??? | ……来たかね、ゴースト。 |
---|---|
ゴースト | 急に呼び出して……なんの用や? |
??? | そちらの状況を確認したい。 ……ドライゼとエルメは、私に疑いを抱いているだろうか。 |
ゴースト | ……上層部に対する不信感はあるみたいやな。 ドライゼが怪我することになったレーゲンスブルクの作戦で、 情報がどっかから漏れてることには確実に気づいとる。 |
ゴースト | アウトレイジャーの不審な動きについて、 調査依頼を出しとるのにこれといって進展がないのも 引っかかっとるみたいや。 |
ゴースト | ……けど、そもそもアウトレイジャーに関しては謎が多いし、 内通者がおるのか敵さんが潜り込んどるのか、 それがどのあたりなのか、まだ見当がついてなさそうやな。 |
ゴースト | まとめると……今のところ、 あんさんがピンポイントで怪しまれてる感じはナシや。 |
??? | そうか。 |
??? | ……ゴースト、指令だ。 〇〇の貴銃士になれ。 |
ゴースト | ……っ!? は……!? |
??? | 〇〇が少数の貴銃士とともにドイツへ来たのは 絶好のチャンス……導きをかける予定だったが、 ドライゼとエルメが張りついていて隙がない。 |
??? | アプローチを変える必要がある。 ……頼まれてくれるな。 |
ゴースト | …………。 |
ミュンヘン奪還作戦へ向けて、
〇〇たちは周辺の地理などについて詳しく学ぶため、
ドライゼたちの案内で会議室へ向かっていた。
ゴースト | あわっはうあっ! |
---|---|
主人公 | 【ゴースト!?】 【危ない!】 |
〇〇たちの目の前で、何かに躓いたらしい
ゴーストが派手に転倒する。
主人公 | 【大丈夫!?】 【怪我は……!?】 |
---|---|
エルメ | まったく……何をしているの、ゴースト。 |
ドライゼ | 鍛錬が足りていないのではないか。 |
ゴースト | う……いてて……。 〇〇、ありがとう……。 |
〇〇が差し出した手に掴まって、
ゴーストはゆっくり立ち上がる。
そしてそのままぎゅっと手を握りしめた。
ゴースト | あんたは……優しいなぁ。 助けてくれたお礼に……パスタでも作る、よ。 |
---|---|
ゴースト | おもろ……面白いギャグコレクションもあるから、 それ聞きながら食べたら……いい。 |
ジョージ | Wow! パスタに面白いギャグだって! 何味のパスタだろ? 楽しみだな、〇〇☆ |
シャスポー | ジョージ、君……誘われてないのに、 当たり前のように参加しようとしてるじゃないか。 |
シャスポー | まあ、警備を手薄にするわけにいかないから、 今回は僕たちも同席するというのが、 了承の返事をする条件として妥当だけれど。 |
ゴースト | そっちの2人もまとめてで……俺は構わ、ない。 |
主人公 | 【ありがとう!】 【それじゃあ、会議のあとに】 |
ゴースト | (よし……!) |
──会議のあと、兵士たちに指示を出すドライゼと別れ、
〇〇、ジョージ、シャスポー、エルメは
食堂へと向かい、エルメ以外はゴースト作のパスタを味わう。
主人公 | 【美味しい!】 【料理が得意なんだ】 |
---|---|
ゴースト | へへ……バジルソース……爽やかで俺も好きなんだ。 口に合ったなら、よかった……よ。 |
ゴースト | たくさんのバジルと、パインナッツ、ニンニク、 チーズ、オリーブオイルをミキサーで混ぜて、 茹で上がったパスタと和えるだけ……簡単なんだ。 |
ゴースト | 今日はオーソドックスなパスタにしたけど、 シュペッツレっていう面白いのもあるから…… 今度はそれ、作ろうか。 |
シャスポー | ……存在感が薄いし、1人でよくわからないことを言って笑ってる 胡散臭い奴だと思っていたけれど……こんな特技があったとはな。 |
ジョージ | 意外でCOOL☆ |
ゴースト | ……褒め、てるのか……? 一応……。 |
