ドイツ編Ⅰ:第24話~第29話

コメント(0)

第24話:考える鉄

ライク・ツー確かに、昨日訓練した奴らは、
ドライゼみたいになりたいって言って、
すっげー慕ってる感じだったな。
ライク・ツー鬼みたいにキッツいトレーニングも、
ドライゼが黙々とやってる姿を見るから、
自分たちもやらねぇとって気合が入るんだと。
エルメふふ……そうだね。ドライゼは誰よりも自分に厳しくて、
常に研鑽を重ねているから。
兵たちのいいお手本だよ。
エルメ……ドライゼは、食にある種の
楽しみを見出したみたいだけど……
俺はずっと、何を食べてもいまいちピンと来てなかったんだ。
エルメでも、レバー料理だけは、
不思議と食事の手が進むんだ。
エルメレバーは鉄分が豊富だからかな?
銃は金属部分が多いから、摂取することが
プラスになるって感じられるのかも。
主人公【単に、好物なのでは?】
【味が気に入ったのかも】
エルメん……? どういうことかな。
ライク・ツー銃だろうが、今は人に近い肉体を持ってんだ。
味覚もあるし、好き嫌いもあって当然だろ。
ライク・ツー士官学校にいるジョージって奴は、
ハンバーガーが好きでしょっちゅう食ってるぞ。
ライク・ツーああいうの見てると、人も貴銃士も
あんまり変わらねぇなって思うぜ。
エルメ……その考えには、同意できないな。
エルメ人間と貴銃士は違う。
心を持ち行動する人間に対し、銃は鉄の塊に過ぎない。
エルメそして、貴銃士は人と銃のいずれでもない。
「考える鉄」だ。
エルメ戦うために生まれた俺たちには、
未来も幸福も必要がない。
本来は、人のように振る舞う必要も、ね。
エルメ目的を達成するためなら、いかようにも冷徹になり、
感情で揺らぐことなく、ただ敵を正確に撃ち抜く。
エルメ──それが、俺たちドイツの貴銃士だよ。
ライク・ツー……考える鉄、か。
ライク・ツーなるほどな。
お前はそう考えてるわけだ。俺とは違うな。
ライク・ツー銃だろうが鉄だろうが、俺の在り方は俺が決める。
……その先にどんな未来があろうとも、
自分で決着をつけてやる。
ライク・ツーそれが、俺の考えだ。
エルメ……へぇ。君も、変わったことを言うね。

──パァン!

ライク・ツー……今のは、銃声!?
エルメあっちから聞こえたね。……行こう!

ドライゼぐっ……!

銃声が聞こえた方へ
〇〇たち3人が走っていくと、
ドライゼが自身の腕を押さえていた。

その手の隙間から、
ボタボタと血が滴り落ちている。

ライク・ツー何があった!?
ドライゼ突然銃撃を受けた。
ドイツ支部の軍服を着ていたが、見覚えのない顔だ。
捕虜の軍服を奪った、反乱軍の暗殺部隊だと思われる。
兵士1我々護衛を残し、他の兵たちは侵入者を追っています!
必ず捕らえてください……!
エルメ了解。
俺たちで片をつけよう。手伝ってくれるね?
主人公【Jawohl!】

第25話:裏切者

基地内に潜入した暗殺部隊を撃退した後、
ごく少人数での緊急会議が開かれることとなった。

エルメ君たちのおかげで、暗殺部隊を早急に一掃できたよ。
ありがとう。
ライク・ツーそいつはどーも。
作戦は明日だが……怪我は大丈夫なのか?
ドライゼ既にユリシーズ少佐の力で治癒している。
作戦に支障はない。
エルメ問題は……。
兵士1失礼いたします!
兵士2暗殺部隊の侵入を手引きした内通者を発見し、
連行しました!
スパイくっ……!

