??? | ──どういうことだ。 もう一度言ってみろ。 |
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胴元 | ……も、申し訳ございやせん。 鷲ヶ前組の貴銃士に邪魔されまして、このザマです。 |
??? | この不始末をどうするつもりだ。 |
胴元 | ど、どうか、挽回の機会をくだせぇ! |
??? | ……最後の機会だ。 今度こそ失敗は許されないぞ。 |
胴元 | も、もちろんです! 次は必ずや、ご期待に添うてみせますんで……! |
??? | 材料はこの自治区にいくらでも転がっているだろう。 絶望を与えよ。死に追い込め。 そして── |
??? | この国に、災厄を解き放つのだ。 |
胴元 | 仰せのままに……! |
十手 | おはよう、〇〇君。 昨日は波乱の1日だったなぁ……。 |
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主人公 | 【たくさん観光もできた】 【美味しいものも満喫した】 |
十手 | そうだな。 昨日はキセル君の案内のおかげで、 だいぶ日本を知ることができた気がするよ。 |
十手 | まさか、本気の賭博を見ることになるとは、 思いもよらなかったけどな……。 |
主人公 | 【今日はどうする?】 【今日の予定は決めた?】 |
十手 | そうだな……。 できれば、なんだが……。 |
十手 | 今日は1日自由行動だから、今のうちに、 夢に出てきたあの神社を探したい……かな。 |
十手 | ほら、キセル君に目ぼしい神社を 教えてもらったことだし……。 |
主人公 | 【手伝おう】 【一緒に探しに行く】 |
十手 | 〇〇君も手伝ってくれるのか? それはありがたい! |
十手 | ただ……。 キセル君の情報によると、 この界隈だけでも5ヶ所ほどあるらしい。 |
十手 | かなり歩くことになるが、大丈夫かい? |
主人公 | 【もちろん】 【訓練で慣れてる】 |
十手 | ははは、頼もしいなぁ。 さすがは〇〇君だ。 ……お言葉に甘えて付き合ってもらおうかな。 |
十手 | うーむ……色々回ってみたが、 どの神社も違ったな……。 |
---|---|
十手 | もうこれで5つ目か……。 〇〇君、歩き疲れたんじゃないか? ここらで休憩しよう。 |
2人は、神社の境内で休憩を取ることにした。
木陰には涼しい風が吹き、疲れた身体に心地いい。
十手 | ……そうだ。 少しここで待っててくれないか。 さっきそこでいいものを見つけたんだ。 |
---|---|
十手 | すぐに戻るよ! |
しばらく待っていると、
十手は薄茶色の液体の中に
氷が浮いたカップを持って帰ってきた。
十手 | 麦茶だよ。 近くの茶店で振る舞ってたんだ。 疲れた時には、これで喉を潤すに限る。 |
---|---|
主人公 | 【ありがとう】 【香ばしい匂いがする】 |
十手 | ああ、麦茶は焙煎した大麦を煎じて作る茶だからね。 身体にもよくて、 特に夏場の水分補給には重宝するんだ。 |
十手 | しかし……結局、ほぼ半日棒に振ってしまったなぁ。 せっかくの日本だというのに、 〇〇君にはすまないことをした……。 |
十手 | さっきの神社も、朱色の鳥居があって、 松の木があって……でも、どこか違うんだ。 |
十手 | うまく言えないけど、俺にはなんとなくわかるんだ。 あの夢の神社には、まだ辿りつけていない……。 |
主人公 | 【まだ時間はあるし、大丈夫】 【絶対に見つけよう】 |
十手 | ありがとう、〇〇君。 だが俺は……。 |
十手 | …………。 |
十手 | なぁ、〇〇君。 少し聞いてくれるかい? |
十手 | 実は、その……神社探しとは、また別の話なんだが。 ほら、昨日キセル君に言われただろう。 |
十手 | どうにも、 あの時の言葉が引っかかってしまって……。 |
十手鉄砲を盗んだ少年を追いかけて建物に入る。