ゴースト | ……なあ。 ドライゼとエルメは、時々士官学校に行ってるん……だろ。 学校って、どんな感じなんだ? |
エルメ | そうだね……前線基地には遠く及ばないけれど、 それなりに統率が取れていて、いい教育機関だと思ったよ。 |
ゴースト | そういうことじゃなくて…… 学校生活について聞きたかったん、だけど……。 |
ジョージ | んーっと、勉強とか運動とか、たまにはクッキングとか! あと実験とか……いろんなことを皆でワイワイしてるぜ☆ |
ジョージ | 貴銃士も増えてきて賑やかだし退屈しないよ! 月に何回かはキャンプもするんだ~。 |
シャスポー | キャンプじゃなくて野営訓練だろう。 時には、サバイバル訓練もあるね。 |
ゴースト | へぇ……! いろいろやってるんだな……面白そう、だ。 |
ゴースト | 任務に行くこともある……んだろ? |
ジョージ | もっちろん! イギリスだけじゃなくて、外国に遠征することもあるよな。 |
シャスポー | そうだね、要請があれば急いで出発するよ。 アウトレイジャー相手の戦闘には貴銃士が有効だからね。 |
ゴースト | いいな……。 |
ジョージ | へ? 任務が? |
ゴースト | 全部……だけど、ちゃんと戦ってるのも、羨ましい。 俺は、あんまり戦ったことがない、んだ……。 |
ゴースト | 俺のマスターは、ジグと一緒だから……。 最近はマシになったけど、前はしょっちゅう銃に戻っ……てた。 |
ゴースト | 俺まで絶対非道使うわけにもいかなくて…… そうじゃなくても、俺の銃は特殊だから、 実銃でバリバリ戦う……ってのもできない。 |
シャスポー | 銃の性能に何か問題でも? |
ゴースト | それもあるっちゃある。 一番は……弾薬が貴重で高いせい、だ。 |
ゴースト | 言ってて悲しくなってきた……。 俺、ドイツ支部にいる意味あるん、だろうか……? |
ゴースト | ……俺も、士官学校に行ってみたい……。 エルメの義兄さん、俺も〇〇の貴銃士になるのって、 アリ、だと思う……? |
エルメ | どうかな。 確かにジグと同一マスターだと運用が難しい面はあるし、 悪くはないと思うけれど。 |
ゴースト | 〇〇、あんたはどう思う……? |
主人公 | 【できる限り望みを叶えたいとは思う】 【自分の一存では決められない】 |
ゴースト | そうかぁ……まあ、そうだよなぁ……。 |
ドイツ支部兵士1 | 失礼します! エルメ特別司令官補佐、巡回の兵士が戻りました。 |
エルメ | ああ、ドライゼはまだ立て込んでるだろうから、 俺が報告を聞くよ。 ……君たちはゆっくり食事をしていて。 |
エルメが退出したあと、〇〇は
食堂からひっそりと出て行こうとする
ジーグブルートの姿を見つけた。
主人公 | 【……何してるの?】 【……これから外出?】 |
---|---|
ジーグブルート | ……ん? ああ……まあな。 |
ジーグブルートは声を落とし、
〇〇にだけ聞こえるように言う。
ジーグブルート | ほら、この間言ったやつ。 気の合う……まあ、ダチみてぇなやつんとこに、ちょっとな。 |
---|---|
主人公 | 【そうなんだ】 【気をつけて】 |
ジーグブルート | おう、じゃあな。 |
ジョージ | ちょっと聞こえたけど……もしかして、彼女かな!? |
シャスポー | 下世話な勘ぐりは感心しないな。 ほら、冷めないうちに食事をいただこう。 |
スケレット | 遅ぇぞ~ジーグブルート! |
---|---|
ジーグブルート | 悪ィな、スケレット。 ほら、待たせた詫びだ。 |
ジーグブルートは、サンドイッチが入った紙袋を
スケレットへと投げてパスした。
スケレット | おおっ、やったね♪ ちょうどハラ減ってたんだ~。 |
---|---|
スケレット | 腹ごしらえしたら、いつもの店でも行くか。 |
ジーグブルート | おう。 |
ジーグブルート | (つくづく不思議なもんだ。 毎日苛ついてた俺が、こんなに穏やかな気分で…… いや、それどころか楽しく過ごせてるとかよ) |
