ジョージ | なぁ、ブラウン。 高貴ってなんだと思う? |
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ブラウン・ベス | 愚問だな。俺は大英帝国の銃だ。 高貴とはすなわち騎士道。他には考えられない。 |
ブラウン・ベス | そういうおまえはどうなんだ? |
ジョージ | オレは……助けたい。 |
ブラウン・ベス | 助けたい……? 誰を? |
---|---|
ジョージ | 困ってる人。 オレの助けが必要な、すべての人たちを。 |
ブラウン・ベス | そうか。 ……弱きを助けることは騎士道に通ずる。 それが、おまえにとっての高貴なんだな。 |
ブラウン・ベス | だが……弱きを助けるということは、 自らが強くなくてはいけない。 時には自分の身を滅ぼしても……。 |
ブラウン・ベス | おまえは人を助けるために、 自分が犠牲になる覚悟はあるのか? |
ジョージ | 覚悟っていうか……。 ブラウンの言ってる「覚悟」とは、 ちょっと違うかもしれないけど……。 |
ジョージ | オレは、はじめから存在してたわけじゃないから。 誰かを助けることが、オレがいる理由…… なのかな。 |
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ブラウン・ベス | ……? おまえ、何を言ってるんだ……? |
ジョージ | だから、そのままの意味だって。 オレはおまえやみんなのことが好きだから、 助けたいってこと! |
ジョージ | ……? なんだ? |
ジョージ | オレ、今誰かに呼ばれた……? っていうか……ここ、どこだっけ? |
ブラウン・ベス | 俺は……おまえとこうして話していたら、 もしかしたら変わっていたのかもしれないな……。 |
ジョージ | え? ブラウン……? |
十手 | ……君。ジョージ君! 起きてくれ〜! |
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ジョージ | ……はっ! ゆ、夢か……! |
ジョージ | 十手……と、マスター? ここ、どこ……? |
十手 | 教室だよ。 授業はもう終わってしまった。 |
ジョージ | えっ!? もしかして、オレ……ずっと寝てた!? |
主人公 | 【ジョージ、よく寝てたね】 【気持ちよさそうな寝顔だった】 |
十手 | 今日は運良く見逃してもらえたが、 教官は呆れていたよ。 |
十手 | なんだかムニャムニャ寝言を言ってたが、 夢で誰かと喋ってたのかい? |
ジョージ | うーん……。 なんか……大切な夢を見てた気がする。 |
主人公 | 【そうなの?】 【どんな夢だった?】 |
ジョージ | えっと……あれ? なんでだろ? 思い出せない……! |
十手 | 思い出せないのかい? ふふっ。なんだかジョージくんらしいね。 |
十手 | スッキリした顔をしているから、 たぶんいい夢だったんじゃないか? |
ジョージ | えっ? そうか? うーん……そうかな? ま、いっか☆ |
ジョージ | 今日の課外授業、面白そうだなー! 川の生き物をスケッチするんだってさ。 |
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シャルルヴィル | うん。 川の生態系を調べるのもスケッチも初めてだから、 ボクも楽しみ。 |
エンフィールド | 本日もご指導よろしくお願いします! ジョージ師匠! |
ジョージ | おう、よろしくなっ! そういや、シャスポーとスナイダーが まだ来てないよな。 |
シャルルヴィル | シャスポーはお手洗いに行くって言ってたよ。 もうすぐ戻ってくるんじゃないかな? |
エンフィールド | スナイダー……またサボりか! はぁ……。 弟がご迷惑をおかけして、申し訳ありません。 |
エンフィールド | 少し周囲を探してみますが……。 シャスポーさんが戻るまでに探し出せなければ、 置いていきましょう。 |
エンフィールド | ジョージ師匠にご迷惑をおかけするわけには いきませんから! |
