第16話:逃避

ジーグブルートは基地近くの森を抜け、
街を彷徨い、路地裏に力なく座り込んだ。

ジーグブルート…………。
ジーグブルートふざけんな……ふざけんなよ!
ジーグブルート結局……全部ムダだったんじゃねぇか!
俺の戦果も、死んだマスターたちも……
全部全部、無意味ってことかよ!
ジーグブルートあいつらは……俺自身のことなんて、見やしねぇ……。
ジーグブルートくそ……酒だ……酒……!!

ジーグブルートが向かったのは、
スケレットが住むアパートだった。

スケレットただいまー……って、あれぇ?
なんだよ、また来たのか。
スケレットうーわ、部屋荒れてんねぇ。
暴れたわけ?
ジーグブルート部屋が汚いのはいつものことだろうがよ……。
スケレットブハハ! そりゃあたしかに。
ジーグブルート……おら……お前も飲めよ……。
スケレットいいぜ~、いくらでも付き合ってやるよ。
カンパイ☆
スケレットっていうか、今日は慌てて帰らなくていいのかよ。
マジメなシンデレラちゃん?
ジーグブルートうるせぇ……。
つーか、マスターの出張はしばらくかかるんだろ?
スケレットそうだけど?
ジーグブルートあのよ……。
しばらく……ここにいていいか?
スケレット…………。おう、いいぜ~。
んじゃ、とりまビールから始めるか!
ジーグブルートおう。

ジーグブルートとスケレットは、
浴びるように酒を飲んで夜を明かした。


──翌日。

スケレット……んあ?
ジーグブルート起きたな。飯食うか?
スケレットいや、頭いてーからいいや……。
スケレット……あれぇ?
部屋が綺麗になってる!?
ジーグブルートいつもが汚すぎるんだよ。
……それに……昨日は悪かったな。
スケレットえ~?
たまにはああいう夜も必要だぜ!
ヤなことは吐き出さねぇとな。
スケレット話聞いただけの俺でもイラッときたっての。
人間って本当に勝手だよなぁ。
勝手に判断して、評価して、レッテル貼って。
ジーグブルートまったくだ。
スケレットなあ、昨日は『しばらく』って言ってたけどさ、
ずっとここいいていいぜ。
ドイツ支部なんて出てきちまえよ。
スケレットお前の居場所は向こうじゃない……
俺はそんな気がしてる。
ジーグブルート……ああ、そうだな。
とりあえず、いられるだけいさせてもらうか。
スケレットそうしろよ!
……さーて、今日はちょっと働くか。金ねーし。
ジーグブルート……仕事か?
そう言えばお前、昼間は何してんだ?
スケレットじゃあ、俺の仕事見る?
ついてこいよ。

スケレットに連れられて、ジーグブルートは路地裏にやってきた。
路地裏には酔っ払いが横たわっている。

スケレットあいつなんかよさそうだな。
スケレットおい、おっさん。
酔っ払い……うぐっ!

スケレットは酔っ払いを殴って気絶させ、
そのまま肩に担ぎ上げて近くに停車したトラックに放り込んだ。

ジーグブルート何してんだ?
スケレットマスターの仲間に届くんだと。
こいつを社会の役に立ててやるんだよ。
スケレットこいつみたいに社会からあぶれて、
消えても誰も気づかないような人間にも、
ちゃんと有効な使い道があるんだって。
ジーグブルートいや、それって誘拐だろ。
スケレット治安維持だって。
スケレットああいうやつは、放っておけばいつか犯罪をおかす。
それを未然に防ぐために、俺が働いてるってワケ。
スケレットそれにこれ、すげーカネもらえるんだわ。
お前も一緒にこの街の平和を守ろうぜ。
スケレットそれでさ、稼ぐだけ稼いだら一緒に逃げるんだ。
俺たちを縛ったり、痛めつけたりするやつらがいない場所によ!
ジーグブルートそれは……!
ジーグブルート……考えとく。
スケレット……そっか!
スケレット…………。

第17話:失踪

ミュンヘン奪還作戦まで3日。
ドイツ支部ではジーグブルートが基地に戻らず、
大きな騒ぎになっていた。

エルメまったく……今回ばかりは厳しいよ……。
ドライゼ奴がミュンヘン奪還作戦までに帰らない場合、
重大に任務放棄になり、不名誉除隊処分は免れない。
ジョージそれって、貴銃士の場合どうなるんだ?
マスターごと追放なワケないし……。
ドライゼ……廃棄処分だ。
ジョージええっ!? そんな!
ドライゼ戦力となりうる存在を外に放り出すわけにはいかない。
やむを得ない判断だ。
ドライゼとはいえ……そうなるのは、俺たちとて本意ではない。
今ならまだ無断欠勤で済む。なんとか戻してやりたいが……。
シャスポー大規模作戦を控えている現状で、
君たちに説得に行け、なんて言えないしね。
エルメ……そう。
俺たちが優先すべきは、作戦の遂行と成功だから。
主人公【自分が探しに行く】
【ジーグブルートのことは任せて】
ドライゼしかし……。
いや、あなたを止めても無駄だろうな。
ただ、護衛は必ず連れて行ってくれ。
シャスポー僕たちがついている。
〇〇、絶対に僕たちのそばから離れないでね。
ジョージ約束だからなっ!

