オーストリア編:第26話~第30話

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第26話:カールの行方

───勲章授与が終了したあとは、
会場内で懇親の時間が設けられる。

ローレンツよし、行こう。
表向きMr.ザラは俺のマスターでもある。
衆人環視の状態ならば、無視されることはないはずだ。
シャルルヴィルこんにちは、カールさん、ザラさん。
素晴らしい式典でしたね。
ザラ滞りなく進行でき、カール様もお喜びだろう。
マークスそうか? 嬉しそうな顔じゃないが。
カール…………。
カール勲、章……汝の功績、を……。
シャルルヴィルカールさん……?
シャルルヴィル(様子がおかしい。
眠そうって感じではないけど……意識がぼんやりしてる?)
ザラカール様。
カール…………。
ザラカール様は具合がよろしくないようだ。
急ぎヴァイスブルクへ戻り、侍医に診察を頼むように。
上級使用人かしこまりました。

同行していたカール付きの使用人が、
彼を会場から連れ出そうとする。

マークスおい、待て。
まだマスターが話してない。
マークスつーか、あんたも昨日のこと知ってるだろうが。
しらばっくれたところで、
俺たちは『あれは夢だった』とか思わねぇぞ。
上級使用人……カール様の侍従として、昨夜のことは当然把握しております。
過激派組織の犯行と思われるテロ未遂事件については、
ヴァイスブルク宮殿衛兵と警察で捜査中です。
主人公【過激派組織の犯行……?】
【テロ未遂事件……?】
マークスあんた、何言ってんだ。
テロでもなんでもなくて、カールが───
ザラこれ以上カール様の足止めをするのであれば、
イギリスからのゲストといえど尊重しかねる。
……衛兵。
衛兵はっ。
皆さま、カール様はお帰りになります。
お話はまたの機会とし、ここはお引き取りください。
シャルルヴィルでも、ボクたち、カールさんが心配で……!
ザラでしたらなおさら、引き留めるのはおやめいただきたい。
それとも、名誉の場での醜聞をお望みか?
シャルルヴィル……!

金鷲勲章授与式典に集まった人々が、
カールはじめ貴銃士やそのマスターたちが何か揉めているのかと、
密かに視線を向けている。

シャルルヴィル……お大事に。
あとでお見舞いに行かせてください。
ローレンツカール様のご様子について、
俺にもあとで報告を入れてくれ。
ローレンツ……今後も不調が続くようであれば、
連合本部審議官の恭遠・グランバード氏に協力を要請し、
原因の解明に取り組むことも視野に入れるよう進言する。
ザラ…………。
上級使用人……かしこまりました。