ジョージ | え〜? そんなこと言うなよ。 せっかくなんだから、みんなで行きたいじゃん! オレ、スナイダーがいそうなところ知ってるんだ。 |
エンフィールド | えっ、本当ですか……? |
ジョージ | ああ。たぶん、あの後ろの建物にいると思う。 ちょっと待っててくれ! |
ジョージは背後の建物の非常用はしごを上っていく。
そして数分後───。
スナイダー | なぜ俺が、 おまえに付き合わねばならない。 |
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ジョージ | いいじゃん! スナイダーもきっと楽しいと思うぜ! |
建物の屋根の上から、
ジョージは不機嫌そうなスナイダーと共に戻ってきた。
シャルルヴィル | 本当に、あの建物にいたんだ……! |
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ジョージ | スナイダーは屋根の上が好きなんだ。 前も一緒に昼寝したことがあるぞ! |
スナイダー | おい、待て。 俺はまだ参加するとは言っていない。 |
エンフィールド | こら! スナイダー? せっかく師匠が誘ってくださったんだから、 真面目にスケッチするんだよ。 |
スナイダー | 虫けらの絵なぞ描いてどうなる……。 |
エンフィールド | それにしても、シャスポーさん、遅いですね。 迷子になってしまったんでしょうか……? |
シャスポー | 待たせたね。 |
ジョージ | 遅かったな! 便秘かー? |
シャスポー | は……。 |
シャルルヴィル | ……っ! |
エンフィールド | し、師匠! |
シャスポー | は……はぁ!? 何を言ってるんだ、君は!!?? |
ジョージ | 気にすんなって。 オレも出るまでに30分くらいかかったことあるぞ。 HAHAHA! |
シャスポー | なっ……! ち、違っ……! |
シャルルヴィル | えっと……なんというかごめん。 確かこのハーブティ、そういうのにも効いたと思うから あげるよ、シャスポー……。 |
エンフィールド | そんな苦しい思いをされていたとは知らず…… 迷子だろうかと失礼なことを考えていました。 本当に、申し訳ありません。 |
シャスポー | 違うって言ってるだろ! 〇〇も参加する授業だから、 髪を整えていただけだ! |
シャスポー | ま、前から思っていたけれど……、 君、本当にデリカシーがない奴だな……! 信じられない下品さだよ! |
ジョージ | あっはっは。ごめんごめん。 まぁいいじゃん。これで揃ったし、Let’s go! |
ジョージ | ……この街、すごく寂しい感じだ……。 |
---|---|
マークス | マスター、あの痩せた子供の群れはなんだ? |
ライク・ツー | 任務の前にラッセルが説明してただろ? この街は資源の枯渇で一気に貧しくなった。 だから失業者や孤児が多いんだと。 |
マークス | 俺はマスターに聞いたんだ。 |
ライク・ツー | マスター以外の奴の話も ちゃんと聞いとけ、バカ野郎。 |
ジョージ | おおっ? みんな、見ろよ。 雪だ……! 綺麗だよな。 |
ライク・ツー | うわっ、寒っ……。サイアク。 景色なんか楽しめねーよ。 |
雪が降り始める中、寒さに震えていた子供たちが
こちらをじっと見つめていた。
ジョージ | あの子たち、寒そうだ。 |
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主人公 | 【なんとかしてあげたいけど……】 |
ジョージ | そうだな。 でも、この服はあげられないし……。 |
ジョージ | あっ、そうだ! バイトで稼いだ金があるから、服買ってくるか。 |
ライク・ツー | ばーか。この辺にまともな服屋なんてねーぞ。 それに、全員分買えるような金もないだろ。 |
ライク・ツー | やめとけよ。 半端に手を出すと、あいつらの中でいざこざが起きる。 お前が逆恨みされることもあるかもな。 |
ジョージ | でも、 このまま放っておくなんて……! |