〇〇たちはジーグブルートを探すため、
近くの街までやってきた。

シャスポーすみません、この男を見ませんでしたか?
街の人ああ、この人なら行きつけのパブで見かけるよ。
もう1人、いつも男前の連れがいるはずだぜ。
街の人でも、最近は見かけてないな。

パブの店員士官学校の学生さんがこんなところに来るとはね。
……ああ、うちの常連だよ。
パブの店員それ以上のことは知らないな。
お客さんの詮索はしない主義なんだ。

ジョージうーん……なかなか見つからないな。
主人公【諦めちゃいけない】
【捜索範囲を広げよう】
シャスポーでも、ミュンヘン奪還作戦は3日後だ。
……しかも、作戦前日にはミュンヘンに向けて移動するはず。
ジョージジーグブルートを見つけるのは、そこがリミットか……。

〇〇たちは街に1泊し、
翌日もジーグブルート捜索を続けることにした。


──ミュンヘン奪還作戦まで2日。
〇〇たちは地道に目撃情報を集め、
ある路地裏へたどり着く。

シャスポーあ、あそこ!
ジーグブルート…………。
主人公【ジーグブルート!】
【基地に戻ろう!】
ジーグブルートあ……?
シャスポー君のことを、ドライゼもエルメも心配している。
この間はいろいろとタイミングがよくなかったけれど、
改めて話した方がいい。
ジーグブルートそりゃ、ありがたいお節介だ。
……てめーに何がわかるんだよ。
ジーグブルート俺は帰らねぇ、とっとと失せろ。
ジョージ待ってくれ!
今なら脱走じゃなくて、無断欠勤で済ませられるって!
オレたちと戻ろうぜ。なっ?
ジーグブルート今回穏便に済んだところで、その先に何がある?
ジーグブルート……あの報告書を見てわかった。
あいつらは、俺がどれだけ力を示そうが認めない!
そんな奴らに認めてもらおうと必死になるなんて馬鹿げてる。
ジーグブルート今まで必死に戦ってきた仕打ちが、これだ!
成果を上げたところで認められないのは、もう懲り懲りだ。
ジーグブルート俺は……俺のいるべき場所を見つけた。
もう、基地には戻らねぇよ。
ジーグブルートじゃあな。
主人公【待って!】
【話をしたい!】
ジーグブルート話す機会がこれまでなかったわけじゃねぇ。
でも今に至ってる。
……そういうことなんだよ。
ジーグブルートお前らには……余計な手間かけさせちまったな。

ジーグブルートは足早に去ってしまった。
覚悟を決めている様子にそれ以上何も言えず、3人は立ち尽くす。

シャスポー〇〇……だめだ。
彼にはきっと……もう、どんな言葉も届かない。

〇〇たちを、にわかに降り始めた雨が濡らした。

第18話:決別

ジーグブルート……はは、ははっ!

〇〇たちと置き去りにしたジーグブルートは、
天を仰いで大笑いをした。

ジーグブルートそうだ……最初からこうすればよかったんだ!
爽快だぜ、ははは……はははっ!!
ジーグブルート俺はもう戻らねぇ。
あんな軍とは──あんな人間どもとは、おさらばだ!

スケレット……なあ、ジーグブルート。
俺たちは強いし、それに見合った成果を出そうとしてる。
なのに、見下されてこき使われて……間違ってると思わねぇか?
ジーグブルート……ああ、間違ってる。
スケレットだよなぁ! この世界は狂ってやがる!
スケレット……俺たち2人でいつか、
狂ってるこの世界をひっくり返してやろうぜ。

ジーグブルート(スケレット……俺は決めた!
お前の隣こそ、俺の居場所だ!)

ジーグブルートはスケレットのアパートに急いだ。
玄関を開けると、そこは──もぬけの殻になっていた。

今朝まであったはずの家具が消えて、
何もないまっさらな空き部屋になっている。

ジーグブルート……は? 部屋番号……は、合ってるよな。
ジーグブルートなんだよ、これ……。
スケレット? どこだ、スケレット!