兵士たちに引きずられるようにして、
ドイツ支部の軍服を纏った1人の兵士が
ドライゼの前に放り出される。

ドライゼは憤怒と失意の表情を浮かべ、
彼を鋭く睨んだ。

ドライゼ貴様……なぜ国や仲間を裏切るような真似をした!
ドライゼ貴様は国を守ることを誓い、軍に入ったはずだ!
それを、なぜ裏切った……!
スパイ……お前の言っていることは、理想に過ぎない!
スパイ本心ではみな、世界帝時代のほうが豊かで
いい時代だったと思っている!
ドライゼ世界帝、だと……?
ライク・ツー……親世界帝派の人間か。
スパイ俺の家族は元々、世界帝軍にいた。
当時は裕福だったが、革命戦争のあと迫害され、
各地を転々として……生活は困窮した。
スパイ俺は、遠い親戚の名前を借りて、
なんとか軍の仕事にありつくことができたが……
俺の稼ぎだけでは、ただ生きるだけが精一杯だ!
スパイそれでも仕方がないと思って諦めていたが、
アウトレイジャーを……あの強兵を従えたなら、
我々はまた世界を支配できる!
スパイそしてあの時代を、再び取り戻せる!
そのために……ッ!
兵士1貴様……! 黙れ、この裏切り者が!
スパイぐッ……!
兵士2俺の家族は、世界帝軍に殺された!
お前たちは当然の報いを受けただけだろうがっ!
兵士3何が豊かでいい時代だ!
俺にとっちゃ、そんなものありゃしなかった!

スパイを取り押さえていた兵士たちが、
激昂してスパイの胸倉を摑み、殴りつける。

ドライゼは、その光景を睨むように見つめていた。
何かの衝動を堪えるように、拳を震わせながら。

兵士1ドライゼ特別司令官!
裏切り者への沙汰を!
兵士2ご命令を!
ドライゼ……!

兵士たちがドライゼに詰め寄った瞬間──
わずかに拘束が緩んだ隙を見逃さず、
スパイが兵士のサバイバルナイフを奪う。

ライク・ツーまずい……!
スパイ兵士死ね! ドライゼ!
ドライゼ…………。

スパイがナイフを投擲しようとした瞬間──
乾いた銃声が鳴り響き、男の頭部に風穴が開いた。

エルメ裏切り者には、死あるのみ。
エルメ……そうでしょ? ドライゼ。

力を失ったスパイの手から、
カランと音を立ててナイフが落ちる。

かつては自らに忠誠を誓った部下の返り血が、
ドライゼの頬を汚した。

エルメニュルンベルクの襲撃も、彼が仕組んだのかもね。
増援が来る前の隙を狙って……。
エルメもう少し情報を引き出してから始末すればよかった。
でも……特別司令官の危機だったから、仕方ない。
ドライゼ…………。
エルメさて。彼の持ち物はすべて見分して、
どの程度情報が漏れたのかを精査しよう。
死体も隅々まで調べてから処分したまえ。
兵士たちJawohl!
エルメ明後日の作戦については、少し変更が必要だね。
でも、作戦前にスパイを始末できてよかったよ。
これで成功率は少なからず上がるだろうし。
ドライゼ…………。
ドライゼ常に……備えを……勝利を……。
エルメドライゼ?
ライク・ツーん……? お前、目が……。

伏せられたドライゼの目はよく見えないが、
〇〇の気のせいでなければ……
わずかに、赤みを帯びているように見えた。

ドライゼ完璧な……してこそ……。
主人公【ドライゼ特別司令官!】
ドライゼっ……!
ライク・ツーお前、さっきからおかしいぞ。
大丈夫か?
ドライゼ……問題ない。
少し、考え事をしていただけだ。
ドライゼ私は報告書をまとめ、作戦を練り直す。
あとの始末をしておけ。
エルメ…………。

去っていくドライゼとすれ違った瞬間、
エルメがうっすらと笑みを浮かべた。

ライク・ツーお前……なんで笑ってんだよ。
エルメいや……少し、楽しみでね。
エルメあの厳格で忠実な軍人のドライゼが、
いつまで自分を保てるか……。
エルメ彼の心の奥底を、見てみたいと思わない?
エルメ……彼の瞳が……深紅に染まる瞬間を。

