貴銃士ストーリー:ジョージ

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第1話:或る対話

ジョージなぁ、ブラウン。
高貴ってなんだと思う?
ブラウン・ベス愚問だな。俺は大英帝国の銃だ。
高貴とはすなわち騎士道。他には考えられない。
ブラウン・ベスそういうおまえはどうなんだ?
ジョージオレは……助けたい。

ブラウン・ベス助けたい……? 誰を?
ジョージ困ってる人。
オレの助けが必要な、すべての人たちを。
ブラウン・ベスそうか。
……弱きを助けることは騎士道に通ずる。
それが、おまえにとっての高貴なんだな。
ブラウン・ベスだが……弱きを助けるということは、
自らが強くなくてはいけない。
時には自分の身を滅ぼしても……。
ブラウン・ベスおまえは人を助けるために、
自分が犠牲になる覚悟はあるのか?
ジョージ覚悟っていうか……。
ブラウンの言ってる「覚悟」とは、
ちょっと違うかもしれないけど……。

ジョージオレは、はじめから存在してたわけじゃないから。
誰かを助けることが、オレがいる理由……
なのかな。
ブラウン・ベス……?
おまえ、何を言ってるんだ……?
ジョージだから、そのままの意味だって。
オレはおまえやみんなのことが好きだから、
助けたいってこと!
ジョージ……? なんだ?
ジョージオレ、今誰かに呼ばれた……?
っていうか……ここ、どこだっけ?
ブラウン・ベス俺は……おまえとこうして話していたら、
もしかしたら変わっていたのかもしれないな……。
ジョージえ? ブラウン……?

十手……君。ジョージ君!
起きてくれ〜!
ジョージ……はっ!
ゆ、夢か……!
ジョージ十手……と、マスター?
ここ、どこ……?
十手教室だよ。
授業はもう終わってしまった。
ジョージえっ!?
もしかして、オレ……ずっと寝てた!?
主人公【ジョージ、よく寝てたね】
【気持ちよさそうな寝顔だった】
十手今日は運良く見逃してもらえたが、
教官は呆れていたよ。
十手なんだかムニャムニャ寝言を言ってたが、
夢で誰かと喋ってたのかい?
ジョージうーん……。
なんか……大切な夢を見てた気がする。
主人公【そうなの?】
【どんな夢だった?】
ジョージえっと……あれ?
なんでだろ? 思い出せない……!
十手思い出せないのかい?
ふふっ。なんだかジョージくんらしいね。
十手スッキリした顔をしているから、
たぶんいい夢だったんじゃないか?
ジョージえっ? そうか?
うーん……そうかな? ま、いっか☆

第2話:誰でも仲良し?

ジョージ今日の課外授業、面白そうだなー!
川の生き物をスケッチするんだってさ。
シャルルヴィルうん。
川の生態系を調べるのもスケッチも初めてだから、
ボクも楽しみ。
エンフィールド本日もご指導よろしくお願いします!
ジョージ師匠!
ジョージおう、よろしくなっ!
そういや、シャスポーとスナイダーが
まだ来てないよな。
シャルルヴィルシャスポーはお手洗いに行くって言ってたよ。
もうすぐ戻ってくるんじゃないかな?
エンフィールドスナイダー……またサボりか!
はぁ……。
弟がご迷惑をおかけして、申し訳ありません。
エンフィールド少し周囲を探してみますが……。
シャスポーさんが戻るまでに探し出せなければ、
置いていきましょう。
エンフィールドジョージ師匠にご迷惑をおかけするわけには
いきませんから!
ジョージえ〜? そんなこと言うなよ。
せっかくなんだから、みんなで行きたいじゃん!
オレ、スナイダーがいそうなところ知ってるんだ。
エンフィールドえっ、本当ですか……?
ジョージああ。たぶん、あの後ろの建物にいると思う。
ちょっと待っててくれ!

ジョージは背後の建物の非常用はしごを上っていく。
そして数分後───。

スナイダーなぜ俺が、
おまえに付き合わねばならない。
ジョージいいじゃん!
スナイダーもきっと楽しいと思うぜ!