ジーグブルートはアパートを飛び出した。
近くに停まっているトラック脇に、スケレットが佇んでいる。

スケレット…………。
ジーグブルートおい、スケレット!
部屋が……どういうことだ!?
スケレットんー?
あ、お前か。
スケレットここ、引き上げることになったんだ。
楽しかったぜ、バイバイ!
ジーグブルートなんだよ、バイバイって……この間、考えておくって言っただろ。
あれなら答えは決まったぜ。
俺はお前についていく。
ジーグブルート一緒に仕事しよう。
それで、いつか一緒に遠くに……!
スケレットんー……そういうの、もういいわ。
ジーグブルートは?
スケレットだから、もういいって。
スケレットお前と遊ぶの、飽きちったなー。
だってさぁ……。
スケレットお前、つまんねぇんだもん。
ジーグブルートは……!?
いや、たしかにこの間は煮え切らねぇ返事したけど──!
スケレット……あ~、もうめんどくさ。
あのな、あれもこれも全部嘘なんだわ。
スケレット面白そうなやつだと思ったけど、
お前は結局認めてほしいだけ。
スケレット承認夜級こじらせて、全部まわりが悪いって喚いてる
かまってちゃんのガキと一緒だよ。
ジーグブルート嘘……?
スケレットそ、嘘だよ。ぜーんぶ、嘘!
友情ゴッコ、いい暇つぶしにはなったわ。
気づかないとか馬鹿だね~。
ジーグブルート…………、……っ!
スケレット最後に1ついいこと教えてやるよ、ジーグブルート。
スケレットお前が殺したっつってぐずぐず引きずってる、元マスターたちな。
……全員、生きてるよ。
スケレットお前は殺してない。よかったなぁ!
それじゃ、あばよ~。
ジーグブルート……は?
ジーグブルートは、なんだよ……
……意味が……わかんねぇよ……。

呆然と立ち尽くすジーグブルートに、
冷たい雨が打ちつけるのだった。

 

第19話:応援の到着

──ミュンヘン奪還作戦まで、あと1日。
〇〇たちはインゴルシュタット仮設基地に戻り、
兵士たちとともにミュンヘンへ向けて移動を始めた。

よりミュンヘンに近いペルンバッハの仮設基地で、
応援の貴銃士たちを待つ。

しばらくすると、予定通り、フィルクレヴァート士官学校から
ミュンヘン奪還作戦に参加する応援の貴銃士たちが到着した。

主人公【みんな、来てくれてありがとう】
【長旅お疲れ様】
マークスマスターッ! よかった無事で!!
会いたかった!!!
ライク・ツーうるっせ……。
十手まあまあ!
しばらく会えていなかったし無理もないよ。
心配だったしね。
タバティエールそうだな。
前線近くの拠点に滞在って聞くとどうしてもな。
グラースま、健康そうで安心したぜ。
……なんか、3人とも辛気臭い顔してるけど。
シャスポー…………。
ドライゼ諸君、今回のドイツ支部への協力、感謝する。
〇〇の指揮のもとで共闘してほしい。
エルメ〇〇たちも余計な手間をかけたね。
それで、ジグは……。
ジョージ見つけたんだけど……。
主人公【連れ戻せなかった】
【彼を説得できなかった】
ドライゼ……そうか。
エルメ仕方がないね。
脱走兵として指名手配して、見つけ次第不名誉除隊処分にする。
シャスポーそんな……。
ゴースト残念……だけど、俺は少し気が楽に……
ゴーストうっ……!?
ジョージゴースト!?
どうした、具合悪いのか!?
ゴーストこの感じ……ちょ、っと……まずい、かも……。
ゴーストぐぅ……はぁ……はぁ……。
これ、たぶん……マスターの傷が、進行してる……ぞ。

仮設基地の周辺が騒然とする。
怒号と銃声が聞こえた。

マークスなんだ……!?
エルメ状況報告を!
ドイツ支部兵士1は、はいっ!
それが……ジーグブルートさんです!
ドライゼ何……!
ジーグブルートなぜ……認メない……俺ヲ、認め……ろ!
シャスポーあれは……まずいな。
ライク・ツーおい、あいつのマスターはどこだ!?
エルメインゴルシュタット仮設基地に待機している。
ここから車を飛ばしても20分くらいはかかるよ。
主人公【急いで治療しないと!】
【まずい……!】
ジョージマスター、任せてくれ。オレが行く!
絶対高貴が必要だろ!?
シャスポーアウトレイジャーが出るかもしれないし、僕も行くよ。
仮設基地のことはだいたい頭に入ってるしね。
彼のマスターの居場所は? 見取り図があればくれ!
エルメ彼がいるのは──……

エルメが、ジョージとシャスポーに
ゴーストとジーグブルートのマスターである
兵士の居場所を伝える。2人は揃ってうなずいた。

主人公【任せたよ】
【気をつけて】
ジョージ&シャスポーうん!