ライク・ツー | お前の自己満足で、あいつらなりの生活を めちゃくちゃにしてぇんなら止めねーけど? 世の中、そんな簡単じゃねぇよ。 |
ジョージ | …………。 |
ジョージ | ちょっと、頭冷やしてくる。 悪いけど、先にホテルに戻っててくれ。 |
その夜、ホテルに帰ってこないジョージを探して、
3人は街を歩いていた。
ライク・ツー | ったく、ジョージの奴……。 |
---|---|
マークス | マスター。 どこに行ったか、心当たりはないか? |
主人公 | 【昼間の孤児が気になっているのかも】 |
ライク・ツー | ああ、なるほどな。 ということは……行き先は孤児院か? |
マークス | こじいん……? そこに、ジョージとあの子供の群れがいるのか? |
ライク・ツー | よし、行ってみるか。 |
男の子1 | あははっ。にーちゃん、ヘタクソー! |
---|---|
女の子1 | みてみて。わたしの方がじょうずだよー! |
ジョージ | おおー、ほんとだ! すげーな! |
孤児院に入ると、ジョージが昼間の子供たちに
囲まれながら裁縫をしていた。
その周囲には、大量の服が積まれている。
主人公 | 【賑やかだね】 【やっぱりここにいたんだね】 |
---|---|
ジョージ | おっ、〇〇! マークスとライク・ツーまで! |
男の子2 | なーなー。おれのまだ? |
ジョージ | もうちょっと待ってくれよ〜。もうすぐだから! |
ライク・ツー | お前、何してんだ? |
マークス | この大量の服は……? |
ジョージ | ああ、その服な。 1軒1軒家を回ってもらってきたんだ。 |
ジョージ | この子たち全員の服を買ってやることはできないけど、 古着なら集められると思ってさ。 |
ジョージ | でさ。大人用の服はでかいから、 ケンタッキーがやってたみたいに サイズ調整してやってるんだ。 |
女の子2 | ありがとう、おにいちゃん! これ、あったかいよ。 |
ジョージ | おう、よかったぜ! 全員分作ってやるから、待っててくれよな。 |
ジョージ | ……あっ、痛っ。また針刺しちまった! |
ライク・ツー | お前、裁縫下手過ぎ。 そういや家庭科の授業も補習常習犯だったな。 |
ライク・ツー | ったく。 ……しょうがねぇな。俺もやってやるよ。 |
主人公 | 【自分も手伝う】 |
マークス | マスターがやるなら、俺も手伝う。 |
ジョージ | みんな、手伝ってくれるのか? ありがとなっ! |
皆で、子供たちの古着を縫い進める。
すべて終えた時には、もう真夜中になっていた。
ジョージ | ん〜っ! よく働いたなぁ。 でもオレ1人じゃ、きっと終わらなかったよ。 みんなのおかげだな☆ |
---|---|
主人公 | 【役に立てて良かったよ】 【どういたしまして】 |
ジョージ | ……ホントに、ありがとうな。 |
マークス | なぁ、あんた……。 なぜ見ず知らずの人間に、そこまでする? |
ジョージ | ん? そうだな……それが、オレだから。 |
ライク・ツー | なんだそりゃ? 答えになってねーじゃん。 |
ジョージ | うーん……それも、オレだから! |
マークス | 何も考えてないと素直に言ったらどうだ? |
ジョージ | HAHAHA! そうとも言う! はっはっは……☆ |
恭遠 | では、授業を始める。 今日はイギリスの兵器の歴史について勉強しよう。 教科書の8ページを開いてくれ。 |
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マークス | …………。 |
───数日後。遠征先のホテルにて。
主人公 | 【何を読んでるの?】 【何か、調べもの?】 |
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マークス | ああ、マスターか。 これはイギリスの軍事史の本だ。 |
マークス | この前の授業で、教科書として使っていたんだ。 それで、この18世紀のところ…… ブラウン・ベスのことがたくさん書いてある。 |