建物の屋根の上から、
ジョージは不機嫌そうなスナイダーと共に戻ってきた。

シャルルヴィル本当に、あの建物にいたんだ……!
ジョージスナイダーは屋根の上が好きなんだ。
前も一緒に昼寝したことがあるぞ!
スナイダーおい、待て。
俺はまだ参加するとは言っていない。
エンフィールドこら! スナイダー?
せっかく師匠が誘ってくださったんだから、
真面目にスケッチするんだよ。
スナイダー虫けらの絵なぞ描いてどうなる……。
エンフィールドそれにしても、シャスポーさん、遅いですね。
迷子になってしまったんでしょうか……?
シャスポー待たせたね。
ジョージ遅かったな!
便秘かー?
シャスポーは……。
シャルルヴィル……っ!
エンフィールドし、師匠!
シャスポーは……はぁ!?
何を言ってるんだ、君は!!??
ジョージ気にすんなって。
オレも出るまでに30分くらいかかったことあるぞ。
HAHAHA!
シャスポーなっ……!
ち、違っ……!
シャルルヴィルえっと……なんというかごめん。
確かこのハーブティ、そういうのにも効いたと思うから
あげるよ、シャスポー……。
エンフィールドそんな苦しい思いをされていたとは知らず……
迷子だろうかと失礼なことを考えていました。
本当に、申し訳ありません。
シャスポー違うって言ってるだろ!
〇〇も参加する授業だから、
髪を整えていただけだ!
シャスポーま、前から思っていたけれど……、
君、本当にデリカシーがない奴だな……!
信じられない下品さだよ!
ジョージあっはっは。ごめんごめん。
まぁいいじゃん。これで揃ったし、Let’s go!

第3話:心に灯る星

ジョージ……この街、すごく寂しい感じだ……。
マークスマスター、あの痩せた子供の群れはなんだ?
ライク・ツー任務の前にラッセルが説明してただろ?
この街は資源の枯渇で一気に貧しくなった。
だから失業者や孤児が多いんだと。
マークス俺はマスターに聞いたんだ。
ライク・ツーマスター以外の奴の話も
ちゃんと聞いとけ、バカ野郎。
ジョージおおっ? みんな、見ろよ。
雪だ……! 綺麗だよな。
ライク・ツーうわっ、寒っ……。サイアク。
景色なんか楽しめねーよ。

雪が降り始める中、寒さに震えていた子供たちが
こちらをじっと見つめていた。

ジョージあの子たち、寒そうだ。
主人公【なんとかしてあげたいけど……】
ジョージそうだな。
でも、この服はあげられないし……。
ジョージあっ、そうだ!
バイトで稼いだ金があるから、服買ってくるか。
ライク・ツーばーか。この辺にまともな服屋なんてねーぞ。
それに、全員分買えるような金もないだろ。
ライク・ツーやめとけよ。
半端に手を出すと、あいつらの中でいざこざが起きる。
お前が逆恨みされることもあるかもな。
ジョージでも、
このまま放っておくなんて……!
ライク・ツーお前の自己満足で、あいつらなりの生活を
めちゃくちゃにしてぇんなら止めねーけど?
世の中、そんな簡単じゃねぇよ。
ジョージ…………。
ジョージちょっと、頭冷やしてくる。
悪いけど、先にホテルに戻っててくれ。

その夜、ホテルに帰ってこないジョージを探して、
3人は街を歩いていた。

ライク・ツーったく、ジョージの奴……。
マークスマスター。
どこに行ったか、心当たりはないか?
主人公【昼間の孤児が気になっているのかも】
ライク・ツーああ、なるほどな。
ということは……行き先は孤児院か?
マークスこじいん……?
そこに、ジョージとあの子供の群れがいるのか?
ライク・ツーよし、行ってみるか。

男の子1あははっ。にーちゃん、ヘタクソー!
女の子1みてみて。わたしの方がじょうずだよー!
ジョージおおー、ほんとだ! すげーな!

孤児院に入ると、ジョージが昼間の子供たちに
囲まれながら裁縫をしていた。
その周囲には、大量の服が積まれている。

主人公【賑やかだね】
【やっぱりここにいたんだね】
ジョージおっ、〇〇!
マークスとライク・ツーまで!
男の子2なーなー。おれのまだ?
ジョージもうちょっと待ってくれよ〜。もうすぐだから!
ライク・ツーお前、何してんだ?
マークスこの大量の服は……?
ジョージああ、その服な。
1軒1軒家を回ってもらってきたんだ。
ジョージこの子たち全員の服を買ってやることはできないけど、
古着なら集められると思ってさ。
ジョージでさ。大人用の服はでかいから、
ケンタッキーがやってたみたいに
サイズ調整してやってるんだ。
女の子2ありがとう、おにいちゃん!
これ、あったかいよ。
ジョージおう、よかったぜ!
全員分作ってやるから、待っててくれよな。
ジョージ……あっ、痛っ。また針刺しちまった!
ライク・ツーお前、裁縫下手過ぎ。
そういや家庭科の授業も補習常習犯だったな。
ライク・ツーったく。
……しょうがねぇな。俺もやってやるよ。
主人公【自分も手伝う】
マークスマスターがやるなら、俺も手伝う。
ジョージみんな、手伝ってくれるのか?
ありがとなっ!

