───勲章授与が終了したあとは、
会場内で懇親の時間が設けられる。
ローレンツ | よし、行こう。 表向きMr.ザラは俺のマスターでもある。 衆人環視の状態ならば、無視されることはないはずだ。 |
---|---|
シャルルヴィル | こんにちは、カールさん、ザラさん。 素晴らしい式典でしたね。 |
ザラ | 滞りなく進行でき、カール様もお喜びだろう。 |
マークス | そうか? 嬉しそうな顔じゃないが。 |
カール | …………。 |
カール | 勲、章……汝の功績、を……。 |
シャルルヴィル | カールさん……? |
シャルルヴィル | (様子がおかしい。 眠そうって感じではないけど……意識がぼんやりしてる?) |
ザラ | カール様。 |
カール | …………。 |
ザラ | カール様は具合がよろしくないようだ。 急ぎヴァイスブルクへ戻り、侍医に診察を頼むように。 |
上級使用人 | かしこまりました。 |
同行していたカール付きの使用人が、
彼を会場から連れ出そうとする。
マークス | おい、待て。 まだマスターが話してない。 |
---|---|
マークス | つーか、あんたも昨日のこと知ってるだろうが。 しらばっくれたところで、 俺たちは『あれは夢だった』とか思わねぇぞ。 |
上級使用人 | ……カール様の侍従として、昨夜のことは当然把握しております。 過激派組織の犯行と思われるテロ未遂事件については、 ヴァイスブルク宮殿衛兵と警察で捜査中です。 |
主人公 | 【過激派組織の犯行……?】 【テロ未遂事件……?】 |
マークス | あんた、何言ってんだ。 テロでもなんでもなくて、カールが─── |
ザラ | これ以上カール様の足止めをするのであれば、 イギリスからのゲストといえど尊重しかねる。 ……衛兵。 |
衛兵 | はっ。 皆さま、カール様はお帰りになります。 お話はまたの機会とし、ここはお引き取りください。 |
シャルルヴィル | でも、ボクたち、カールさんが心配で……! |
ザラ | でしたらなおさら、引き留めるのはおやめいただきたい。 それとも、名誉の場での醜聞をお望みか? |
シャルルヴィル | ……! |
金鷲勲章授与式典に集まった人々が、
カールはじめ貴銃士やそのマスターたちが何か揉めているのかと、
密かに視線を向けている。
シャルルヴィル | ……お大事に。 あとでお見舞いに行かせてください。 |
---|---|
ローレンツ | カール様のご様子について、 俺にもあとで報告を入れてくれ。 |
ローレンツ | ……今後も不調が続くようであれば、 連合本部審議官の恭遠・グランバード氏に協力を要請し、 原因の解明に取り組むことも視野に入れるよう進言する。 |
ザラ | …………。 |
上級使用人 | ……かしこまりました。 |
───その後、〇〇たちは、
ヴァイスブルク宮殿別棟の客室へと戻った。
シャルルヴィル | ローレンツさん、どうだった? |
---|---|
ローレンツ | 駄目だ……。 カール様はお休みになっているの一点張りで通してもらえない。 |
ローレンツ | Mr.グランバードの名前や連合本部への報告をちらつかせれば 多少は牽制できるかと思ったが……。 |
シャルルヴィル | カールさんは体調不良じゃなくて疲れて寝てるだけ、 ってことにして、時間稼ぎするつもりみたいだね。 |
マークス | のんびりしてると、士官学校に戻る日になるぞ。 帰国予定日はあさってだ。 |
ローレンツ | ……! 青年は……青年は、自己の力不足に打ちのめされている。 だから、すがるしかない……! |
ローレンツ | 今の俺が頼りにできるのは、君たちしかいない。 どうか、カール様のために手を貸してほしい……! |
主人公 | 【もちろん!】 【カールさんを放っておけない】 |
シャルルヴィル | 〇〇ならそう言うと思った。 あんな状態のカールさんを残して士官学校には戻れないよ。 さあ、作戦会議をしよう! |
ローレンツ | ありがとう……恩に着る……! |
マークス | 宮殿にトルレ・シャフの奴らが出たし、 使用人も政府の奴らも、兵士たちも信用ならない。 ……カールを連れ去るのが手っ取り早いんじゃないか? |