───その後、〇〇たちは、
ヴァイスブルク宮殿別棟の客室へと戻った。

シャルルヴィルローレンツさん、どうだった?
ローレンツ駄目だ……。
カール様はお休みになっているの一点張りで通してもらえない。
ローレンツMr.グランバードの名前や連合本部への報告をちらつかせれば
多少は牽制できるかと思ったが……。
シャルルヴィルカールさんは体調不良じゃなくて疲れて寝てるだけ、
ってことにして、時間稼ぎするつもりみたいだね。
マークスのんびりしてると、士官学校に戻る日になるぞ。
帰国予定日はあさってだ。
ローレンツ……!
青年は……青年は、自己の力不足に打ちのめされている。
だから、すがるしかない……!
ローレンツ今の俺が頼りにできるのは、君たちしかいない。
どうか、カール様のために手を貸してほしい……!
主人公【もちろん!】
【カールさんを放っておけない】
シャルルヴィル〇〇ならそう言うと思った。
あんな状態のカールさんを残して士官学校には戻れないよ。
さあ、作戦会議をしよう!
ローレンツありがとう……恩に着る……!
マークス宮殿にトルレ・シャフの奴らが出たし、
使用人も政府の奴らも、兵士たちも信用ならない。
……カールを連れ去るのが手っ取り早いんじゃないか?
シャルルヴィルうーん……さすがにそこまでの強硬手段を取ると、
国際問題になって〇〇の立場が悪くなっちゃうよ。
最後の最後の手段だね。
シャルルヴィルもしカールさんを奪取するなら、
それ相応の理由があったんだって証明できないと、
またオーストリアに連れ戻される可能性もあるし……。
マークスとりあえず、居場所だけは把握しておきたい。
部屋にいる様子だったのか?
ローレンツいや……不明だが、おそらくいらっしゃらないだろう。
俺たちがカール様と接触しないように、
どこか別の部屋へ移されているのではないかと思う。
マークス……イギリスの城でスナイダーを探し回ったことがあったが、
部屋が800くらいあるとかで、すげぇ大変だったぞ。
ローレンツウィンズダム宮殿ほどではないが、
ここヴァイスブルク宮殿にも数百の部屋がある。
ローレンツふむ……ことは急を要する。
探し出すよりも、カール様を隠している連中を慌てさせ、
自ら出てくるように仕向ける方が早いか。
マークス出てくるように? そんなことできるのか?
ローレンツああ。
まだ検証が乏しいが、今こそ発動する時だ。
俺の研究の成果である───
ローレンツ最終兵器βを!
主人公【さ、最終兵器べータ?】
【それはどういう……?】
ローレンツ最終兵器のプロトタイプの効果は、
先日Mr.マークスも体感しただろう。
マークスん……? なんのことだ?
ローレンツ語尾にピョンを付けてしまう装置のことだ。
効果は抜群だったではないか!
マークスあのヘンテコな装置のことか!
あれがなんの最終兵器になるって言うんだよ。
ローレンツプロトタイプでは、脳の特定の部位に働きかけることで、
人為的に催眠にかかりやすい状態にし、
語尾にピョンをつけずにはいられないようにしていた。
ローレンツβではさらに効果を強力にし、
ああいった軽度の暗示に留まらず、
認識の逆転すらも可能となったのだ……!
シャルルヴィルええっと……?
まだよくわからないんだけど、その装置を使って何をするの?
ローレンツいい質問だ、Mr.シャルルヴィル。
ずばり答えよう。
ローレンツ───モルモット1号ことMr.ベルガーを、
絶対高貴に目覚めさせるのだ!
マークス&シャルルヴィルはっ!?

第27話:認識逆転装置

ローレンツようこそ、我が第二研究室へ……!
シャルルヴィル第二なんてあったんだ……。

ローレンツが3人を案内したのは、宮殿本館3階の一室だった。
檻が運び込まれており、
その中ではベルガーがアルパチーノと戯れている。

マークスそういえば、あいつのことを忘れていた。
檻に戻されたんだな。
ローレンツああ。俺の計算通り、
モルモット1号は食糧庫で睡眠薬入りのコークを飲み、
寝入っていたところを衛兵に確保されたと報告を受けている。
ローレンツふっ……またしても俺の理論が証明されてしまったというわけだ。
ははははっ……!
ベルガークソメガネ!
てめぇ、何しに来やがった!!
アルパチーノキィ……!
ローレンツ「何をしに来た」か……。
よくぞ聞いてくれた、Mr.ベルガー!
ベルガーゲッ……!
また意味わかんねぇことするつもりだろ!
アルパチーノキィ、キィ……!

アルパチーノはベルガーを庇うように、檻の前に出る。

主人公【チーズ食べる?】
【ドライバナナは好き?】
アルパチーノ……チー!