皆で、子供たちの古着を縫い進める。
すべて終えた時には、もう真夜中になっていた。

ジョージん〜っ! よく働いたなぁ。
でもオレ1人じゃ、きっと終わらなかったよ。
みんなのおかげだな☆
主人公【役に立てて良かったよ】
【どういたしまして】
ジョージ……ホントに、ありがとうな。
マークスなぁ、あんた……。
なぜ見ず知らずの人間に、そこまでする?
ジョージん?
そうだな……それが、オレだから。
ライク・ツーなんだそりゃ?
答えになってねーじゃん。
ジョージうーん……それも、オレだから!
マークス何も考えてないと素直に言ったらどうだ?
ジョージHAHAHA! そうとも言う!
はっはっは……☆

第4話:ジョージの部屋

恭遠では、授業を始める。
今日はイギリスの兵器の歴史について勉強しよう。
教科書の8ページを開いてくれ。
マークス…………。

───数日後。遠征先のホテルにて。

主人公【何を読んでるの?】
【何か、調べもの?】
マークスああ、マスターか。
これはイギリスの軍事史の本だ。
マークスこの前の授業で、教科書として使っていたんだ。
それで、この18世紀のところ……
ブラウン・ベスのことがたくさん書いてある。
マークス「イギリス陸軍が初めて採用したマスケット銃。
100年以上にわたって使用されたことから、
“大英帝国を築いた銃”と言われる」───
マークスジョージのやつ……そうは見えないが、
あいつは、イギリスにとって
すごく大事な銃だったんだよな……。
マークス普段あんな奴だが……言われてみれば、
あいつが絶対高貴になる瞬間だけは───
なんか、いつもと違うように感じるんだ。
マークスあまり、うまくは言えないんだが……。
“Cats hide their claws” という
ことわざみたいな……。
主人公【伝えてあげたら?】
【ジョージが聞いたら喜ぶと思う】
マークスそうだろうか……?
まあ、マスターの言うことなら正しいはずだ。
ジョージの部屋に行ってくる。

マークスおい、ジョージ。入るぞ。
ジョージおっ? マークスか?
いいぜ、大歓迎だ!
マークスあんたに話が……って、!?
マークスなんだ、この部屋は!?
まるで敵に荒らされた基地じゃねーか!

ジョージの部屋は、床に服や道具類、
あらゆるガラクタが散乱し、
散らかり放題の状態だった。

ジョージそこまで言うことないだろ〜。
確かに、ちょっと散らかってるけどさ。
マークスこの壺はなんだ?
こんなの行く時に持ってなかっただろ?
ジョージあ〜。それは、街を歩いてたら知らない人に
「呪いの壺なんだ、もらってくれ!」って
渡されて……。
マークスそんなものをもらうな!
こっちの巻物の山はなんだ!?
ジョージえっと……それは町の外れの死んだばーちゃんが
書き溜めてた日記で、ゴミに捨てられそうに
なってたから、かわいそうでさ……。
マークスこのガラクタ全部そんなんなのか!?
呆れた……。
むしろ、寮ではちゃんと片付いてるのは何なんだ?
ジョージ……あ〜、あれだ!
寮の部屋は、いつもエンフィールドが
片づけてくれてるからなぁ。
マークスつまり、エンフィールドがいない時は
まったく何もしていないわけだな?
ジョージHAHAHA! マークスは手厳しいな〜。
そうだ。紅茶でも飲むか?
これももらいものなんだけど、美味いんだって。
ジョージまずはお湯を沸かしてっと……うわっ! 熱っ!
マークスおい、あんた今火傷したんじゃないのか?
早く手を冷やせ。
ジョージへーきへーき。
次はこのカップに紅茶を……あっ、やべ。
マークス紅茶がテーブルの上にこぼれてるぞ。
ジョージさっ、先に皿を用意しよう。
あっ……!
ジョージあちゃー!
お皿が真っ二つに割れちゃった!
ジョージアウチッ! 指が!
マークス血が出てるじゃないか……!
早く傷の手当をしろ。
ジョージあっ、やべ。
割れた皿を踏んじまった! 粉々だっ!
マークスあんた、いろいろ大丈夫か……?
この十数秒で、なぜここまで惨事にできる?
……もういい。あとの始末は俺がする!
ジョージうー……ごめんな、マークス。
オレがもてなすつもりだったのに。
マークス…………。
ジョージえーっと、絆創膏が見当たらないな……。
〇〇にもらってくるか。
マークスそれぐらいでマスターの世話になるな!
絆創膏なら俺が持ってる。
ジョージおっ。ありがとな。
マークスほら、紅茶を淹れ直したから飲め。
ジョージこの紅茶、うまいなー!
オレが淹れるより、断然上手だ。Thank you!
マークスふっ。マスターのために練習したからな。
当然だ。
ジョージそういえば、マークスは何しに来たんだ?
マークス(そうだった……! 肝心なことを忘れていた)
マークスこの本で、ブラウン・ベス・マスケットのことを読んだんだ。
ジョージへ〜! これ、イギリスの歴史だ。
オレのことはなんて書いてあるんだ?
マークスそうだな……。