マークス | 「イギリス陸軍が初めて採用したマスケット銃。 100年以上にわたって使用されたことから、 “大英帝国を築いた銃”と言われる」─── |
マークス | ジョージのやつ……そうは見えないが、 あいつは、イギリスにとって すごく大事な銃だったんだよな……。 |
マークス | 普段あんな奴だが……言われてみれば、 あいつが絶対高貴になる瞬間だけは─── なんか、いつもと違うように感じるんだ。 |
マークス | あまり、うまくは言えないんだが……。 “Cats hide their claws” という ことわざみたいな……。 |
主人公 | 【伝えてあげたら?】 【ジョージが聞いたら喜ぶと思う】 |
マークス | そうだろうか……? まあ、マスターの言うことなら正しいはずだ。 ジョージの部屋に行ってくる。 |
マークス | おい、ジョージ。入るぞ。 |
---|---|
ジョージ | おっ? マークスか? いいぜ、大歓迎だ! |
マークス | あんたに話が……って、!? |
マークス | なんだ、この部屋は!? まるで敵に荒らされた基地じゃねーか! |
ジョージの部屋は、床に服や道具類、
あらゆるガラクタが散乱し、
散らかり放題の状態だった。
ジョージ | そこまで言うことないだろ〜。 確かに、ちょっと散らかってるけどさ。 |
---|---|
マークス | この壺はなんだ? こんなの行く時に持ってなかっただろ? |
ジョージ | あ〜。それは、街を歩いてたら知らない人に 「呪いの壺なんだ、もらってくれ!」って 渡されて……。 |
マークス | そんなものをもらうな! こっちの巻物の山はなんだ!? |
ジョージ | えっと……それは町の外れの死んだばーちゃんが 書き溜めてた日記で、ゴミに捨てられそうに なってたから、かわいそうでさ……。 |
マークス | このガラクタ全部そんなんなのか!? 呆れた……。 むしろ、寮ではちゃんと片付いてるのは何なんだ? |
ジョージ | ……あ〜、あれだ! 寮の部屋は、いつもエンフィールドが 片づけてくれてるからなぁ。 |
マークス | つまり、エンフィールドがいない時は まったく何もしていないわけだな? |
ジョージ | HAHAHA! マークスは手厳しいな〜。 そうだ。紅茶でも飲むか? これももらいものなんだけど、美味いんだって。 |
ジョージ | まずはお湯を沸かしてっと……うわっ! 熱っ! |
マークス | おい、あんた今火傷したんじゃないのか? 早く手を冷やせ。 |
ジョージ | へーきへーき。 次はこのカップに紅茶を……あっ、やべ。 |
マークス | 紅茶がテーブルの上にこぼれてるぞ。 |
ジョージ | さっ、先に皿を用意しよう。 あっ……! |
ジョージ | あちゃー! お皿が真っ二つに割れちゃった! |
ジョージ | アウチッ! 指が! |
マークス | 血が出てるじゃないか……! 早く傷の手当をしろ。 |
ジョージ | あっ、やべ。 割れた皿を踏んじまった! 粉々だっ! |
マークス | あんた、いろいろ大丈夫か……? この十数秒で、なぜここまで惨事にできる? ……もういい。あとの始末は俺がする! |
ジョージ | うー……ごめんな、マークス。 オレがもてなすつもりだったのに。 |
マークス | …………。 |
ジョージ | えーっと、絆創膏が見当たらないな……。 〇〇にもらってくるか。 |
マークス | それぐらいでマスターの世話になるな! 絆創膏なら俺が持ってる。 |
ジョージ | おっ。ありがとな。 |
マークス | ほら、紅茶を淹れ直したから飲め。 |
ジョージ | この紅茶、うまいなー! オレが淹れるより、断然上手だ。Thank you! |
マークス | ふっ。マスターのために練習したからな。 当然だ。 |
ジョージ | そういえば、マークスは何しに来たんだ? |
マークス | (そうだった……! 肝心なことを忘れていた) |
マークス | この本で、ブラウン・ベス・マスケットのことを読んだんだ。 |
ジョージ | へ〜! これ、イギリスの歴史だ。 オレのことはなんて書いてあるんだ? |
マークス | そうだな……。 |
───英領アメリカにて。