アルパチーノは〇〇の手から食べ物を受け取ると、
すぐには食べることなく、ベルガーのところへと持っていった。

ベルガーありがとなー、アルパチーノ!
半分こして食おうぜ!
マークスすごいな、その白ネズミ。
飼い主よりも賢そうだ。
ベルガー俺は飼い主じゃねぇ。
アルパチーノと俺はトモダチだもんなー!
アルパチーノチチッ!
シャルルヴィルすごい……人の言葉がわかってるみたいだね。
本当に賢いなぁ。
ローレンツ───青年は隠し切れない歓喜と興奮、緊張に指先を震わせた。
いよいよこの日が来たのだ。
ローレンツ俺を信頼し、カール様が直々に託してくださったミッション……
絶対高貴と絶対非道の深淵解明!
俺は研究の末、1つの結論にたどり着いた。
ローレンツともに、貴銃士が用いる強力な力であるからして、
絶対非道は絶対高貴に変換できるはずである、と……!
ベルガーじゃあなぁ〜アルパチーノ。
また夜に遊びに来いよ!
アルパチーノチー♪
シャルルヴィルねぇ、ローレンツさん。
そもそもなんだけど、彼を絶対高貴にさせてどうするの?
カールさんを見つけることに繋がる?
ローレンツ計画は実にシンプルなものだ。
モルモット1号が絶対高貴に目覚めたら、檻から解き放つ。
そして、自由を謳歌───すなわち、好きに暴れてもらう。
シャルルヴィルええっ!?
ローレンツモルモット1号の脱出は、度々起きているとはいえ一大事。
おまけに彼が絶対高貴を使っているとなると、
天変地異が起きたに等しい。宮殿内は大混乱に陥るだろう。
ローレンツカール様に危険が及ばないよう外部へ移動したり、
そうでないにしても、カール様の秘匿に関わっている連中が、
様子を見に出てくるのは間違いない。
マークス出てくるように仕向けるってのはそういうことか。
ローレンツ方がー……。
カール様がまた、アウトレイジャーと変わっていても……。
絶対高貴ならば、あれを鎮めることができるのだろう?
シャルルヴィル……うん、そうだよ。
ローレンツ俺は……いまだ、絶対高貴になることができない。
だから……俺の絶対高貴を願う気持ち、カール様を想う気持ちも、
モルモット1号に託したいのだ。
マークス&シャルルヴィル…………。
シャルルヴィルでも、解き放っちゃっていいの?
宮殿がもっとめちゃくちゃになりそうだけど……。
ローレンツカール様のためならば許容範囲内だ。
それに、モルモット1号が暴れるのは稀有なことではない。
諦めをもって受け入れられるだろう。
シャルルヴィルそれでいいんだ……。
ローレンツモルモット1号よ! 歓喜の声を上げるがいい。これから君は、
『己がふるう力は絶対高貴なのだ、そうであるべきだ』と
強く認識するようになる。
ローレンツ絶対高貴と絶対非道は対称的な力であり、
その根幹は同じであると仮定した場合───

ローレンツは装置を用意しながら熱弁するが、
興奮のあまり早口で、専門用語なども含まれるため、
何を言っているのか詳細は不明だ。

マークスローレンツ、あんたの話は難しい上に長すぎる。
試験の問題によく書かれているように、
60文字以内で端的にまとめろ。
ローレンツくっ! つまり……これから行使するのは、
絶対非道ではなく絶対高貴なのだと脳が強く認識すれば、
自ずと出力される力はそうなるはずだということだ!
シャルルヴィルええー……? 本当に……?
マークスハッ……!
その装置を使えば、俺も絶対高貴になれるってことか!?
マークスすごいぞ、マスター!!
大発明だ!!
主人公【なんだか危なそうな予感が……】
【そのままのマークスがいい】
主人公【なんだか危なそうな予感が……】
→ローレンツ「俺の理論が正しければ、危険はない。
まだ、実証はされていないが。」

【そのままのマークスがいい】

→マークス「マ、マスター……!
うぅ……複雑だ……。でも、嬉しい……のか?
俺は……。」
ローレンツさあ、モルモット1号!
この装置をかぶり、高貴なるMr. ベルガーとなるのだ!

ローレンツが躍るようなステップで檻の前に進み出る。
しかし、肝心のべルガーは漫画に夢中になっており、
一切視線を向けない。

ベルガー……んぁ?
今忙しいから、あとで気が向いたらな〜。
ローレンツなっ……! 漫画を読むのをやめたまえ、モルモット1号。
これはカール様を救うためであり、
我ら貴銃士の未来を変える重大な実験なのだぞ……!
ローレンツモルモット1号! 装置をかぶりたまえ!
さあ、さあさあさあ!!!!
ベルガーあぁ゙っ!? こっち来んじゃねぇ!!

ローレンツは、コードがついたヘルメットのような装置を手に
ベルガーに迫る。その異様な勢いに、ベルガーはおののき、
近くに転がっていた空き瓶を投げつけた。

ローレンツふっ……モルモット1号が手近なゴミを投げるのは
想定の範囲内だ。
ベルガーうるせぇー!!!
ローレンツごふっ!!

ベルガーが投げた『美しい言葉100選』の本が、
ローレンツの額を直撃する。

その衝撃でのけぞったローレンツの手から装置がすっぽぬけ、
くるくると回転しながら宙を高く舞い───
見事に、ローレンツの頭へと着地した。

ローレンツうわっ!?

装置で視界が覆われてしまったローレンツは、
バランスを崩して倒れてしまう。

彼が手をついた先には不運にも、
装置から伸びるコードの先端───スイッチがあった。

ローレンツほぎゃっ!!