第26話:作戦前夜

暗殺部隊を手引きしていたスパイの一件を受け、
ニュルンベルク奪還作戦は予定より一日早められ、
明日決行となった。

ドライゼ例のスパイの一件により、我々の作戦が
外部に漏れている可能性が高い。
ドライゼ失敗は許されない状況だ。
時間は限られているが、
各自完璧な備えをしておくように!
兵士たちJawohl!
ドライゼ何か質問はあるか?
ライク・ツーいや、特にないが……。
ライク・ツージーグブルートとゴーストの奴は来ないのか?
作戦の最終確認だってのに。
エルメジグは同じ話を何度も聞くのは時間の無駄とか言って、
来なかったね。
エルメゴーストなら、そこにいるよ。
ゴースト……ふふ。
今度は気づか……なかった、な……。
ライク・ツーうぉっ! お前、もうちょい存在感出せよ……。
ゴースト出そうとして存在感出せたら、苦労……しない。
連合軍伝令兵──失礼いたします。
〇〇殿宛にご連絡です!
連合軍伝令兵フィルクレヴァート士官学校の貴銃士の方々が、
先ほどベルリンに到着されたとのことです!
ライク・ツージョージたち……やっと来たか!
心配させやがって。
エルメよかったね。
うまくいけば、明日の作戦に間に合うんじゃない?
ドライゼとはいえ、彼らを待つことはできない。
作戦が優先だ。
ライク・ツーわかってるって。
ドライゼ明日の開戦まで、敵地の偵察を怠るな!
作戦決行をさらに早める可能性もある。
いつでも出発できるよう準備しておけ!
ドライゼ我々は必ず、この作戦を成功させる!
忌まわしき過去に縋る逆賊どもから、
誇り高きドイツを取り戻すのだ!
兵士たちJawohl!!!

ライク・ツードライゼの奴、いつもの調子に戻ったな。
ライク・ツーエルメは何を考えてるのかよくわからんが……
まぁ、作戦ではちゃんと動くだろ。
ライク・ツーとはいえ、作戦が明日になっちまったのはまずいな。
ジョージたちが、まだ来てないってのに。
ライク・ツー厳しい戦いが続けば、回復なしってのは
相当に無理があるぞ……。
主人公【大丈夫】
【短期決戦を目指そう】
ライク・ツー大丈夫……って言ってもよ。
ちょっと傷、見せてみろ。
ライク・ツー…………。

少し広がった傷からは、血が滲んでいた。
ライク・ツーがわずかに顔をしかめる。

ライク・ツーお前……いや、こうなるのはわかってて、
お前はここに残る道を選んだんだからな。
ライク・ツー俺は、何も言わねぇよ。
ライク・ツー……とにかく、包帯を変えるぞ。
手、貸せ。
主人公【ありがとう】
【いつも助かってるよ】
ライク・ツー……フン。

手当てを終え、ライク・ツーが自室に戻った後……
〇〇は、さっきまで彼が座っていた
椅子の近くに、小さな紙が置いてあることに気づく。

それは、『今晩、2人だけで話がしたい』という
ユリシーズからの短い手紙だった。


ダンロー突然呼び出してすまない。
ダンロー君には……話しておかなければならないことがある。

ユリシーズはそう言うと、軍服の袖を
自らたくし上げた。

ダンロー見ての通り、私の傷はかなり広がっている。
明日の作戦で、命を落とす可能性もあるだろう。
ダンローだから、私が生きているうちに、
どうしても……と。
主人公【ダンローおじさん……?】
【(話って、一体……?)】
ダンロー……君は、なぜ私が君の支援をしていたか、
ずっと知りたがっていたね。
ダンロー私が君をベルリンに呼んだのも……
この話をしたかったからなんだ。
ダンローだが……いざ君に会うと決心がつかなくて、
なかなか言えずにいた。
ダンロー…………。
ダンロー……私は、君のご両親の死に関わっている。
主人公【……両親、の?】
【どういうことですか……?】
ダンローずいぶん昔の話だが……。
ダンロー私は、世界帝軍の強制徴兵地域に住んでいたから、
徴兵によって兵士になった。
ダンロー最初はただの一兵卒だったが、
他に適任者がいなかったのか、
いつしか小隊を率いる立場になった……。
ダンロー……君のご両親は、レジスタンスの中でも、
特に求心力のある人間だったんだろう。
ダンロー世界帝軍の重要施設破壊に関わったことをきっかけに、
彼らは指名手配され、発見次第処刑するようにと
厳命が下っていた。
ダンローそして……。
ダンローある日、私の小隊を含むいくつかの隊が、
別件での任務の際に偶然、君のご両親を含む
指名手配中のレジスタンスを発見した。
ダンロー私たちは……命令に従い、彼らを処刑することにした。
部下に命じて、1人残らず。
主人公【……!】
ダンローその後……隠れ潜んでいる指名手配犯がいないか、
周囲の捜索をしていた私は、
廃墟で震えている子供を見つけた。
ダンロー……それが、君だ。
君が彼らの子だということは、すぐにわかった。
ご両親にそっくりな、意志の強い目をしていたから──
ダンロー「お父さん、お母さん」と泣く君の姿を見て、
私は……人の心を、取り戻した。
そして、自分の罪に打ちひしがれた。
ダンロー……罪のない子供とはいえ、
両親をレジスタンスに持つ子供が1人で放り出され、
その先どうなるか、想像に難くない……。
ダンロー悲惨な行く末を思うと、放っておけなかった。
……いや、それは欺瞞かもしれない。
ダンロー私は自分の罪の重さに耐えられず、
私のすべてを懸けて君を守ることで、
せめてもの罪滅ぼしをしようとしたんだ。
ダンローあまりにも、身勝手な話だろう。
ダンロー私は、君が思っているような立派な人間じゃない。
君に感謝されていいような人間じゃないんだ。
ダンローだから……君は、私のためになんか、
危険を冒さないでくれ。命を懸けないでくれ。
ダンロー今からでも遅くはない。
護衛の貴銃士を連れて、この基地から去るんだ。