市民1 | おーい、集まれ! イギリス本国からの船便だ! |
---|---|
市民2 | やっとか……! 何か月待たせるんだ、あの野郎ども。 |
市民1 | まあまあ。 船が難破せず、無事に届いただけいいだろ。 |
市民2 | しかし、すごい数の木箱だな……! さっそく開けてみようぜ! |
開けられた木箱の中には、
大量のマスケット銃が詰められていた。
マスケット銃のロックプレートには、
王冠の紋章が刻まれている。
男たちは銃を手に取り、しげしげと眺めた。
市民1 | こいつがブラウン・ベスか……。 ずっしりとくるな。 |
---|---|
市民2 | ああ、新品の銃……憧れだったんだよ。 これで自分の身も、家族も守ることができる! |
市民1 | そうだな! 男はマスケット銃を必ず持てって法律ができたのに、 その銃がなかったもんな。 |
市民2 | 今日からよろしくな、相棒! さ、早く帰って俺の家族を紹介すっかな─── |
役人 | おい! お前ら待て! |
市民1 | ん? なんだい? |
役人 | なんだじゃない。金を払え! 当然だろう。 |
市民1&2 | ええっ!? |
市民2 | いやー、てっきりタダでもらえるモンだと思っててよ! 泥棒扱いされてまったく困ったよ。 ちょうど金を持っててよかった。 |
---|---|
妻 | あたしたちは高い税を払ってるんだから、 それくらい支給してほしいもんだわね。 |
妻 | そういえば、また関税がつくもんが増えるらしいじゃないの。 えーと、確か……タウンゼンドなんとかって……。 |
妻 | 茶や紙、ガラスや鉛にも関税がかかるって、 郵便配達の人が言ってたわよ。 |
父親 | なんじゃと!? 紙ってことは…… またトランプにまで税金がかかるのか? 猛抗議して撤廃されたんじゃなかったんかい。 |
市民2 | ったく……。 お偉いさん方は、どうしても俺たちから 税を絞りたいらしいな……。 |
市民2 | こっちは汗水垂らして必死で生きてるってのに、 こんなんじゃやってらんねぇよ。 |
父親 | こちらに不利な条件ばかりでな……。 こっちからは本国へ代表も送れないしのう。 ふざけとるわい。 |
妻 | 代表は受け入れないのに、 税金はむしり取るなんてひどいよねぇ! 関税も課税もなくなっちゃえばいいのに。 |
妻 | 結局、遥か海の向こうにいる、 声も届かないあたしたちのことを 金づるとしか思ってないんだろうね。 |
市民2 | ……俺たちに銃を送ったことを、 後悔する日がくるかもしれねぇな……。 |
───アメリカ独立戦争時、とある戦場にて。
イギリス、アメリカ両軍は共に
ブラウン・ベス・マスケットを
主力兵器として装備していた。
アメリカ軍指揮官 | 隊列歩兵、行進開始! |
---|---|
歩兵たち | ハッ! |
アメリカ軍指揮官 | 止まれ! 構え!! Fire……! |
司令官の掛け声で一斉射撃が行われ、
戦場に多くの銃声が響く。
アメリカ軍指揮官 | 次! 前へ! |
---|---|
歩兵たち | ハッ! |
アメリカ軍指揮官 | 止まれ! 構え!! Fire……! |
敵地を目指して行進しながら射撃を繰り返し、
いよいよ敵地まで近づくとラッパの合図が鳴り響いた。
そして、銃剣突撃へと変わっていく───
アメリカ軍兵士たち | 俺たちはアメリカで自由を手に入れるんだ! これ以上、イギリスの言いなりにはならない! |
---|---|
アメリカ軍兵士たち | ここは俺たちが開拓した土地だ! アメリカが俺たちの国だ! |
アメリカ軍兵士たち | うおおおお……!!! |
イギリス軍兵士たち | 素人の民兵どもが……! 大英帝国に勝てると思っているのか!? 笑止千万! やれ! |
フランス人兵士 | …………。 |
---|---|
アメリカ人民兵 | おい、いつまで銃の整備をしてるんだ。 もう消灯時間は過ぎてる。 明かりを消せ。明日も戦いなんだぞ。 |
フランス人兵士 | いや……どうも、 この王冠の刻印が気になってさ。 |
アメリカ人民兵 | それは工場の検印だな。 イギリス本国で製造された証だ。 |