第28話:陶酔

ローレンツほぎゃっ!!
シャルルヴィルローレンツさん……!?
だ、大丈夫……?
マークスすげぇ音がしたな……。
マスター、俺を止めてくれてありがとう。
使っていたら故障するところだった。
ベルガーあひゃひゃひゃ!! ザマーみろ!!
ローレンツ………………。
シャルルヴィルねぇ、本当に大丈夫なの……?
病院、じゃなくて、マスター……は誰かわかんないし、
〇〇なら治療できるかな……?
主人公【とにかく状態を確認してみる】
【必要そうなら治療してみる】

〇〇たちはローレンツに駆け寄り、 装置を慎重に外す。

マークスおい、あんた。頭は大丈夫か?
シャルルヴィル合ってるけどその聞き方はちょっと……!?
ローレンツさん、ボクたちがわかる?
痛いところはない?
ローレンツああ……素晴らしい……!
ローレンツ絶対非道……!!
一同……えっ?
ローレンツMr. ベルガー……。
君が持つ絶対非道の力は、なんと美しいのだろう!
ベルガーうぇっ……!?

ローレンツは、花瓶に生けてあった花を取り出すと、
手早くラッピングしてベルガーへと差し出す。

ローレンツこちらを、Mr.ベルガー。
心ときめく素晴らしい力への称賛を込めて、薔薇を捧げる。
どうか俺に、君の絶対非道の輝きを見せてくれないか?
ベルガーああ!? んだよお前……。
これまでもキモかったけど、もっときめぇ……。
マークスマスター……俺には、ベルガーの方がまだまともに見える。
何が起きてるんだ……?
ローレンツ出し惜しみはしないでほしい。
さあ、見せてくれ! 君が行使するあの素晴らしき力を!!
絶対非道を!!!
ベルガーうひぃっ! ゾッて鳥肌立った!
ち……近寄るんじゃね───!!!
クソメガネ! キモメガネ!
ローレンツ君ならできる! 君しかできない!
いざ解き放て! 崇高なる非道な力を!!
そしてカール様の発見に寄与するのだ……!
ベルガーぎゃああああああ──────!!
ベルガー寄るなっつってんだろ!!
───絶対非道ォ!!
ローレンツああっ! 素晴らしい……絶対非道!
なんとしてもカール様を見つけ、
絶対非道の魅力をお伝えせねばっ!!
ローレンツ待ってくれ!
Mr.ベルガー!!
主人公【本当に認識が逆転してしまった……!】
【絶対非道信者になってしまった……!】
シャルルヴィルええっと……認識逆転装置の実験としては成功でいいのかな。
でも、どうやったらローレンツさんは元に戻るんだろう……。
マークスしばらく放っておくしかないんじゃないか?
それか、もう1回あの妙な装置を使うかだ。
逆転から逆転すれば元に戻るだろう。
シャルルヴィルうーん……あの装置危なそうだし、
あんまり使わない方がよさそうだよね……。
マークスなら放っておこう。
カールを探す気があるのは変わらないようだしな。

───ピピッ!

シャルルヴィルあれ? 今の音は?
マークスこの機械から聞こえたぞ。

3人が機械に近づくと、付属のプリンターが作動して、
数枚の紙がプリントアウトされる。

マークス……なんだ?
何かのグラフみたいだが。

紙には、数十にわたる項目についての棒グラフが印刷されていた。
ところどころに、グラフが長く伸びている項目がある。

シャルルヴィルナトリウム、カリウム……なんとか酸……?
難しい単語がたくさん書いてあるね。
主人公【チョコレートの分析結果だ!】
【多く含まれている成分はなんだろう】
マークスあいつ、 チョコレートの分析は忘れてなかったんだな。
けど……見たことのない単語が多くてよくわからない。

〇〇たちは、薬品に関する本を探し、
多く含まれている成分名について調べてみる。

マークスあった!
睡眠薬に使われる成分だと書いてある。
シャルルヴィル副作用に、悪夢、眠気が残る、めまいやふらつきがあるね。
カールさんの症状と一致してるよ。
シャルルヴィルやっぱり、カールさんは睡眠薬を飲まされてたんだ……!

