻せる! そのために……ッ! |
兵士1 | 貴様……! 黙れ、この裏切り者が! |
スパイ | ぐッ……! |
兵士2 | 俺の家族は、世界帝軍に殺された! お前たちは当然の報いを受けただけだろうがっ! |
兵士3 | 何が豊かでいい時代だ! 俺にとっちゃ、そんなものありゃしなかった! |
スパイを取り押さえていた兵士たちが、
激昂してスパイの胸倉を摑み、殴りつける。
ドライゼは、その光景を睨むように見つめていた。
何かの衝動を堪えるように、拳を震わせながら。
兵士1 | ドライゼ特別司令官! 裏切り者への沙汰を! |
---|---|
兵士2 | ご命令を! |
ドライゼ | ……! |
兵士たちがドライゼに詰め寄った瞬間──
わずかに拘束が緩んだ隙を見逃さず、
スパイが兵士のサバイバルナイフを奪う。
ライク・ツー | まずい……! |
---|---|
スパイ兵士 | 死ね! ドライゼ! |
ドライゼ | …………。 |
スパイがナイフを投擲しようとした瞬間──
乾いた銃声が鳴り響き、男の頭部に風穴が開いた。
エルメ | 裏切り者には、死あるのみ。 |
---|---|
エルメ | ……そうでしょ? ドライゼ。 |
力を失ったスパイの手から、
カランと音を立ててナイフが落ちる。
かつては自らに忠誠を誓った部下の返り血が、
ドライゼの頬を汚した。
エルメ | ニュルンベルクの襲撃も、彼が仕組んだのかもね。 増援が来る前の隙を狙って……。 |
---|---|
エルメ | もう少し情報を引き出してから始末すればよかった。 でも……特別司令官の危機だったから、仕方ない。 |
ドライゼ | …………。 |
エルメ | さて。彼の持ち物はすべて見分して、 どの程度情報が漏れたのかを精査しよう。 死体も隅々まで調べてから処分したまえ。 |
兵士たち | Jawohl! |
エルメ | 明後日の作戦については、少し変更が必要だね。 でも、作戦前にスパイを始末できてよかったよ。 これで成功率は少なからず上がるだろうし。 |
ドライゼ | …………。 |
ドライゼ | 常に……備えを……勝利を……。 |
エルメ | ドライゼ? |
ライク・ツー | ん……? お前、目が……。 |
伏せられたドライゼの目はよく見えないが、
〇〇の気のせいでなければ……
わずかに、赤みを帯びているように見えた。
ドライゼ | 完璧な……してこそ……。 |
---|---|
主人公 | 【ドライゼ特別司令官!】 |
ドライゼ | っ……! |
ライク・ツー | お前、さっきからおかしいぞ。 大丈夫か? |
ドライゼ | ……問題ない。 少し、考え事をしていただけだ。 |
ドライゼ | 私は報告書をまとめ、作戦を練り直す。 あとの始末をしておけ。 |
エルメ | …………。 |
去っていくドライゼとすれ違った瞬間、
エルメがうっすらと笑みを浮かべた。
ライク・ツー | お前……なんで笑ってんだよ。 |
---|---|
エルメ | いや……少し、楽しみでね。 |
エルメ | あの厳格で忠実な軍人のドライゼが、 いつまで自分を保てるか……。 |
エルメ | 彼の心の奥底を、見てみたいと思わない? |
エルメ | ……彼の瞳が……深紅に染まる瞬間を。 |
暗殺部隊を手引きしていたスパイの一件を受け、
ニュルンベルク奪還作戦は予定より一日早められ、
明日決行となった。
ドライゼ | 例のスパイの一件により、我々の作戦が 外部に漏れている可能性が高い。 |
---|---|
ドライゼ | 失敗は許されない状況だ。 時間は限られているが、 各自完璧な備えをしておくように! |
兵士たち | Jawohl! |
ドライゼ | 何か質問はあるか? |
ライク・ツー | いや、特にないが……。 |