第27話:通い合った心

衝撃的なユリシーズの話に、
〇〇は何も言えずに固まった。
しかし、ややあって言葉を絞り出す。

主人公【……それでも、感謝しています】
ダンロー〇〇……?

〇〇は、訥々と語った。
ユリシーズの支援がなければ、
自分は生きてすらいなかったかもしれない。

ユリシーズが両親の死に関わっていたことは
ショックではないと言い切れないが、
彼もまた、強制徴兵された被害者でもある。

それに、これまで手紙を通して、
あまりにもユリシーズに支えられた。
だから、憎むこともできない……と。

ダンロー……君は……。
ダンロー君は……本当に優しく、立派に育った……。

懺悔と歓喜が複雑に混じり合った表情で、
ダンローは声を震わせて呟く。
手紙から感じていた優しさが、今はすぐそばにあった。

ダンロー君の成長を、手紙を通して見守れたことは、
私の人生最大の幸福だった。
ダンロー君が立派に巣立とうとしている今、
私に何一つ思い残すことはないよ。
ダンローだが……君に何かあったら、
私は死んでも死にきれない。
ダンローだからどうか、明日を無事に乗り切ってくれ。
君は、絶対に死ぬんじゃない。
生きて、立派な大人になってくれ。
主人公【自分は、死にません】
【おじさんも、絶対に死なないでください】
ダンロー……〇〇。
主人公【必ず、自分の貴銃士が助けに来ます】

〇〇の言葉に、
ダンローは静かに微笑んだのだった。


〇〇が部屋に戻ると、
そこには真剣な表情をしたライク・ツーがいた。

ライク・ツー置いてあったあのメモ……
やっぱりおっさんからの手紙だったのか。
主人公【……えっ!】
【気づいてたんだ】
ライク・ツーあのおっさん、
前にも一度手紙を置いていっただろ。
ライク・ツーその顔からして……ちゃんと話せたみたいだな。
よかったじゃん。

そう言って立ち去りかけたライク・ツーだが、
出口の前で立ち止まり、振り返る。

ライク・ツー……しばらくは起きてるから、
何かあったら言え。
主人公【ありがとう、また明日】
【おやすみ】
ライク・ツー……おやすみ。

???ははっ、あはははは……!
はじめて、人を、殺した……!
???僕はずっと……心に、獣を飼っていたんだ。
???撃て! 撃て撃て撃て!
???私は戦う! 祖国のために……!
ドライゼ……やめろ。
ドライゼやめろ、やめろ……!
ドライゼ……っ!?
ドライゼ……夢、か……。
ドライゼ(くそっ……、重要な作戦前に……)
ドライゼくっ……!
はぁっ、はぁっ……!

傷が鈍く痛む目元を押さえながら、
ドライゼは低く呻くように言葉を吐き出す。

ドライゼ俺は……番人……。
ドライゼ祖国のために……!
未来の、ために……!

己に言い聞かせるよう、
言葉を繰り返すドライゼの瞳には──

狂気を孕んだ、暗い赤が浮かんでいた。


エルメふふっ……明日の作戦はどうなるかな。
エルメ本当の君の姿が見られるのを、楽しみにしているよ。
……ドライゼ。

 