2人はインゴルシュタット仮設基地へ急ぐ。
〇〇と残った貴銃士たちは、
ジーグブルートと対峙した。

ジーグブルートドライゼ……エルメ……俺ヲ……俺はァ……!
グラースどうする?
全員で制圧するか。
ドライゼ……いや。
ドライゼジーグブルートは俺に任せてくれ。
……もしも危うくなった時は……頼む。
十手ドライゼ君……?
ライク・ツー絶対高貴で破壊するならまだしも、抑えようとしてんのか?
無茶だぞ……!
主人公【ドライゼに任せよう】
【ジーグブルートを助けて!】
ドライゼ……できる限りの手を尽くすと約束しよう。
ドライゼジーグブルート……貴様、何をしている!
ジーグブルートオ、オォォォ……!

第20話:受け入れる覚悟

ドライゼ絶対高貴!
ドライゼ俺の心銃を受けてみろ──ジーグブルート!
ジーグブルートウゥッ……!
グラースあ……! 直撃したぞ!

ドライゼの心銃を受けて、倒れこんだジーグブルートのもとに
ドライゼが迫る。そして、胸倉をつかみ上げた。

ドライゼアウトレイジャーなどに呑まれるな!
ジーグブルート! しっかりしろ!
ジーグブルートダマ、れ……!

ジーグブルートがドライゼを殴り、
ドライゼもまたジーグブルートを殴り返す。

ドライゼこの……! 目を覚ませ!
ジーグブルート俺、ヲ……嘲笑う……ナ!!
どいつもこいつも、馬鹿ニ……しやがって!
ドライゼ……誰がお前を嘲笑った?
ジーグブルート欠陥ダノ、なんだの……。
必死に戦ウ俺をバカにしてたんダ、ロ……!!
俺は、知ってるんだぞ……!!
ドライゼ……違う。
貴様のあまりに勝手な振る舞いは問題視されていたが、
戦果を馬鹿になどしていない!
ジーグブルート嘘ダ!! ソレモ、嘘だ……!
ドライゼ自分と事実を受け入れろ、ジーグブルート!
……お前の問題点はそこだ!
ドライゼ自分に自信がないから、他者の言葉をまっすぐ受け取れず、
すべてに対して穿った見方をする!
ジーグブルート……あ、んだと……!?
ドライゼ誰よりもお前を認めていないのは、お前自身ではないのか!?
ジーグブルート俺は……俺は……ァ……!

その時、ジーグブルートの身体が淡く光を発した。

タバティエールおい、見ろ! あれは……!
十手ジョージ君たちが、彼のマスターを治療したんだ!
ジーグブルート…………。
ジーグブルート俺は……どこで間違えちまったんだ。
エルメ……ジグ。
エルメドイツ支部がここまで早くミュンヘンに迫れたのには、
ジグと……犠牲になったマスターたちの貢献が少なからずある。
エルメ褒めたらますます単独の勝手な行動が増えると考えて、
それをきちんと伝えようとしなかった。
……ごめんね、ジグ。
ジーグブルートな……!?
ドライゼジーグブルート、聞け。
ドライゼ……お前はやり直せる。お前ならできる。
ジーグブルート…………。
ジーグブルート……フッ。

ジーグブルートの姿が消え、
銃がごとりと音を立てて地面に落ちた。

エルメジーグブルートの銃を回収して。
ミュンヘン奪還作戦は予定通りに実行する。
ドイツ支部兵士1はいっ!
タバティエール……あれ、そういえば、もう1人の貴銃士は……?
グラースそうだ、さっきの影が薄いやつはどうした?
あいつも同じマスターなんだろ。
十手さっきから姿が見えない……銃がどこかに落ちているかも。
ドライゼ作戦準備を急ぐ必要があるため、人員はあまり割けない。
手が空いている者でゴーストの銃の捜索を。

〇〇たちも手伝って、ゴーストの銃を探す。


しばらく経った頃、ゴーストの本体であるDG11が発見された。

エルメどこから見つかった?
ドイツ支部兵士1はい。それが……牢の中に落ちていまして。
十手牢に!?
エルメアウトレイジャー化する危険を察知して、
自分から牢に入ったんだろうね。
十手なんと……彼は、たった1人で耐えていたんだね。
気づけずに申し訳ない……。
十手ゴースト君の分まで、俺たちが頑張らないと!

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