ライク・ツー | ジーグブルートとゴーストの奴は来ないのか? 作戦の最終確認だってのに。 |
エルメ | ジグは同じ話を何度も聞くのは時間の無駄とか言って、 来なかったね。 |
エルメ | ゴーストなら、そこにいるよ。 |
ゴースト | ……ふふ。 今度は気づか……なかった、な……。 |
ライク・ツー | うぉっ! お前、もうちょい存在感出せよ……。 |
ゴースト | 出そうとして存在感出せたら、苦労……しない。 |
連合軍伝令兵 | ──失礼いたします。 〇〇殿宛にご連絡です! |
連合軍伝令兵 | フィルクレヴァート士官学校の貴銃士の方々が、 先ほどベルリンに到着されたとのことです! |
ライク・ツー | ジョージたち……やっと来たか! 心配させやがって。 |
エルメ | よかったね。 うまくいけば、明日の作戦に間に合うんじゃない? |
ドライゼ | とはいえ、彼らを待つことはできない。 作戦が優先だ。 |
ライク・ツー | わかってるって。 |
ドライゼ | 明日の開戦まで、敵地の偵察を怠るな! 作戦決行をさらに早める可能性もある。 いつでも出発できるよう準備しておけ! |
ドライゼ | 我々は必ず、この作戦を成功させる! 忌まわしき過去に縋る逆賊どもから、 誇り高きドイツを取り戻すのだ! |
兵士たち | Jawohl!!! |
ライク・ツー | ドライゼの奴、いつもの調子に戻ったな。 |
---|---|
ライク・ツー | エルメは何を考えてるのかよくわからんが…… まぁ、作戦ではちゃんと動くだろ。 |
ライク・ツー | とはいえ、作戦が明日になっちまったのはまずいな。 ジョージたちが、まだ来てないってのに。 |
ライク・ツー | 厳しい戦いが続けば、回復なしってのは 相当に無理があるぞ……。 |
主人公 | 【大丈夫】 【短期決戦を目指そう】 |
ライク・ツー | 大丈夫……って言ってもよ。 ちょっと傷、見せてみろ。 |
ライク・ツー | …………。 |
少し広がった傷からは、血が滲んでいた。
ライク・ツーがわずかに顔をしかめる。
ライク・ツー | お前……いや、こうなるのはわかってて、 お前はここに残る道を選んだんだからな。 |
---|---|
ライク・ツー | 俺は、何も言わねぇよ。 |
ライク・ツー | ……とにかく、包帯を変えるぞ。 手、貸せ。 |
主人公 | 【ありがとう】 【いつも助かってるよ】 |
ライク・ツー | ……フン。 |
手当てを終え、ライク・ツーが自室に戻った後……
〇〇は、さっきまで彼が座っていた
椅子の近くに、小さな紙が置いてあることに気づく。
それは、『今晩、2人だけで話がしたい』という
ユリシーズからの短い手紙だった。
ダンロー | 突然呼び出してすまない。 |
---|---|
ダンロー | 君には……話しておかなければならないことがある。 |
ユリシーズはそう言うと、軍服の袖を
自らたくし上げた。
ダンロー | 見ての通り、私の傷はかなり広がっている。 明日の作戦で、命を落とす可能性もあるだろう。 |
---|---|
ダンロー | だから、私が生きているうちに、 どうしても……と。 |
主人公 | 【ダンローおじさん……?】 【(話って、一体……?)】 |
ダンロー | ……君は、なぜ私が君の支援をしていたか、 ずっと知りたがっていたね。 |
ダンロー | 私が君をベルリンに呼んだのも…… この話をしたかったからなんだ。 |
ダンロー | だが……いざ君に会うと決心がつかなくて、 なかなか言えずにいた。 |
ダンロー | …………。 |
ダンロー | ……私は、君のご両親の死に関わっている。 |
主人公 | 【……両親、の?】 【どういうことですか……?】 |
ダンロー | ずいぶん昔の話だが……。 |
ダンロー | 私は、世界帝軍の強制徴兵地域に住んでいたから、 徴兵によって兵士になった。 |