第28話:ニュルンベルクの戦い1

──作戦当日、14時。

ドライゼあれが、ニュルンベルク基地だ。
我々は、最も警備が手薄な南東の門から攻め込む。
ドライゼ……門にいる見張りは2人。
3交代制で8時に交代したことを確認している。
通常通りであれば、16時まで動きはない。
エルメまずは、別動隊が北側で爆発を起こして、
敵を陽動する。
エルメ見張りたちもそちらへ意識が向くだろうから、
その隙に死角から近づき、2人を制圧。
動きはごくシンプルだよ。
エルメ気を急いて変なミスをしないように、
細心の注意を払って作戦を進めよう。
……いいね? ジグ。
ジーグブルートあ? なんで俺に向かって言うんだよ。
エルメ君が一番危なっかしいからだよ。
ライク・ツー……それより、もう少し待てなかったのか?
ライク・ツー士官学校からの応援は、
昨日の時点でベルリンまで来てる。
もう少し待てば、合流できるかもしれない。
ドライゼ確かに、貴銃士3名が加われば、
大きな戦力となるだろう。
ドライゼしかし、これ以上開戦の時間が遅くなると、
戦いが長時間に及んだ場合、
夜間戦闘になる可能性も高まる。
ドライゼ夜闇の中で、自軍と敵軍、
アウトレイジャーが入り乱れた戦いになれば、
大きな損害を出すことになりかねん。
ドライゼそれに、情報が漏れた可能性を考えて
作戦決行を早めたのに、応援を待っていて
当初の予定通りに戻れば、本末転倒だ。
エルメかといって、作戦を先延ばしにすれば、
それだけ敵はニュルンベルクの守りを固めて
奪還が難しくなってしまう……。
エルメやるとしたら、このタイミングしかないんだ。
ライク・ツーそれは……そうだけど。
ジーグブルートグダグダ言ってねぇで、さっさとやるぞ。
ライク・ツー、てめぇはすっこんでてもいいんだぜ?
ゴースト…………。
ジーグブルートおい、ゴースト。存在感消してねぇで、
お前もなんとか言ったらどうなんだ。
ゴースト……俺は、ドライゼの決定に従うだけ……だ。
ドライゼ…………。
ドライゼこれより、ニュルンベルク奪還作戦を決行する。
総員、戦闘準備!
後発隊隊長Jawohl!
主人公【Jawohl!】
ドライゼ必ずニュルンベルク基地、
そして、ミュンヘンを奪還するぞ!

──ニュルンベルク基地の付近にて。

ドライゼエルメ、ジーグブルート。
準備はいいな?
エルメ当然だよ。
Keine Kompromisse……やるからには完璧にね。
ジーグブルートハッ。ただの兵士なんざ、俺の相手じゃねぇ。
おら、行くぞエルメ。
エルメこら。口の利き方に気をつけなさい。
ライク・ツー大丈夫か……?

音もなく門の中へと入った2人は、
ナイフを使って、門兵を瞬く間に仕留める。

エルメよし、気づかれてないね。
ジグ、ドライゼたちに合図を。
ジーグブルートへいへい。

ゴースト……お。ジーグブルートからの合図、だ。
ドライゼよし、私たちも突入──、……っ!

ただならぬ殺気をいち早く察知したのは、
ドライゼだった。

アウトレイジャーたち…………。
ドライゼ……来たか。
ライク・ツー数が多い……!
ドライゼああ。だが、この程度は想定の範囲内だ。
エルメとジグ、ゴーストと協力し、掃討を──
アウトレイジャーたち殺、ス……。
兵士2ドライゼ特別司令官!
さらにアウトレイジャーが出現しました!
兵士3こちらにも……!
我々は包囲されています!
ドライゼくっ……!

3方向から接近してくるアウトレイジャーは、
それぞれ10体を超えている。

さらに、どこからともなく集まってきて数を増やし……
その数は増える一方だ。そしてそのすべてが、
〇〇たちへと狙いを定めた。

兵士4嘘だろ、こんなにアウトレイジャーが出るなんて!
こんなの、見たことも聞いたこともないぞ……!
エルメこれは……想定の倍──いや、3倍はいるかな。
俺たち4人でも、対処しきれるかどうか……。
エルメ少佐の“限界”まで俺が戦えば、
なんとかなるかもしれないけど……。
特別司令官まで銃に戻ったらまずいしねぇ。
ジーグブルートんじゃあ、俺が全部ブッ倒せばいいんだろ。
ゴーストそれは、無理……だろ。
ジーグブルートああ? なんか言ったか!?
エルメこら、ジグ。吠えない。
それで……どうする? ドライゼ。
ドライゼ……貴銃士4名でアウトレイジャーを食い止めろ。
兵たちは敵拠点の制圧に当たれ!
兵士たちJawohl!
ジーグブルートおっしゃ! やるぜェ!
主人公【自分たちもやろう!】
【アウトレイジャーを倒そう!】
ライク・ツー了解! 〇〇……
あいつらが来るまで、持ち堪えろよ!