ジーグブルート | (あの日、こいつに出会ってから、 やっと歯車が噛み合って、上手く回りだした気がする) |
──再召銃された日のこと。
廃墟の屋上で1人、瓦礫を放り投げては撃ち抜くという手遊びを
無心で繰り返していたジーグブルートのもとに、
その貴銃士は現れた。
??? | 楽しそうな遊びしてるじゃん、俺もやっていい? |
---|---|
ジーグブルート | てめぇ……何者だ。 |
??? | これ、投げた破片を撃てばいいんだろ? 何発当たるかな~……よーし、ほいほいっと! |
スケレットが破片を2つまとめて投げる。
続いて放たれた弾丸は、見事に破片を打ち砕いた。
??? | おお、ナイス~! これは俺の勝ちかな、ブハハッ! |
---|---|
??? | おーい、降参か? 次はそっちの番だぜ。 |
ジーグブルート | …………。 |
ジーグブルートは同じように2つ破片を投げ、
それを撃ち抜いてみせた。
??? | お、やるじゃん。 んじゃ、連続成功を競うってことで☆ |
---|
何度か交互にその遊戯を繰り返し──一瞬の隙をついて、
ジーグブルートは隠していたナイフを男の首に突きつけた。
ジーグブルート | おい、そろそろ吐けよ。 ……お前はなんだ。 |
---|---|
??? | ワァーオ、かっこいい! |
ジーグブルート | これ以上お遊びに付き合うつもりはねーぞ。 もう1度だけ聞く、お前は誰だ。 |
スケレット | 俺ぇ? ……俺の名前はスケレット。 トルレ・シャフに召銃された貴銃士だ。 |
ジーグブルート | そうか、俺は連合軍の貴銃士だ。 ……殺し合うか。 |
スケレット | 待て待て! |
スケレット | そんなつもりで来たわけじゃないっての! 俺は確かに、トルレ・シャフ側のマスターに召銃されたぜ。 |
スケレット | でも、俺は……そこから逃げたいんだ。 |
ジーグブルート | 逃げたい……? どういうことだ。 |
スケレット | 俺はさ、一生懸命頑張って人の役に立ちたいわけ。 でも、誰もそんな俺を見てくれねぇんだ。 |
スケレット | あいつらはだーれも、そんなこと求めちゃいない。 俺は……貴銃士は、ただの使い捨ての道具だ。 |
ジーグブルート | …………。 |
スケレットは、自分の腕をぎゅっと強く握りしめる。
ジーグブルートがそこへ視線を向けると、
苦笑しつつ袖を捲くってみせた。
腕には、線のような赤黒い傷が幾重にも走っている。
鞭で打たれたあとのようだ。
スケレット | 役立たずへの罰だ、とか言ってさぁ。 治療されないまま……どれくらい経ったっけ。 これくらい平気なんだけどさ。 |
---|---|
ジーグブルート | ……マスターが気に食わねぇんだろ。 絶対非道になれるんなら、それでマスターを殺しちまえよ。 |
スケレット | ……!? |
ジーグブルート | んだよ、その顔は。 |
スケレット | いや、かっけーなって! そんなこと考えたこともなかったけど…… 信念を貫いてマスターを切るっての、いいかもな。 |
スケレット | ……なあ、もっとあんたのこと教えてくれよ。 こんなとこに1人でいるってことは…… 単独行動が許されてる、強くて立場があるスゲーやつか、やっぱ。 |
ジーグブルート | 俺は……。 |
ジーグブルート | 誰よりも成果はあげてる。間違いねぇ。 |
ジーグブルート | けど……あいつらは命令違反だのなんだの、 くだらねぇことばっかり抜かして俺の力を認めやしねぇ……。 |
スケレット | おいおい、マジかよ。 |
スケレット | なんだぁ……どこも一緒だな! 急に親近感湧いてきたぜ。 |
スケレット | なーなー、俺の話聞いてくれよ。 高性能って期待されて、制式採用も順調に進むはずだったのに 軍のお偉いさんどもの謎の事情で急にキャンセルだぜ? |
スケレット | 振り回された挙げ句、制式採用を逃した銃になっちまって ふざけんなよって感じだっての。 |