シャルルヴィル | うーん……さすがにそこまでの強硬手段を取ると、 国際問題になって〇〇の立場が悪くなっちゃうよ。 最後の最後の手段だね。 |
シャルルヴィル | もしカールさんを奪取するなら、 それ相応の理由があったんだって証明できないと、 またオーストリアに連れ戻される可能性もあるし……。 |
マークス | とりあえず、居場所だけは把握しておきたい。 部屋にいる様子だったのか? |
ローレンツ | いや……不明だが、おそらくいらっしゃらないだろう。 俺たちがカール様と接触しないように、 どこか別の部屋へ移されているのではないかと思う。 |
マークス | ……イギリスの城でスナイダーを探し回ったことがあったが、 部屋が800くらいあるとかで、すげぇ大変だったぞ。 |
ローレンツ | ウィンズダム宮殿ほどではないが、 ここヴァイスブルク宮殿にも数百の部屋がある。 |
ローレンツ | ふむ……ことは急を要する。 探し出すよりも、カール様を隠している連中を慌てさせ、 自ら出てくるように仕向ける方が早いか。 |
マークス | 出てくるように? そんなことできるのか? |
ローレンツ | ああ。 まだ検証が乏しいが、今こそ発動する時だ。 俺の研究の成果である─── |
ローレンツ | 最終兵器βを! |
主人公 | 【さ、最終兵器べータ?】 【それはどういう……?】 |
ローレンツ | 最終兵器のプロトタイプの効果は、 先日Mr.マークスも体感しただろう。 |
マークス | ん……? なんのことだ? |
ローレンツ | 語尾にピョンを付けてしまう装置のことだ。 効果は抜群だったではないか! |
マークス | あのヘンテコな装置のことか! あれがなんの最終兵器になるって言うんだよ。 |
ローレンツ | プロトタイプでは、脳の特定の部位に働きかけることで、 人為的に催眠にかかりやすい状態にし、 語尾にピョンをつけずにはいられないようにしていた。 |
ローレンツ | βではさらに効果を強力にし、 ああいった軽度の暗示に留まらず、 認識の逆転すらも可能となったのだ……! |
シャルルヴィル | ええっと……? まだよくわからないんだけど、その装置を使って何をするの? |
ローレンツ | いい質問だ、Mr.シャルルヴィル。 ずばり答えよう。 |
ローレンツ | ───モルモット1号ことMr.ベルガーを、 絶対高貴に目覚めさせるのだ! |
マークス&シャルルヴィル | はっ!? |
ローレンツ | ようこそ、我が第二研究室へ……! |
---|---|
シャルルヴィル | 第二なんてあったんだ……。 |
ローレンツが3人を案内したのは、宮殿本館3階の一室だった。
檻が運び込まれており、
その中ではベルガーがアルパチーノと戯れている。
マークス | そういえば、あいつのことを忘れていた。 檻に戻されたんだな。 |
---|---|
ローレンツ | ああ。俺の計算通り、 モルモット1号は食糧庫で睡眠薬入りのコークを飲み、 寝入っていたところを衛兵に確保されたと報告を受けている。 |
ローレンツ | ふっ……またしても俺の理論が証明されてしまったというわけだ。 ははははっ……! |
ベルガー | クソメガネ! てめぇ、何しに来やがった!! |
アルパチーノ | キィ……! |
ローレンツ | 「何をしに来た」か……。 よくぞ聞いてくれた、Mr.ベルガー! |
ベルガー | ゲッ……! また意味わかんねぇことするつもりだろ! |
アルパチーノ | キィ、キィ……! |
アルパチーノはベルガーを庇うように、檻の前に出る。
主人公 | 【チーズ食べる?】 【ドライバナナは好き?】 |
---|---|
アルパチーノ | ……チー! |
アルパチーノは〇〇の手から食べ物を受け取ると、
すぐには食べることなく、ベルガーのところへと持っていった。
ベルガー | ありがとなー、アルパチーノ! 半分こして食おうぜ! |
---|---|
マークス | すごいな、その白ネズミ。 飼い主よりも賢そうだ。 |
ベルガー | 俺は飼い主じゃねぇ。 アルパチーノと俺はトモダチだもんなー! |
アルパチーノ | チチッ! |
シャルルヴィル | すごい……人の言葉がわかってるみたいだね。 本当に賢いなぁ。 |