フランス人兵士 | 皮肉だよな。 イギリスのために作られたマスケット銃なのに、 イギリス軍と戦うことになるなんてさ……。 |
アメリカ人民兵 | それ以上言うな! |
フランス人兵士 | ……なんだ、そんなに大声出して。 |
アメリカ人民兵 | お前のせいで思い出しちまった……。 今日の戦いを。俺の撃った弾が、 何人のイギリス人を殺したのかって……。 |
フランス人兵士 | …………。 |
アメリカ人民兵 | ……俺の親父、イギリスから来た移民でさ。 子供の頃はよくイギリスの話をしてくれてたんだ。 |
アメリカ人民兵 | 洗練された街並み、立派な王宮に女王陛下……。 まるで童話の世界みたいな話ばっかりでさ……。 いつか俺も行きたいって、すげぇ憧れてた。 |
アメリカ人民兵 | ……俺は、アメリカで生まれたけれど、 元をたどればイギリス人だ。 同じイギリス人同士なのに、どうして殺し合いを……。 |
近くにいた民兵 | 生ぬるいこと言ってんじゃねぇよ! 俺たちはイギリス人じゃねぇ、 この地で育ったアメリカ人だ! |
近くにいた民兵 | これからも、この土地で生きていくために、 イギリスを倒さなきゃなんねぇ……。 これは、そのための戦争なんだよ! |
アメリカ人民兵 | ……っ!! |
近くにいた民兵 | アメリカの未来と自由のために、 俺たちは今、戦わなきゃいけねぇんだ。 ……わかったか? |
アメリカ人民兵 | ああ、そうだ……! 俺たちはアメリカに生まれ、 アメリカで生きていく……! |
アメリカ人民兵 | もう、弱音は終わりだ。 また明日から、自由を手に入れるため…… 俺は、この銃と共に戦い続ける! |
ブラウン・ベス | ……俺は、誇り高き騎士だ。 主のため、イギリスのために戦う……。 |
---|---|
ブラウン・ベス | だが……この戦いはなんだ……? |
ブラウン・ベス | 俺は……誰のために……? なんのため……戦うんだ……? |
ブラウン・ベス | 俺は……誰のために…… ……なんの、ために……。 |
??? | Hey! なーに悩んでるんだ? せっかくの男前が台無しだぜ! |
ブラウン・ベス | ……誰だ、おまえ。 なぜ俺と同じ顔をしている。 |
ブラウン・ベス? | オレは……アメリカ民兵たちの相棒、ブラウン・ベス! よろしくな! |
ブラウン・ベス | なんだと……!? 俺がイギリスの誇り高きブラウン・ベス銃だ。 アメリカ民兵の銃が、ブラウン・ベスを名乗るな。 |
ブラウン・ベス | 俺は……ブラウン・ベスは、イギリスのために作られた イギリスの銃だ。俺こそがブラウン・ベスだ! |
ブラウン・ベス? | そんな怒んなって。 オレだって正真正銘、ブラウン・ベスなんだぜ。 まあ、オレのご主人はアメリカ人だけどな。 |
ブラウン・ベス | そこが間違いだと言っているんだ。 ブラウン・ベスの主人はイギリス人であるべきだ! 断じてアメリカ人なんかじゃない! |
ブラウン・ベス | 俺は……ブラウン・ベスは、 イギリスが誇るマスケット銃なんだ。 アメリカの銃じゃない! |
ブラウン・ベス? | ああ、もうガンコだなあ……。 |
ブラウン・ベス | おまえが勝手に俺の名を語るからだろう! |
ブラウン・ベス? | OK! じゃあ、こうしようぜ! オレはジョージって名乗ることにしよう☆ |
ブラウン・ベス | ……は? |
ジョージ | アメリカ人によくある名前だろ! それに言いやすい! ナイスアイディアだな、オレ! |
ブラウン・ベス | ……おまえは一体なんなんだ。 俺は、こんな場所でくだらない言い合いなんてしている暇はない! |
ブラウン・ベス | 戦わなくては。 俺を、必要としている主人と……主人……。 |
ブラウン・ベス | 主人のために、戦って……俺は……うっ……。 違う、俺はイギリスのマスケット銃だ! アメリカ人なんか……ッ! |
ジョージ | ……ブラウン・ベス。 |
ブラウン・ベス | ……う、うぅ……っ! 俺……俺は……! |
ジョージ | いいよいいよ、 おまえは今まで通りにイギリスのために戦え! |
ジョージ | オレはアメリカのために戦う。 それでいいだろ? |