 

第29話:暗躍するのは誰か

3人は改めて作戦会議をすることにして───
盗聴を完全に避けるため、外へやってきた。

主人公【睡眠薬について考えよう】
【誰が何のために薬を盛っていたんだろう】
シャルルヴィル眠らされる……あっ!
マークスどうした、シャルルヴィル。
シャルルヴィルカールさんがアウトレイジャー化して暴走したのは、
昨夜が初めてだってローレンツさんが言ってたよね?
シャルルヴィル昨夜が初めてだったかもしれないことがもう1つある。
……カールさんが、睡眠薬を飲まなかった。
ボクたちが、ナイト・チョコレートをすり替えたから。
マークス……!
睡眠薬は、カールが暴走しないようにするためってことか?
マークスだとしたら、薬を盛っていた犯人は、
あいつがアウトレイジャー化することがわかっていたのか……?
シャルルヴィルそうかも。
それなら、カールさんが地下室にいたことの説明もつくよ。
マークスだが……わけがわからないな。
アリノミウム結晶はものすごく高価なんだろ。
なのに、マスターを殺す気満々っつーか……。
シャルルヴィルうん。
それに、犠牲になったマスターが多すぎることも気になる。
シャルルヴィルマスターに命の危険があるから死刑囚を選んだ……
っていうより、命を落としても問題になりにくいから、
死んでしまうこと前提で死刑囚を使ってる感じがするよ。
シャルルヴィル高価なアリノミウム結晶を使って、
遠回しな死刑執行をしている……なんてことはなさそうだし、
何をしようとしてるんだろう。
マークスとりあえず、トルレ・シャフは関わってるだろ。
スケレットとガンマ……鞭の奴らが出たからな。
マークスそれと、あの謎の貴銃士。絶対高貴になれるヤツ。
シャルルヴィルカールさんを持ち去ったあの貴銃士を追おうとしたボクらを、
鞭の2人が邪魔しに入った感じだったよね。
ってことは、トルレ・シャフとあの貴銃士は繋がってる……?
シャルルヴィルあれ……だとしたら、カールさんのマスターが
たくさん亡くなってる理由がますますわからなくなったな。
シャルルヴィルだって、絶対高貴になれる貴銃士がいるなら、
亡くなるほど傷が酷くなる前に癒せばいいのに。
やっぱり、トルレ・シャフとは無関係なのかな……。
主人公【謎の貴銃士と透明な結晶の関係も気になる】
マークスああ……フランスに現れた時に、
例の透明な結晶を拾ってたような気がするんだよな。
シャルルヴィルあの結晶は、薔薇の傷を完治させた時に、
出たり出なかったりするっていう話だったよね。
シャルルヴィル今のところ……貴銃士がアウトレイジャー化して、
そしてマスターの傷が完治した時に出てるみたいだ。
でも、それならロジェさんの時もあった可能性が高いよね。
シャルルヴィルただ気づかなかっただけなのか、他にも要因があるのか……
まだよくわからないな。
マークス今回は、カールがアウトレイジャーになってるし、
あの貴銃士も来ていた。
フランスの時と状況が結構似ているな。
シャルルヴィルってことは、ボクかあの貴銃士が
カールさんのマスターの傷を治したら、
あの結晶が出てきたのかもしれないね。
主人公【結晶関連で目的がある可能性は?】
マークスん……?
どういう条件で透明な結晶が出るかの実験ということか?
シャルルヴィルカサリステみたいに、あの貴銃士やトルレ・シャフも
結晶の研究や検証をしたくて、いろいろ試しているとか……。
それか、結晶の入手自体が目的なのかも。
マークスなるほどな……。そっちが目的なら、
囚人がどうなろうと構わないということか。
シャルルヴィルむしろ、カールさんをアウトレイジャー化させるために、
積極的に傷を悪化させてたかもしれない。
じゃなきゃ、30人も亡くなったりしないはずだよ。
マークスそれは俺も気になっていた。
俺たち現代銃の貴銃士が絶対非道を使うと、
マスターの薔薇の傷は急速に悪化する。
マークスだが、呼び覚ました貴銃士が絶対高貴になれないだけなら、
傷はそんなに急に悪化はしないはずだろう?
なのに、あいつのマスターは死にすぎだ。
シャルルヴィル確かに……。 薔薇の傷が少しずつ悪化して、
疑心暗鬼になって人が変わっちゃったっていうのは、
カールさんの最初のマスターとロジェさんで共通してる。
シャルルヴィルでも、それ以外で言うと、結構違いがあるんだよね。
ロジェさんの傷は、死に至るほど酷くはなかったし。
シャルルヴィル量産銃と一品銃、歴史の長さも、
ボクとカールさんじゃ全然違うから、比較は難しいけど……。
それにしたってマスターの消耗が大きすぎる。