ローレンツ | ───青年は隠し切れない歓喜と興奮、緊張に指先を震わせた。 いよいよこの日が来たのだ。 |
ローレンツ | 俺を信頼し、カール様が直々に託してくださったミッション…… 絶対高貴と絶対非道の深淵解明! 俺は研究の末、1つの結論にたどり着いた。 |
ローレンツ | ともに、貴銃士が用いる強力な力であるからして、 絶対非道は絶対高貴に変換できるはずである、と……! |
ベルガー | じゃあなぁ〜アルパチーノ。 また夜に遊びに来いよ! |
アルパチーノ | チー♪ |
シャルルヴィル | ねぇ、ローレンツさん。 そもそもなんだけど、彼を絶対高貴にさせてどうするの? カールさんを見つけることに繋がる? |
ローレンツ | 計画は実にシンプルなものだ。 モルモット1号が絶対高貴に目覚めたら、檻から解き放つ。 そして、自由を謳歌───すなわち、好きに暴れてもらう。 |
シャルルヴィル | ええっ!? |
ローレンツ | モルモット1号の脱出は、度々起きているとはいえ一大事。 おまけに彼が絶対高貴を使っているとなると、 天変地異が起きたに等しい。宮殿内は大混乱に陥るだろう。 |
ローレンツ | カール様に危険が及ばないよう外部へ移動したり、 そうでないにしても、カール様の秘匿に関わっている連中が、 様子を見に出てくるのは間違いない。 |
マークス | 出てくるように仕向けるってのはそういうことか。 |
ローレンツ | 方がー……。 カール様がまた、アウトレイジャーと変わっていても……。 絶対高貴ならば、あれを鎮めることができるのだろう? |
シャルルヴィル | ……うん、そうだよ。 |
ローレンツ | 俺は……いまだ、絶対高貴になることができない。 だから……俺の絶対高貴を願う気持ち、カール様を想う気持ちも、 モルモット1号に託したいのだ。 |
マークス&シャルルヴィル | …………。 |
シャルルヴィル | でも、解き放っちゃっていいの? 宮殿がもっとめちゃくちゃになりそうだけど……。 |
ローレンツ | カール様のためならば許容範囲内だ。 それに、モルモット1号が暴れるのは稀有なことではない。 諦めをもって受け入れられるだろう。 |
シャルルヴィル | それでいいんだ……。 |
ローレンツ | モルモット1号よ! 歓喜の声を上げるがいい。これから君は、 『己がふるう力は絶対高貴なのだ、そうであるべきだ』と 強く認識するようになる。 |
ローレンツ | 絶対高貴と絶対非道は対称的な力であり、 その根幹は同じであると仮定した場合─── |
ローレンツは装置を用意しながら熱弁するが、
興奮のあまり早口で、専門用語なども含まれるため、
何を言っているのか詳細は不明だ。
マークス | ローレンツ、あんたの話は難しい上に長すぎる。 試験の問題によく書かれているように、 60文字以内で端的にまとめろ。 |
---|---|
ローレンツ | くっ! つまり……これから行使するのは、 絶対非道ではなく絶対高貴なのだと脳が強く認識すれば、 自ずと出力される力はそうなるはずだということだ! |
シャルルヴィル | ええー……? 本当に……? |
マークス | ハッ……! その装置を使えば、俺も絶対高貴になれるってことか!? |
マークス | すごいぞ、マスター!! 大発明だ!! |
主人公 | 【なんだか危なそうな予感が……】 【そのままのマークスがいい】 |
主人公 | 【なんだか危なそうな予感が……】 →ローレンツ「俺の理論が正しければ、危険はない。 まだ、実証はされていないが。」 【そのままのマークスがいい】 →マークス「マ、マスター……! うぅ……複雑だ……。でも、嬉しい……のか? 俺は……。」 |
ローレンツ | さあ、モルモット1号! この装置をかぶり、高貴なるMr. ベルガーとなるのだ! |
ローレンツが躍るようなステップで檻の前に進み出る。
しかし、肝心のべルガーは漫画に夢中になっており、
一切視線を向けない。
ベルガー | ……んぁ? 今忙しいから、あとで気が向いたらな〜。 |
---|---|
ローレンツ | なっ……! 漫画を読むのをやめたまえ、モルモット1号。 これはカール様を救うためであり、 我ら貴銃士の未来を変える重大な実験なのだぞ……! |