第29話:ニュルンベルクの戦い2

ジーグブルート──クソッ!
うじゃうじゃ湧いてきやがって……!
ライク・ツー少しは反乱軍の方に行けっての……!
マジで、なんで俺たちにしか攻撃してこねぇんだよ!
エルメ考え事はあとだよ。
まずはこの場を乗り切らないと……!
ジーグブルートおらおら、どけぇぇぇ!
エルメ──心銃!
ダンロー……っ、く……。
主人公【ダンローおじさん!】
【ユリシーズ少佐!】
ゴースト……このままじゃ、だめだ。
エルメユリシーズ少佐の傷がかなり悪化している。
戦いの最中に、俺たちが銃に戻りかねない。
兵士1ドライゼ特別司令官!
敵の抵抗も極めて激しく、制圧までに時間を要します!
ドライゼ…………。
ドライゼ……やむを得ん。撤退だ。

ドライゼが苦渋の決断を下した、その時だった。

アウトレイジャー1殺、ス……!
兵士2ぐわぁっ……!
ドライゼ……っ!
兵士2あ、足が……っ!
兵士1くそっ、出血が多い……! すぐ止血するからな!
兵士2う……俺は、この足じゃ動けない……ッ。
戦うにも撤退するにも、お荷物だ。
俺のことは、置いていってくれ……。
ドライゼ(……血……!)
ドライゼ(いかん、血に目を奪われた──)
ドライゼ(しっかりしろ。俺は大勢の兵たちを任された身。
プロイセンで生まれ、ドイツを統一に導いた
誇り高き銃の貴銃士だろう……!)
ドライゼ……勝手なことを言うな。
兵士2し、しかし……っ!
ドライゼ止血は済んだな。私が背負おう。
兵士2そ、そんな、恐れ多い……!
うわっ!
ドライゼ振り落とされぬよう、
しっかり掴まっていろ。
兵士2は、はいっ!
ドライゼ総員撤退! シュトゥットガルトへ撤退せよ!
ジーグブルート撤退だと? 腰抜けが。
俺は俺で勝手にやらせてもらうぜ。
ドライゼ貴様は……この期に及んで命令に逆らい、
あくまで規律を乱すというのか。
ジーグブルート俺は、どんな悪条件でも戦い抜いてやる。
そこらの奴らとは格が違うんだって見せてやるよ!
ジーグブルート絶対非道……!
エルメはぁ……まったく、ジグ!
ドライゼ……行くぞ。
奴に構っている暇はない。

兵士3メディーック! 急いでくれ!
兵士4負傷者は何名だ!?
ドライゼ特別司令官たちは無事なのか?
兵士3ああ、無事だ!
特別司令官が背負ってくださっている兵士が重傷だ。
急いで処置をしてくれ!
ライク・ツーはぁ……なんとか戻って来れたな。
ドライゼ…………。
エルメ……今回の作戦は失敗だ。
エルメまさか、あそこまでアウトレイジャーが多いとは。
これまでの傾向から明らかに外れていたとはいえ、
読みが甘かったね。
エルメでも、これで終わりじゃない。
仕切り直して、次こそはニュルンベルクを取り戻そう。
ドライゼ…………。
エルメ……ドライゼ?
ドライゼククク、クク……ッ!
何が仕切り直しだ……!
ドライゼ今回攻め入った箇所が、ニュルンベルク拠点の弱点だ。
今回の作戦で、俺たちはそれを敵に知らせてしまった!
同じ手は二度と使えない……!
ドライゼ敵の手に落ちたニュルンベルクの守りは
今後ますます固くなり、
俺たちの行く手を阻む……!
ドライゼ今日が最後の好機だったのだ……
それが、こんなことになるなど……!
ドライゼ俺は……。
やはり、俺は……ッ!
ドライゼ俺は、英雄にはなれない……。
ハ、ハハ……ハハハハハハッ……!

乾いた笑みを零しながら、
ドライゼが地面に膝をつく。

絶対的な指導者である彼が見せる初めての弱気に、
兵士たちは呆然として言葉を失った。

ゴースト…………。
エルメ──やっと気がついたんだね、ドライゼ。
ドライゼ……ッ!
エルメそうだよ。君は、英雄なんかじゃない。
本当の君は……血に飢えた、ただの獣だ。

コメントを書き込む


Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

まだコメントがありません。

×