ブラウン・ベス | 何がいいんだ……。 ブラウン……ベス、は……アメリカ……じゃ…………。 |
ブラウン・ベス | …………。 |
ジョージ | ……おやすみ、ブラウン。 |
ジョージ | 作戦の帰り道で、この街を通ってラッキーだったな! 移動遊園地って、オレ初めて! 超楽しかったなー! |
---|---|
ジョージ | あんまりにも楽しくて、 夜になるまで遊んじゃったけど、大丈夫かな? |
主人公 | 【報告してあるから平気だよ】 【たまには息抜きしないとね】 |
ジョージ | Thank you、〇〇! 名残惜しいけど、そろそろ帰る時間かぁ……。 |
マークス | 物珍しいものばかりだったな。 あの回転木馬という機械、 どうやって回ってるのか不思議だった。 |
十手 | ああ、エレキテルの技術の進化を目の当たりにしたなぁ! |
十手 | 〇〇君はどの遊戯が楽しかった? あの空中ブランコは─── |
ジョージ | …………。 |
マークス | おい、ジョージ。 どうしたんだ? 遊園地にまだ何かあるのか? |
十手 | 忘れ物かい? |
ジョージ | ……いや。 あいつ、こういうの好きかな……教えてやりたいな。 |
ライク・ツー | ……あいつって? |
ジョージ | あ、いや……なんでもない。 忘れ物は何もないよ。気にしないでくれ! |
ライク・ツー | 馬鹿か。そこまで言って「気にしないでー」とか、 逆に気にしろって言ってるようなもんじゃねぇか。 |
ジョージ | うっ……。 |
主人公 | 【悲しそうに見えた】 【教えてほしい】 |
ジョージ | 〇〇。 …………。 えーと、あれだ、その……。 |
ジョージ | ……ブラウン・ベスだよ。あいつ。 オレのもう片方の人格。 |
マークス | そもそも、なんで同じ種類の銃から まったく別の貴銃士が目覚めるんだ? モデルが違うならわかるが……よくわからない。 |
ジョージ | あー……まあ、そうなんだけどさ。 簡単に言うとだな、ブラウン・ベスっていう銃は、 頭がカタイんだよ。 |
マークス | は? |
ジョージ | カッチカチだから、しなる前に折れちゃうんだよね。 だからきっと、折れないように…… オレが生まれたんだろうな。 |
十手 | はぁ……。 わかるような、わからないような……。 精神世界の話は難しいなぁ。 |
マークス | 俺はさっぱりわからない。 もっとわかりやすく言え。 しなる……折れる……銃本体の耐久性の話か? |
ジョージ | HAHAHA☆ 実はオレもよくわかんないんだよな! けど、1つだけハッキリとわかることもあるんだ。 |
ジョージ | オレはあいつを守るために生まれたから、 あいつを守らないと意味がないんだよ。 オレは、最初から最後まで、あいつのためにいる。 |
ジョージ | だから、いつかあいつが遊園地で楽しめる日が来るなら それはオレにとって、オレ自身が楽しむことより、 大事なことなんだ。 |
ライク・ツー | …………。 |
十手 | ジョージ君……。 |
ジョージ | あー、ゴメン! せっかく楽しかったのに、最後に変なこと言っちまったな! |
ジョージ | 何かテンション上がりそうなこと……。 お! オモチャみたいな車、発見! これに乗って士官学校まで帰ろうぜ! |
ライク・ツー | は? |
マークス | それ乗っていいのか? ここのだろ? |
ジョージ | 置いてるんだから乗っていいんだろ! 〇〇、後ろに乗って! |
主人公 | 【わわっ!?】 |
マークス | マ、マスター! おいジョージ! 勝手なことするな! |
十手 | ちょっ……待つんだ! それに乗って外の道を走るのは─── |
ライク・ツー | ……ははっ! 正気じゃねぇな! |
ジョージ | Let’s go! イエーーーイ!! |
ジョージ | 〇〇! 飛ばしていくぜっ! 振り落とされるなよーっ☆ |
マークス | おい待て、人の話を聞け! マスターを降ろせ!! このバカ野郎ーッ!! |
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