ローレンツ | モルモット1号! 装置をかぶりたまえ! さあ、さあさあさあ!!!! |
ベルガー | あぁ゙っ!? こっち来んじゃねぇ!! |
ローレンツは、コードがついたヘルメットのような装置を手に
ベルガーに迫る。その異様な勢いに、ベルガーはおののき、
近くに転がっていた空き瓶を投げつけた。
ローレンツ | ふっ……モルモット1号が手近なゴミを投げるのは 想定の範囲内だ。 |
---|---|
ベルガー | うるせぇー!!! |
ローレンツ | ごふっ!! |
ベルガーが投げた『美しい言葉100選』の本が、
ローレンツの額を直撃する。
その衝撃でのけぞったローレンツの手から装置がすっぽぬけ、
くるくると回転しながら宙を高く舞い───
見事に、ローレンツの頭へと着地した。
ローレンツ | うわっ!? |
---|
装置で視界が覆われてしまったローレンツは、
バランスを崩して倒れてしまう。
彼が手をついた先には不運にも、
装置から伸びるコードの先端───スイッチがあった。
ローレンツ | ほぎゃっ!! |
---|
ローレンツ | ほぎゃっ!! |
---|---|
シャルルヴィル | ローレンツさん……!? だ、大丈夫……? |
マークス | すげぇ音がしたな……。 マスター、俺を止めてくれてありがとう。 使っていたら故障するところだった。 |
ベルガー | あひゃひゃひゃ!! ザマーみろ!! |
ローレンツ | ………………。 |
シャルルヴィル | ねぇ、本当に大丈夫なの……? 病院、じゃなくて、マスター……は誰かわかんないし、 〇〇なら治療できるかな……? |
主人公 | 【とにかく状態を確認してみる】 【必要そうなら治療してみる】 |
〇〇たちはローレンツに駆け寄り、 装置を慎重に外す。
マークス | おい、あんた。頭は大丈夫か? |
---|---|
シャルルヴィル | 合ってるけどその聞き方はちょっと……!? ローレンツさん、ボクたちがわかる? 痛いところはない? |
ローレンツ | ああ……素晴らしい……! |
ローレンツ | 絶対非道……!! |
一同 | ……えっ? |
ローレンツ | Mr. ベルガー……。 君が持つ絶対非道の力は、なんと美しいのだろう! |
ベルガー | うぇっ……!? |
ローレンツは、花瓶に生けてあった花を取り出すと、
手早くラッピングしてベルガーへと差し出す。
ローレンツ | こちらを、Mr.ベルガー。 心ときめく素晴らしい力への称賛を込めて、薔薇を捧げる。 どうか俺に、君の絶対非道の輝きを見せてくれないか? |
---|---|
ベルガー | ああ!? んだよお前……。 これまでもキモかったけど、もっときめぇ……。 |
マークス | マスター……俺には、ベルガーの方がまだまともに見える。 何が起きてるんだ……? |
ローレンツ | 出し惜しみはしないでほしい。 さあ、見せてくれ! 君が行使するあの素晴らしき力を!! 絶対非道を!!! |
ベルガー | うひぃっ! ゾッて鳥肌立った! ち……近寄るんじゃね───!!! クソメガネ! キモメガネ! |
ローレンツ | 君ならできる! 君しかできない! いざ解き放て! 崇高なる非道な力を!! そしてカール様の発見に寄与するのだ……! |
ベルガー | ぎゃああああああ──────!! |
ベルガー | 寄るなっつってんだろ!! ───絶対非道ォ!! |
ローレンツ | ああっ! 素晴らしい……絶対非道! なんとしてもカール様を見つけ、 絶対非道の魅力をお伝えせねばっ!! |
ローレンツ | 待ってくれ! Mr.ベルガー!! |
主人公 | 【本当に認識が逆転してしまった……!】 【絶対非道信者になってしまった……!】 |
シャルルヴィル | ええっと……認識逆転装置の実験としては成功でいいのかな。 でも、どうやったらローレンツさんは元に戻るんだろう……。 |
マークス | しばらく放っておくしかないんじゃないか? それか、もう1回あの妙な装置を使うかだ。 逆転から逆転すれば元に戻るだろう。 |
シャルルヴィル | うーん……あの装置危なそうだし、 あんまり使わない方がよさそうだよね……。 |
マークス | なら放っておこう。 カールを探す気があるのは変わらないようだしな。 |
───ピピッ!