ジーグブルート | ……! |
スケレット | まあ……銃は性能がすべてじゃねーんだよな。 銃が評価されるかされないかってのには、運がデカい。 運が悪けりゃ、いくら性能がよくても全部台無しだ。 |
ジーグブルート | 運……。 |
スケレット | だからさ、あんたも悪くないんじゃなーい? 悪かったとしたら、それはあんた自身じゃなくて、運の方だ。 |
スケレット | はーあ、やってらんねぇよな! |
ジーグブルート | そうか……運……。 |
ジーグブルート | ……くくっ、ははは! まったくだ……! |
ジーグブルート | (妙な気分だ……そんで、変な奴だ、こいつ。 逃げてきたつってもトルレ・シャフの貴銃士だってのに、 初対面で……これまで会った誰より話がわかる) |
ジーグブルート | (通じる部分が多いんだろうな……。 こんなに自然に話ができたのは、初めてだ) |
ジーグブルート | (なんせ、日頃関わりがある奴らって言ったら、 駄目な奴を見るような目を向けてくるムカつく野郎どもと、 ビビってるか煙たがってるかみてぇな連中ばっかりだ) |
ジーグブルート | (俺を誰より認めていたマスターは…… 俺が絶対非道で命を食い潰して──……) |
スケレット | いやー、びっくり。 俺、あんたとはなんか、めちゃくちゃ気が合いそうだ。 |
スケレット | なあ、また会おうぜ! 連合軍とかトルレ・シャフとか関係ねぇだろ? お互い、陣営に居場所がないときた。 |
スケレット | そんで、シンパシーもバッシバシ! あんたとなら、自分自身のままでいられる気がするんだ。 |
スケレット | ただのスケレットと、ただの……あれ? そういやまだ名前聞いてなかった! |
ジーグブルート | …………。 ジーグブルートだ。 |
スケレット | ジーグブルート! よろしくな! |
ジーグブルートはスケレットが差し出した右手を無視して、
踵を返した。
ジーグブルート | もう会わねぇよ。……じゃあな。 |
---|---|
スケレット | …………。 |
──スケレットと出会った翌日、
ジーグブルートは再び廃墟の屋上にやってきた。
そこではすでに、スケレットが待っていた。
スケレット | よっ! なんだよ、やっぱり来てくれたじゃーん! |
---|---|
スケレット | 一応来てみてよかったぜ☆ |
ジーグブルート | (……俺はどうして来ちまったんだ) |
スケレット | なーなー、ジーグブルート。 俺の行きつけのパブに行こうぜ。案内するよ! |
スケレット | ここにはなーんもないしさ。 うまい酒とつまみがあるとこでゆっくり話そう。 |
ジーグブルート | ……まあ、いいぜ。少しなら。 |
スケレット | やったね♪ |
スケレットとジーグブルートは、夜の街へと繰り出した。
チンピラ1 | ……おい! いってぇな! どこ見て歩いてんだよ! |
---|---|
ジーグブルート | あ? てめぇがぶつかってきたんだろうが。 |
チンピラ2 | んだと? 兄貴に怪我させといてンだよその態度は! |
スケレット | 怪我ァ? |
チンピラ1 | あー、いってぇなぁ。 治療費に慰謝料……誠意見せてもらわねぇと。 |
スケレット | ……クッ、ブハハハ! 雑魚はぶつかっただけで肩でも外れんのぉ? |
思い切り馬鹿にした口調と表情で言うスケレットに、
2人はにわかに気色ばむ。
チンピラたち | てめぇ……!! |
---|
スケレットは、殴りかかってくる男たちを難なく避ける。
スケレット | 怪我ってのはなぁ……こういうのを言うんだよ! |
---|---|
チンピラ2 | す、すびばせんでした……。 |
チンピラ1 | こいつで勘弁してください……。 |
スケレット | ブハハハハ! これが誠意ってやつかぁ。 ありがとなー☆ |
差し出された札束を受け取ったスケレットは、
自分の懐へと仕舞う。