第5話:ブラウン・ベスの歴史Ⅰ

───英領アメリカにて。

市民1おーい、集まれ!
イギリス本国からの船便だ!
市民2やっとか……!
何か月待たせるんだ、あの野郎ども。
市民1まあまあ。
船が難破せず、無事に届いただけいいだろ。
市民2しかし、すごい数の木箱だな……!
さっそく開けてみようぜ!

開けられた木箱の中には、
大量のマスケット銃が詰められていた。

マスケット銃のロックプレートには、
王冠の紋章が刻まれている。
男たちは銃を手に取り、しげしげと眺めた。

市民1こいつがブラウン・ベスか……。
ずっしりとくるな。
市民2ああ、新品の銃……憧れだったんだよ。
これで自分の身も、家族も守ることができる!
市民1そうだな!
男はマスケット銃を必ず持てって法律ができたのに、
その銃がなかったもんな。
市民2今日からよろしくな、相棒!
さ、早く帰って俺の家族を紹介すっかな───
役人おい! お前ら待て!
市民1ん? なんだい?
役人なんだじゃない。金を払え! 当然だろう。
市民1&2ええっ!?

市民2いやー、てっきりタダでもらえるモンだと思っててよ!
泥棒扱いされてまったく困ったよ。
ちょうど金を持っててよかった。
あたしたちは高い税を払ってるんだから、
それくらい支給してほしいもんだわね。
そういえば、また関税がつくもんが増えるらしいじゃないの。
えーと、確か……タウンゼンドなんとかって……。
茶や紙、ガラスや鉛にも関税がかかるって、
郵便配達の人が言ってたわよ。
父親なんじゃと!? 紙ってことは……
またトランプにまで税金がかかるのか?
猛抗議して撤廃されたんじゃなかったんかい。
市民2ったく……。
お偉いさん方は、どうしても俺たちから
税を絞りたいらしいな……。
市民2こっちは汗水垂らして必死で生きてるってのに、
こんなんじゃやってらんねぇよ。
父親こちらに不利な条件ばかりでな……。
こっちからは本国へ代表も送れないしのう。
ふざけとるわい。
代表は受け入れないのに、
税金はむしり取るなんてひどいよねぇ!
関税も課税もなくなっちゃえばいいのに。
結局、遥か海の向こうにいる、
声も届かないあたしたちのことを
金づるとしか思ってないんだろうね。
市民2……俺たちに銃を送ったことを、
後悔する日がくるかもしれねぇな……。

 

第6話:ブラウン・ベスの歴史Ⅱ

───アメリカ独立戦争時、とある戦場にて。

イギリス、アメリカ両軍は共に
ブラウン・ベス・マスケットを
主力兵器として装備していた。

アメリカ軍指揮官隊列歩兵、行進開始!
歩兵たちハッ!
アメリカ軍指揮官止まれ! 構え!!
Fire……!

司令官の掛け声で一斉射撃が行われ、
戦場に多くの銃声が響く。

アメリカ軍指揮官次! 前へ!
歩兵たちハッ!
アメリカ軍指揮官止まれ! 構え!!
Fire……!