シャルルヴィル | あれ? 今の音は? |
---|---|
マークス | この機械から聞こえたぞ。 |
3人が機械に近づくと、付属のプリンターが作動して、
数枚の紙がプリントアウトされる。
マークス | ……なんだ? 何かのグラフみたいだが。 |
---|
紙には、数十にわたる項目についての棒グラフが印刷されていた。
ところどころに、グラフが長く伸びている項目がある。
シャルルヴィル | ナトリウム、カリウム……なんとか酸……? 難しい単語がたくさん書いてあるね。 |
---|---|
主人公 | 【チョコレートの分析結果だ!】 【多く含まれている成分はなんだろう】 |
マークス | あいつ、 チョコレートの分析は忘れてなかったんだな。 けど……見たことのない単語が多くてよくわからない。 |
〇〇たちは、薬品に関する本を探し、
多く含まれている成分名について調べてみる。
マークス | あった! 睡眠薬に使われる成分だと書いてある。 |
---|---|
シャルルヴィル | 副作用に、悪夢、眠気が残る、めまいやふらつきがあるね。 カールさんの症状と一致してるよ。 |
シャルルヴィル | やっぱり、カールさんは睡眠薬を飲まされてたんだ……! |
3人は改めて作戦会議をすることにして───
盗聴を完全に避けるため、外へやってきた。
主人公 | 【睡眠薬について考えよう】 【誰が何のために薬を盛っていたんだろう】 |
---|---|
シャルルヴィル | 眠らされる……あっ! |
マークス | どうした、シャルルヴィル。 |
シャルルヴィル | カールさんがアウトレイジャー化して暴走したのは、 昨夜が初めてだってローレンツさんが言ってたよね? |
シャルルヴィル | 昨夜が初めてだったかもしれないことがもう1つある。 ……カールさんが、睡眠薬を飲まなかった。 ボクたちが、ナイト・チョコレートをすり替えたから。 |
マークス | ……! 睡眠薬は、カールが暴走しないようにするためってことか? |
マークス | だとしたら、薬を盛っていた犯人は、 あいつがアウトレイジャー化することがわかっていたのか……? |
シャルルヴィル | そうかも。 それなら、カールさんが地下室にいたことの説明もつくよ。 |
マークス | だが……わけがわからないな。 アリノミウム結晶はものすごく高価なんだろ。 なのに、マスターを殺す気満々っつーか……。 |
シャルルヴィル | うん。 それに、犠牲になったマスターが多すぎることも気になる。 |
シャルルヴィル | マスターに命の危険があるから死刑囚を選んだ…… っていうより、命を落としても問題になりにくいから、 死んでしまうこと前提で死刑囚を使ってる感じがするよ。 |
シャルルヴィル | 高価なアリノミウム結晶を使って、 遠回しな死刑執行をしている……なんてことはなさそうだし、 何をしようとしてるんだろう。 |
マークス | とりあえず、トルレ・シャフは関わってるだろ。 スケレットとガンマ……鞭の奴らが出たからな。 |
マークス | それと、あの謎の貴銃士。絶対高貴になれるヤツ。 |
シャルルヴィル | カールさんを持ち去ったあの貴銃士を追おうとしたボクらを、 鞭の2人が邪魔しに入った感じだったよね。 ってことは、トルレ・シャフとあの貴銃士は繋がってる……? |
シャルルヴィル | あれ……だとしたら、カールさんのマスターが たくさん亡くなってる理由がますますわからなくなったな。 |
シャルルヴィル | だって、絶対高貴になれる貴銃士がいるなら、 亡くなるほど傷が酷くなる前に癒せばいいのに。 やっぱり、トルレ・シャフとは無関係なのかな……。 |
主人公 | 【謎の貴銃士と透明な結晶の関係も気になる】 |