ダンロー | 最初はただの一兵卒だったが、 他に適任者がいなかったのか、 いつしか小隊を率いる立場になった……。 |
ダンロー | ……君のご両親は、レジスタンスの中でも、 特に求心力のある人間だったんだろう。 |
ダンロー | 世界帝軍の重要施設破壊に関わったことをきっかけに、 彼らは指名手配され、発見次第処刑するようにと 厳命が下っていた。 |
ダンロー | そして……。 |
ダンロー | ある日、私の小隊を含むいくつかの隊が、 別件での任務の際に偶然、君のご両親を含む 指名手配中のレジスタンスを発見した。 |
ダンロー | 私たちは……命令に従い、彼らを処刑することにした。 部下に命じて、1人残らず。 |
主人公 | 【……!】 |
ダンロー | その後……隠れ潜んでいる指名手配犯がいないか、 周囲の捜索をしていた私は、 廃墟で震えている子供を見つけた。 |
ダンロー | ……それが、君だ。 君が彼らの子だということは、すぐにわかった。 ご両親にそっくりな、意志の強い目をしていたから── |
ダンロー | 「お父さん、お母さん」と泣く君の姿を見て、 私は……人の心を、取り戻した。 そして、自分の罪に打ちひしがれた。 |
ダンロー | ……罪のない子供とはいえ、 両親をレジスタンスに持つ子供が1人で放り出され、 その先どうなるか、想像に難くない……。 |
ダンロー | 悲惨な行く末を思うと、放っておけなかった。 ……いや、それは欺瞞かもしれない。 |
ダンロー | 私は自分の罪の重さに耐えられず、 私のすべてを懸けて君を守ることで、 せめてもの罪滅ぼしをしようとしたんだ。 |
ダンロー | あまりにも、身勝手な話だろう。 |
ダンロー | 私は、君が思っているような立派な人間じゃない。 君に感謝されていいような人間じゃないんだ。 |
ダンロー | だから……君は、私のためになんか、 危険を冒さないでくれ。命を懸けないでくれ。 |
ダンロー | 今からでも遅くはない。 護衛の貴銃士を連れて、この基地から去るんだ。 |
衝撃的なユリシーズの話に、
〇〇は何も言えずに固まった。
しかし、ややあって言葉を絞り出す。
主人公 | 【……それでも、感謝しています】 |
---|---|
ダンロー | 〇〇……? |
〇〇は、訥々と語った。
ユリシーズの支援がなければ、
自分は生きてすらいなかったかもしれない。
ユリシーズが両親の死に関わっていたことは
ショックではないと言い切れないが、
彼もまた、強制徴兵された被害者でもある。
それに、これまで手紙を通して、
あまりにもユリシーズに支えられた。
だから、憎むこともできない……と。
ダンロー | ……君は……。 |
---|---|
ダンロー | 君は……本当に優しく、立派に育った……。 |
懺悔と歓喜が複雑に混じり合った表情で、
ダンローは声を震わせて呟く。
手紙から感じていた優しさが、今はすぐそばにあった。
ダンロー | 君の成長を、手紙を通して見守れたことは、 私の人生最大の幸福だった。 |
---|---|
ダンロー | 君が立派に巣立とうとしている今、 私に何一つ思い残すことはないよ。 |
ダンロー | だが……君に何かあったら、 私は死んでも死にきれない。 |
ダンロー | だからどうか、明日を無事に乗り切ってくれ。 君は、絶対に死ぬんじゃない。 生きて、立派な大人になってくれ。 |
主人公 | 【自分は、死にません】 【おじさんも、絶対に死なないでください】 |
ダンロー | ……〇〇。 |
主人公 | 【必ず、自分の貴銃士が助けに来ます】 |
〇〇の言葉に、
ダンローは静かに微笑んだのだった。
〇〇が部屋に戻ると、
そこには真剣な表情をしたライク・ツーがいた。
ライク・ツー | 置いてあったあのメモ…… やっぱりおっさんからの手紙だったのか。 |