ジーグブルート | ……おい。 |
---|---|
スケレット | え、何? 半分いる? どうせパブでぱーっと使っちまうし、 ちまちま数えて分けるの面倒だからいいだろ? |
ジーグブルート | そういうことじゃなくて……いや、いい。 |
スケレット | お、話がはやーい! ……どうせこいつらはこれまで散々こんなことしてきたんだ。 これで懲りれば被害もなくなっていいだろ? |
ジーグブルート | そうだな。 |
スケレットの案内で、ジーグブルートは地下にあるパブに入った。
スケレット | 俺たちの出会いにィ……かんぱーい! |
---|---|
ジーグブルート | 乾杯。 |
瓶ビールをコツンとぶつけ合わせ、
2人は一気に中身をあおった。
スケレット | かーっ、うまい! 次はどのビールにしよっかな~♪ |
---|
ジーグブルートとスケレットは何本ものビールを開けていく。
ジーグブルート | それでよ、あの木偶の坊が……。 |
---|---|
スケレット | ムカつくことは酒でぜーんぶ流しちまおうぜ。 ほら、飲め飲め~! |
スケレットは途中から蒸留酒やワインも飲み、
夜も深まってきた頃、ぐでっとカウンターに突っ伏した。
スケレット | うー……。 |
---|---|
ジーグブルート | おいおい、てめぇはそんなもんか? |
ジーグブルート | ……おい、大丈夫かよ。 |
スケレット | おーけぇ……。 |
ジーグブルート | ……こりゃダメだな。 おい、ここで寝んな。 肩貸してやるから、歩け。家はどこだ。 |
スケレット | やさしーなぁー……じぐぶる……。 |
ジーグブルート | ったく、勝手に名前変えんじゃねぇ。 |
半分眠りかけているスケレットからなんとか道を聞き、
その通りに歩いていくと、
ごく普通のアパートにたどり着いた。
スケレット | ここの2階……カギぁ……帽子の中……。 |
---|---|
ジーグブルート | ……トルレ・シャフってのは、 こんなアパートメントに住んでるのか? |
スケレット | 任務の拠点……で……。 マスターは出張で……しばらく帰ってこねーから……。 |
鍵を開けて入ると、室内は殺風景ながらも散らかっていた。
家具はベッドと椅子くらいで、床には酒瓶やゴミが散乱していた。
スケレットをベッドまで運ぼうとしたジーグブルートは、
床に置いてあったビールの瓶を蹴飛ばしてしまった。
ジーグブルート | げっ! 中身入ってたのかよ……! |
---|---|
ジーグブルート | うぁ……最悪だ……。 拭くものはどこだ……! |
スケレット | くかー……すぴー……。 |
スケレットをベッドに放りだし、
ジーグブルートは軽く掃除を始めた。
ジーグブルート | こんなもん、か。 はぁ……ったく、疲れた。 |
---|---|
ジーグブルート | ふぁ……眠ィな。 少し休んでから帰る……か……。 |
ジーグブルート | ……! やべぇ、朝か!? |
---|---|
ジーグブルート | エルメとドライゼの野郎にバレたらまずい……! |
スケレット | ふぁ~~……おはよ……。 んだよ、そんなに慌てて。 |
ジーグブルート | 基地に帰るんだよ! あいつらにバレる前に! |
スケレット | ブハハハ、真面目ぇ! 散々文句言っといて、ちゃんと帰るのか。 |
ジーグブルート | うるせぇ! お前だって逃げたいって言っといて、 この部屋に戻ってんじゃねぇか。 |
スケレット | ま、そーだけど。 しばらくマスターいないし、使えるもんは使っとこーって。 |
スケレット | じゃ、またな~。 |
ジーグブルート | ……おい。俺のこと、あいつらに余計な報告すんじゃねぇぞ。 いいな。 |
---|---|
門兵 | は、はい……! |
ジーグブルート | はぁ……朝帰りになっちまうとは、ミスったな……。 けど……、悪くねぇ気分だ。へへっ。 |
──数日後。
ジーグブルート | んだよ、エルメ。 |
---|---|