敵地を目指して行進しながら射撃を繰り返し、
いよいよ敵地まで近づくとラッパの合図が鳴り響いた。
そして、銃剣突撃へと変わっていく───

アメリカ軍兵士たち俺たちはアメリカで自由を手に入れるんだ!
これ以上、イギリスの言いなりにはならない!
アメリカ軍兵士たちここは俺たちが開拓した土地だ!
アメリカが俺たちの国だ!
アメリカ軍兵士たちうおおおお……!!!
イギリス軍兵士たち素人の民兵どもが……!
大英帝国に勝てると思っているのか!?
笑止千万! やれ!

フランス人兵士…………。
アメリカ人民兵おい、いつまで銃の整備をしてるんだ。
もう消灯時間は過ぎてる。
明かりを消せ。明日も戦いなんだぞ。
フランス人兵士いや……どうも、
この王冠の刻印が気になってさ。
アメリカ人民兵それは工場の検印だな。
イギリス本国で製造された証だ。
フランス人兵士皮肉だよな。
イギリスのために作られたマスケット銃なのに、
イギリス軍と戦うことになるなんてさ……。
アメリカ人民兵それ以上言うな!
フランス人兵士……なんだ、そんなに大声出して。
アメリカ人民兵お前のせいで思い出しちまった……。
今日の戦いを。俺の撃った弾が、
何人のイギリス人を殺したのかって……。
フランス人兵士…………。
アメリカ人民兵……俺の親父、イギリスから来た移民でさ。
子供の頃はよくイギリスの話をしてくれてたんだ。
アメリカ人民兵洗練された街並み、立派な王宮に女王陛下……。
まるで童話の世界みたいな話ばっかりでさ……。
いつか俺も行きたいって、すげぇ憧れてた。
アメリカ人民兵……俺は、アメリカで生まれたけれど、
元をたどればイギリス人だ。
同じイギリス人同士なのに、どうして殺し合いを……。
近くにいた民兵生ぬるいこと言ってんじゃねぇよ!
俺たちはイギリス人じゃねぇ、
この地で育ったアメリカ人だ!
近くにいた民兵これからも、この土地で生きていくために、
イギリスを倒さなきゃなんねぇ……。
これは、そのための戦争なんだよ!
アメリカ人民兵……っ!!
近くにいた民兵アメリカの未来と自由のために、
俺たちは今、戦わなきゃいけねぇんだ。
……わかったか?
アメリカ人民兵ああ、そうだ……!
俺たちはアメリカに生まれ、
アメリカで生きていく……!
アメリカ人民兵もう、弱音は終わりだ。
また明日から、自由を手に入れるため……
俺は、この銃と共に戦い続ける!

第7話:或る対話Ⅱ

ブラウン・ベス……俺は、誇り高き騎士だ。
主のため、イギリスのために戦う……。
ブラウン・ベスだが……この戦いはなんだ……?
ブラウン・ベス俺は……誰のために……?
なんのため……戦うんだ……?
ブラウン・ベス俺は……誰のために……
……なんの、ために……。
???Hey! なーに悩んでるんだ?
せっかくの男前が台無しだぜ!
ブラウン・ベス……誰だ、おまえ。
なぜ俺と同じ顔をしている。
ブラウン・ベス?オレは……アメリカ民兵たちの相棒、ブラウン・ベス!
よろしくな!
ブラウン・ベスなんだと……!?
俺がイギリスの誇り高きブラウン・ベス銃だ。
アメリカ民兵の銃が、ブラウン・ベスを名乗るな。
ブラウン・ベス俺は……ブラウン・ベスは、イギリスのために作られた
イギリスの銃だ。俺こそがブラウン・ベスだ!
ブラウン・ベス?そんな怒んなって。
オレだって正真正銘、ブラウン・ベスなんだぜ。
まあ、オレのご主人はアメリカ人だけどな。
ブラウン・ベスそこが間違いだと言っているんだ。
ブラウン・ベスの主人はイギリス人であるべきだ!
断じてアメリカ人なんかじゃない!
ブラウン・ベス俺は……ブラウン・ベスは、
イギリスが誇るマスケット銃なんだ。
アメリカの銃じゃない!
ブラウン・ベス?ああ、もうガンコだなあ……。
ブラウン・ベスおまえが勝手に俺の名を語るからだろう!
ブラウン・ベス?OK! じゃあ、こうしようぜ!
オレはジョージって名乗ることにしよう☆
ブラウン・ベス……は?
ジョージアメリカ人によくある名前だろ!
それに言いやすい! ナイスアイディアだな、オレ!
ブラウン・ベス……おまえは一体なんなんだ。
俺は、こんな場所でくだらない言い合いなんてしている暇はない!
ブラウン・ベス戦わなくては。
俺を、必要としている主人と……主人……。
ブラウン・ベス主人のために、戦って……俺は……うっ……。
違う、俺はイギリスのマスケット銃だ!
アメリカ人なんか……ッ!
ジョージ……ブラウン・ベス。
ブラウン・ベス……う、うぅ……っ!
俺……俺は……!
ジョージいいよいいよ、
おまえは今まで通りにイギリスのために戦え!
ジョージオレはアメリカのために戦う。
それでいいだろ?
ブラウン・ベス何がいいんだ……。
ブラウン……ベス、は……アメリカ……じゃ…………。
ブラウン・ベス…………。
ジョージ……おやすみ、ブラウン。