マークス | ああ……フランスに現れた時に、 例の透明な結晶を拾ってたような気がするんだよな。 |
シャルルヴィル | あの結晶は、薔薇の傷を完治させた時に、 出たり出なかったりするっていう話だったよね。 |
シャルルヴィル | 今のところ……貴銃士がアウトレイジャー化して、 そしてマスターの傷が完治した時に出てるみたいだ。 でも、それならロジェさんの時もあった可能性が高いよね。 |
シャルルヴィル | ただ気づかなかっただけなのか、他にも要因があるのか…… まだよくわからないな。 |
マークス | 今回は、カールがアウトレイジャーになってるし、 あの貴銃士も来ていた。 フランスの時と状況が結構似ているな。 |
シャルルヴィル | ってことは、ボクかあの貴銃士が カールさんのマスターの傷を治したら、 あの結晶が出てきたのかもしれないね。 |
主人公 | 【結晶関連で目的がある可能性は?】 |
マークス | ん……? どういう条件で透明な結晶が出るかの実験ということか? |
シャルルヴィル | カサリステみたいに、あの貴銃士やトルレ・シャフも 結晶の研究や検証をしたくて、いろいろ試しているとか……。 それか、結晶の入手自体が目的なのかも。 |
マークス | なるほどな……。そっちが目的なら、 囚人がどうなろうと構わないということか。 |
シャルルヴィル | むしろ、カールさんをアウトレイジャー化させるために、 積極的に傷を悪化させてたかもしれない。 じゃなきゃ、30人も亡くなったりしないはずだよ。 |
マークス | それは俺も気になっていた。 俺たち現代銃の貴銃士が絶対非道を使うと、 マスターの薔薇の傷は急速に悪化する。 |
マークス | だが、呼び覚ました貴銃士が絶対高貴になれないだけなら、 傷はそんなに急に悪化はしないはずだろう? なのに、あいつのマスターは死にすぎだ。 |
シャルルヴィル | 確かに……。 薔薇の傷が少しずつ悪化して、 疑心暗鬼になって人が変わっちゃったっていうのは、 カールさんの最初のマスターとロジェさんで共通してる。 |
シャルルヴィル | でも、それ以外で言うと、結構違いがあるんだよね。 ロジェさんの傷は、死に至るほど酷くはなかったし。 |
シャルルヴィル | 量産銃と一品銃、歴史の長さも、 ボクとカールさんじゃ全然違うから、比較は難しいけど……。 それにしたってマスターの消耗が大きすぎる。 |
カール | 僕は……絶対高貴になれない。 貴銃士の姿をしているだけの、力の抜け殻さ。 |
---|
カール | 要するに……僕は死刑執行人というわけだ。 誰が言い出したのかは知らないが、 “死神皇帝”とはお似合いの名だね、はは。 |
---|
シャルルヴィル | カールさんは死神なんかじゃない。 誰かに、死神に仕立て上げられたんだ、きっと。 |
---|---|
シャルルヴィル | でも……今の話は全部、ボクたちの推測に過ぎない。 カールさんたちを助けるには、もっと証拠がないと……! |
主人公 | 【……時間が足りない】 【帰るまでにどうにかなるかな……】 |
シャルルヴィル | 金鷲勲章授与式典は終わっちゃったもんね。 明後日の朝にはフィルクレヴァートに戻る予定だから、 その前になんとかしたいけど……。 |
シャルルヴィル | 何をどうしたら問題解決なのかもよくわからないし、 かといって先延ばしにしたら、色々知りすぎちゃったボクたちは もう二度とオーストリアに入れないかも。 |
主人公 | 【トルレ・シャフの関与の証拠が掴めたら……】 【介入するための確たる理由が必要だ】 |
シャルルヴィル | うん……! |
シャルルヴィル | カールさんをわざとアウトレイジャー化させてたり、 マスターを死なせたりしているのがトルレ・シャフなら、 ボクたちがカールさんをさらったって責められない。 |