エルメ | 呼び出された理由、君だってわかってるでしょ。 勝手に基地を抜け出して飲み歩いているそうじゃないか。 ほら、手を出して。鞭3回だよ。 |
ジーグブルート | ……っ、チッ! |
エルメ | 君はどうして規律を守って、 冷たい鉄として落ち着いた行動ができないのかな。 |
ジーグブルート | ……もうたくさんだ。 |
エルメ | 何? |
ジーグブルート | いい加減にしろ、クソが! |
エルメ | ……っ! |
ジーグブルートはエルメを突き飛ばし、部屋を出る。
そのまま基地から飛び出した。
スケレット | ……あれ? ジーグブルート? |
---|---|
ジーグブルート | おう、邪魔してるぜ。 |
スケレット | なんだよ、どうした? ……っていうか、部屋が綺麗になってる!? |
ジーグブルート | 汚すぎたから勝手に掃除したぜ。 レバーケーゼサンドも作ったが、食うか? ほら。 |
スケレット | お、美味そ~! もーらいっと! |
スケレット | ……それ、どうしたんだ? |
スケレットはジグの右手の甲を指さす。
そこには鋭い爪で引っかかれたように赤く腫れていた。
ジーグブルート | ……勝手に抜け出した罰だとよ。 |
---|---|
スケレット | 鞭はいてーよな~。俺は慣れっこだけど。 |
ジーグブルート | ……お前も大変だな。 |
スケレット | まあな~。クズばっかでやんなっちゃうよ。 ビール飲もーっと。 |
スケレット | っぷはァ! そうだ、気晴らしにひと暴れしにいく? |
ジーグブルート | 街か? |
スケレット | んーにゃ、アウトレイジャーをぶっ殺しにいくんだよ。 人間じゃあ俺らの相手にならないし、 あいつら相手の方がスカッとするだろ! |
ジーグブルート | お前……一応トルレ・シャフ側だろ。 敵に塩送るような真似していいのかよ。 |
スケレット | トルレ・シャフとかどうでもいいってわかってるだろ? それに、ブッ壊してぇ気分なんだ。 なんでもいいからよ! |
スケレットの案内でやってきた場所には、
十数体ものアウトレイジャーがうろついていた。
ジーグブルート | こんなに……。 |
---|---|
スケレット | 撃ちまくろうぜ──絶対非道! |
ジーグブルート | ……絶対非道。 |
アウトレイジャー | ウゥゥ……! |
スケレット | よっしゃ、もういっちょ~! ブハハハ! |
ジーグブルート | 横取りするんじゃねぇ、俺の的だ! |
ジーグブルート | (血が沸騰するみてぇだ……! 力を認めあってる奴と、存分に戦う…… それがこんなにいいもんだとは……!) |
スケレットとジーグブルートは
次々にアウトレイジャーを倒していく。
アウトレイジャーがいなくなれば移動して、
新たな標的を探し……いつしか、夜が明けていた。
ジーグブルート | ふ……はははッ!! いい夜だったぜ! |
---|---|
スケレット | だな! |
スケレット | ……なあ、ジーグブルート。 俺たちは強いし、それに見合った成果を出そうとしてる。 なのに、見下されてこき使われて……間違ってると思わねぇか? |
ジーグブルート | ……ああ、間違ってる。 |
スケレット | だよなぁ! この世界は狂ってやがる! |
スケレット | ……俺たち2人でいつか、 狂ってるこの世界をひっくり返してやろうぜ。 |
スケレットが拳を差し出す。
ジーグブルートは、それに自分の拳をぶつけた。
ジーグブルート | (俺の居場所はここなんだ……こいつの隣が……俺の居場所!) |
---|
まばゆい朝日が、笑い合う2人を照らした。
そして現在──
〇〇たちに見送られて、
スケレットと合流したジーグブルートは夜の街を歩いていた。
スケレット | うめー! やっぱ、ジーグブルートの作るサンドイッチは最高だな! |
---|---|
ジーグブルート | だから、いちいち大げさなんだよ。 ……で、今日は何するよ。 |