襖の向こうでは、博打が行われていた──
十手 | ええい、子供とはいえ、このような悪行許しておけぬ! さっそく踏み込んで、彼を── |
---|---|
キセル | 悪行、なぁ。 十手、お前にはそう見えるのかい? |
十手 | な、なに……? |
キセル | 善悪ってもんは曖昧で、簡単に揺らいじまう。 何が善で何が悪か……決めつけるのは危険だぜ? ……もちろん、盗みをしたことは叱らねぇとだが。 |
十手 | 俺は、あの少年を悪だと決めつけてしまったが、 そうじゃなかった……。 |
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十手 | 彼は周りの大人に…… 本当に悪に振り回されているだけの、 哀れな子供だったんだ。 |
十手 | 小児(しょうに)は白き糸のごとし。 ……まだ何色にも染まっていない真っ白な子供を、 黒く染めようとする不届き者がいる。 |
十手 | そういう輩から子供を守るのが、 大人たちの役目ってもんだ。 |
十手 | まして俺は、同心の志を引き継いだ十手── 江戸の人々を守り、真に正義を貫かなきゃならない。 |
十手 | 俺は、あの少年を守ってやるべき立場だったのに、 なんにもできなかった……! |
十手 | キセル君のおかげで事の次第が明らかになったが、 そうでなければ、俺は考えなしに賭場に突入していた。 情けないことこの上ないよ……。 |
十手 | 俺が、前の持ち主みたいな本物の同心だったら、 あの子の事情も、たちどころに見破れたのかなぁ……。 |
十手 | 俺は、立派な同心になりたくてやってきた。 でも……俺は正義を見失ってしまったのだろうか。 |
十手 | いや……本物の正義の心なんて、 最初から持ってなかったのかもしれないな。 |
十手 | しょせんは偽物の同心……ただの道具、十手鉄砲だ。 俺の考える正義は……本当の正義じゃなかったんだ。 |
十手 | ……すまない。 湿っぽい話になってしまったな。 でも、〇〇君もそう思うんじゃないか? |
十手 | 御用だ御用だって騒いでも、 絶対高貴になれない、俺みたいな偽物じゃあ……。 |
主人公 | 【偽物?】 |
十手 | あっ、いや……。 俺は、本物の同心っていうわけじゃないだろう? |
十手 | それに、ちっとも絶対高貴になれやしない。 だから、本物の実力はないのかなって……。 |
十手 | でも、あんなに立派な貴銃士のキセル君だって 絶対高貴になれないっていうんだから、 俺はもう、何もわからなくなりそうだよ……。 |
主人公 | 【絶対高貴には謎が多い】 【十手が悪いんじゃない】 |
十手 | はは……ありがとう、〇〇君。 |
十手 | しかし、同じく絶対高貴を使えない奇銃と言っても、 俺とキセル君はまるっきり違っていて、 凹んでしまうよ。 |
十手 | キセル君は元レジスタンスの貴銃士で、 絶対高貴の力をもって戦い、 革命戦争を勝利に導いた英雄たちの一員だ。 |
十手 | 今は鷲ヶ前組若頭補佐として、 街の人に慕われ、信頼されていて……。 |
十手 | それに、腕っぷしに頼らずとも、 いざこざを収めることすらできる。 |
十手 | こうやって並べ連ねていると、 あんまりにも俺と違ってて、 自分が情けなくなるなぁ……。 |
主人公 | 【これを見てほしい】 【ラッセル教官へのお土産なんだけど……】 |
〇〇は、赤く色づけされた、
木彫りの丸い置物を取り出す。
十手 | へ? これは……だるまか。 ラッセル教官が、君にこれを買うように頼んだのかい? |
---|---|
十手 | ラッセル教官がだるまを欲しがるとは、 なんだか意外だが……。 |
十手 | それで、このだるまがどうしたんだい? |
主人公 | 【だるまについて、いい話を聞いた】 |
土産物屋の店主 | ああ、それはだるまというんだよ。 面白い顔をしているだろ? |
---|---|