シャルルヴィル | できそうなこと……それは。 本当のマスターの居場所を見つけること……! そして、囚人がいる場所は……。 |
───〇〇たちが作戦会議をしている頃、
ヴァイスブルク宮殿の一室にて。
カール | ……うぅ……。 |
---|---|
カール | ここ、は……? 僕は、また寝ていたのか……? |
カール | (記憶が断片的にしかない。 たしか、最後の記憶は……馬車の中だったか?) |
カール | (違うな……勲章授与式典のために、 シェーナリヒト宮殿へ行った覚えがある) |
カール | (覚えはぼんやりとある、が、現実味がない。 夢の中の出来事のようで……どこまで現実の出来事なのだか。 勲章を渡して……〇〇たちと話した、か?) |
カール | …………。 |
カール | (いや……もっと重要なことがあるだろう。 おぼろげにだが、記憶が残っている) |
カール | (あれはフルサトだった。見間違うはずがない……!) |
カール | (そして、僕は……狂気に囚われた……! 僕を地下に運んだ連中は何者だ。 あそこで、何が起きている……!?) |
カール | 確かめ、なけ、れ、ば……。 |
カール | くっ……。 |
強い眠気とめまいに襲われて、カールは再びベッドへ倒れ込む。
カール | ローレ、ツ……〇〇……。 地下室、を……。 |
---|---|
カール | …………。 |
───〇〇たちは、カールの捜索をローレンツに任せ、
オーストリアの貴銃士のマスターは死刑囚であるという情報から、
本当のマスターの居場所を探していた。
マークス | 囚人ってことは、刑務所にいるのか? |
---|---|
シャルルヴィル | 普通に考えたらそうじゃないかなぁ。 |
主人公 | 【拘置所や別の場所の可能性もある】 |
シャルルヴィル | えっ、そうなの? |
〇〇は、国や地域によって違いがあるが、
死刑囚の場合、死刑それ自体が刑のため刑務は課せられず、
刑務所ではない場所に収監されている可能性もあると伝えた。
シャルルヴィル | 宮殿とかにいる政府の職員さんに聞いたら怪しまれそうだし、 連合軍オーストリア支部に行ってみる? |
---|---|
マークス | だが、オーストリア支部の奴らも信用ならない。 宮殿の衛兵は、オーストリア支部の兵士だろう? あいつらはカールや地下室を隠そうとしていたぞ。 |
シャルルヴィル | そうだよね……。 あ、じゃあ、士官学校に連絡を取ってみようよ。 恭遠教官やラッセル教官に直接聞くの。 |
シャルルヴィル | オーストリア支部の人たちには、 士官学校の課題が〜とか、適当に言い訳してさ。 |
マークス | 学校に連絡するくらいなら怪しまれないか……? よし、そうしよう。 |
〇〇たちは、オーストリア支部へ行き、
教官たちと連絡を取ろうと試みた。
しかし───。
士官学校職員 | 『恭遠・グランバード審議官、ラッセル・ブルースマイル曹長、 どちらも本日は外出中で不在です。 何か伝言があればお伝えしましょうか?』 |
---|---|
主人公 | 【……いえ、結構です】 【……またかけます】 |
マークス | 出なかったのか? |
シャルルヴィル | 恭遠教官は連合本部に呼び出されたって言ってたし、 ラッセル教官も忙しそうだったもんね……。 はぁ、困ったな……。 |
マークス | 仕方ねぇ。 宮殿に戻ってローレンツと合流するか。 |
??? | ……なるほど、ただの馬鹿ではないようだ。 |
??? | もはや一刻の猶予もない。 危険ではあるが……ここが勝負所か……。 |
Protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.
まだコメントがありません。