---|---|
主人公 | 【……えっ!】 【気づいてたんだ】 |
ライク・ツー | あのおっさん、 前にも一度手紙を置いていっただろ。 |
ライク・ツー | その顔からして……ちゃんと話せたみたいだな。 よかったじゃん。 |
そう言って立ち去りかけたライク・ツーだが、
出口の前で立ち止まり、振り返る。
ライク・ツー | ……しばらくは起きてるから、 何かあったら言え。 |
---|---|
主人公 | 【ありがとう、また明日】 【おやすみ】 |
ライク・ツー | ……おやすみ。 |
??? | ははっ、あはははは……! はじめて、人を、殺した……! |
---|---|
??? | 僕はずっと……心に、獣を飼っていたんだ。 |
??? | 撃て! 撃て撃て撃て! |
??? | 私は戦う! 祖国のために……! |
ドライゼ | ……やめろ。 |
ドライゼ | やめろ、やめろ……! |
ドライゼ | ……っ!? |
ドライゼ | ……夢、か……。 |
ドライゼ | (くそっ……、重要な作戦前に……) |
ドライゼ | くっ……! はぁっ、はぁっ……! |
傷が鈍く痛む目元を押さえながら、
ドライゼは低く呻くように言葉を吐き出す。
ドライゼ | 俺は……番人……。 |
---|---|
ドライゼ | 祖国のために……! 未来の、ために……! |
己に言い聞かせるよう、
言葉を繰り返すドライゼの瞳には──
狂気を孕んだ、暗い赤が浮かんでいた。
エルメ | ふふっ……明日の作戦はどうなるかな。 |
---|---|
エルメ | 本当の君の姿が見られるのを、楽しみにしているよ。 ……ドライゼ。 |
──作戦当日、14時。
ドライゼ | あれが、ニュルンベルク基地だ。 我々は、最も警備が手薄な南東の門から攻め込む。 |
---|---|
ドライゼ | ……門にいる見張りは2人。 3交代制で8時に交代したことを確認している。 通常通りであれば、16時まで動きはない。 |
エルメ | まずは、別動隊が北側で爆発を起こして、 敵を陽動する。 |
エルメ | 見張りたちもそちらへ意識が向くだろうから、 その隙に死角から近づき、2人を制圧。 動きはごくシンプルだよ。 |
エルメ | 気を急いて変なミスをしないように、 細心の注意を払って作戦を進めよう。 ……いいね? ジグ。 |
ジーグブルート | あ? なんで俺に向かって言うんだよ。 |
エルメ | 君が一番危なっかしいからだよ。 |
ライク・ツー | ……それより、もう少し待てなかったのか? |
ライク・ツー | 士官学校からの応援は、 昨日の時点でベルリンまで来てる。 もう少し待てば、合流できるかもしれない。 |
ドライゼ | 確かに、貴銃士3名が加われば、 大きな戦力となるだろう。 |
ドライゼ | しかし、これ以上開戦の時間が遅くなると、 戦いが長時間に及んだ場合、 夜間戦闘になる可能性も高まる。 |
ドライゼ | 夜闇の中で、自軍と敵軍、 アウトレイジャーが入り乱れた戦いになれば、 大きな損害を出すことになりかねん。 |
ドライゼ | それに、情報が漏れた可能性を考えて 作戦決行を早めたのに、応援を待っていて 当初の予定通りに戻れば、本末転倒だ。 |
エルメ | かといって、作戦を先延ばしにすれば、 それだけ敵はニュルンベルクの守りを固めて 奪還が難しくなってしまう……。 |
エルメ | やるとしたら、このタイミングしかないんだ。 |
ライク・ツー | それは……そうだけど。 |
ジーグブルート | グダグダ言ってねぇで、さっさとやるぞ。 ライク・ツー、てめぇはすっこんでてもいいんだぜ? |
ゴースト | …………。 |
ジーグブルート | おい、ゴースト。存在感消してねぇで、 お前もなんとか言ったらどうなんだ。 |