土産物屋の店主 | だるまっていうのはね、 達磨大師という立派なお坊さんが由来になってるんだ。 |
土産物屋の店主 | 達磨大師は、9年もの間、壁に向かって座禅を続け、 手足が腐ってしまっても座禅をやめなかったそうだ。 |
土産物屋の店主 | だるまには、達磨大師の 困難や苦労にもくじけない思いが込められているんだよ。 |
土産物屋の店主 | それに──ほら。こうやって転がしても、 だるまはすぐ起き上がるんだ。 |
土産物屋の店主 | 縁起物の、いいお土産だよ。 |
十手 | くじけない思い、か……。 |
---|---|
十手 | ははっ、俺はすっかりくじけてしまっていたな……。 「石の上にも3年」「雨垂れ石を穿つ」とも言う。 |
十手 | まだ貴銃士になったばかりの俺が諦めてしまうのは、 時期尚早にも程があるというものだな。 |
十手 | ……ありがとう、〇〇君。 おかげで元気が出てきたよ。 |
キセル | よっ、お2人さん! 奇遇だな。 |
---|---|
十手 | キセル君……! |
キセル | 神社探しの首尾はどうだい? ……って、その様子じゃあ芳しくなかったみてェだな。 |
十手 | ああ……。 せっかく目ぼしいところを教えてもらったのに、 どこもなんだか違っていてね。 |
キセル | そいつは残念だったな。 だが、日本を出るまで、まだ何日かあるんだろ? それに、神社はまだまだたくさんある。 |
十手 | ああ。だから、時間がある時に もう一度探してみようと思うんだ。 |
キセル | そうかそうか! 頑張れよ! |
キセル | お、そうそう。 歩き疲れたってんなら、近くにいい銭湯があるぜ! |
十手 | ほぉ、銭湯か! 露天風呂はあるかい? |
キセル | おう、露天風呂も蒸し風呂もある! 神社探しもいいが、せっかく日本に来たんだ。 いろんなもんを楽しんで帰れよ。 |
キセル | 旅先でしかできねェ体験ってのは── |
──パァンッ!!
十手 | なっ!? 今のは、銃声……? |
---|---|
主人公 | 【何かあったのかも!】 【行ってみよう!】 |
キセル | チッ……嫌な予感がするぜ……。 |
一太 | う、ぐ……うぅぅう……! |
---|---|
アウトレイジャー | 壊、ス……殺ス……! |
キセル | ありゃあ……一太じゃねェか! |
十手 | それに、アウトレイジャー!? 日本にはいないんじゃなかったのか? |
いないはずのアウトレイジャーの出没に
戸惑った次の瞬間、
それ以上に、頭を混乱させる光景が目に入った。
主人公 | 【一太くんの手から血が……】 【あれは、薔薇の傷……?】 |
---|---|
十手 | なっ……薔薇の傷だと……!? ど、どういうことだ……!? |
アウトレイジャー | 殺ス、殺ス……! |
町民1 | きゃぁぁぁっ! |
町民2 | たっ、助けてくれーっ! |
無秩序に発砲を繰り返すアウトレイジャーの凶行に、
歌舞妓町の住民達が悲鳴をあげて逃げ惑う。
十手 | まずい、とにかくどうにかしないと……! |
---|---|
キセル | 何か策はあるのか? |
十手 | い、いや、何も……! |
キセル | ははっ! 策はなくとも皆を助けようとする、その心意気やよし! 俺も手を貸すぜ! |
キセル | それに──助っ人も来たみてェだ。 |
八九 | 総員、戦闘準備! |
自衛軍兵士たち | はっ! |
十手 | あれは八九君! それに自衛軍も……! こいつはありがたい! |
十手 | これでアウトレイジャーをお縄にできる! だが……一太君を傷つけないようにしないと……! |
キセル | お前ならできるだろ? 十手! |
十手 | ああ! やってやろうとも! |
アウトレイジャー | グァァッ……! |
---|---|
八九 | ……やったか? |
十手 | いや、まだだ! アウトレイジャーに普通の弾丸はなかなか効かない! 絶対高貴か絶対非道でないと……! |
八九 | はぁっ!? |