スケレット | ああ、それなんだけどな。 ちょうどおもしれぇものを見つけたんだ。来いよ。 |
スケレットに連れて行かれた先でジーグブルートが目にしたのは、
アウトレイジャーだった。
ジーグブルート | なんだよ、アウトレイジャーじゃねぇか。 |
---|---|
アウトレイジャー | オレは……オレ、は、負け……ね……! 誰に……も……負け……タク……! |
ジーグブルート | (ん……? なんだ? 普通のアウトレイジャーとは違う……?) |
スケレット | ぶはは! 負けちゃってるけどね、あばよ! |
スケレットの銃弾がアウトレイジャーを撃ち抜いた。
アウトレイジャー | コンナ、ハズジャ……! |
---|---|
ジーグブルート | なんだったんだ、今のアウトレイジャーは。 やけにハッキリ喋りやがるな。 |
スケレット | あいつはな、『変化中』のやつ。 たまにいるんだよなぁ。 |
ジーグブルート | 変化……? |
スケレット | そ。貴銃士からアウトレイジャーへな。 |
ジーグブルート | ……!? |
ジーグブルート | アウトレイジャーってのは、貴銃士のなりそこない…… 貴銃士の失敗作みたいなもんなんじゃないのか? 貴銃士がアウトレイジャーになるって……どういうことだよ。 |
スケレット | トルレ・シャフではこういう実験をしてるんだ。 マスターが持つ薔薇の傷が悪化して死ぬ直前、 その貴銃士はアリノミウム結晶に支配された状態になるんだって。 |
---|---|
スケレット | 意思が強いやつだと、アウトレイジャーに堕ちきれずに しばらくの間、中途半端に自我が残った状態なんだけどさ。 それを過ぎたら完全にアウトレイジャーになるんだと。 |
スケレット | そうなったら、もう戻れない。 破壊するしかなくなる。 絶対高貴で銃に戻しても、二度と召銃できないっぽいよ。 |
ジーグブルート | は……。 んなこと、ありえるのかよ……。 |
---|---|
ジーグブルート | ……いや、待て。明らかにおかしい部分がある。 俺のマスターはこれまで5人死んでるんだぞ。 なのに俺はどうしてアウトレイジャーになっていないんだ? |
スケレット | さあ……? マスターは実は死んでなかったとか? |
ジーグブルート | まさか・・俺は絶対非道を使いまくって、マスターが死んで……。 そのたびに、確かに俺は銃に戻ってる! |
ジーグブルート | …………。 |
ジーグブルート | (だが……そういえば、死体をこの目で見たことはないな) |
スケレット | まーとにかく、貴銃士ならみぃーんな、 ああなっちまう可能性があるってのが トルレ・シャフの結論らしいぜ。 |
スケレット | ほら、ドイツ支部のドライゼって貴銃士も、 アウトレイジャーになりかけたんだろ? |
スケレット | たまたま近くに絶対高貴になれる貴銃士がいたから、 マスターの傷を癒やして元に戻れたらしーけど。 |
ジーグブルート | あ? なんの話だ? |
スケレット | は? 知らねぇの? |
スケレット | お前、ドイツ支部の貴銃士なんだろ? こないだの大規模な戦闘の時って聞いたぜ。 |
ジーグブルート | ……知らされてねぇ。 ドライゼがアウトレイジャーになりかけた……? あいつが……? |
ジーグブルート | はは……俺に知られたくなくて黙ってたってわけだ。 |
ジーグブルート | 俺には偉そうなことを散々言っておいて、 自分はアウトレイジャーに……っ。 |
ジーグブルート | はは、はっははは!! |
ジーグブルート | やっぱりあいつ、出来損ないじゃねーか! あっはっはっは!! |
スケレット | それをお前に知らせねぇのも、 自分でも知られたら恥ずかしーって思ってるんだろうなぁ? |
ジーグブルート | ああ、違いねぇ! こいつはとんだ笑い話だ。くくっ……! |
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