ゴースト | ……俺は、ドライゼの決定に従うだけ……だ。 |
ドライゼ | …………。 |
ドライゼ | これより、ニュルンベルク奪還作戦を決行する。 総員、戦闘準備! |
後発隊隊長 | Jawohl! |
主人公 | 【Jawohl!】 |
ドライゼ | 必ずニュルンベルク基地、 そして、ミュンヘンを奪還するぞ! |
──ニュルンベルク基地の付近にて。
ドライゼ | エルメ、ジーグブルート。 準備はいいな? |
---|---|
エルメ | 当然だよ。 Keine Kompromisse……やるからには完璧にね。 |
ジーグブルート | ハッ。ただの兵士なんざ、俺の相手じゃねぇ。 おら、行くぞエルメ。 |
エルメ | こら。口の利き方に気をつけなさい。 |
ライク・ツー | 大丈夫か……? |
音もなく門の中へと入った2人は、
ナイフを使って、門兵を瞬く間に仕留める。
エルメ | よし、気づかれてないね。 ジグ、ドライゼたちに合図を。 |
---|---|
ジーグブルート | へいへい。 |
ゴースト | ……お。ジーグブルートからの合図、だ。 |
---|---|
ドライゼ | よし、私たちも突入──、……っ! |
ただならぬ殺気をいち早く察知したのは、
ドライゼだった。
アウトレイジャーたち | …………。 |
---|---|
ドライゼ | ……来たか。 |
ライク・ツー | 数が多い……! |
ドライゼ | ああ。だが、この程度は想定の範囲内だ。 エルメとジグ、ゴーストと協力し、掃討を── |
アウトレイジャーたち | 殺、ス……。 |
兵士2 | ドライゼ特別司令官! さらにアウトレイジャーが出現しました! |
兵士3 | こちらにも……! 我々は包囲されています! |
ドライゼ | くっ……! |
3方向から接近してくるアウトレイジャーは、
それぞれ10体を超えている。
さらに、どこからともなく集まってきて数を増やし……
その数は増える一方だ。そしてそのすべてが、
〇〇たちへと狙いを定めた。
兵士4 | 嘘だろ、こんなにアウトレイジャーが出るなんて! こんなの、見たことも聞いたこともないぞ……! |
---|---|
エルメ | これは……想定の倍──いや、3倍はいるかな。 俺たち4人でも、対処しきれるかどうか……。 |
エルメ | 少佐の“限界”まで俺が戦えば、 なんとかなるかもしれないけど……。 特別司令官まで銃に戻ったらまずいしねぇ。 |
ジーグブルート | んじゃあ、俺が全部ブッ倒せばいいんだろ。 |
ゴースト | それは、無理……だろ。 |
ジーグブルート | ああ? なんか言ったか!? |
エルメ | こら、ジグ。吠えない。 それで……どうする? ドライゼ。 |
ドライゼ | ……貴銃士4名でアウトレイジャーを食い止めろ。 兵たちは敵拠点の制圧に当たれ! |
兵士たち | Jawohl! |
ジーグブルート | おっしゃ! やるぜェ! |
主人公 | 【自分たちもやろう!】 【アウトレイジャーを倒そう!】 |
ライク・ツー | 了解! 〇〇…… あいつらが来るまで、持ち堪えろよ! |
ジーグブルート | ──クソッ! うじゃうじゃ湧いてきやがって……! |
---|---|
ライク・ツー | 少しは反乱軍の方に行けっての……! マジで、なんで俺たちにしか攻撃してこねぇんだよ! |
エルメ | 考え事はあとだよ。 まずはこの場を乗り切らないと……! |
ジーグブルート | おらおら、どけぇぇぇ! |
エルメ | ──心銃! |
ダンロー | ……っ、く……。 |
主人公 | 【ダンローおじさん!】 【ユリシーズ少佐!】 |
ゴースト | ……このままじゃ、だめだ。 |
エルメ | ユリシーズ少佐の傷がかなり悪化している。 戦いの最中に、俺たちが銃に戻りかねない。 |