第8話:真夜中を走れ!

ジョージ作戦の帰り道で、この街を通ってラッキーだったな!
移動遊園地って、オレ初めて!
超楽しかったなー!
ジョージあんまりにも楽しくて、
夜になるまで遊んじゃったけど、大丈夫かな?
主人公【報告してあるから平気だよ】
【たまには息抜きしないとね】
ジョージThank you、〇〇!
名残惜しいけど、そろそろ帰る時間かぁ……。
マークス物珍しいものばかりだったな。
あの回転木馬という機械、
どうやって回ってるのか不思議だった。
十手ああ、エレキテルの技術の進化を目の当たりにしたなぁ!
十手〇〇君はどの遊戯が楽しかった?
あの空中ブランコは───
ジョージ…………。
マークスおい、ジョージ。
どうしたんだ?
遊園地にまだ何かあるのか?
十手忘れ物かい?
ジョージ……いや。
あいつ、こういうの好きかな……教えてやりたいな。
ライク・ツー……あいつって?
ジョージあ、いや……なんでもない。
忘れ物は何もないよ。気にしないでくれ!
ライク・ツー馬鹿か。そこまで言って「気にしないでー」とか、
逆に気にしろって言ってるようなもんじゃねぇか。
ジョージうっ……。
主人公【悲しそうに見えた】
【教えてほしい】
ジョージ〇〇。
…………。
えーと、あれだ、その……。
ジョージ……ブラウン・ベスだよ。あいつ。
オレのもう片方の人格。
マークスそもそも、なんで同じ種類の銃から
まったく別の貴銃士が目覚めるんだ?
モデルが違うならわかるが……よくわからない。
ジョージあー……まあ、そうなんだけどさ。
簡単に言うとだな、ブラウン・ベスっていう銃は、
頭がカタイんだよ。
マークスは?
ジョージカッチカチだから、しなる前に折れちゃうんだよね。
だからきっと、折れないように……
オレが生まれたんだろうな。
十手はぁ……。
わかるような、わからないような……。
精神世界の話は難しいなぁ。
マークス俺はさっぱりわからない。
もっとわかりやすく言え。
しなる……折れる……銃本体の耐久性の話か?
ジョージHAHAHA☆
実はオレもよくわかんないんだよな!
けど、1つだけハッキリとわかることもあるんだ。
ジョージオレはあいつを守るために生まれたから、
あいつを守らないと意味がないんだよ。
オレは、最初から最後まで、あいつのためにいる。
ジョージだから、いつかあいつが遊園地で楽しめる日が来るなら
それはオレにとって、オレ自身が楽しむことより、
大事なことなんだ。
ライク・ツー…………。
十手ジョージ君……。
ジョージあー、ゴメン!
せっかく楽しかったのに、最後に変なこと言っちまったな!
ジョージ何かテンション上がりそうなこと……。
お! オモチャみたいな車、発見!
これに乗って士官学校まで帰ろうぜ!
ライク・ツーは?
マークスそれ乗っていいのか? ここのだろ?
ジョージ置いてるんだから乗っていいんだろ!
〇〇、後ろに乗って!
主人公【わわっ!?】
マークスマ、マスター! おいジョージ!
勝手なことするな!
十手ちょっ……待つんだ!
それに乗って外の道を走るのは───
ライク・ツー……ははっ! 正気じゃねぇな!
ジョージLet’s go!
イエーーーイ!!
ジョージ〇〇! 飛ばしていくぜっ!
振り落とされるなよーっ☆
マークスおい待て、人の話を聞け!
マスターを降ろせ!!
このバカ野郎ーッ!!

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