カール僕は……絶対高貴になれない。
貴銃士の姿をしているだけの、力の抜け殻さ。

カール要するに……僕は死刑執行人というわけだ。
誰が言い出したのかは知らないが、
“死神皇帝”とはお似合いの名だね、はは。

シャルルヴィルカールさんは死神なんかじゃない。
誰かに、死神に仕立て上げられたんだ、きっと。
シャルルヴィルでも……今の話は全部、ボクたちの推測に過ぎない。
カールさんたちを助けるには、もっと証拠がないと……!
主人公【……時間が足りない】
【帰るまでにどうにかなるかな……】
シャルルヴィル金鷲勲章授与式典は終わっちゃったもんね。
明後日の朝にはフィルクレヴァートに戻る予定だから、
その前になんとかしたいけど……。
シャルルヴィル何をどうしたら問題解決なのかもよくわからないし、
かといって先延ばしにしたら、色々知りすぎちゃったボクたちは
もう二度とオーストリアに入れないかも。
主人公【トルレ・シャフの関与の証拠が掴めたら……】
【介入するための確たる理由が必要だ】
シャルルヴィルうん……!
シャルルヴィルカールさんをわざとアウトレイジャー化させてたり、
マスターを死なせたりしているのがトルレ・シャフなら、
ボクたちがカールさんをさらったって責められない。
シャルルヴィルできそうなこと……それは。
本当のマスターの居場所を見つけること……!
そして、囚人がいる場所は……。

第30話:マークスたちの作戦

───〇〇たちが作戦会議をしている頃、
ヴァイスブルク宮殿の一室にて。

カール……うぅ……。
カールここ、は……?
僕は、また寝ていたのか……?
カール(記憶が断片的にしかない。
たしか、最後の記憶は……馬車の中だったか?)
カール(違うな……勲章授与式典のために、
シェーナリヒト宮殿へ行った覚えがある)
カール(覚えはぼんやりとある、が、現実味がない。
夢の中の出来事のようで……どこまで現実の出来事なのだか。
勲章を渡して……〇〇たちと話した、か?)
カール…………。
カール(いや……もっと重要なことがあるだろう。
おぼろげにだが、記憶が残っている)
カール(あれはフルサトだった。見間違うはずがない……!)
カール(そして、僕は……狂気に囚われた……!
僕を地下に運んだ連中は何者だ。
あそこで、何が起きている……!?)
カール確かめ、なけ、れ、ば……。
カールくっ……。

強い眠気とめまいに襲われて、カールは再びベッドへ倒れ込む。

カールローレ、ツ……〇〇……。
地下室、を……。
カール…………。

───〇〇たちは、カールの捜索をローレンツに任せ、
オーストリアの貴銃士のマスターは死刑囚であるという情報から、
本当のマスターの居場所を探していた。

マークス囚人ってことは、刑務所にいるのか?
シャルルヴィル普通に考えたらそうじゃないかなぁ。
主人公【拘置所や別の場所の可能性もある】
シャルルヴィルえっ、そうなの?

〇〇は、国や地域によって違いがあるが、
死刑囚の場合、死刑それ自体が刑のため刑務は課せられず、
刑務所ではない場所に収監されている可能性もあると伝えた。

シャルルヴィル宮殿とかにいる政府の職員さんに聞いたら怪しまれそうだし、
連合軍オーストリア支部に行ってみる?
マークスだが、オーストリア支部の奴らも信用ならない。
宮殿の衛兵は、オーストリア支部の兵士だろう?
あいつらはカールや地下室を隠そうとしていたぞ。
シャルルヴィルそうだよね……。
あ、じゃあ、士官学校に連絡を取ってみようよ。
恭遠教官やラッセル教官に直接聞くの。
シャルルヴィルオーストリア支部の人たちには、
士官学校の課題が〜とか、適当に言い訳してさ。
マークス学校に連絡するくらいなら怪しまれないか……?
よし、そうしよう。

〇〇たちは、オーストリア支部へ行き、
教官たちと連絡を取ろうと試みた。
しかし───。

士官学校職員『恭遠・グランバード審議官、ラッセル・ブルースマイル曹長、
どちらも本日は外出中で不在です。
何か伝言があればお伝えしましょうか?』
主人公【……いえ、結構です】
【……またかけます】
マークス出なかったのか?
シャルルヴィル恭遠教官は連合本部に呼び出されたって言ってたし、
ラッセル教官も忙しそうだったもんね……。
はぁ、困ったな……。
マークス仕方ねぇ。
宮殿に戻ってローレンツと合流するか。
???……なるほど、ただの馬鹿ではないようだ。
???もはや一刻の猶予もない。
危険ではあるが……ここが勝負所か……。

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