??? | ……なれば、我らの出番かの? |
八九 | 邑田、在坂! 焼き芋食うのに忙しいから、 来ねぇとか言ってたじゃねーかよ!? |
邑田 | ほっほっほ。少し気が変わったのじゃよ。 ……さて、在坂。やろうか。 |
在坂 | ……了解。 |
邑田&在坂 | ──絶対非道。 |
アウトレイジャー | ウゥ……ッ! |
絶対非道による攻撃を受けたアウトレイジャーは倒れ、
壊れた銃のみを残して消滅していった。
一太 | うっ……! |
---|---|
十手 | おいっ! 大丈夫か……!? |
アウトレイジャーが倒れた直後、一太もまた、
苦しそうなうめき声をあげて倒れてしまう。
十手 | おい! しっかりするんだ……! |
---|---|
十手 | ……っ! 〇〇君、こっちに来てくれ……! |
主人公 | 【これは……!?】 【薔薇の傷が……!】 |
一太の右手にある薔薇の傷から、
茨のツタのように傷が伸び、
首筋にまで侵食している。
キセル | 薔薇の傷が、ここまで酷くなるだと……!? |
---|---|
八九 | うわ、ひっでぇなこれ……。 “あの人”のこと思い出すわ……。 |
キセル | 早く傷を治してやりてぇが……。 |
八九 | 日本に、絶対高貴になれる貴銃士はいねーよ。 |
十手 | くそ……! 俺が絶対高貴になれたら、この子を助けられるのに! |
八九 | ……つーかよ、そもそも変じゃねぇか? |
主人公 | 【どうして薔薇の傷が……】 【アリノミウム結晶は希少なのに】 |
八九 | そうだ。街のガキが触れるようなところに、 あの結晶を置いとくバカなんざいねぇ。 |
八九 | ってことは……。 |
邑田 | ……ふむ。誰ぞ、この童を利用した輩がおるか。 |
在坂 | そう考えるのが合理的だと、在坂は思う。 |
十手 | ……一体誰が、こんなことを……。 |
キセル | ……自衛軍の兄さんたち。 この坊主のことは、鷲ヶ前組で預からせてもらう。 |
キセル | 事件を起こしたとはいえ、 こいつは誰も殺しちゃいねェ! ……まだ、うちの組の手に負える範疇だ。 |
邑田 | 自治区内の出来事ゆえ、それでよかろう。 |
八九 | 報告書とかめんどくせーし、 こっちとしても助かるぜ。 |
キセル | 話が早くて助かる。 この一件、徹底的に調べねェと── |
鷲ヶ前組員1 | キセルの兄貴っ! |
キセル | おう、どうした? |
鷲ヶ前組員1 | 実は……。 |
キセル | …………! |
十手 | どうしたんだ? 何かあったのか? |
キセル | 政の奴が……。 この坊主の父親が……店で死んだとよ。 |
十手 | なっ……! |
キセル | 毒をあおったのか、血を吐いていたらしい……。 組のモンが駆けつけた時には、もう……。 |
八九 | ……昨日見た限りじゃ、 とても死ぬようには見えなかったが……。 |
キセル | 殺しなのか、自分で毒を飲んだのかはわからねぇ。 だが……俺がもっとしっかり見てやってれば……! |
キセル | 畜生っ……! |
怒りと後悔を露わに、
キセルが拳を壁に叩きつける。
キセル | 一太……お前と政に何があったんだ……? お前をこんな目に遭わせたのは、 どこのどいつなんだ……!? |
---|---|
一太 | う、ううっ……。 |
十手 | このままか、この子は長くは持たない……。 早く、絶対高貴で傷を癒してやらないと……。 |
十手 | …………。 |
十手 | 俺は、八九君みたいに 隊を指揮して戦うこともできない。 キセル君みたいな立派な貴銃士でもない。 |
十手 | だが、俺が……! 俺が今、絶対高貴にならなきゃいけないんだ! |
十手 | 八九君、どうか〇〇君を頼む! 先に基地に帰っといてくれ! |
主人公 | 【十手!?】 【待って!】 |
八九 | 行っちまった……。 |
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