兵士1 | ドライゼ特別司令官! 敵の抵抗も極めて激しく、制圧までに時間を要します! |
ドライゼ | …………。 |
ドライゼ | ……やむを得ん。撤退だ。 |
ドライゼが苦渋の決断を下した、その時だった。
アウトレイジャー1 | 殺、ス……! |
---|---|
兵士2 | ぐわぁっ……! |
ドライゼ | ……っ! |
兵士2 | あ、足が……っ! |
兵士1 | くそっ、出血が多い……! すぐ止血するからな! |
兵士2 | う……俺は、この足じゃ動けない……ッ。 戦うにも撤退するにも、お荷物だ。 俺のことは、置いていってくれ……。 |
ドライゼ | (……血……!) |
ドライゼ | (いかん、血に目を奪われた──) |
ドライゼ | (しっかりしろ。俺は大勢の兵たちを任された身。 プロイセンで生まれ、ドイツを統一に導いた 誇り高き銃の貴銃士だろう……!) |
ドライゼ | ……勝手なことを言うな。 |
兵士2 | し、しかし……っ! |
ドライゼ | 止血は済んだな。私が背負おう。 |
兵士2 | そ、そんな、恐れ多い……! うわっ! |
ドライゼ | 振り落とされぬよう、 しっかり掴まっていろ。 |
兵士2 | は、はいっ! |
ドライゼ | 総員撤退! シュトゥットガルトへ撤退せよ! |
ジーグブルート | 撤退だと? 腰抜けが。 俺は俺で勝手にやらせてもらうぜ。 |
ドライゼ | 貴様は……この期に及んで命令に逆らい、 あくまで規律を乱すというのか。 |
ジーグブルート | 俺は、どんな悪条件でも戦い抜いてやる。 そこらの奴らとは格が違うんだって見せてやるよ! |
ジーグブルート | 絶対非道……! |
エルメ | はぁ……まったく、ジグ! |
ドライゼ | ……行くぞ。 奴に構っている暇はない。 |
兵士3 | メディーック! 急いでくれ! |
---|---|
兵士4 | 負傷者は何名だ!? ドライゼ特別司令官たちは無事なのか? |
兵士3 | ああ、無事だ! 特別司令官が背負ってくださっている兵士が重傷だ。 急いで処置をしてくれ! |
ライク・ツー | はぁ……なんとか戻って来れたな。 |
ドライゼ | …………。 |
エルメ | ……今回の作戦は失敗だ。 |
エルメ | まさか、あそこまでアウトレイジャーが多いとは。 これまでの傾向から明らかに外れていたとはいえ、 読みが甘かったね。 |
エルメ | でも、これで終わりじゃない。 仕切り直して、次こそはニュルンベルクを取り戻そう。 |
ドライゼ | …………。 |
エルメ | ……ドライゼ? |
ドライゼ | ククク、クク……ッ! 何が仕切り直しだ……! |
ドライゼ | 今回攻め入った箇所が、ニュルンベルク拠点の弱点だ。 今回の作戦で、俺たちはそれを敵に知らせてしまった! 同じ手は二度と使えない……! |
ドライゼ | 敵の手に落ちたニュルンベルクの守りは 今後ますます固くなり、 俺たちの行く手を阻む……! |
ドライゼ | 今日が最後の好機だったのだ…… それが、こんなことになるなど……! |
ドライゼ | 俺は……。 やはり、俺は……ッ! |
ドライゼ | 俺は、英雄にはなれない……。 ハ、ハハ……ハハハハハハッ……! |
乾いた笑みを零しながら、
ドライゼが地面に膝をつく。
絶対的な指導者である彼が見せる初めての弱気に、
兵士たちは呆然として言葉を失った。
ゴースト | …………。 |
---|---|
エルメ | ──やっと気がついたんだね、ドライゼ。 |
ドライゼ | ……ッ! |
エルメ | そうだよ。君は、英雄なんかじゃない。 本当の君は……血に飢えた、ただの獣だ。 |
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